オンコール対応の単価の決め方|SESの夜間・休日対応を「待機」と「実作業」に分ける計算例と契約の注意点

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

オンコール対応とは?SESでよくある3つの形

オンコール対応とは、勤務時間外に障害などが起きたとき、呼び出しに応じてすぐ対応できるよう待機することです。SESでは、運用保守の案件でよく求められます。

運用保守とは、稼働中のシステムが止まらないよう監視し、問題が起きたら直す仕事のことです。案件の特徴は保守開発とは?運用保守との違いと案件の特徴、SES営業の提案術で解説しています。

SESのオンコールには、主に次の3つの形があります。

形内容よくある案件
電話・チャット待機連絡を受けたら自宅からリモートで対応クラウド・Webサービスの運用
駆けつけ待機連絡を受けたら決められた時間内に現地へ行くデータセンター・社内インフラ
シフト制の夜間勤務夜間に勤務時間として働く24時間監視の運用センター

シフト制の夜間勤務は、オンコールではなく通常の稼働として扱います。以下では、電話・チャット待機と駆けつけ待機の値付けを説明します。

オンコールの単価は「待機料」と「実作業料」に分ける

オンコールの単価は、待機するだけで発生する待機料と、実際に対応した時間に払う実作業料に分けて決めます。この2つを分けると、呼び出しの多い月も少ない月も、損をしにくくなります。

料金決め方目的
待機料1日(1回の待機)あたりの固定額予定を空けて待つことへの対価
実作業料時間単価 × 対応時間実際に働いた分の対価
駆けつけ料1回あたりの固定額(必要な場合)移動と深夜の出動への対価

待機料と実作業料の金額に、業界で決まった相場はありません。以下の計算例の金額は、考え方を示すための仮の数字です。

実作業料の時間単価の出し方

実作業料の時間単価は、月額単価を精算幅の中間の時間で割った額に、夜間・休日の上乗せをかけて出します。上乗せの割合は、自社が社員に払う割増賃金を下回らないように決めます。

月額80万円・精算幅140〜180時間の案件で計算します。

  1. 基本の時間単価:80万円 ÷ 160時間 = 5,000円

  2. 平日の夜間(22時〜翌5時):5,000円 × 1.25 = 6,250円

  3. 休日(法定休日):5,000円 × 1.35 = 6,750円

  4. 休日の夜間:5,000円 × 1.60 = 8,000円

1.25・1.35・1.60の数字は、労働基準法の割増率(深夜25%以上、法定休日35%以上)にそろえた例です。社員への支払いより請求が少ないと、対応するほど赤字になります。

精算単位とは、稼働時間を何分ごとに数えるかの決まりのことです。夜間対応は10分で終わることもあるため、「1回の対応は最低1時間として計算」などの最低請求時間を決めておきます。精算単位の違いはSESの精算単位15分・30分の違い|稼働時間の切り捨ては違法?で解説しています。

固定額と時間精算の比較と計算例

オンコールの請求方法は、「月額の固定額」と「待機料+時間精算」の2つが多く使われます。呼び出しの回数が読めない案件ほど、時間精算を入れたほうが安全です。

ここでは、待機料を1日5,000円、実作業料を上のとおり、月額の固定額を5万円として比べます(どれも仮の数字です)。

月の状況固定額(月5万円)待機料+時間精算
待機10日・呼び出し0回5万円5万円(5,000円×10日)
待機10日・平日夜間に計4時間5万円7.5万円(5万円+6,250円×4時間)
待機10日・休日夜間に計10時間5万円13万円(5万円+8,000円×10時間)

固定額は、客先にとって予算が立てやすいのが利点です。一方、大きな障害が起きた月は、自社の持ち出しになります。

固定額にする場合も、「月〇時間を超えた実作業は別途精算」という上限を付けておくのがおすすめです。提案単価全体の決め方はSESの提案単価の決め方|仕入れ単価から逆算する計算式と5つの要素も参考にしてください。

契約書・注文書に書く8項目

オンコールを受けるときは、注文書(個別契約)に次の8項目を書きます。書いていないと、「月額に含まれている」と言われても反論しにくくなります。

  1. 待機の時間帯:例「平日18時〜翌9時、土日祝の終日」

  2. 待機の日数・当番の決め方:例「月10日以内。当番表は乙が作成し、前月20日までに甲へ通知」

  3. 待機料:例「1日あたり5,000円」

  4. 実作業料:時間帯ごとの時間単価

  5. 最低請求時間と精算単位:例「1回の対応は最低1時間、以降30分単位」

  6. 駆けつけの要否と到着時間:例「駆けつけは求めない」または「連絡から2時間以内」

  7. 連絡の流れ:例「甲の担当者から乙の責任者へ連絡し、乙の責任者が作業者に作業を指示する」

  8. 対応の範囲:例「一次対応(切り分け・再起動・報告)まで。恒久対応は翌営業日以降に協議」

見積書の段階で、備考欄に「夜間・休日対応は別途精算」と書いておくと、後の交渉が楽になります。書き方の例は見積書の備考欄の書き方|SESの精算条件・注意書きの例文10選で紹介しています。

注文書の記載例

  1. 障害時の待機(オンコール):平日18時〜翌9時および土日祝日の終日のうち、乙が定める当番日(月10日以内)

  2. 待機料:1日あたり5,000円(税別)

  3. 実作業料:平日夜間(22時〜翌5時)1時間6,250円、休日1時間6,750円、休日夜間1時間8,000円。その他の時間帯は1時間5,000円(いずれも税別)

  4. 1回の対応は最低1時間とし、以降は30分単位で精算する

  5. 甲は、障害の連絡を乙の責任者に行い、乙の責任者が作業者に対応を指示する

  6. 対応範囲は一次対応までとし、恒久対応は別途協議する

連絡の窓口は自社の責任者にする

オンコールの連絡は、客先から自社の責任者へ、責任者からエンジニアへという流れにします。客先が夜中にエンジニア本人へ電話し、作業の中身を細かく指示する形は、偽装請負と見られるおそれがあります。

偽装請負とは、準委任や請負の契約なのに、実態は客先がエンジニアに直接指示を出している状態のことです。厚生労働省の37号告示(第2条第1号)は、業務の進め方の指示を受注した会社が自ら行うよう求めています。時間外・休日の労働の指示も同じです。

とはいえ、夜中に責任者を必ず経由するのは現実的でない場合もあります。その場合は、次の工夫をします。

  • 障害の種類ごとに、対応手順書を自社で作り、エンジニアは手順書に沿って動く

  • 客先からの連絡は、障害の発生と状況の共有にとどめてもらう

  • 対応後は、エンジニアから自社の責任者に報告し、責任者が客先に報告する

現場でのOK・NGの例は準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20でくわしく紹介しています。

社員のオンコール手当と労働時間の扱い

自社で雇うエンジニアにオンコールを任せるなら、待機が労働時間になるかと、実作業の割増賃金の2つを確かめます。客先から待機料をもらっていても、社員への支払い義務は別に考えます。

待機が労働時間になる条件

厚生労働省のガイドラインでは、労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。指示があればすぐ仕事をすることを求められる待機は、労働時間に当たります。これを手待時間といい、労働から離れることが保障されていない待機のことです。

最高裁は、ビル管理会社の泊まり勤務中の仮眠時間を、労働時間に当たると判断しました(平成14年2月28日判決)。仮眠中も警報や電話への対応が義務づけられていたためです。

オンコールの待機が労働時間になるかは、次のような事情で個別に判断されます。

確認すること労働時間と見られやすい労働時間と見られにくい
待機の場所会社・客先に待機、自宅から出られない場所の制限がほとんどない
呼び出しの頻度毎回のように呼び出されるほとんど呼び出されない
応答までの時間数分以内に必ず応答・作業開始応答までにゆとりがある
私生活の制限飲酒・外出が実質できない普段どおり過ごせる

判断に迷う場合は、社会保険労務士などの専門家に確認してください。

実作業の割増賃金

実際に対応した時間は、労働時間です。時間帯と曜日に応じて、次の割増賃金を払います(労働基準法第37条、割増賃金令)。

対応した時間割増率
時間外(法定労働時間を超えた分)25%以上
時間外のうち月60時間を超えた分50%以上
法定休日35%以上
深夜(22時〜翌5時)25%以上(時間外・休日と重なれば合算)

月60時間を超える時間外労働の50%以上の割増率は、2023年4月1日から中小企業にも適用されています。オンコールで残業が増えると、36協定の上限にも近づきます。36協定とは、法定労働時間を超えて働かせるために会社と労働者の代表が結ぶ協定のことです。上限は原則として月45時間・年360時間です(第36条)。管理の方法は36協定は派遣と準委任でどう違う?SES営業の残業管理のポイントを参考にしてください。

待機手当の決め方

待機が労働時間に当たらない形で運用する場合でも、多くの会社は待機手当を払っています。客先から受け取る待機料のうち、どれだけを社員に払うかを先に決めておくと、社員への説明がしやすくなります。

BP・フリーランスにオンコールを頼むときの注意点

BPやフリーランスのエンジニアにオンコールを頼むときは、待機料と実作業料を発注の時点で書面かメールで示すことが必要です。あとから「込みのつもりだった」と言うと、報酬の減額と見られるおそれがあります。

  • 個人のフリーランスに頼む場合:フリーランス法第3条で、業務の内容・報酬の額・支払期日などを直ちに明示する義務があります。フリーランス法とは、従業員を使わない個人などに仕事を頼むときのルールを定めた法律のことです。

  • BPの会社に頼む場合:取適法の対象となる取引なら、第4条で発注内容を直ちに明示する義務があります。取適法とは、発注側の会社が受注側の中小企業に不当な扱いをしないよう定めた法律のことです。下請法を改正したもので、2026年1月1日に施行されました。

明示の書き方はフリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール記載例で紹介しています。上位から超過分が払われないときの考え方はSESで残業が上限を超えたら?超過精算が支払われない時の対応手順で解説しています。

客先にオンコール条件を伝えるメール例文

オンコールの条件は、見積もりの段階でメールに書いて伝えます。月額単価に含めないことを、最初にはっきりさせるのが大切です。

件名:【お見積もり】〇〇システム運用保守(オンコール対応条件のご確認)

〇〇株式会社 △△様

いつもお世話になっております。株式会社□□の××です。
ご相談いただいた運用保守のご支援について、条件をお送りします。

・月額:800,000円(税別)、精算幅140〜180時間
・オンコール待機:平日18時〜翌9時、土日祝日の終日のうち月10日以内
・待機料:1日5,000円(税別)
・実作業料:平日夜間1時間6,250円、休日1時間6,750円、休日夜間1時間8,000円(最低1時間、以降30分単位)
・障害のご連絡は、弊社責任者(××、090-XXXX-XXXX)までお願いいたします

オンコール対応は月額に含めず、上記のとおり別途精算とさせてください。
待機日数や対応範囲のご希望があれば、調整いたします。

オンコール案件の提案前チェックリスト

提案前に、次の10項目を確認します。

  • 待機の時間帯・日数・当番の決め方を客先に聞いた

  • 待機料と実作業料を分けて見積もった

  • 実作業料の時間単価が、社員に払う割増賃金を下回っていない

  • 最低請求時間と精算単位を決めた

  • 駆けつけの要否と到着時間を確認した

  • 連絡の窓口を自社の責任者にした

  • 対応範囲(一次対応まで、など)を決めた

  • 社員の待機が労働時間に当たるかを確認した

  • 36協定の上限に収まるかを確認した

  • BP・フリーランスには、待機料と実作業料を発注時に明示した

運用保守の月額そのものも、オンコール条件とあわせて見直しておきます。

オンコールに対応できる要員を探す・条件を残す

オンコールの案件では、夜間・休日の対応ができる要員を探すことと、案件ごとに違う条件を忘れないことが営業の負担になります。

自分でやる方法

  1. 運用保守の案件ごとに、待機の時間帯・待機料・実作業料をExcelにまとめる

  2. BPから届く人材メールを読み、「夜間対応可」「オンコール経験あり」の人を書き出す

  3. 契約更新の前に、呼び出し回数と実作業時間を振り返り、待機料を見直す

もっと楽にするなら

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有するツールのことです。3,000社以上が利用し、無料で始められます。

やること自分でやる場合チョータツを使う場合
案件ごとのオンコール条件を残す担当者のExcelにばらばら案件・人材の情報を1か所で管理・共有できる
夜間対応できる要員を探す人材メールを読んで転記連携した会社の営業中人材がデータベースになる
運用保守の要員を募集するBPごとにメールを送るパートナーへのメール配信機能で送れる

よくある質問

Q. オンコールの単価は月額に含めてもよいですか?
含めることもできますが、おすすめしません。呼び出しが多い月に赤字になります。含める場合も「月〇時間を超える実作業は別途精算」と上限を付けます。
Q. オンコールの待機料はいくらが相場ですか?
業界で決まった相場はありません。社員に払う待機手当と、予定を空けてもらう負担を元に、1日あたりの固定額で決める会社が多いです。
Q. オンコールの待機時間は労働時間になりますか?
自由に過ごせず、すぐ対応することを求められる待機は、労働時間に当たるおそれがあります。場所の制限・呼び出しの頻度・応答までの時間などで個別に判断されます。
Q. 夜間の障害対応に割増賃金は必要ですか?
自社の社員なら必要です。22時〜翌5時の作業は25%以上、法定休日は35%以上の割増賃金を払います(労働基準法第37条)。
Q. 客先からエンジニアに直接電話してもらってもよいですか?
障害の連絡だけなら問題になりにくいですが、作業の中身を客先が直接指示すると、偽装請負と見られるおそれがあります。連絡の窓口は自社の責任者にしておきます。

まとめ

  • オンコールは「待機料(固定額)」と「実作業料(時間単価)」に分けて値付けする

  • 実作業料の時間単価は、社員に払う割増賃金を下回らないように決める

  • 注文書には、待機の時間帯・待機料・実作業料・最低請求時間・駆けつけ・連絡の流れ・対応範囲を書く

  • 連絡の窓口は自社の責任者にし、客先がエンジニアに直接作業を指示しない形にする

  • 社員の待機が労働時間に当たるか、36協定の上限に収まるかを確認する

  • BP・フリーランスには、待機料と実作業料を発注時に明示する

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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