見積書の備考欄の書き方|SESの精算条件・注意書きの例文10選と、注文書とずれない確認5ステップ
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
見積書の備考欄とは?
見積書の備考欄とは、金額や数量の表だけでは伝えきれない条件・前提・注意書きを書く欄のことです。「注意書き」「特記事項」と呼ばれることもあります。
一般の商品の見積書なら、備考欄は「送料別途」くらいで済みます。一方、SESの見積書は月額単価が稼働時間で変わるため、備考欄に書く中身がとても多くなります。
| 見積書の欄 | 書くこと | SESでの例 |
|---|---|---|
| 明細の表 | 品目・数量・単価・金額 | Javaエンジニア1名、1人月、月額600,000円 |
| 合計欄 | 税抜・消費税・税込の合計 | 小計600,000円、消費税60,000円 |
| 備考欄 | 条件・前提・注意書き | 精算幅140〜180時間、上下割、交通費込み |
見積書の全体の書き方は、SESの見積書の書き方|テンプレートと記載項目10・注意点で解説しています。ここでは、備考欄に書く文例に絞ります。
SESの見積書で備考欄が大事な理由
SESの見積書では、金額よりも備考欄の条件で揉めることのほうが多いです。同じ月額60万円でも、精算幅や割り方が違えば、毎月の請求額が変わるからです。
たとえば、月額60万円・精算幅140〜180時間で、稼働が130時間の月を考えます。控除額は、上下割なら42,850円、中間割なら37,500円です。見積に割り方を書いていないと、どちらで計算するかで客先と意見が割れます。
備考欄に条件を書いておくと、3つのよいことがあります。
客先が注文書を作るときに、同じ条件を写してもらえる
請求の月に「聞いていない」と言われたとき、見積書を根拠に説明できる
BPやフリーランスへの発注にも、同じ条件をそろえやすい
備考欄に書く項目の一覧
SESの見積書の備考欄には、次の8項目を書いておくと安心です。上から順に、揉めやすい項目です。
| # | 項目 | 書かないと起きること |
|---|---|---|
| 1 | 精算幅と割り方 | 控除・超過の金額で揉める |
| 2 | 精算単位と端数処理 | 15分と1時間で控除額が変わる |
| 3 | 交通費・出張費 | 実費を請求できない |
| 4 | 有効期限 | 古い単価のまま発注される |
| 5 | 前提条件(リモート可否・稼働時間) | 出社の増加や残業を頼まれる |
| 6 | 契約形態と作業範囲 | 請負と誤解される |
| 7 | 支払条件 | 支払いが遅れる・振込手数料を引かれる |
| 8 | 見積が確定する条件 | 注文書なしで稼働が始まる |
全部を長い文で書く必要はありません。1項目を1〜2文にまとめると、客先も読みやすくなります。
そのまま使える備考欄の例文10選
ここからは、SESの見積書の備考欄にそのまま貼れる例文を10個紹介します。月額60万円・精算幅140〜180時間・上下割の案件を例にしています。数字は自社の案件に合わせて変えてください。
例文1:有効期限
本見積の有効期限は、発行日(2026年10月1日)から30日間といたします。期限を過ぎた場合は、単価・要員の空き状況を再度確認のうえ、お見積りし直します。
有効期限とは、その見積の金額と条件で受け付ける期間のことです。SESでは要員の空き状況が月ごとに変わるので、30日程度の短めの期限が安心です。
例文2:精算幅と割り方(上下割)
精算幅は月140時間〜180時間とします。140時間を下回った場合は1時間あたり4,285円を控除し、180時間を超えた場合は1時間あたり3,333円を加算します(上下割、1円未満切り捨て)。
上下割とは、月額単価を下限時間で割って控除単価を、上限時間で割って超過単価を出す方法のことです。「上下割」の言葉だけでなく、1時間あたりの金額まで書くと計算の食い違いが起きません。
例文3:精算幅と割り方(中間割)
精算幅は月140時間〜180時間とします。範囲外の時間については、1時間あたり3,750円(月額単価÷160時間、中間割)で控除・加算いたします。
中間割とは、月額単価を下限と上限の真ん中の時間で割り、控除も超過も同じ単価にする方法のことです。客先から中間割を指定されたときは、この書き方に差し替えます。
例文4:精算単位と端数処理
稼働時間の精算単位は15分とし、15分未満は切り捨てます。控除額・加算額の1円未満は切り捨てといたします。
精算単位とは、稼働時間を何分ごとに数えるかの区切りのことです。単位が粗いほど、下限を割ったときの控除が大きくなりやすいので注意しましょう。くわしくはSESの精算単位15分・30分の違い|稼働時間の切り捨ては違法?で比べています。
例文5:固定精算の場合
本件は固定精算とし、稼働時間の多少にかかわらず月額600,000円(税抜)をご請求いたします。ただし、月の稼働が著しく変わる見込みの場合は、事前にご相談させてください。
固定精算とは、稼働時間が多くても少なくても、毎月同じ金額で精算する方法のことです。固定精算なら、例文2〜4の代わりにこの1文を入れます。
例文6:交通費・出張費
通勤にかかる交通費は月額単価に含みます。貴社のご指示による出張・遠方への移動にかかる交通費・宿泊費は、実費を別途ご請求いたします。
交通費は「単価に含む」か「別途請求」かを必ず書きます。出張の実費だけ別にする書き方が、SESではよく使われます。
例文7:前提条件(リモート可否・出社頻度)
本見積は、週3日リモート・週2日出社(作業場所:貴社〇〇事業所)を前提としております。全日出社など前提が変わる場合は、単価・条件を再度ご相談させてください。
リモート可否は、エンジニアが案件を受けるかどうかを左右します。前提として書いておくと、あとで全日出社に変えられたときに、条件の見直しを相談しやすくなります。
途中で出社必須に変わったときの交渉は、SESのリモート案件が出社必須に変わったら|条件交渉と退場の判断で解説しています。
例文8:前提条件(稼働時間帯・残業)
標準の作業時間は平日9:00〜18:00(休憩1時間)を想定しております。休日・深夜の作業が必要な場合は、事前に当社までご相談ください。
SESでよく使われる準委任契約とは、成果物の完成ではなく、決まった業務を行うことに報酬を払う契約のことです。準委任では、客先がエンジニアに直接働く時間を指示すると、偽装請負を疑われることがあります。そのため、「当社までご相談ください」と窓口を自社にしておきます。
例文9:契約形態と作業範囲
本件は準委任契約とし、成果物の完成を約するものではありません。作業範囲は「〇〇システムの詳細設計・製造・単体テストの支援」とし、範囲外の作業は別途協議のうえお見積りいたします。
契約形態を書かないと、請負(完成の約束)と誤解されることがあります。
例文10:支払条件と確定の条件
お支払いは、月末締め翌月末日払い(銀行振込)でお願いいたします。振込手数料は貴社にてご負担ください。本見積の条件は、貴社の注文書のご発行により個別契約として確定いたします。
支払いサイトとは、締め日から支払日までの期間のことです。「月末締め翌月末払い」のように、締め日と支払日をそろえて書きます。
最後の1文は、注文書が届く前に稼働が始まるのを防ぐためのものです。注文書の受け取りの流れは、注文書とは?SESの発行から請書返送までの流れと送付メール例文で解説しています。
例文をまとめた備考欄の記入例
10個の例文から必要なものを選び、番号付きの箇条書きにすると読みやすくなります。上下割・一部リモートの案件なら、次のような形です。
【備考】 1. 有効期限:発行日(2026年10月1日)から30日間 2. 契約形態:準委任契約(成果物の完成を約するものではありません) 3. 作業範囲:〇〇システムの詳細設計・製造・単体テストの支援 4. 精算幅:月140時間〜180時間(上下割) 控除単価 4,285円/時間、超過単価 3,333円/時間(1円未満切り捨て) 5. 精算単位:15分(15分未満切り捨て) 6. 交通費:通勤交通費は単価に含む。出張の交通費・宿泊費は実費を別途請求 7. 前提条件:週3日リモート・週2日出社、平日9:00〜18:00(休憩1時間) 8. 支払条件:月末締め翌月末日払い、振込手数料は貴社ご負担 9. 本見積の条件は、貴社注文書のご発行により個別契約として確定します
備考欄が長くなりすぎる場合は、「精算条件は別紙のとおり」として、別紙を1枚つけても構いません。大事なのは、条件がどこかに文字で残っていることです。
備考欄で避けたい書き方3つ
備考欄は、あいまいな言葉を減らすほど役に立ちます。次の3つは、SESの見積書でよく見かける失敗です。
1. 「精算あり」「別途協議」だけで終わる
「精算あり」だけでは、時間も割り方もわかりません。「別途協議」は、協議する中身を1つに絞れるときだけ使います。精算幅は数字で書きましょう。
2. 税抜か税込かがわからない
単価の欄に「600,000円」とだけ書くと、税込か税抜かで揉めます。備考欄か明細に「金額はすべて税抜」と1行入れておきます。
3. 前提条件を口頭だけで伝える
「リモート中心でと話しました」は、担当者が変わると残りません。前提条件は必ず見積書に書くのが基本です。
注文書・契約書と備考欄がずれないように確認する5ステップ
見積書の備考欄を書いても、注文書や個別契約書が違う条件だと、そちらが優先されることがあるので注意が必要です。見積書は、多くの場合、契約の前の「提案」にあたるからです。
注文書とは、客先が「この条件で発注します」と示す書類のことです。注文書が届いたら、次の5ステップで照合します。
見積書の備考欄を横に並べる:見積番号で、どの見積に対する注文書かを確認する
精算の3点を照合する:精算幅・割り方(控除単価・超過単価)・精算単位が同じか見る
前提条件を照合する:期間・作業場所・リモート可否・作業時間が同じか見る
お金まわりを照合する:交通費の扱い・支払日・税抜か税込かを確認する
ずれがあれば稼働前に直してもらう:異なる点をメールで具体的に伝え、訂正した注文書をもらう
ずれを見つけたときの連絡は、次の例文が使えます。
いつもお世話になっております。〇月〇日付の注文書を拝受いたしました。お見積書(No.2026-0412)と照合したところ、精算の割り方が「中間割」となっておりました。お見積では「上下割(控除単価4,285円、超過単価3,333円)」でご提示しております。お手数ですが、ご確認のうえ注文書のご訂正をお願いできますでしょうか。
見積と請求の金額が違うと言われたときの伝え方は、見積書と請求書の金額が違う?SESで超過精算を請求する時の伝え方で解説しています。
BPへの発注にも同じ備考をそろえる
上流(客先)と下流(BP・フリーランス)の精算条件をそろえると、控除や超過が出た月も損が出にくくなります。客先の見積に書いた備考欄は、BPへの注文書にもそのまま写しておきましょう。
フリーランスに発注するときは、フリーランス法で取引条件を書面やメールで示す義務があります。報酬の額や支払期日などを示す必要があります。くわしくはフリーランス法のSES対応|発注者の義務7つと実務チェック表をご覧ください。
一方的に条件を変えられたら記録を残す
見積を出したあとに、協議もなく一方的に単価や精算条件を変えて発注されたときは、メールなどで記録を残しましょう。2026年1月1日に施行された取適法(中小受託取引適正化法)の対象取引では、一方的な代金の決定が禁止されています。受注側が協議を求めたのに応じず、代金を決めることです(第5条第2項第4号)。
自社の取引が取適法の対象になるかは、取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つで確認できます。
備考欄の条件をチョータツで案件ごとに管理する
自分で管理する場合は、Excelに案件ごとの「精算幅・割り方・精算単位・交通費・リモート可否」を列にして残します。見積を作るたびにその行を見て、備考欄に写します。
ただ、案件が増えると「この案件はリモート週3だったか」「上下割だったか」を、メールから探し直す時間が増えます。探し間違えると、備考欄と実際の条件がずれる原因になります。
チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件の条件を残す | Excelやメールに散らばる | 案件の情報としてまとめて管理できる |
| 見積前に条件を確認する | メールを探して読み返す | 案件情報を開いて確認できる |
| 社内で共有する | ファイルを送り合う | チームで同じ情報を共有できる |
| 情報を入れる | 1件ずつ手で書き写す | AIが入力を手伝う |
見積の備考欄は、案件の条件を正しく持っているかで質が決まります。条件を1か所にまとめておけば、営業事務が見積を作るときも迷いません。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材もデータベースとして見られます。
よくある質問
- Q. 見積書の備考欄には何を書けばいいですか?
- SESなら、精算幅と割り方、精算単位、交通費、有効期限、前提条件(リモート可否・稼働時間)、支払条件を書きます。金額の表だけでは伝わらない条件を、1項目1〜2文で書くのが基本です。
- Q. 見積書の注意書きの例文で、一番大事なものは?
- SESでは精算幅の例文です。「140〜180時間、上下割、控除単価4,285円、超過単価3,333円」のように書きます。時間・割り方・1時間あたりの金額まであれば、請求の月に揉めにくくなります。
- Q. 見積書の有効期限は何日にすればいいですか?
- 決まった日数はありませんが、SESでは30日程度がよく使われます。要員の空き状況や単価が月ごとに変わるため、短めにしておくと古い条件のまま発注されるのを防げます。
- Q. 備考欄に「別途協議」と書いてもいいですか?
- 使ってもよいですが、精算幅や交通費など決められる条件は数字で書きましょう。「別途協議」だけだと、あとで何を協議するかがわからず、揉める原因になります。
- Q. 見積書の備考欄と注文書の内容が違ったら、どちらが優先されますか?
- 見積書は契約前の提案にあたることが多く、発注の内容を示す注文書の条件で契約が進むことがあります。ずれに気づいたら、稼働が始まる前に注文書の訂正をお願いしましょう。
- Q. 見積書の備考欄にリモート可否を書く必要はありますか?
- 書いておくのがおすすめです。「週3日リモートを前提」と残しておくと、全日出社に変えられたときに、単価や条件の見直しを相談する根拠になります。
まとめ
SESの見積書で揉めごとを防ぐのは、金額の欄ではなく備考欄
備考欄には、精算幅と割り方・精算単位・交通費・有効期限・前提条件・支払条件を書く
精算は、時間・割り方・1時間あたりの控除単価と超過単価まで書く
リモート可否や作業時間は「前提条件」として書き、変わったら再度相談すると添える
「別途協議」「精算あり」だけで終わらせない。税抜か税込かも1行で書く
注文書が届いたら、備考欄と5ステップで照合し、ずれは稼働前に直してもらう
BPやフリーランスへの発注にも、同じ備考をそろえる
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「民法」(第522条 契約の成立と方式、第656条 準委任)
厚生労働省「請負を適正に行うために」(37号告示:労働時間の指示は請負事業主が自ら行う)
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)」(第5条第2項第4号 協議に応じない一方的な代金決定の禁止)
政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)」(第3条 特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)