SESの単価に開示義務はある?派遣のマージン率公開義務との違いと、エンジニア・取引先に聞かれたときの答え方の例

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESの単価に開示義務はある?

準委任契約のSESには、お客さんから受け取る単価をエンジニアに伝える法律上の義務はありません。単価の開示を義務づけているのは、労働者派遣法の対象になる派遣事業です。

SESとは、エンジニアの技術や労働力を、主に準委任契約でお客さんに提供する働き方のことです。準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた作業を行うこと自体を約束する契約のことです(民法第656条)。

一方、労働者派遣とは、自社が雇う労働者を、派遣先の指揮命令を受けて働かせることです(労働者派遣法第2条第1号)。派遣には、料金やマージン率を知らせるルールがあります。SESは派遣ではないため、同じルールはかかりません。

ただし、現場で客先がエンジニアに直接指示をしているなら話は別です。実態が派遣と判断されると、偽装請負として労働者派遣法の問題になります。契約の違いはSESと派遣の違い|準委任・派遣・請負の比較表と確認5項目で確認してください。

派遣のマージン率の公開義務とは?

派遣会社には、事業所ごとのマージン率などを、インターネットなどで情報提供する義務があります。根拠は、労働者派遣法第23条第5項と、同法施行規則第18条の2です。

マージン率とは、派遣料金の平均額から、派遣労働者の賃金の平均額を引き、派遣料金の平均額で割った割合のことです。法律で決められた計算式は次のとおりです。

マージン率 =(派遣料金の平均額 − 賃金の平均額)÷ 派遣料金の平均額

情報提供しなければならない項目は、次のとおりです。

項目根拠
派遣労働者の数、派遣先の数法第23条第5項
マージン率(前事業年度・事業所ごと)法第23条第5項、規則第18条の2第2項
派遣料金の平均額、賃金の平均額規則第18条の2第3項
労使協定を結んでいるか、結んでいる場合は対象になる派遣労働者の範囲と協定の有効期間の終わり規則第18条の2第3項
教育訓練に関すること法第23条第5項

施行規則では、提供の方法を「インターネットの利用その他の適切な方法」と定めています。多くの派遣会社は、自社サイトや厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で公開しています。調べ方は派遣会社のマージン率の調べ方|厚生労働省のサイトで確認する手順で解説しています。

派遣では、本人に派遣料金を伝える義務もある

派遣会社は、派遣労働者本人に、その人の派遣料金の額を明示する義務もあります。労働者派遣法第34条の2で決められています。

明示が必要なのは、次の3つの場面です。

  1. 労働者を派遣労働者として雇い入れようとするとき

  2. 労働者派遣をしようとするとき

  3. 派遣料金の額を変更するとき

明示する額は、その人の派遣料金の額か、事業所の派遣料金の平均額のどちらかです(施行規則第26条の3)。つまり派遣でも、必ず本人の料金そのものを伝えなければならないわけではありません。

SESと派遣の「単価の開示」の違い

単価の開示について、SESと派遣の違いをまとめると次のとおりです。

項目派遣SES(準委任)
マージン率の情報提供義務あり(法第23条第5項)義務なし
本人への料金の明示義務あり(法第34条の2)。本人の料金か事業所の平均額義務なし
マージン率の上限法律の上限なし法律の上限なし
指揮命令する人派遣先自社(SES企業)

派遣とSESの両方を行っている会社は、派遣事業の分だけ情報提供の義務がある点に注意します。SESの契約で入っているエンジニアの単価まで公開する義務はありません。

マージン率の平均や計算方法はSESのマージン率の平均と相場|計算式・適正ライン・説明例文付きでくわしく解説しています。

SESでも伝える義務がある3つのこと

SESでも、相手との契約で自社が払う金額は、法律で伝える義務があります。義務がないのは、お客さんから受け取る単価の方です。

ここでいうBPとは、ビジネスパートナーの略で、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。

相手伝える義務があること根拠
自社で雇うエンジニア賃金・労働時間などの労働条件労働基準法第15条
個人のフリーランス業務の内容・報酬の額・支払期日などフリーランス法第3条
BP(取適法の対象取引)業務の内容・代金の額・支払期日など取適法第4条

フリーランス法とは、従業員を使わない個人などに仕事を頼むときのルールを定めた法律のことです。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。取適法とは、発注側の会社が受注側の中小企業に不当な扱いをしないよう定めた法律のことです。下請法を改正・改名したもので、2026年1月1日に施行されました。

たとえば、フリーランスのエンジニアに「月60万円」で仕事を頼むなら、その60万円は書面かメールで伝える義務があります。一方、お客さんから75万円を受け取っていることまで伝える義務はありません。

フリーランスへの明示のしかたはフリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール記載例で紹介しています。

単価を開示する前に確かめること

単価をエンジニアに伝える前に、お客さんとの契約の秘密保持条項を確かめます。秘密保持条項とは、取引で知った情報を第三者に漏らさない約束を定めた条項のことです。

秘密保持の対象に「取引条件」や「契約金額」が含まれていると、単価を伝えることが約束違反になるおそれがあります。自社の社員は取引の当事者ではないため、どこまで伝えてよいかは契約の書き方しだいです。

確かめたいのは、次の4点です。

  1. お客さんとの基本契約・個別契約の秘密保持条項に、契約金額が含まれるか

  2. 自社の社員に伝えることを、条項が認めているか(「役員・従業員への開示は可」など)

  3. BPのエンジニアの場合、自社の単価を伝えることでBPとの関係に問題がないか

  4. 伝えた単価が、エンジニアから別の会社に広がったときに困ることはないか

単価や案件の条件が外に広がったときの動き方は、SESの案件情報を無断で転送・再配信されたら|対応と防ぐルールで解説しています。

契約書の読み方はSESの秘密保持契約(NDA)ひな形|BPと結ぶ条項と注意点8つを参考にしてください。

単価を開示するかの社内ルールの決め方

単価を伝えるかどうかは、担当者ごとに判断させず、会社のルールとして決めるのが一番大切です。担当者によって答えが違うと、「あの人には教えたのに」という不満が生まれます。

編集部では、次の3つのパターンから選び、就業規則や社内の手引きに書いておくことをおすすめします。

パターン伝える内容向いている会社
全面開示本人の単価と還元率高還元を強みにして採用している会社
還元率のみ開示還元率の考え方と内訳秘密保持の約束で単価を出せない会社
求められたら開示本人が聞いたときだけ、面談で単価を伝えるまず一部の社員から試したい会社

還元率とは、単価のうちエンジニアの給与として払う割合のことです。単価を伝えない場合でも、還元率の考え方と、会社に残る分の使い道は説明できるようにしておきます。

高還元をうたうSESの仕組みは高還元SESのビジネスモデルと利益で解説しています。

エンジニアや取引先に単価を聞かれたときの答え方の例

単価を聞かれたら、「伝えられる範囲」「還元の考え方」「単価を上げる次の行動」の3点で答えます。「言えません」だけで終えると、隠していると受け取られます。

例1:自社のエンジニアに聞かれた(単価を伝えるルールの会社)

〇〇さんの今の単価は月70万円です。そのうち給与として払っているのは約65%です。残りは、会社が負担する社会保険料や待機中の給与、営業や管理の費用に使っています。2027年1月の契約更新では、担当範囲が広がった分の単価アップをお客さんに相談します。

例2:自社のエンジニアに聞かれた(単価を伝えないルールの会社)

お客さんとの契約で、契約金額は外に出さない約束になっているため、金額そのものはお伝えできません。弊社では、単価の約65%を給与としてお返しする方針です。次の評価面談で、単価アップに向けてどんな経験を積むか一緒に決めましょう。

例3:BPのエンジニア本人から聞かれた

〇〇さんのご契約は、所属されている△△社さんとの間で結んでいます。単価や給与のことは、△△社さんの担当の方にご確認いただけますか。私からも、〇〇さんから質問があったことを△△社さんにお伝えしておきます。

BPのエンジニアに直接単価を伝えると、BPを飛ばして直接契約を持ちかけていると誤解されることがあります。BPの社員の条件は、BPの担当者を通して話すのが基本です。

例4:BPの担当者から「上でいくらですか」と聞かれた

お客さんとの約束で、上位の単価はお伝えできません。弊社の取り分は月5万円で、商流はエンド→元請け→弊社→御社の順です。取り分は今後も同じ条件でお約束します。

BPには自社の取り分と商流の位置を伝えると、次の人材も優先して回してもらいやすくなります。

チョータツで相場を見ながら単価を説明する

単価を聞かれたエンジニアが本当に知りたいのは、多くの場合「自分の単価は相場より低くないか」です。同じスキルの案件の単価を示せれば、単価を伝えないルールの会社でも、納得してもらいやすくなります。

自分で相場を集める場合、パートナーから届く案件メールを読み、単価を表に書き写す作業が必要です。チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有するツールのことです。3,000社以上が利用し、無料で始められます。

やること自分でやる場合チョータツを使う場合
同じスキルの案件の単価を知る届いたメールを読んでExcelに転記連携した会社の営業中案件がデータベースになる
単価アップにつながる案件を探すBPへの問い合わせを重ねる連携先の営業中案件から条件の良い案件を探せる
自社の案件・人材を整理する担当者ごとにばらばら1か所で管理・共有でき、AIが入力を手伝う

相場より高い案件が見つかれば、「次はこの案件を目指そう」という前向きな話に変えられます。単価の相場の調べ方はSESの単価相場|職種別の月額目安と公的データの使い方でも紹介しています。

よくある質問

Q. SESの単価をエンジニアに教えないのは違法ですか?
違法ではありません。準委任契約のSESには、お客さんから受け取る単価を伝える法律上の義務はありません。ただし、雇っている社員には賃金などの労働条件を明示する義務があります(労働基準法第15条)。
Q. 派遣のマージン率の公開は義務ですか?
義務です。労働者派遣法第23条第5項で、派遣会社は事業所ごとのマージン率などを、インターネットなどで情報提供しなければなりません。
Q. エンジニアに単価を伝えたら、秘密保持違反になりますか?
お客さんとの契約しだいです。秘密保持条項に契約金額が含まれ、社員への開示が認められていなければ、違反になるおそれがあります。伝える前に契約書を確認しましょう。
Q. 取引先のBPに、上位の単価を聞かれたら答えるべきですか?
答える義務はありません。お客さんとの約束に反しない範囲で、自社の取り分と商流の位置を伝えると信頼を得やすくなります。
Q. フリーランスのエンジニアには単価を伝える必要がありますか?
自社が払う報酬の額は、フリーランス法第3条で明示する義務があります。お客さんから受け取る単価まで伝える義務はありません。

まとめ

  • 準委任契約のSESには、お客さんから受け取る単価をエンジニアに伝える法律上の義務はない

  • 派遣会社には、マージン率などの情報提供(法第23条第5項)と、本人への派遣料金の明示(法第34条の2)の義務がある

  • SESでも、社員には賃金、フリーランスには報酬の額、BPには代金を示す義務がある

  • 単価を伝える前に、お客さんとの契約の秘密保持条項を確かめる

  • 単価を伝えるかは、担当者任せにせず、社内ルールとして決めておく

  • 聞かれたら「伝えられる範囲」「還元の考え方」「単価を上げる次の行動」の3点で答える

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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