システム保守費用の相場と月額の決め方|SES営業が運用保守を準委任で提案する手順と提案書10項目

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

システム保守費用とは?運用と保守の違い

システム保守費用とは、完成したシステムを使い続けるために、毎月または毎年払う費用のことです。 開発が終わったあとも、不具合の修正や部品の更新が必要になるためです。見積もりでは、保守と運用をまとめて「運用保守」と呼ぶことがよくあります。

保守と運用は、やることが違います。保守とは、システムそのものを直したり更新したりする作業のことです。 運用とは、システムを止めずに毎日動かすための作業のことです。

区分主な作業必要なスキル費用の決まり方
保守不具合の修正、OSやミドルウェアの更新、小さな改修開発・設計の力対応量や体制で変わる
運用監視、バックアップ、定型作業、問い合わせ対応手順どおりに動く力時間帯と人数で決まりやすい
保守開発機能追加など、やや大きめの改修開発の力別見積もりにすることが多い

保守と保守開発の境目は、案件ごとに違います。詳しくは「保守開発とは?運用保守との違いと案件の特徴、SES営業の提案術」で解説しています。SES営業は、見積もりの前にどこまでを月額に含めるかを必ず確認します。

市販ソフトの「保守料」とは別物

「ソフトウェア保守費」で調べると、市販ソフトの保守料も出てきます。市販ソフトの保守料とは、メーカーが決めた料金で、更新版の提供や問い合わせ窓口を使う権利の代金のことです。 金額はメーカーごとの料金表で決まります。

SES営業が見積もるのは、こちらではありません。人が動いて行う運用保守の作業の費用です。提案書では、ライセンスの保守料と人の作業費を分けて書くと、発注側が混乱しません。

発注側は保守費用の相場をどう見ている?3つの見方

発注側は、保守費用を「開発費に対する割合」「体制×単価」「対応量」の3つで見ています。 どれか1つだけでなく、2つ以上で見比べて高い・安いを判断します。営業は、この3つのどれで聞かれても答えられるようにしておきます。

見方計算のしかた発注側のねらい弱いところ
開発費に対する割合年間保守費 ÷ 開発費ざっくり予算を取る作業の中身がわからない
体制×単価人月 × 単価何人分の費用か確かめる作業量が少ない月も同じ額
対応量件数や時間 × 単価使った分だけ払う月ごとに金額がぶれる

見方1:開発費に対する割合

保守費率とは、1年間の保守費用が、開発費の何%にあたるかを表した数字のことです。 予算を早く決めたい発注側がよく使います。ネット上でも「開発費の何%」という目安がよく紹介されます。

ただし、この%は公的な統計で決まったものではありません。システムの大きさや、夜間対応の有無で大きく変わります。SES営業は、%の目安に合わせて見積もるのではなく、自分の見積もりが何%になるかを計算して説明に使うのがおすすめです。

計算例です。開発費3,000万円のシステムで、保守を月40万円で受けるとします。年間の保守費は40万円×12か月で480万円です。保守費率は 480万円 ÷ 3,000万円 = 16% になります。

見方2:体制×単価(人月ベース)

人月とは、1人が1か月フルに働く作業量を「1」とする単位のことです。 保守費を「何人月分か」で見ると、発注側は中身を確認しやすくなります。SESの見積もりと相性がよい見方です。人月の考え方は「人月単価とは?計算方法と工数単価との違い」で詳しく解説しています。

たとえば「SE 1名が週2日、客先に常駐する」なら、およそ0.4人月です。単価75万円なら月30万円になります。人数と日数が見えるので、発注側が上司に説明しやすくなります。

見方3:対応量(チケット・時間ベース)

対応量ベースとは、問い合わせや修正の件数・時間に応じて払う方式のことです。 作業が少ない月は安くなるので、発注側には魅力があります。一方で、SES会社は人を確保し続けにくくなります。

そのため実務では、「基本の月額(体制分)+超えた分の従量」の組み合わせがよく使われます。基本の月額で人を確保し、大きな障害の月だけ追加で払う形です。

SESで運用保守を受けるときの契約形態

SESで運用保守を受けるときは、準委任契約にするのが一般的です。 保守は「何を完成させるか」を先に決めにくい仕事だからです。準委任と請負の違いは「準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シート」で詳しく解説しています。

準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決めた作業を注意深く行うことに対して報酬を払う契約のことです。 民法では、法律行為ではない事務を任せる契約として定められています(第656条)。請負契約とは、仕事の完成に対して報酬を払う契約のことです(民法第632条)。

項目準委任(SESでよく使う)請負
報酬の対象作業そのもの(稼働)完成した成果物
向いている保守常駐・問い合わせ対応・障害対応範囲が決まった改修
月額の決め方人月 × 単価(精算幅つき)作業ごとの固定金額
営業の注意点客先が直接指示しない体制にする完成責任と追加費用の線引き

IPA(情報処理推進機構)は、開発と保守運用の契約の考え方を「情報システム・モデル取引・契約書」にまとめています。発注側の法務がこの資料を参考にすることもあります。契約書を出す前に、目を通しておくと話が早くなります。

常駐保守で気をつけたい指揮命令

準委任の常駐保守では、客先の社員がエンジニアに直接作業を指示してはいけません。 直接指示すると、実態が労働者派遣とみなされるおそれがあるためです。いわゆる偽装請負の問題です。

対策は、SES会社側に保守チームのリーダーや窓口を置くことです。客先からの依頼は窓口が受け、チームに割り振ります。1名だけの常駐でも、依頼の受け方を提案書に書いておくと安心です。

運用保守の体制パターンと人月の目安

運用保守の月額は、体制の組み方でほぼ決まります。 同じシステムでも、常駐かリモートかで人月が2倍以上変わることがあります。まず発注側の希望を聞き、3つのパターンから選んでもらいます。

一部常駐とは、週のうち決まった日だけ客先で働き、残りは自社やリモートで対応する体制のことです。

体制働き方の例人月の目安向いている客先
フル常駐1名が平日毎日、客先で作業1.0人月 / 名利用者が多く、問い合わせが毎日ある
一部常駐週2〜3日だけ客先、他はリモート0.4〜0.6人月 / 名定例作業と打ち合わせがある
リモート待機連絡があれば対応、月の上限時間を決める0.1〜0.3人月 / 名障害が少なく、安定しているシステム

人月の目安は、1人月を月160時間として換算した計算上の数字です。週2日(1日8時間)なら月64時間前後で、約0.4人月になります。実際の時間は、客先の営業日と精算条件で決めます。

夜間・休日対応は別に決める

夜間・休日の障害対応は、平日の月額とは分けて決めます。 待機しているだけでも、エンジニアの時間を拘束するためです。「待機手当を月額で」「出動したら1時間いくら」のように2段にすると、発注側も納得しやすくなります。

待機を約束するなら、自社やBPのエンジニアが本当に対応できるかを先に確認します。できない約束を書くと、あとでトラブルになります。待機手当と出動単価の決め方は、オンコール対応の単価の決め方|SESの夜間・休日対応の契約で詳しく解説しています。

SES営業が運用保守の月額を出す手順5ステップ

運用保守の月額は、「作業の洗い出し → 人月 → 仕入れ単価 → 提案単価 → 月額」の順で出します。 割合から逆算するより、根拠を説明しやすいからです。次の5ステップで進めます。

  1. 作業を洗い出す:客先に、今の作業を月の時間つきで出してもらいます。例は「監視確認 月10時間」です。

  2. 体制を決める:合計時間を人月に直し、フル常駐・一部常駐・リモート待機のどれにするか決めます。

  3. 仕入れ単価を確認する:自社社員の原価、またはBPの仕入れ単価を確認します。保守の経験者は単価が上がることがあります。

  4. 提案単価を出す:「仕入れ単価 ÷(1 − 粗利率)」で最低ラインを出し、相場の幅に収まるかを見ます。

  5. 月額と精算条件を決める:「人月 × 提案単価」で月額を出し、精算幅や超過時の扱いを決めます。

提案単価の出し方は「SESの提案単価の決め方|仕入れ単価から逆算する計算式と5つの要素」で解説しています。週2〜3日の稼働を月額にする計算は、SESの週3・週4案件の単価の計算|精算幅と契約書の書き方も参考になります。

計算例:一部常駐+リモート対応で月額を出す

ある客先の社内システムで、次の作業があるとします。数字はこの記事の計算例として置いたものです。

  • 定例作業と打ち合わせ(客先で行う):月64時間 → 週2日の一部常駐

  • 問い合わせ・軽い不具合対応(リモート):月32時間

  • 合計:月96時間 ÷ 160時間 = 0.6人月

BPのSEの仕入れ単価が月60万円で、粗利率15%をほしいとします。提案単価の最低ラインは 60万円 ÷(1 − 0.15)= 約70.6万円です。切り上げて提案単価71万円とします。

月額は 0.6人月 × 71万円 = 42.6万円 です。年間では約511万円になります。この客先の開発費が3,000万円なら、保守費率は約17%です。発注側に「割合で言うと17%程度です」と一言そえると、予算と比べてもらいやすくなります。

精算幅は「時間の上下」で決める

精算幅とは、月の作業時間が決めた範囲を外れたときに、報酬を増やしたり減らしたりする範囲のことです。 0.6人月の体制なら「月86〜106時間」のように、体制に合わせた幅を決めます。常駐日の多い体制ほど、フル常駐の「140〜180時間」に近い考え方になります。

保守は、障害のある月とない月で作業時間が大きく変わります。発注側が「毎月同じ額にしたい」と言う場合は、固定精算(時間で増減しない)にして、上限時間だけ決める方法もあります。

運用保守の提案書に入れる10項目

運用保守の提案書は、「何を・誰が・いつ・いくらで・どう報告するか」がわかれば合格です。 発注側は提案書を社内の稟議(上司の承認)に使います。次の10項目がそろっていると、社内説明の手間が減り、決まりやすくなります。

#項目書く内容の例抜けると起きること
1対象システムシステム名、利用者数、動いている環境範囲外の依頼が来る
2業務範囲やる作業とやらない作業の一覧「それも保守でしょ」と言われる
3体制と役割人数、窓口担当、リーダー、スキル直接指示が起きやすい
4稼働条件常駐日、対応時間帯、場所期待する対応時間がずれる
5夜間・休日対応待機の有無、出動時の料金無償対応を求められる
6月額と精算人月、単価、精算幅、支払い条件請求時に揉める
7対応の目標連絡から対応開始までの目安時間「遅い」の基準がない
8報告月次報告書の中身と提出日作業が見えず減額を求められる
9引継ぎ計画開始前の引継ぎ期間と費用最初の月に品質が落ちる
10契約期間と更新初回期間、更新の単位、解約の予告急な終了で要員が待機になる

SLAとは、サービスの品質の目標を、発注側と受注側で数字で合意したもののことです。 「障害の連絡から1時間以内に対応を始める」のように書きます。準委任で受ける場合は、保証ではなく目標として書き、達成できなかったときの扱いも決めておきます。

要員提案書そのものの書き方は「要員提案書のサンプルと書き方|SES営業が押さえる項目7つ」で解説しています。

提案書の「体制と月額」の書き方例

提案書の中心になる部分の例文です。数字は自社の見積もりに置きかえて使ってください。

ご提案体制と費用
・体制:SE 1名(週2日 貴社常駐、他はリモート対応)+当社窓口担当 1名
・作業時間:月96時間(0.6人月)を想定。精算幅は月86〜106時間
・月額:426,000円(税抜)。精算幅を外れた場合は1時間あたり4,440円で精算
・夜間・休日:待機は含みません。障害時の出動は別途お見積もりします
・開始日:2026年12月1日(火)。開始前の11月に2週間の引継ぎ期間を設けます

精算の時間単価は、月額 ÷ 精算幅の中央値(96時間)で出しています。426,000円 ÷ 96時間 = 約4,437円を、切り上げて4,440円にした例です。割り方(上下割・中間割)は客先と事前に決めてください。

保守費用の見積もりで営業がやってはいけないこと

やってはいけないのは、「割合だけで金額を出す」「範囲を決めずに安く出す」の2つです。 どちらも、受注したあとに赤字やトラブルになりやすいからです。よくある失敗を、次にまとめます。

  • 割合だけで出す:「開発費の○%です」だけでは、何人が何をするか説明できません。減額を求められたとき、下げられる根拠もありません。

  • 範囲を決めずに安く出す:業務範囲を書かないと、機能追加まで保守の中で求められます。保守開発は別見積もりと明記します。

  • 待機を無料で約束する:夜間待機はエンジニアの負担です。無料にすると、エンジニアが離れる原因になります。

  • 引継ぎ費用を入れない:前の会社からの引継ぎには時間がかかります。最初の1か月は、生産性が落ちる前提で計画します。

  • 1名に頼りきる:保守は属人化しやすい仕事です。休んだときの代わりを、提案の段階で決めておきます。

チョータツで保守要員の確保と条件管理を楽にする

運用保守の提案で一番時間がかかるのは、条件に合う要員を早く集めることです。 保守では「このミドルウェアの経験者」「週2日だけ常駐できる人」など、条件が細かくなります。自社だけで探すと、提案が遅れがちです。

自分でやる場合は、BPに人材提案の依頼メールを送り、届いた人材メールをExcelなどにまとめます。そのうえで、スキルと稼働条件が合う人を探します。

もっと楽にするなら、チョータツが使えます。チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。他社と連携すると、他社の営業中人材をデータベース化できるので、保守要員の候補を探しやすくなります。

  • 人材の情報をまとめて管理し、スキルや条件で見比べられます

  • パートナーへのメール配信機能で、保守案件の募集を一度に届けられます

  • 案件ごとに体制・単価・精算条件を残せるので、更新時の見直しが早くなります

  • AIが入力を手伝い、3,000社以上が利用しています。無料で始められます

よくある質問

Q. システム保守費用は開発費の何%が相場ですか?
公的に決まった%はありません。システムの大きさや夜間対応の有無で変わります。SES営業は人月×単価で月額を出し、年間額が開発費の何%かを計算して説明に使うのがおすすめです。
Q. 運用保守は準委任と請負のどちらで契約しますか?
SESでは準委任で受けるのが一般的です。保守は完成させる物を先に決めにくいためです。範囲がはっきりした改修だけを、請負で別に受けることはあります。
Q. システム保守料の月額はどう決めますか?
作業を時間で洗い出し、人月に直して提案単価をかけます。たとえば0.6人月で提案単価71万円なら、月額は42.6万円です。精算幅と超過時の単価も一緒に決めます。
Q. 常駐しない運用保守でもSESで受けられますか?
受けられます。一部常駐やリモート待機の体制にし、月の上限時間を決めて契約します。客先が直接指示しないよう、窓口担当を置くことが大切です。
Q. 保守費を下げてほしいと言われたらどうしますか?
単価ではなく、まず範囲や体制で調整します。常駐日を減らす、対応時間帯を平日日中に絞るなどです。

まとめ

  • システム保守費用に公的な%の相場はなく、発注側は割合・体制×単価・対応量の3つで判断する

  • SES営業は「作業の洗い出し → 人月 → 仕入れ単価 → 提案単価 → 月額」の順で月額を出す

  • 運用保守は準委任で受けるのが一般的で、常駐保守では窓口を置いて直接指示を防ぐ

  • 夜間・休日対応、引継ぎ、保守開発は月額と分けて決める

  • 提案書は10項目をそろえ、発注側が稟議に使える形にする

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)