SESの精算単位15分・30分・1時間で精算額はいくら変わる?計算例と条項の書き方
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
SESの精算単位とは?
精算単位とは、精算に使う稼働時間を、何分きざみで数えるかを決めたルールのことです。15分単位なら、8時間50分は8時間45分として数えます。
精算単位より細かい時間は、端数として切り捨てるのが一般的です。端数処理とは、決めた単位に足りない時間や、1円未満の金額をどう扱うかの決まりのことです。
SESの準委任契約では、月額単価と精算幅(追加請求も値引きもしない稼働時間の範囲)を決めます。精算単位は、稼働時間がこの範囲を外れたときの、超過額や控除額を左右します。
| 精算単位 | 8時間50分の数え方 | 切り捨てられる時間 |
|---|---|---|
| 1分 | 8時間50分 | 0分 |
| 15分 | 8時間45分 | 5分 |
| 30分 | 8時間30分 | 20分 |
| 1時間 | 8時間 | 50分 |
精算幅そのものの決め方は、SESの稼働時間の上限・下限の決め方|契約前の確認12項目つきで解説しています。
15分・30分・1時間で精算額はいくら変わる?
精算単位が粗いほど、超過額は少なく、控除額は多くなります。切り捨てで稼働時間が短く数えられるからです。
ここでは、次の条件で計算します。
月額単価:60万円
精算幅:140〜180時間
割り方:上下割(月額単価を下限時間・上限時間で割って1時間の単価を出す方法)
控除単価:600,000÷140=4,285円、超過単価:600,000÷180=3,333円(1円未満切り捨て)
精算単位の端数は、月の合計で1回だけ切り捨てる
超過精算の計算例(稼働185時間50分)
超過精算とは、稼働時間が精算幅の上限を超えた分を、月額単価に上乗せして請求することです。計算式は「(精算に使う時間−上限時間)×超過単価」です。
| 精算単位 | 精算に使う時間 | 超えた時間 | 超過額 |
|---|---|---|---|
| 1分 | 185時間50分 | 5時間50分 | 19,442円 |
| 15分 | 185時間45分 | 5時間45分 | 19,164円 |
| 30分 | 185時間30分 | 5時間30分 | 18,331円 |
| 1時間 | 185時間 | 5時間 | 16,665円 |
1分単位と1時間単位の差は、1か月で2,777円です。同じ働き方が1年続くと、33,324円の差になります。
控除の計算例(稼働138時間40分)
下限を下回ったときは、逆に精算単位が粗いほど控除が大きくなります。計算式は「(下限時間−精算に使う時間)×控除単価」です。
| 精算単位 | 精算に使う時間 | 足りない時間 | 控除額 |
|---|---|---|---|
| 1分 | 138時間40分 | 1時間20分 | 5,713円 |
| 15分 | 138時間30分 | 1時間30分 | 6,427円 |
| 30分 | 138時間30分 | 1時間30分 | 6,427円 |
| 1時間 | 138時間 | 2時間 | 8,570円 |
1時間単位にすると、1分単位より2,857円多く引かれます。精算単位は、SES企業が請求する側でも払う側でも、金額に直接効く条件です。
控除の計算方法の全体は、SESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いでくわしく解説しています。
日ごとの切り捨てと月合計の切り捨ての違い
同じ精算単位でも、日ごとに切り捨てると、月合計で切り捨てるより大きく時間が減ります。毎日の端数が積み重なるからです。
2026年10月は、土日と10月12日(月・スポーツの日)を除くと21営業日です。この21日のうち、20日を8時間50分、1日を9時間10分働いたとします。月の合計は185時間50分です。
| 精算単位 | 月合計で切り捨て | 日ごとに切り捨て |
|---|---|---|
| 15分 | 185時間45分 → 超過19,164円 | 184時間 → 超過13,332円 |
| 30分 | 185時間30分 → 超過18,331円 | 179時間 → 超過0円 |
| 1時間 | 185時間 → 超過16,665円 | 169時間 → 超過0円 |
30分単位を日ごとに当てると、実際は5時間50分超えていても、超過額は0円になります。契約書に「30分単位」とだけ書くと、日ごとか月合計かで解釈が割れます。
編集部のおすすめは、「1か月の合計を15分単位で計算し、日ごとの端数処理はしない」と書くことです。計算が簡単で、差も小さく、揉めにくい書き方です。
フリーランスの稼働時間の切り捨ては違法?
契約で決めて相手に示した精算単位どおりに計算するなら、切り捨てそのものが直ちに違法になるわけではないと考えられます。問題になるのは、決めていない切り捨てを、あとから一方的に行う場合です。
フリーランス法の「報酬の減額」に当たるおそれ
フリーランス法とは、2024年11月1日に施行された、フリーランスとの取引のルールを定めた法律のことです。正式名は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」です。
この法律の第5条は、1か月以上の業務委託をする会社に、いくつかの行為を禁じています。その1つが報酬の減額です。報酬の減額とは、フリーランスに責任がないのに、決めた報酬を後から減らして払うことです。
たとえば、3条通知で「月合計・15分単位」と示していたのに、実際は日ごとに30分単位で切り捨てたとします。3条通知とは、発注するときに報酬の額や支払期日などをフリーランスに示す書面やメールのことです(第3条)。
月額50万円・精算幅140〜180時間・上下割の場合、超過単価は2,777円です。185時間50分の月なら、約束どおりの超過額は15,967円です。日ごとの30分単位で数えると179時間となり、0円になってしまいます。
この差額15,967円は、フリーランスに責任のない理由で報酬が減った状態です。報酬の減額に当たるおそれがあります。
円の端数も、切り捨てを重ねない
国のフリーランス法Q&A(問77)は、円の端数の切り捨てを取り上げています。計算の途中ごとに切り捨てた端数の合計が1円を超えると、報酬の減額として問題になるとしています。単価・時間・金額の各段階で何度も切り捨てる計算は避けましょう。
円の端数処理は、最後の精算額で1回だけ行うと決めておくのが安全です。禁止行為の全体は、フリーランス法の禁止行為7つ|SESの減額・買いたたきOK・NG例で整理しています。
BP(法人)との取引は取適法も確認する
取引先がBPなどの会社の場合は、取適法(中小受託取引適正化法)の対象になることがあります。取適法とは、2026年1月1日に下請法が改正されてできた法律のことです。取適法でも、決めた代金を後から減らす減額は禁止行為です。
対象になるかは、資本金や従業員数で決まります。判定のしかたは、取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つで確認できます。
個人事業主の残業時間の切り捨てと、会社員の違い
個人事業主(フリーランス)の稼働時間には、会社員の残業代のルールである労働基準法はそのままは当てはまりません。フリーランスは雇われている人(労働者)ではなく、取引の相手だからです。
一方、自社で雇っている社員エンジニアは労働者です。厚生労働省の「確かめよう労働条件」では、労働時間は1分単位が原則と説明しています。
| 立場 | 当てはまるルール | 切り捨てのポイント |
|---|---|---|
| 自社の社員 | 労働基準法 | 1分単位が原則。1日ごとの切り捨ては不可 |
| フリーランス | フリーランス法・民法 | 契約で決めて示した単位どおりに計算する |
| BP(法人) | 民法・取適法(対象なら) | 契約どおり。後からの減額は不可 |
同じページでは、1か月の残業時間の合計の端数処理も認めています。30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる方法です。ただし、1日単位ではできないとされています。
客先との精算単位が30分でも、社員の給与計算まで30分で切り捨ててよいことにはなりません。客先との精算と、社員の給与は別のルールで動いています。
なお、フリーランスでも、働き方の実態が会社員と同じなら労働者と判断されることがあります。判断の基準は、業務委託の労働者性の判断基準|偽装フリーランスを防ぐ8項目で解説しています。
精算単位を契約に書くときの条項例
精算単位は、単位・切り捨ての対象(日ごとか月合計か)・円の端数処理の3点を、契約書と注文書にそろえて書きます。どれか1つでも抜けると、解釈が割れます。
次の文例は、個別契約書や注文書の「精算条件」の欄にそのまま使える形にしています。
(精算条件) 1. 月額単価:600,000円(税抜) 2. 精算幅:140時間〜180時間 3. 控除単価:4,285円/時間(600,000円÷140時間、1円未満切り捨て) 4. 超過単価:3,333円/時間(600,000円÷180時間、1円未満切り捨て) 5. 精算単位:1か月の稼働時間の合計を15分単位で計算し、 15分未満は切り捨てる。日ごとの端数処理は行わない。 6. 端数処理:控除額・超過額の1円未満は、最後に1回だけ切り捨てる。 7. 稼働時間の確定:稼働報告書を翌月3営業日以内に提出し、 甲乙で確認したうえで確定する。
フリーランスに発注する場合は、同じ内容を3条通知にも書きます。3条通知の書き方は、フリーランス法の3条通知ひな形|SESの発注書・メール記載例を参考にしてください。
精算単位で損しないための確認手順5つ
精算単位で損をしないコツは、上流(客先)と下流(BP・フリーランス)の条件をそろえることです。そのうえで、請求前に同じ時間で計算します。次の順で確認しましょう。
客先の注文書で精算単位を確認する:15分・30分・1時間のどれか、日ごとか月合計かを見る
下流の契約を同じ条件にする:BP・フリーランスへの注文書や3条通知も、同じ精算単位にする
稼働報告書を分単位で集める:切り捨て前の実際の時間を残しておく
精算単位で丸めて計算する:丸めた時間で、控除額・超過額を出す
請求前に客先と時間を確定する:同じ時間で、BP・フリーランスへの支払額も確定する
上流が30分単位なのに、下流を1分単位で払うと、その差はSES企業の負担になります。逆に、上流が1分単位なのに下流だけ30分単位で切り捨てると、下流に不利な条件になります。どちらも、契約を結ぶ前にそろえておくのが一番の対策です。
稼働報告書の集め方は稼働報告書のテンプレート|SES・業務委託の書き方と精算前チェックで紹介しています。週3・週4の案件の精算幅は、SESの週3・週4案件の単価の計算|精算幅と契約書の書き方を参考にしてください。
精算単位をそろえたいときのBPへの連絡例文
客先の精算単位が決まったら、BPにも同じ条件を先に伝えます。発注前に合意しておけば、あとで「切り捨てられた」と言われずに済みます。
件名:【ご確認】〇〇案件の精算条件について
△△様
〇〇案件の客先条件が確定しましたので、貴社との条件もあわせてご確認ください。
・精算幅:140〜180時間(上下割)
・精算単位:1か月の合計を15分単位で計算し、15分未満は切り捨て(日ごとの端数処理はしません)
・円の端数:控除額・超過額の1円未満を最後に1回だけ切り捨て
問題がなければ、この条件で注文書をお送りします。
チョータツで案件ごとの精算条件を管理する
自分で管理する場合は、Excelの案件一覧に「精算単位」「日ごとか月合計か」「割り方」の列を足します。提案のたびにその列を見て、下流の条件と比べます。
ただ、案件が増えると、条件がメールや注文書に散らばります。「この案件は30分単位だったか」を探すだけで時間がかかります。
チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 精算条件を残す | Excelやメールに散らばる | 案件の情報としてまとめて管理できる |
| 提案前に確認する | 注文書を探して読み返す | 案件情報を開いて確認できる |
| 社内で共有する | ファイルを送り合う | チームで同じ情報を共有できる |
| 情報を入れる | 1件ずつ手で書き写す | AIが入力を手伝う |
他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材もデータベースとして見られます。条件を比べたうえで提案できるので、契約後の「聞いていない」を減らせます。
よくある質問
- Q. SESの精算単位は15分と30分、どちらが多いですか?
- 業界全体の割合を示す公的な統計は、2026年9月時点で見当たりません。現場では15分・30分・1時間のいずれも使われます。精算額の差を小さくするなら、15分単位を月合計で当てる方法がおすすめです。
- Q. 個人事業主の稼働時間を切り捨てるのは違法ですか?
- 契約で決めて3条通知などで示した精算単位どおりなら、直ちに違法とはいえないと考えられます。決めていない切り捨てを後から一方的に行うと、フリーランス法の報酬の減額に当たるおそれがあります。
- Q. SESの超過精算はどう計算しますか?
- 「(精算単位で丸めた稼働時間−上限時間)×超過単価」で出します。月額60万円・上限180時間・上下割・15分単位で185時間50分なら、5時間45分×3,333円=19,164円です。
- Q. 個人事業主の残業時間も、会社員と同じ1分単位ですか?
- 1分単位が原則なのは、労働基準法が当てはまる会社員です。フリーランスは契約で決めた精算単位で計算します。ただし、働き方の実態が会社員と同じなら、労働者と判断されることがあります。
- Q. 客先が30分単位のとき、フリーランスへの支払いも30分単位にできますか?
- 発注前に合意し、3条通知に書いておけば、同じ条件にできると考えられます。発注した後で単位を粗く変えると、報酬の減額に当たるおそれがあります。
- Q. 精算単位を契約書に書き忘れたらどうなりますか?
- 何分単位で数えるかの根拠がなくなり、実際の時間どおりに計算するよう求められやすくなります。次の更新のときに、精算単位・日ごとか月合計か・円の端数処理の3点を書き足しましょう。
まとめ
精算単位は、稼働時間を何分きざみで数えるかの決まり。15分・30分・1時間がよく使われる
粗い単位ほど、超過額は少なく、控除額は多くなる
185時間50分の月で、超過額は15分単位19,164円、1時間単位16,665円
日ごとに切り捨てると差が大きくなる。30分単位を日ごとに当てると超過0円の例もある
フリーランスの時間を、決めていない方法で後から切り捨てると、報酬の減額に当たるおそれがある
契約と3条通知に「単位・日ごとか月合計か・円の端数処理」を書き、上流と下流でそろえる
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)」(第3条 取引条件の明示、第5条 禁止行為)
公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法 Q&A」(問77 端数の切り捨て)
公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」
厚生労働省「確かめよう労働条件 Q&A:残業、早出や休日出勤による割増賃金のチェック」(端数処理の方法)
e-Gov法令検索「労働基準法」(第24条 賃金の支払、第37条 割増賃金)
政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
内閣府「国民の祝日について」