派遣会社の利益の仕組み|派遣料金の内訳と、同じ単価でもSESと粗利が変わる3つの理由を計算例で解説

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

派遣会社の利益はどこから生まれる?

派遣会社の利益は、派遣先から受け取る派遣料金と、派遣社員に払う費用の差から生まれます。派遣会社は派遣社員を雇い、派遣先で働いてもらい、その時間分の料金を受け取ります。

労働者派遣とは、派遣会社が雇った人を、派遣先の指揮命令の下で働かせることです。雇うのは派遣会社、仕事の指示を出すのは派遣先という形です。

派遣会社のお金の流れは、次の4段階で考えるとわかりやすくなります。

  1. 派遣料金:派遣先から受け取る売上(時間単価×働いた時間が多い)

  2. 賃金:派遣社員に払う給料

  3. 社会保険料・有給の費用:会社が負担する保険料と、休んだ日に払う給料

  4. 販管費:営業担当・事務担当の人件費、求人広告、教育訓練、事務所の費用など

1から2と3を引いたものが粗利、さらに4を引いたものが営業利益です。粗利とは、売上から、その売上を作るために直接かかった費用を引いた額のことです。

派遣料金の内訳:厚生労働省のデータで見る

公的なデータで確認できるのは、派遣料金と賃金の平均までです。厚生労働省は、派遣会社から毎年出される事業報告をまとめて公表しています。

令和6年度の集計(2026年3月31日公表)の数字は次のとおりです。

区分(8時間あたり)派遣料金の平均賃金の平均差の割合
全業務26,257円16,735円約36%
情報処理・通信技術者34,382円21,032円約39%

※ 差の割合は「(料金−賃金)÷料金」で当メディアが計算しました。

同じ集計では、派遣事業の年間売上高の合計は9兆9,005億円、実績のある事業所は33,207所でした。派遣は、それだけ大きな市場です。

「差の割合」はマージン率であって利益率ではない

マージン率とは、派遣料金と賃金の差が、料金に占める割合のことです。労働者派遣法第23条第5項により、派遣会社はこの割合などを公開する義務があります。

マージン率の中には、社会保険料の会社負担、有給の費用、営業や事務の人件費がすべて入っています。そのため、マージン率が約39%でも、営業利益率はそれよりずっと低くなります。取引先から「派遣会社は4割も取っている」と言われたときは、この違いを説明しましょう。

派遣単価の決め方とマージン率の計算は、派遣単価の相場と決め方|マージン率の計算方法と内訳でくわしく解説しています。

計算例:月60万円の単価で、派遣とSESの粗利を比べる

同じ単価でも、派遣とSESでは粗利が変わります。ここでは、同じエンジニアを同じ金額で出した場合を比べます。

計算の前提(当メディアが置いた例の数字)

  • 所定の働く時間:月160時間

  • 派遣の料金:時間単価3,750円(160時間で60万円)

  • SESの単価:月60万円、精算幅140〜180時間

  • エンジニアの給料:月給368,000円(時給にすると2,300円)

  • 社会保険料の会社負担:給料の15%として計算(実際の率は加入する保険で変わります)

  • 有給休暇:年10日取得(月にならすと約6.7時間)

精算幅とは、SESで「この時間の範囲なら月額はそのまま」と決めた稼働時間の幅のことです。

有給を取った月の比較

項目派遣SES(準委任)
売上575,000円600,000円
給料(有給分を含む)368,000円368,000円
社会保険料の会社負担55,200円55,200円
粗利(粗利率)151,800円(約26%)176,800円(約29%)

派遣は、働いた時間分だけ請求するのが一般的です。有給で休んだ約6.7時間は請求できないのに、給料は払います。

SESでは、有給で休んでも153時間ほどで、精算幅の140時間を下回りません。そのため、月額60万円をそのまま請求できます。この差が、月25,000円ほどの粗利の差になります。

残業が多い月の比較(月190時間働いた場合)

残業が多い月は、逆にSESの方が不利になることがあります。ここでは、所定を超えた30時間をすべて割増1.25倍の残業として計算します。

項目派遣(残業料金を1.25倍と契約)SES(超過単価は月額÷180時間)
増える売上140,625円33,333円
増える残業代86,250円86,250円
粗利の増減約54,000円増える約53,000円減る

※ 社会保険料の増減は、計算を簡単にするため入れていません。

派遣で「残業時の料金は1.25倍」と契約していれば、残業代を料金で回収できます。SESでは、精算幅の上限180時間までは月額のままです。超えた10時間分しか追加で請求できません。

同じ単価でも派遣とSESで粗利が変わる3つの理由

粗利に差が出る理由は、請求の単位、BPの使い方、賃金の決まり方の3つです。

理由派遣SES(準委任)
請求の単位時間単価×働いた時間が多い月額+精算幅が多い
他社の人材(BP)派遣先から別の会社へ派遣し直すことはできない再委託を認める契約なら、BPの人材で提案できる
賃金の決まり方派遣先の社員との均衡か、労使協定の水準以上にする必要がある法律上の特別な水準はない(最低賃金などは守る)

理由1:請求の単位が違う

有給や祝日で働く時間が減った月は、精算幅の中に収まればSESの方が売上が安定します。残業が多い月は、残業代を料金で回収しやすい派遣の方が有利です。自社の現場が「休みが多いか、残業が多いか」で、どちらが得かが変わります。

理由2:BPの人材を使えるかどうか

SESでは、再委託を認める契約であれば、BP(取引先の会社)の人材を提案できます。自社で雇っていない人でも粗利が取れるので、社員が少なくても売上を増やせます。

派遣では、派遣先が受け入れた人をさらに別の会社へ派遣する「二重派遣」が禁止されています。人を出すには、自社で雇うことが前提です。

理由3:派遣は賃金の水準に決まりがある

派遣社員の賃金は、「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」で決める必要があります。労使協定方式とは、社員の代表と協定を結び、国が示す一般的な賃金の水準以上を払う方式のことです。

この決まりがあるため、派遣では賃金を下げて粗利を増やすことができません。そのぶん、料金の交渉が利益を決めます。

派遣会社の営業利益率はなぜ低くなりやすい?

営業利益率は、粗利から販管費を引いたあとに残る割合です。営業利益率とは、売上に対する営業利益の割合のことです。派遣会社は、粗利の中から次の費用を出す必要があります。

  • 営業担当・コーディネーターの人件費

  • 求人広告など、派遣社員を集める費用

  • 法律で決まった教育訓練やキャリア相談の費用

  • 許可の更新、毎年の事業報告など、事業を続けるための事務

たとえば粗利151,800円の派遣で、1人あたり月5万円の販管費がかかると、営業利益は101,800円です。売上575,000円に対して約18%です。ここから待機している人の給料や、採用が決まらなかった月の広告費も引かれます。

公的な統計に「派遣会社の営業利益率の平均」はありません。上場している派遣・SES企業の数字は、SES上場企業の決算・営業利益率の比較で確認できます。SES企業の営業利益率については、SESの営業利益率の平均と、利益が出ない原因5つも参考にしてください。

派遣とSES、事業形態を選ぶ手順

事業形態は、まず法律の条件、次に粗利の順で決めます。粗利が高いほうを選ぶのではなく、現場の働き方に合う形を選びましょう。

  1. 指揮命令の有無を確かめる:客先の社員が作業の指示を直接出すなら、準委任ではなく派遣が必要です。

  2. 派遣の許可があるか確かめる:派遣を行うには厚生労働大臣の許可が要ります。許可がなければ、派遣の形では受けられません。

  3. 現場の働き方を聞く:月の残業時間の目安、休みの多い時期、リモートの有無を確かめます。

  4. 両方の形で粗利を計算する:有給の月、残業の多い月の2パターンで比べます。

  5. 人の出し方を決める:自社の社員で出すか、BPの人材も使うかを決めます。BPを使うならSESの形になります。

  6. 契約条件に反映する:SESなら精算幅と超過単価、派遣なら残業時の料金の割増を契約書に入れます。

手順1で迷う場合は、SES会社は派遣許可を取るべき?判断の目安6つと手順で確認できます。許可の条件は労働者派遣事業の許可要件にまとめています。

やってはいけないこと

  • 粗利を上げるために、派遣の現場をSESの契約にする:指揮命令があれば偽装請負になります。

  • 精算幅の上限を広げすぎる:残業が多い現場では、超過分の請求が少なくなり粗利が減ります。

  • マージン率を利益率として話す:取引先にも社内にも誤解を生みます。

取引先に「派遣会社の利益」を聞かれたときの説明例

取引先から「中間マージンが高い」と言われたら、料金の中に何が入っているかを具体的に伝えます。数字を示すと、感情的な交渉になりにくくなります。

弊社の単価には、エンジニアの給料のほかに、社会保険料の会社負担、有給休暇の費用、教育や営業・管理の費用が含まれています。
厚生労働省の集計でも、エンジニアの派遣料金と賃金の差は約4割ですが、この中に同じ費用が入っています。
弊社の手元に残る利益は、その一部です。

社内で数字を見せて説明できるよう、1人あたりの内訳を用意しておくと話が早くなります。月60万円の自社社員の例です。

内訳金額単価に対する割合
エンジニアの給料368,000円約61%
社会保険料の会社負担55,200円約9%
営業・管理・教育の費用(例)50,000円約8%
会社に残る利益126,800円約21%

表の数字は、計算例の前提をもとにした例です。取引先に見せるときは、自社の実際の数字に置き換えてください。

説明のあとに単価交渉をするときは、SESの単価交渉のタイミングとメール例文が使えます。

自分でできる粗利の管理と、チョータツで楽にする方法

派遣でもSESでも、利益を守る基本は案件ごとの粗利を毎月見ることと、待機を減らすことです。自分でやるなら、次の手順で始められます。

  1. Excelに、案件名・契約形態・単価・精算幅・担当エンジニアを1行ずつ書く

  2. 毎月の稼働時間と給料・社会保険料を入れ、案件ごとの粗利を出す

  3. 粗利率が低い案件と、契約終了が近いエンジニアに印を付ける

  4. 契約終了が近い人の次の案件を、終了の1〜2か月前から探し始める

案件別の粗利の出し方は、SESの収支管理の方法|案件別粗利の計算と原価に入れる費用一覧で解説しています。

次の案件探しと情報共有を楽にするなら

案件と人材の情報が営業担当ごとのExcelやメールに散らばると、次の案件探しが遅れて待機が増えます。待機は、そのまま粗利を削ります。

チョータツを使うと、次のことができます。

  • 案件・人材の情報を管理し、チームで共有できる

  • パートナーへのメール配信機能で、人材情報をまとめて送れる

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベースとして見られる

  • 入力をAIが手伝う

契約終了が近いエンジニアがいるときに、連携先の営業中案件から次の現場を探せます。案件ごとの単価や契約形態も同じ場所で管理できるので、粗利の確認もしやすくなります。

よくある質問

Q. 派遣会社はどうやって利益を出しているのですか?
派遣先から受け取る料金と、派遣社員の給料・社会保険料・有給の費用との差で利益を出しています。そこから営業や管理の費用を引いた残りが営業利益です。
Q. 人材派遣業の利益率はどれくらいですか?
公的な統計で出ているのは、料金と賃金の差(マージン率)までです。令和6年度の集計では、エンジニアの派遣で約39%でした。社会保険料や販管費を引くため、営業利益率はこれよりずっと低くなります。
Q. 派遣会社の営業利益率の平均はわかりますか?
国の統計には、派遣会社全体の営業利益率の平均はありません。上場企業なら決算資料で確認できます。
Q. 同じ単価なら、派遣とSESのどちらがもうかりますか?
現場の働き方しだいです。有給や祝日が多い月は精算幅のあるSESが有利です。残業が多い現場では、残業料金を割増で請求できる派遣が有利です。
Q. マージン率はどこで確認できますか?
派遣会社は自社サイトなどで公開しています。厚生労働省の「人材サービス総合サイト」でも確認できます。
Q. SESにもマージン率の公開義務はありますか?
労働者派遣法の公開義務は派遣事業が対象で、準委任のSESにはありません。説明の仕方はSESの単価に開示義務はある?を参考にしてください。

まとめ

  • 派遣会社の利益は、派遣料金から賃金・社会保険料・有給の費用を引き、さらに販管費を引いた残り

  • 厚生労働省の令和6年度の集計では、エンジニアの派遣料金34,382円に対し賃金21,032円(8時間あたり)

  • マージン率約39%は利益率ではない。取引先への説明では、中に入っている費用を示す

  • 同じ月60万円でも、計算例ではSESの粗利率約29%、派遣約26%。有給の月はSES、残業の多い月は派遣が有利

  • 事業形態は、指揮命令の有無と許可で先に決め、そのあと粗利を比べる

  • 利益を守る基本は、案件別の粗利の管理と、待機を減らすこと

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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