SES事業と派遣事業の違い|許可・指揮命令・契約書・事業報告を表で比較し、派遣許可を取る目安6つを解説

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

SES事業と派遣事業の違いは「指揮命令」と「許可」

SES事業と派遣事業の違いは、客先がエンジニアに直接指示できるかと、国の許可がいるかの2点です。この2点から、契約書・報告・社内体制の違いがすべて生まれます。

SES(システムエンジニアリングサービス)とは、エンジニアの技術や労働力を客先に提供する事業のことです。客先からは、その対価を受け取ります。契約は多くの場合、準委任契約で結びます。

準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた業務を行うこと自体を約束する契約のことです。民法の委任(第643条)の規定を、法律行為でない事務に当てはめたものです(第656条)。

労働者派遣事業とは、自社で雇った労働者を、客先(派遣先)の指揮命令のもとで働かせる事業のことです。労働者派遣法で定められ、第5条で「厚生労働大臣の許可を受けなければならない」とされています。

観点SES事業(準委任)労働者派遣事業
客先からの直接指示できないできる
国の許可不要必要(労働者派遣法第5条)
主な根拠民法(委任・準委任)労働者派遣法

事業運営の違いを表で比較

事業を運営する側から見ると、派遣事業はSES事業より守る義務が多く、そのぶん客先の使い方の自由度が高い事業です。許可・契約・報告・体制の違いを1つの表にまとめます。

項目SES事業(準委任)労働者派遣事業
始めるための手続き許可・届出は不要都道府県労働局経由で許可申請
指揮命令する人自社(SES企業)の責任者客先(派遣先)の担当者
契約書に必ず書くこと法律上の決まった項目はない労働者派遣法第26条の項目(業務内容・指揮命令者など)
毎年の報告なし事業報告書・収支決算書の提出
同じ人を同じ部署に出せる期間法律上の上限はない原則3年まで(無期雇用の派遣などは対象外)
派遣社員の待遇の決め方法律上の決まった方式はない派遣先均等・均衡方式か労使協定方式
教育訓練法律上の決まりはない段階的・体系的な教育訓練が必要
料金の決め方(一般的な例)月額単価+精算幅時間単価×働いた時間
社内に置く責任者法律上の決まりはない派遣元責任者の選任が必要
情報の公開義務はないマージン率などの情報提供が必要
許可の有効期間―新規3年、更新後は5年ごと

表のとおり、SES事業は手続きが軽いぶん、現場で指揮命令をしない運用を自社で守り続ける必要があります。派遣事業は手続きが重いぶん、客先が直接指示できるので、客先にとって使いやすい契約です。

派遣事業だけにある「待遇の決め方」のルール

派遣事業では、派遣社員の賃金などの待遇を、法律で決められた方式で決める必要があります。いわゆる派遣の「同一労働同一賃金」です。

方式は次の2つから選びます。

方式内容根拠
派遣先均等・均衡方式派遣先の社員と比べて、不合理な差をつけない労働者派遣法第30条の3
労使協定方式社員の代表と協定を結び、国が示す賃金水準以上にする労働者派遣法第30条の4

どちらの方式でも、派遣社員の賃金は派遣料金の決め方に直接影響します。派遣事業を始めるときは、賃金と料金を合わせて設計し直す必要があります。

料金の決め方と粗利への影響

SESでは、月額単価に精算幅(例:140〜180時間)を付ける形が一般的です。派遣では、時間単価に働いた時間をかける形が多く見られます。

料金の形が変わると、残業や休みが多い月の売上の動き方も変わります。契約形態ごとの粗利率は、SESの粗利率の平均と計算式の計算例で確かめられます。精算幅の決め方はSESの稼働時間の上限・下限で解説しています。

派遣事業の許可の要件と費用

派遣許可を取るには、お金・事務所・責任者・管理体制の4つの要件を満たす必要があります。主な数字は次のとおりです(2026年9月時点で厚生労働省の資料を確認)。

要件・費用内容
基準資産額資産から負債を引いた額が、2,000万円×事業所数以上
負債とのバランス基準資産額が、負債総額の7分の1以上
現金・預金自己名義の現金・預金が、1,500万円×事業所数以上
事務所の広さ事業に使える面積がおおむね20㎡以上
派遣元責任者3年以上の雇用管理の経験などがあり、申請前3年以内に「派遣元責任者講習」を受けた人
許可手数料12万円+5万5千円×(事業所数−1)
登録免許税許可1件あたり9万円
審査にかかる期間申請から許可まで、おおむね2〜3か月

基準資産額とは、会社の資産の合計から、負債の合計を引いた額のことです。繰延資産と営業権(のれん)は資産に含めません。

小さなSES企業では、資産要件がいちばんの壁になりやすいです。決算書で基準資産額と現金・預金の額を先に計算し、足りるかを確かめてから準備を始めましょう。

許可を取ったあとの事業報告と運営義務

派遣許可は取って終わりではなく、毎年の報告と、日々の管理が続きます。SES事業にはない主な義務は次の9つです。

  1. 労働者派遣事業報告書を出す:6月1日現在の状況などを、毎年6月1日〜6月30日に出します。

  2. 収支決算書を出す:事業年度が終わってから3か月以内に出します。

  3. マージン率などを公開する:派遣料金と賃金の差の割合や、教育訓練の内容を知らせます。

  4. 派遣元責任者を置く:派遣社員の苦情対応や、派遣先との連絡を担当します。

  5. 派遣元管理台帳をつくる:派遣社員ごとに、派遣先や就業日などを記録します。

  6. 許可証を事業所に置く:関係者から求められたら、許可証を見せます。

  7. 許可を更新する:最初は3年、更新後は5年ごとに更新の手続きをします。

  8. 待遇の方式を決めて守る:派遣先均等・均衡方式か労使協定方式で、派遣社員の賃金などを決めます。

  9. 教育訓練を行う:派遣社員に、段階的・体系的な教育訓練を行います。

事業報告書とは、派遣労働者の数、派遣先の数、派遣料金の額などを、事業所ごとに国へ報告する書類のことです。労働者派遣法第23条で義務になっています。

報告や台帳の作成には、毎年まとまった事務の時間がかかります。派遣許可を取るなら、営業とは別に管理を担当する人を決めておくと回しやすくなります。

指揮命令の違いと、偽装請負のリスク

SES契約なのに客先が直接指示すると、実態は派遣と判断され、偽装請負になるおそれがあります。契約書の名前ではなく、現場の実態で判断されるからです。

指揮命令とは、仕事のやり方・順番・時間などを、働く人に直接指示することです。SESでは、指示はSES企業の責任者を通して出すのが原則です。

請負・準委任と派遣の線引きは、厚生労働省の告示で示されています。「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」、通称37号告示です。次のような状態は、派遣と判断されやすい例です。

  • 客先の社員が、エンジニアに作業の順番や方法を直接指示している

  • 客先が、エンジニアの始業・終業時刻や残業を直接決めている

  • 客先が、エンジニア個人を選んで入れ替えを指示している

違反の形主なリスク
許可なく派遣事業を行う1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(労働者派遣法第59条)
客先が無許可の会社から派遣を受ける客先がエンジニアに労働契約を申し込んだとみなされることがある(第40条の6)
偽装請負と判断される客先に労働契約の申込みみなし(第40条の6第1項第5号)。自社は無許可派遣として罰則の対象になりうる

罰則は会社にもかかります。労働者派遣法第62条により、違反した社員だけでなく、法人にも罰金が科されることがあります。

→ 準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20
→ 偽装請負の37号告示をやさしく解説|厚労省Q&AのSES該当箇所
→ 偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選

契約書の違い:派遣契約には書く項目が決まっている

派遣契約書には法律で決められた記載項目があり、SES契約書にはありません。派遣事業を始めると、契約書のひな形を作り直す必要があります。

労働者派遣法第26条で、派遣契約に定める主な項目は次のとおりです。

  1. 派遣労働者が行う業務の内容

  2. 働く事業所の名前・所在地と、組織単位

  3. 派遣先で直接指揮命令する人

  4. 派遣の期間と、働く日

  5. 始業・終業の時刻と休憩時間

  6. 安全・衛生に関すること

  7. 苦情を受けたときの処理方法

  8. 契約を解除するときの、派遣労働者の雇用を守る措置

さらに派遣元は、契約を結ぶ前に許可を受けていることを相手に示す必要があります(第26条第3項)。

SES契約書(準委任)には、法律で決まった項目はありません。ただし、業務の範囲・報告の方法・精算幅・指揮命令をしないことを書いておくと、偽装請負のリスクを下げられます。

契約書書く項目の決まり特に入れたいこと
SES契約書(準委任)法律上の決まりはない業務範囲、報告方法、精算幅、指揮命令をしない旨
派遣契約書労働者派遣法第26条で決まっている指揮命令者、就業時間、派遣期間、解除時の措置

→ SES契約書のひな形はSES基本契約書のテンプレート|個別契約・注文書と条項チェック15で確認できます。

SESで始めた会社が派遣許可を取るべき判断の目安6つ

派遣許可を取るべきかは、客先の求め方・断っている案件の数・お金・管理体制で決まります。私たちは、次の6つのうち4つ以上に当てはまるなら、派遣許可の準備を始めてよいと考えます。

#目安当てはまるかの確認方法
1客先から「直接指示したい」と言われる案件が多い過去3か月で、派遣契約を求められた案件の数を数える
2派遣でないと受けられず、断った案件がある月に2件以上断っていないか、営業の記録を見る
3基準資産額・現金預金の要件を満たせる決算書で2,000万円・1,500万円(事業所数分)を確認
420㎡以上の事務所がある賃貸契約書で面積を確認
5派遣元責任者になれる人がいる雇用管理の経験3年以上の人がいるか確認
6報告・台帳の事務を担当できる人がいる営業と別に、管理の担当を置けるか確認

反対に、次のような会社は急いで許可を取る必要はありません。

  • 案件のほとんどが準委任で、客先も指揮命令をしない運用に慣れている

  • 資産要件を満たすために、無理な資金集めが必要になる

  • 管理担当がおらず、報告や台帳が営業の負担になる

大切なのは、「派遣許可がないから派遣っぽい案件もSESで受ける」をやめることです。派遣でしか受けられない案件は、許可を取るか、断るかのどちらかにしましょう。

派遣許可を取る場合の手順7ステップ

派遣許可は、講習の受講から許可まで、早くても3〜4か月を見ておくと安心です。一般的な流れは次のとおりです。

  1. 派遣元責任者講習を受ける:厚生労働省が定めた講習機関の講習を受けます。

  2. 資産要件を確認する:直近の決算書で基準資産額と現金・預金の額を計算します。

  3. 事務所を整える:おおむね20㎡以上の広さと、個人情報を守れる設備を用意します。

  4. 社内の規程をつくる:教育訓練の計画や、個人情報の管理のルールを整えます。

  5. 申請書類をそろえる:許可申請書、事業計画書、決算書などを用意します。

  6. 都道府県労働局に申請する:本社を管轄する労働局に出し、手数料と登録免許税を納めます。

  7. 審査を受け、許可証を受け取る:実地の確認などを経て、おおむね2〜3か月で許可が出ます。

書類の書き方や細かな基準は、厚生労働省の「労働者派遣事業関係業務取扱要領」と、各地の労働局の案内で確認できます。不安があれば、社会保険労務士に相談しましょう。

自社でできる契約形態の管理と、チョータツで楽にする方法

SESと派遣の両方を扱う会社では、案件ごとに契約形態を記録し、提案前に確認する仕組みが欠かせません。まずは自分でできる方法から始めましょう。

自分でやる方法(Excel・スプレッドシート)

  1. 案件の一覧に「契約形態(準委任・派遣・請負)」の列を作る

  2. 「客先の指揮命令あり・なし」「商流(何次請けか)」の列も作る

  3. 派遣の案件には、派遣期間の終わり(抵触日)を書く

  4. 提案する前に、エンジニアの所属と雇用形態を確認する

この方法は無料ですぐ始められます。ただし、営業が増えると更新漏れが起きやすく、パートナーから届く案件情報を転記する手間も増えます。

チョータツで楽にする方法

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。3,000社以上が使っており、無料で始められます。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を確認するExcelを開いて行を探す案件情報をまとめて管理し、提案前に確認する
パートナーの案件を集める届いたメールを読んで転記する他社と連携すると、営業中の案件・人材がデータベースになる
自社の案件・人材を知らせるBCCでメールを一斉送信するメール配信機能でパートナーに配信する
情報を入力する1件ずつ手で入力するAIが入力を手伝う

契約形態の確認は、最後は人の目で行う必要があります。そのうえで、案件情報が1か所にまとまっていると、確認の抜けを減らしやすくなります。

よくある質問

Q. SES事業を始めるのに、何か許可や届出は必要ですか?
準委任契約で行うSES事業そのものに、派遣のような許可は必要ありません。ただし、現場で客先が直接指示する実態があると派遣と判断され、許可が必要になります。
Q. SESと派遣の違いを、指揮命令の点でひとことで言うと?
SESは「自社が指示する」、派遣は「客先が指示する」です。SESで客先が直接指示すると、偽装請負と判断されるおそれがあります。
Q. 派遣許可を持っていれば、SES契約で客先が指示しても問題ありませんか?
問題があります。派遣として扱うなら、派遣契約を結び、法律で決められた項目を定める必要があります。許可があっても、SES契約のまま指揮命令させることはできません。
Q. 準委任と派遣の違いは、事業としては何が一番大きいですか?
許可と報告の義務です。派遣事業は許可の取得と更新、毎年の事業報告、マージン率の公開などが必要です。準委任にはこうした義務はありません。
Q. 派遣事業を始めると、エンジニアの給与の決め方は変わりますか?
変わります。派遣社員の待遇は、派遣先均等・均衡方式か労使協定方式のどちらかで決める必要があります(第30条の3・第30条の4)。SESのときの給与表をそのまま使えるとは限りません。
Q. 派遣許可の取得には、いくらかかりますか?
1事業所の場合、許可手数料12万円と登録免許税9万円がかかります。そのほか、基準資産額2,000万円以上・現金預金1,500万円以上の要件を満たす必要があります。
Q. 取引先が派遣許可を持っているかは、どう確認しますか?
厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で、会社名や許可番号から検索できます。手順は労働者派遣の許可番号を検索する方法で解説しています。

まとめ

  • SES事業は許可不要、労働者派遣事業は厚生労働大臣の許可が必要

  • 違いの中心は指揮命令。SESは自社が指示し、派遣は客先が指示する

  • 派遣許可には、1事業所あたり基準資産額2,000万円・現金預金1,500万円が必要

  • あわせて、20㎡以上の事務所と派遣元責任者も必要

  • 許可後は、毎年の事業報告、マージン率の公開、許可の更新が続く

  • 派遣社員の待遇は、派遣先均等・均衡方式か労使協定方式で決める

  • 判断の目安6つのうち4つ以上に当てはまれば、派遣許可の準備を始めてよい

  • 案件ごとの契約形態は記録して、提案前に確認する。チョータツで案件情報をまとめると確認しやすい

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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