SESの高単価案件を獲得する方法|商流・工程・スキル希少性の3軸で動かす順番と営業アクション

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESの高単価案件とは?

SESの高単価案件とは、同じ職種・同じ経験年数の相場より、月額の単価が高く設定されている案件のことです。「月100万円以上」のような決まった線はありません。自社の平均単価や、職種ごとの相場と比べて判断します。

相場の目安として、厚生労働省の集計があります。「情報処理・通信技術者」の派遣料金は、1日8時間あたり34,382円(税込、令和6年度)でした。20日で約68.8万円、税抜では約62.5万円です。IT技術者の平均的な料金は月60万円台が目安です。

この記事でいう高単価案件は、自社の今の平均より月5万〜10万円以上高い案件を指します。いきなり相場の倍を狙うより、この幅を積み重ねる方が現実的です。職種ごとの相場はSESの単価相場|職種別の月額目安と公的データの使い方で確認できます。

単価を決める3つの軸:商流・工程・スキル希少性

SESの単価は、「どこから受けるか(商流)」「何を任されるか(工程)」「代わりがいるか(スキル希少性)」の3軸で決まります。

軸単価が高くなる方向単価が低くなる方向
商流エンド・元請けに近い間に入る会社が多い
工程要件定義・設計などの上流テスト・監視などの下流
スキル希少性対応できる人が少ない分野対応できる人が多い分野

商流:どこから受けるか

商流とは、エンド(発注元)から要員の所属会社まで、仕事が流れてくる経路のことです。間に会社が1社入るごとに、その会社の取り分が引かれます。エンドが80万円払っても、間の2社が5万円ずつ取れば、手元に届くのは70万円です。

工程:何を任されるか

上流工程とは、システムづくりの前半にある「要件定義」「基本設計」などの工程のことです。要件定義とは、お客さんが何をしたいかを聞き取り、作るものを決める仕事です。反対に、テストや運用・監視は下流工程と呼ばれます。

上流ほど判断の責任が重く、任せられる人が少ないため、単価が高くなります。

スキル希少性:代わりがいるか

スキル希少性とは、そのスキルを持つ人が、求められる数に比べてどれだけ少ないかのことです。クラウド・セキュリティ・AIなどは、人が足りない分野として知られています。

IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2026」では、DXを進める人材が不足している日本企業は85.5%でした。DXとは、デジタル技術で仕事や事業のしくみを変えることです。こうした分野の経験を持つ要員は、比べられる相手が少なく、単価の交渉がしやすくなります。

公的データで見る「工程・役割」の単価差

工程と役割の差は、公的データにもはっきり表れます。厚生労働省の職業情報サイト「job tag(ジョブタグ)」の年収(令和7年賃金構造基本統計調査による)を比べます。job tagとは、厚生労働省が運営する、職業ごとの仕事内容や賃金をまとめたサイトのことです。

職業(job tagの職業名)主な仕事年収
プログラマー詳細設計をもとにプログラムを作る578.5万円
システムエンジニア(基盤システム)ITインフラを設計・開発する889万円

年収の差は約310万円、月にすると約26万円です。単価は給与より高く設定されるため、単価の差はさらに大きくなります。厚生労働省の派遣のデータ(令和6年度、情報処理・通信技術者)では、税抜の料金(約31,256円)は賃金(21,032円)の約1.49倍でした。月26万円の給与差は、単価にすると月約39万円の差にあたる計算です(参考値)。

「作る人」から「決める人・設計する人」へ役割が上がるほど、単価が上がるということです。

自社の3軸を棚卸しするシート

高単価案件を狙う前に、今の自社が3軸のどこにいるかを点数にします。直近3か月に決まった案件を並べ、次の基準で1〜3点をつけてください。

軸1点2点3点
商流三次請け以降が半分以上二次請けが中心エンド直・元請け直が3割以上
工程テスト・運用監視が中心詳細設計・開発が中心基本設計以上が3割以上
スキル希少性候補が多い職種・言語だけクラウドなど一部に強み候補が少ない分野で指名が来る

採点の手順は次のとおりです。

  1. 直近3か月に決まった案件を、1行1件で書き出す

  2. 案件ごとに「エンドから何社目か」「担当工程」「主なスキル」を埋める

  3. 軸ごとに、全体のうち何割がどの点数に当てはまるかを数える

  4. 3つの軸にそれぞれ1〜3点をつける

  5. 一番点の低い軸を、最初に動かす軸にする

同じ点数の軸が並んだら、次のH2の順番(商流 → 工程 → スキル希少性)で選びます。

どの軸から動かすか:おすすめの順番

おすすめの順番は、商流 → 工程 → スキル希少性です。効果が出るまでの早さと、要員への負担の小ささで並べています。

順番軸効果が出るまでの目安理由
1商流3〜6か月同じ要員・同じ仕事でも単価が上がる
2工程半年〜1年要員の経験を積み上げる必要がある
3スキル希少性1年以上学習と実績づくりに時間がかかる

期間は編集部の目安で、会社の規模や要員の経験によって変わります。

商流を最初にすすめるのは、要員に何も求めずに単価が上がるからです。二次請けから一次請けに上がるだけで、上にいた会社の取り分が自社に入ります。

ただし、提案の見せ方は3軸すべてに効くので、順番とは別に今日から並行して直します。詳しくは「提案で希少性を見せる」の章で説明します。

軸1:商流を浅くする営業アクション

商流を浅くするには、上位の取引先(元請け・一次請け)を増やし、案件ごとに商流を確かめる習慣をつけることです。

公正取引委員会は2022年6月、ソフトウェア業の約2万1,000社を対象にした調査の結果を公表しました。最終下請けの事業者の33.5%が、何もせずに利益を得る「中抜き」事業者の存在を感じていました。元請けでは14.2%で、下の段ほど多く感じています。商流が深い位置ほど、単価が削られやすいことがわかります。

具体的な営業アクションは次の5つです。

  1. 案件を受けるたびに「エンドから何社目か」を聞く:聞き方はSESの商流の確認方法|何次請けかの見分け方と質問例文を参照

  2. 案件票の「プライム」「元請け直」を優先して見る:プライム案件とは、エンドや元請けから直接受ける案件のことです

  3. 上位の会社の取引審査に申し込む:一次請けに上がるには、口座開設(取引の登録)が必要なことが多い。審査項目はSIerの協力会社登録の条件と流れ|審査で見られる7項目を参照

  4. 既存のお客さんに「さらに上の窓口」を紹介してもらう:実績のある現場から頼むと通りやすい

  5. エンドへの直接営業を始める:時間はかかるが、効果は一番大きい

一次請けと二次請けの単価差はSESの一次請け・二次請けの違い|単価差と商流を上げる方法で解説しています。

商流を浅くするときの注意

上位の会社を飛ばして、その先と直接取引するのは商流飛ばしと呼ばれ、契約違反になることがあります。上位の取引先は「飛ばす」のではなく「新しく増やす」のが基本です。基本契約に「直接取引の禁止」の条項があれば、違反すると損害賠償を求められることもあります。

軸2:上流工程を任される営業アクション

上流工程の案件を取るには、要員が設計や顧客折衝をした経験を、小さくても実績として見える形にすることです。いきなり要件定義の案件に出すより、今の現場で一段上の役割を任されるよう動く方が確実です。

具体的な営業アクションは次の5つです。

  1. 今の現場で担当範囲を広げる相談をする:詳細設計の一部やレビュー役を任せてもらう

  2. リーダー・サブリーダーの経験を記録する:何人をまとめたかを数字で残す

  3. スキルシートに工程を明記する:「開発」ではなく「基本設計〜結合テスト」と書く

  4. 更新のタイミングで役割と単価を一緒に相談する:役割が上がった月を根拠にする

  5. チームでの提案を増やす:リーダー1名+メンバー2名のように組むと、リーダーの単価を上げやすい。組み方はSESのチーム提案のやり方|複数名の体制の組み方と単価の出し方を参照

単価交渉は、契約更新の1〜2か月前が動きやすい時期です。使える時期と資料はSESの単価交渉のタイミング|更新の何か月前か・例文と資料5点にまとめています。

上流工程の案件は、準委任契約で受けることが多い点も押さえておきます。準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた作業を行うことを約束する契約のことです。現場で客先から直接指示を受ける形になると、偽装請負を疑われます。契約前に、だれが作業の指示を出すかを客先と確かめておきます。

軸3:スキル希少性を高める営業アクション

スキル希少性を高めるには、需要が多く、対応できる人が少ない分野に、要員の経験を寄せていくことです。営業は、どの分野の案件が多く届いているかを一番よく知っている立場です。

具体的な営業アクションは次の4つです。

  1. 届いた案件を分野別に数える:直近3か月で多い分野と、人が集まらない分野を出す

  2. 要員の学習テーマを営業から提案する:分野の件数を根拠に、会社として学習を支援する

  3. 資格を「証拠」として使う:IPAの高度試験には、プロジェクトマネージャ試験・ネットワークスペシャリスト試験など8区分がある

  4. 希少な組み合わせをつくる:「Java+AWS」「インフラ+セキュリティ」のように2分野を重ねる

1つの分野では候補が多くても、2分野の組み合わせになると一気に候補が減ります。営業としては、組み合わせを案件名に近い言葉で伝えられるかが勝負です。

提案で希少性と工程を見せるコツ

どの軸を動かしても、最後に単価を決めるのは提案です。同じ要員でも、提案の書き方で「比べられる要員」にも「指名したい要員」にもなります。

提案で押さえるコツは次の5つです。

  • 1行目に「任せられること」を書く:「基本設計から一人で担当可」など、工程で書く

  • 数字で書く:「リーダー経験あり」ではなく「5名のチームを1年半リード」

  • 案件の要件に合う順に並べる:要件に書かれたスキルから先に書く

  • 希望単価の根拠を添える:工程・役割・希少な組み合わせを理由として示す

  • 提案は早く出す:高単価案件ほど、先に出た候補で決まりやすい

スキルシートの整え方はSESスキルシートのフォーマットと書き方|15項目の記入例付きで紹介しています。

上位の取引先に高単価案件を相談するメール例文

例文・テンプレート
件名:上流工程の案件のご相談(株式会社△△)

株式会社〇〇
□□様

いつもお世話になっております。株式会社△△の××です。
10月30日(金)に契約更新を迎える要員について、ご相談です。

現場で基本設計とレビューを担当するようになり、
11月からは3名のチームのサブリーダーを任される予定です。

つきましては、次の条件に近い案件がございましたら
優先してご紹介いただけないでしょうか。

・工程:基本設計〜結合テスト
・役割:サブリーダー(3〜5名)
・スキル:Java 7年、AWS 3年
・希望単価:80万円前後(140〜180時間)

11月2日(月)以降でしたら、面談のご調整が可能です。
よろしくお願いいたします。

チョータツとチョータツブーストで高単価案件に近づく

自分でやる場合、商流の浅い取引先は交流会や紹介で1社ずつ増やします。取引が始まったら、届く案件メールを読み、商流と単価をExcelに書き写して比べます。どちらも時間がかかり、忙しい月ほど後回しになりがちです。

DrivenXのツールを使うと、この2つの作業を楽にできます。

場面自分でやる場合DrivenXのツールを使う場合
上位の取引先を増やす交流会・紹介・問い合わせで1社ずつチョータツブーストで新しいパートナー企業を開拓
案件の単価・条件を比べるメールを読んでExcelに転記チョータツで連携すると、他社の営業中案件がデータベースになる
要員を提案するスキルシートを探して個別に送信人材の情報を管理・共有し、メール配信機能で届ける

取引先が増えるほど、見られる案件も増えるのがポイントです。チョータツブーストで取引先を増やし、連携で営業中の案件をまとめて見れば、商流や単価の条件がよい案件を比べやすくなります。

チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。案件・人材の情報はAIが入力を手伝うので、登録や入力の手間も抑えられます。

高単価案件を狙うときの注意点

高単価案件を狙うときに避けたいのは、要員の実力と釣り合わない案件に出すことです。単価が高いほど、お客さんの期待も高くなります。

  • 経験を盛らない:スキルシートの誇張は、経歴詐称のトラブルにつながる。上位から頼まれたときの断り方はSESで経歴を盛ってと言われたら|断り方と営業が負うリスクを参照

  • いきなり大きく上げない:更新のたびに月3万〜5万円ずつ上げる方が通りやすい

  • 要員の意向を聞く:上流工程や新しい分野に進みたいかを、先に確かめる

  • 仕入れ単価も見直す:BP要員なら、上がった分をどう分けるかを決めておく

上がった単価をBPとどう分けるかは、次の案件の仕入れ単価を決める前に社内で決めておきます。

よくある質問

Q. SESで高単価案件を獲得するには、何から始めればいいですか?
直近3か月の案件で、商流・工程・スキル希少性を1〜3点で採点します。一番点の低い軸から手をつけるのがおすすめです。迷ったら商流から動かしましょう。
Q. 商流の浅い案件はどうやって探しますか?
案件票の「プライム」「元請け直」を優先して見て、案件ごとにエンドから何社目かを聞きます。上位の取引先の審査に申し込み、取引先そのものを増やすことも大切です。
Q. 経験の浅い要員でも単価は上げられますか?
上げられます。商流を浅くすれば、同じ要員でも単価が上がります。あわせて今の現場で担当範囲を広げ、次の更新で役割と単価を一緒に相談しましょう。
Q. 上流工程の案件は契約で気をつけることがありますか?
準委任契約で受けることが多く、客先からの直接の指示が増えると偽装請負を疑われます。指揮命令の範囲を契約前に確認しましょう。
Q. 単価を上げたら、要員の給与やBPへの支払いも上げるべきですか?
会社の方針しだいですが、上がった分の分け方は先に決めておくのがおすすめです。要員やBPの納得感が、長く続く関係につながります。

まとめ

  • SESの単価は、商流・工程・スキル希少性の3軸で決まる

  • 自社の3軸を1〜3点で棚卸しし、一番低い軸から動かす

  • 動かす順番は商流 → 工程 → スキル希少性。商流は要員を変えずに単価が上がる

  • 工程は今の現場で役割を広げ、更新時に役割と単価を一緒に相談する

  • スキル希少性は、案件の件数を根拠に2分野の組み合わせをつくる

  • どの軸でも、最後は提案で「任せられる工程」と「希少性」を数字で見せる

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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