SESの提案単価の決め方|仕入れ単価から逆算する計算式・早見表と上げ下げの判断基準

公開日:2026年10月1日更新日:2026年10月1日

SESの提案単価とは?仕入れ単価との関係

提案単価とは、SES企業がお客さんに「この要員はこの金額で稼働できます」と示す月額の料金のことです。お客さんは、エンドや上位の会社を指します。一方で仕入れ単価とは、自社がその要員を確保するために払う月額のことです。BPの要員ならBPへの支払額、自社社員なら人件費などの原価が仕入れ単価にあたります。

BPとは、ビジネスパートナーの略で、案件や人材を紹介しあう取引先の会社のことです。プロパーとは、自社で雇っている社員のことです。

提案単価と仕入れ単価の差が、自社の粗利です。粗利とは、売上から直接の原価を引いた残りのことです。営業の経費や家賃は、この粗利から払います。

用語意味例
提案単価お客さんに出す月額70万円
仕入れ単価要員の確保に払う月額60万円
粗利提案単価 − 仕入れ単価10万円
粗利率粗利 ÷ 提案単価約14.3%

SESの単価は「人月単価」で表すのが一般的です。人月単価とは、1人が1か月働いたときの料金のことです。人月単価の意味と計算は人月単価とは?計算方法と工数単価との違い|SES見積もりの例つきで解説しています。現場では単価を「単金(たんきん)」と呼ぶこともあります。

提案単価を決める5つの要素

提案単価は、仕入れ単価(原価)・必要粗利・相場・商流・精算幅の5つで決まります。前の2つで「下限」を決め、後の3つで「どこまで上げられるか」を決めます。

要素決めること役割
1. 仕入れ単価(原価)要員にかかるお金下限の土台
2. 必要粗利自社が残したい額・率下限の上乗せ分
3. 相場同じ職種・経験の今の単価上げられる幅
4. 商流エンドから何社目か上位の予算の天井
5. 精算幅単価どおり払う時間の範囲実際に入るお金のぶれ

大事なのは順番です。相場から先に決めると、仕入れを払ったら赤字、という事故が起きます。必ず「下限を計算 → 相場で確かめる」の順に進めます。

1. 仕入れ単価(原価)

仕入れ単価は、提案単価の土台です。BP要員なら、BPから提示された単価をそのまま使います。自社社員なら、次のH2で説明するやり方で原価を出します。

2. 必要粗利

必要粗利は、会社として1人あたり残したい金額です。「1人あたり月8万円」のような金額で決める会社と、「粗利率15%」のような率で決める会社があります。単価が高い要員ほど、率で決めると粗利額が大きくなります。

3. 相場

相場は、上げられる幅を決めます。同じ職種・同じ経験年数の要員が、今いくらで決まっているかを見ます。相場の調べ方はSESの単価相場|職種別の月額目安と公的データの使い方でまとめています。

4. 商流

商流とは、エンド(発注元)から要員の所属会社まで、仕事が流れてくる経路のことです。自社より上に会社が多いほど、それぞれの取り分が引かれ、自社に届く予算は小さくなります。

5. 精算幅

精算幅とは、「月140〜180時間」のように、単価どおりに払う稼働時間の範囲のことです。幅の外に出ると控除や超過の精算が起き、実際の売上がぶれます。

仕入れ単価から提案単価を逆算する計算式

提案単価の最低ラインは、「仕入れ単価 ÷(1 − 必要な粗利率)」で出します。粗利を金額で決めている場合は、「仕入れ単価 + 必要な粗利額」です。

計算例(粗利率で決める場合)

  • 仕入れ単価:60万円

  • 必要な粗利率:15%

  • 最低ライン:60万円 ÷(1 − 0.15)= 60万円 ÷ 0.85 = 約70.6万円

提示は1万円か5,000円単位に切り上げるのが一般的です。この例なら71万円以上で提案します。

計算例(粗利額で決める場合)

  • 仕入れ単価:60万円

  • 必要な粗利額:月8万円

  • 最低ライン:60万円 + 8万円 = 68万円(粗利率は約11.8%)

「20%乗せる」と「粗利率20%」の違い

よくある間違いが、仕入れ単価に◯%を掛けて足す計算です。掛けて足す割合は「値入れ率(マークアップ率)」と呼ばれ、粗利率とは違います。

計算のしかた仕入れ60万円のときの提案単価実際の粗利率
60万円 × 1.2(20%乗せ)72万円約16.7%
60万円 ÷ 0.8(粗利率20%)75万円20.0%

差は1人あたり月3万円です。10人なら月30万円、1年で360万円になります。社内の目標が「粗利率◯%」なら、必ず割り算で計算しましょう。粗利率の考え方はSESの粗利率の平均は?利益率の計算式と計算例・上げる方法5つでも解説しています。

提案単価の早見表(仕入れ単価×粗利率)

仕入れ単価と必要な粗利率がわかれば、最低ラインは次の表で読み取れます。金額は万円で、小数第2位を四捨五入しています。

仕入れ単価粗利率10%粗利率15%粗利率20%
40万円44.4万円47.1万円50.0万円
50万円55.6万円58.8万円62.5万円
60万円66.7万円70.6万円75.0万円
70万円77.8万円82.4万円87.5万円
80万円88.9万円94.1万円100.0万円
90万円100.0万円105.9万円112.5万円

表の読み方は3つです。

  1. 仕入れ単価の行を選ぶ

  2. 社内で決めた粗利率の列を選ぶ

  3. 交わったマスの金額を、提示用に1万円単位へ切り上げる

粗利率25%や30%を使う会社は、仕入れ単価を0.75や0.7で割ってください。粗利率の平均的な水準はSESのマージン率の平均と相場|計算式・適正ライン・説明例文付きで、公的データをもとに解説しています。

自社社員(プロパー)の原価の出し方

プロパーの原価は、月の給与に、会社負担の社会保険料と、賞与などの月割りを足して出します。給与だけを原価にすると、提案単価が低くなりすぎます。

原価に入れるものは、主に次の4つです。

項目内容月額の出し方
月の給与基本給・手当そのまま
賞与年に支払う賞与年額 ÷ 12
会社負担の社会保険料厚生年金・健康保険・雇用保険など給与と賞与に料率を掛ける
その他の直接費交通費、貸与PC、資格手当など月あたりに直す

厚生年金の保険料率は18.3%で、会社と本人が半分ずつ負担します。つまり会社負担は給与の9.15%です(日本年金機構「厚生年金保険の保険料」)。健康保険・介護保険・雇用保険・労災保険などは、加入先や年齢で料率が違うため、自社の実際の料率を使ってください。

計算例(仮の数字)

  • 月の給与:40万円

  • 賞与:年60万円 → 月5万円

  • 会社負担の社会保険料など:仮に(給与+賞与の月割り)の15%とする → 6.75万円

  • その他の直接費:月1万円

  • 原価:40 + 5 + 6.75 + 1 = 52.75万円

原価52.75万円で粗利率20%を残したいなら、最低ラインは52.75万円 ÷ 0.8 = 約65.9万円です。

プロパーは、案件の切れ目で待機が出ることもあります。待機とは、案件がなく売上が立たない期間のことです。待機の多い会社は、その分を見込んで粗利率を高めに設定しておくと安全です。

上位の予算から「仕入れの上限」を逆算する方法

上位の会社やエンドの予算がわかっているときは、予算 ×(1 − 自社の粗利率)で、BPに払える仕入れ単価の上限を出します。下から積み上げる計算の逆です。

計算例

  • 上位から提示された予算:75万円

  • 自社の必要粗利率:15%

  • 仕入れの上限:75万円 × 0.85 = 63.75万円

この場合、BPから「65万円でお願いします」と言われたら、そのままでは粗利率が足りません。取れる手は次の3つです。

  1. BPに63万円前後で相談する

  2. 上位に、要員のスキルを根拠に予算の上積みを相談する

  3. 粗利率を下げても取る価値がある案件か、社内で判断する

BPとの交渉で関係を壊さない伝え方は、SESの仕入れ単価のBP交渉|関係を壊さない伝え方と例文5つに例文をまとめています。

上位の予算が「スキル見合い」とだけ書かれているときは、先に幅を聞き出します。聞き方はスキル見合いとは?SES案件の単価の意味と提示額の決め方で紹介しています。

相場・商流・精算幅で単価を上げ下げする判断基準

最低ラインを出したら、相場・商流・精算幅の3つを見て、どこまで上げるかを決めます。最低ラインより下げてよいのは、社内で決めた例外だけです。

見るもの上げてよいとき上げにくいとき
相場最低ラインが相場の下の方にある最低ラインが相場の上の方にある
商流エンド直・元請け直で予算に余裕がある三次請け以降で予算が決まっている
精算幅幅が狭い(例:150〜170時間)、残業が多い幅が広い(例:140〜200時間)、固定精算
急ぎ度開始日が近く、候補が少ない候補が多く、比べられやすい

相場で見る

最低ラインが相場の幅の下の方なら、相場の真ん中まで上げる余地があります。反対に、最低ラインが相場の上限を超えるなら、そのままでは通りません。仕入れを見直すか、要員のスキルを根拠に説明できるかを考えます。

公的データでは、厚生労働省の集計が物差しになります。「情報処理・通信技術者」の派遣料金は、1日8時間あたり34,382円(税込、令和6年度速報)でした。20日で約68.8万円(税込)、税を除くと約62.5万円です。派遣料金は派遣契約の数字なので、SESの単価と比べるときは税抜きにそろえ、IT技術者の平均的な料金の物差しとして使います。

商流で見る

商流が深いほど、上位の予算の天井が低くなります。自社が何次請けかは、案件ごとに「エンドから何社目か」を聞いて確かめます。聞き方の例は「この案件は、エンド様から数えて弊社が何社目になりますか」です。

精算幅で見る

精算幅が狭い契約は、控除や超過が起きやすく、売上がぶれます。BPとの仕入れ契約と、上位との契約で精算幅をそろえるのが基本です。幅がずれると、上位からは控除されたのにBPには満額払う、という逆ざやが起きます。控除額の計算はSESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いで確認できます。

提案単価を決める7つの手順

提案単価は、次の7つの手順で決めます。上から順に進めれば、根拠を説明できる単価になります。

  1. 仕入れ単価を確定する:BPなら提示額を、プロパーなら原価を出す

  2. 必要粗利を決める:社内ルールの粗利率か粗利額を確認する

  3. 最低ラインを計算する:仕入れ単価 ÷(1 − 粗利率)

  4. 相場の幅を調べる:同じ職種・経験の今の案件と人材の単価を見る

  5. 商流と予算を確認する:何次請けか、上位の予算の上限はいくらか

  6. 精算幅をそろえる:上位とBPの精算幅と精算方法が同じかを見る

  7. 提示額を決めて記録する:1万円単位に切り上げ、根拠を案件ごとに残す

手順7の「記録」は見落とされがちです。いくらで提案し、いくらで決まったかを残すと、次の提案で自社の相場として使えます。

提案前の単価チェックリスト

提案メールを送る前に、次の8項目を確かめましょう。1つでも「いいえ」なら、送る前に見直します。

#確認すること
1仕入れ単価はBPの最新の提示額か(プロパーは原価で計算したか)
2粗利率を「割り算」で計算したか
3最低ラインを下回っていないか
4相場の幅に入っているか
5何次請けの案件か確認したか
6上位とBPの精算幅・精算方法がそろっているか
7交通費など、単価に含むもの・含まないものを決めたか
8同じ要員を別の案件に違う単価で出していないか

8番は並行営業で起きやすいミスです。同じ要員を複数の案件に出してしまい両方に通ったときの対応は、SESの二重提案が発覚したら|どちらを残すかの判断と謝罪例文にまとめています。

提案メールで単価を伝える例文

単価は、金額・精算幅・精算方法・開始日をまとめて1か所に書きます。あとで「幅は聞いていない」と言われないためです。

例文・テンプレート
件名:【要員ご提案】Javaエンジニア(経験6年)/10月13日(火)から参画可

株式会社〇〇
□□様

いつもお世話になっております。株式会社△△の××です。
10月1日(木)にいただいたJava開発案件へ、下記の要員をご提案いたします。

■要員:K.S
■経験:Java 6年、Spring Boot 4年、詳細設計から担当
■単価:72万円/月(税別)
■精算:140〜180時間、上下割
■開始:10月13日(火)から参画可能
■商流:弊社のパートナー企業(BP)所属の要員(弊社の1社下)

スキルシートを添付いたします。
面談のご調整が可能でしたら、候補日をお知らせください。
よろしくお願いいたします。

提案単価でやってはいけない4つのこと

提案単価で一番避けたいのは、最低ラインを計算せずに金額を出すことです。次の4つは、粗利を削る典型的な失敗です。

  • 「前回と同じ単価」で出す:仕入れ単価や相場が変わっていても気づけない

  • 掛け算で粗利を乗せる:狙った粗利率に届かない

  • 精算幅を確かめずに出す:上位とBPの幅がずれ、逆ざやが出る

  • 通したい一心で下限を割る:一度安く入ると、あとから上げるのは難しい

単価を上げる交渉は、契約更新の前が動きやすい時期です。更新の2か月前に切り出すのが基本です。

チョータツで「今の単価」を見ながら決める

自分で相場を調べる場合は、BPから届く案件メール・人材メールを読み、単価をExcelに書き写して比べます。毎日届く量が多いと、この作業だけで時間がなくなります。

チョータツを使うと、この「集めて比べる」部分が楽になります。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
相場を調べる届いたメールを読んで、単価を転記連携した他社の営業中案件・営業中人材がデータベースになる
仕入れ候補を探すBPに1社ずつ聞く連携先の営業中人材から、条件の近い人を探せる
自社の案件・人材を管理するExcelで個人ごとに管理案件・人材の情報をチームで管理・共有できる
情報を届けるBCCで一斉送信メール配信機能でパートナーに配信

案件側の単価と、人材側の希望単価を両方見られるのがポイントです。案件の単価は「上げられる上限」、人材の希望単価は「仕入れの目安」になります。その間に自社の粗利が入るかを、提案前に確かめられます。

チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。案件・人材の登録はAIが入力を手伝うので、Excelから移すときの手間も抑えられます。

よくある質問

Q. SESの提案単価はどう計算しますか?
「仕入れ単価 ÷(1 − 必要な粗利率)」で最低ラインを出します。仕入れ60万円で粗利率15%なら約70.6万円です。そのうえで相場の幅に入るかを確かめます。
Q. 粗利率は何%に設定すればいいですか?
会社の経費と待機の多さで決まります。厚生労働省の令和6年度の速報値から計算したIT系(情報処理・通信技術者)の派遣のマージン率は約32.7%(税抜で計算)でした。ただしマージン率には派遣会社が払う社会保険料や教育費なども含まれるため、BP要員の粗利率と同じ物差しではありません。BP要員の粗利率は、自社の販管費と待機の見込みから逆算して社内ルールを決めましょう。
Q. 単価の根拠をお客さんに聞かれたら、どう答えますか?
要員の経験年数、担当できる工程、似た案件の相場を並べて説明します。仕入れ単価や自社の粗利を伝える必要はありません。
Q. 見積書にはどう書きますか?
月額単価、精算幅、精算方法、税別か税込か、交通費の扱いを明記します。見積書の欄は、社内のひな形で統一しておきます。
Q. BPの仕入れ単価が高く、最低ラインが相場を超えるときは?
BPに単価を相談するか、別の候補を探すか、上位に予算の上積みを相談します。粗利を削って出すのは、社内で決めた例外のときだけにしましょう。

まとめ

  • 提案単価の最低ラインは「仕入れ単価 ÷(1 − 必要な粗利率)」で出す

  • 「20%乗せ」と「粗利率20%」は違う。粗利率で管理するなら割り算で計算する

  • 5つの要素は仕入れ単価・必要粗利・相場・商流・精算幅。下限を出してから相場で確かめる

  • プロパーの原価は、給与+賞与の月割り+会社負担の社会保険料+直接費で出す

  • 上位の予算がわかれば、予算 ×(1 − 粗利率)でBPへの仕入れ上限を先に決める

  • 提示額と決まった額を記録し、次の提案で自社の相場として使う

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年10月1日|更新日:2026年10月1日

参考資料(2026年9月30日確認)

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