業務委託の勤怠管理は違法?準委任で許される稼働管理の範囲|NG・OK例の対比表と稼働報告を集める5ステップ

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

業務委託の勤怠管理は違法?答えは「管理の中身しだい」

業務委託の要員に勤怠管理をすること自体が、すぐに違法になるわけではありません。時間を「指示・命令」すると問題になり、時間を「把握」するだけなら問題になりにくい、というのが答えです。

まず言葉をそろえます。勤怠管理とは、出勤・退勤の時刻や遅刻・欠勤を会社が決めて、守らせることです。雇っている社員に対して行うものです。

稼働管理とは、要員が何時間働いたかを記録し、精算や請求に使うことです。SES営業が毎月やっている「稼働報告を集める仕事」は、本来は稼働管理に当たります。

準委任契約とは、「仕事を進めること」そのものを任せる契約です。完成品を約束する請負とちがい、働いた時間や月単位で報酬を払うことが多い契約です。SESの多くは、この準委任の形をとっています。

SES営業がこの問題に関わる3つの場面

SES営業は、次の3つの立場で「業務委託の勤怠管理」に関わります。

場面契約の関係気をつけること
①自社がフリーランスに発注自社が委託する側自社が時間を指示すると「実は雇用」になるおそれ
②BPの要員を受け入れる自社がBP企業に委託する側自社がBPの要員に直接指示すると偽装請負のおそれ
③客先に要員を出す客先が委託する側客先が勤怠を管理すると偽装請負のおそれ

ここでは、SES営業が自分で気をつけられる①と②を中心に書きます。③の客先による勤怠管理は、SESの勤怠管理は違法?客先が管理するNG例と日報・週報の扱いでくわしく解説しています。

勤怠管理で違法になる理由は2つある

業務委託の要員に勤怠管理をしてまずいのは、「偽装請負」と「労働者性」という2つの問題につながるからです。どちらも、契約書の名前ではなく、実際の働き方で判断されます。

偽装請負とは、契約は請負や準委任なのに、実際は発注する側が要員に直接指示を出している状態のことです。これは許可のない労働者派遣と同じ扱いになります。

労働者性とは、業務委託の人が、実際には「雇われている人(労働者)」と同じ働き方をしているかどうかのことです。労働者と判断されると、残業代や社会保険などの問題が出てきます。

問題誰と誰の関係時間の管理がなぜ問題か
偽装請負発注する会社と、受ける会社の要員労働時間の指示・管理は、要員を雇う会社が自分で行うのが基準だから
労働者性発注する会社と、フリーランス本人時間の指定・管理は、指揮監督があることを示す基本の要素だから

国の基準は「単なる把握」を除いている

偽装請負かどうかは、いわゆる37号告示(労働者派遣と請負の区分に関する基準)で判断します。37号告示は、受ける会社が自分で行うべきこととして、次の管理を挙げています。

  • 始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇などの指示その他の管理

  • 残業や休日の仕事をさせるときの指示その他の管理

大事なのは、どちらにも「単なる把握を除く」と書かれている点です。つまり、発注する側が労働時間を知ること自体は禁止されていません。37号告示の読み方は、偽装請負の37号告示をやさしく解説|厚労省Q&AのSES該当箇所でくわしく解説しています。

厚生労働省の疑義応答集(第3集)でも、準委任契約にも同じ考え方が当てはまると示されています。契約の形ではなく、指揮命令があるかどうかで判断されます。

フリーランスでは「時間の拘束」が重く見られる

フリーランスが労働者かどうかは、国のガイドラインに判断の目安があります。その中で、勤務場所と勤務時間が指定・管理されていることは、指揮監督関係を示す基本的な要素とされています。

ただし、業務の性質や安全のために時間が決まる場合は、それだけで拘束とはされません。例えば、客先ビルの入館時間が決まっている場合がこれに近い考え方です。くわしくは業務委託の労働者性の判断基準|偽装フリーランスを防ぐ8項目を参考にしてください。

NGな勤怠管理とOKな稼働管理の対比表

NGとOKの分かれ目は、時間を「決めて守らせる」か、働いた結果を「教えてもらう」かです。SES営業の日常でよくある場面を、対比表にまとめました。

場面NG(指揮命令に当たる)OK(把握・精算のため)
始業時刻「毎朝9時に始めて」と自社が指示する客先の作業時間帯を契約で決め、実績を報告してもらう
遅刻遅刻した要員を自社営業が叱る・反省文を書かせる稼働時間が減った分を、精算幅のルールで精算する
休暇休むには自社の許可が要るとする休む予定を事前に共有してもらう(客先との調整のため)
残業自社営業が「今日は2時間残って」と命じる月の稼働が精算幅を超えそうなら、会社間で相談する
打刻自社の勤怠システムで出退勤を打刻させる月末に稼働報告書で合計時間を出してもらう
在席確認チャットで在席を何度も確かめる週報や月報で作業の進み具合を報告してもらう
欠勤欠勤1回ごとに罰金を引く実際の稼働時間どおりに精算する
注意の相手BPの要員に直接注意するBP企業の責任者に、会社として相談する

表の左側は、どれも「自社が要員の時間を決め、守らせている」行為です。右側は、「働いた結果を知り、お金の計算に使っている」行為です。迷ったら、その行為は精算や客先との調整に必要かを考えましょう。

精算のための稼働報告がOKな理由

精算のための稼働報告は、準委任という契約の仕組みそのものに入っているので、求めて問題ありません。

準委任には民法の委任のルールが使われます。民法第645条では、受けた側は、頼んだ側から求められたら、いつでも仕事の状況を報告しなければならないとされています。

さらにSESでは、精算幅で報酬が変わることがよくあります。精算幅とは、「月140〜180時間」のように、基本の金額で払う稼働時間の範囲のことです。範囲を外れると増減するので、稼働時間を知らないと請求も支払いもできません。

精算幅の決め方は、SESの稼働時間の上限・下限の決め方|契約前の確認12項目つきで解説しています。

契約書・注文書に書いておく4項目

稼働報告のルールは、口頭の指示ではなく、契約書や注文書で先に決めておきます。先に決めておけば、毎月の報告のお願いが「指示」ではなく「契約の実行」になります。

  1. 報告の単位と締切:「月1回、翌月第1営業日までに合計稼働時間を報告」など

  2. 報告の形式と送り先:稼働報告書の様式、フォームのURL、送り先のメールアドレス

  3. 精算の条件:精算幅、控除・超過の単価、精算の時間単位(15分・30分など)

  4. 作業の進め方:作業の手順や時間配分は受ける側が決める、と明記する

4つ目は、偽装請負や労働者性を避けるための大事な一文です。稼働報告書の様式は、稼働報告書のテンプレート|SES・業務委託の書き方と精算前チェックを使えます。

稼働報告を集める5ステップ

稼働報告は、締切の案内→受け取り→確認→客先へ提出→請求・支払いの5ステップで集めます。自社で直接契約したフリーランスと、BP経由の要員とで、送り先だけ変えます。

  1. 月末の3営業日前に、BP企業とフリーランスへ締切を案内する

  2. 月末締めで、稼働報告書または合計時間を受け取る

  3. 精算幅と照らし、控除・超過があるか確かめる

  4. 客先の報告様式に写して提出し、確認をもらう

  5. 確認済みの時間で、客先への請求書と、BPへの支払い額を出す

2026年10月分のスケジュール例

2026年10月31日は土曜日で、11月3日(火)は文化の日です。月末締め・翌月第1営業日締切の場合、次のような流れになります。

日付やること相手
10月28日(水)締切の案内を送るBP企業・フリーランス
11月2日(月)稼働報告の締切・受け取りBP企業・フリーランス
11月4日(水)精算幅の確認後、客先へ提出客先
11月5日(木)以降確認済みの時間で請求・支払い額を確定営業事務

締切を過ぎても報告が届かないときの動き方は、SESの稼働報告書が遅れる・出ないときの対応|請求を間に合わせる手順にまとめています。

締切案内のメール例文

案内のメールは、「お願い」と「契約上のルール」を書き、時間の使い方には触れないのがコツです。BP企業の担当者あての例です。

件名:【ご案内】10月分 稼働報告のご提出について(締切 11/2)

株式会社〇〇 〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
10月分の稼働報告のご提出をお願いいたします。

・対象:〇〇案件(ご担当要員:〇〇様)
・締切:2026年11月2日(月)
・提出方法:いつものフォーム(URL)またはメール返信

精算は、個別契約書の精算幅(140〜180時間)に沿って行います。
ご不明な点があれば、お気軽にご連絡ください。

「遅れないように」「毎日の出退勤も書いてください」といった、働き方への注文は入れません。日ごとの内訳が客先から必要な場合は、その理由を添えて会社間でお願いします。

稼働報告を自動化する3つの方法

稼働報告の手間は、「集める」を自動にし、「条件を探す」をなくすことで大きく減らせます。まずお金のかからない方法から始め、人数が増えたらツールを考えましょう。

方法向いている規模よい点気をつける点
メール+Excel要員が10人くらいまで追加の費用がない転記ミスと催促の手間が残る
入力フォーム+表計算10〜50人くらい回答が1つの表に自動でたまる精算幅との照合は別に作る
工数・勤怠の管理ツール50人以上集計・承認まで1か所でできるBPの要員に打刻させる使い方はしない

入力フォームで集める手順

  1. フォームに「案件名」「要員名」「対象月」「合計稼働時間」「備考」の5項目を作る

  2. 回答が表計算シートにたまるように設定する

  3. シートに案件ごとの精算幅の下限・上限の列を足す

  4. 合計時間が下限を下回る・上限を超える行に色が付くよう、条件付き書式を設定する

  5. 毎月の締切案内にフォームのURLを貼る

ここで集めるのは月の合計時間と作業の概要です。出勤・退勤の打刻を自社に毎日送らせる形にすると、勤怠管理に近づくので避けましょう。関数の作り方は、エクセルの工数計算の関数|人日・人月を出す式とテンプレ付きで紹介しています。

チョータツで案件ごとの精算条件をまとめる

自分でフォームを作れば「集める」は楽になりますが、案件ごとにバラバラな精算幅や報告ルールを探す手間は残ります。この手間を減らすのに、DrivenXのチョータツが使えます。

チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有するツールです。案件の情報に、精算幅、報告の締切、客先の報告様式などをまとめておけば、チームの誰が見ても同じ条件で確認できます。

困りごとチョータツでできること
精算幅が案件ごとに違い、探すのに時間がかかる案件の情報を1か所で管理し、条件をすぐ確認できる
担当者しか条件を知らない案件・人材の情報をチームで共有できる
入力が面倒で情報が古くなるAIが入力を手伝う

チョータツは3,000社以上が使っていて、無料で始められます。稼働報告そのものはフォームで集め、条件の管理はチョータツと分けると、毎月の締め作業が落ち着きます。

遅刻・欠勤が続くときの正しい対応

業務委託の要員の遅刻や欠勤が続いたら、本人を叱らず、契約の問題として会社どうしで話します。

  • BP経由の要員:BP企業の責任者に事実を伝え、改善の方法を相談する

  • 直接契約のフリーランス:「約束した仕事が進んでいるか」を軸に話し、時間の守り方は指示しない

  • 稼働時間が減った場合:精算幅のルールどおりに控除し、罰金のような別の減額はしない

BP企業の責任者に相談するときは、事実と契約の話だけを伝えます。

件名:〇〇案件の稼働状況についてのご相談

〇〇様 いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
〇〇案件で、10月は予定していた作業時間帯に入れない日が4日ありました。
客先からも作業の遅れについてご相談をいただいています。
御社から要員の方へ状況をご確認いただき、今後の進め方をご提案いただけますか。
精算は、個別契約書の精算幅どおりに行います。

要員本人への注意や改善の指示は、雇っているBP企業が行います。自社から本人へ直接指示を出さないことで、偽装請負のリスクを避けられます。

客先から「遅刻が多い」と言われたときの動き方は、SESの勤怠不良エンジニアへの対応|遅刻・欠勤を止める6ステップにまとめています。

よくある質問

Q. 業務委託のエンジニアに、始業時刻を守るよう伝えるのは違法ですか?
自社が時刻を決めて守らせると、労働者性や偽装請負と判断されるおそれがあります。客先の入館時間など、業務の都合で決まる時間帯は、契約で先に取り決めておきましょう。
Q. 準委任契約で、稼働時間の報告を求めてもいいですか?
問題ありません。民法第645条で、受けた側には仕事の状況を報告する義務があります。精算幅で報酬が変わる契約なら、稼働時間の報告は欠かせません。
Q. 業務委託の要員に、日ごとの出退勤時刻を書かせてもいいですか?
精算や客先への報告に必要な範囲で、実績として書いてもらうのは「把握」に当たります。ただし、その時刻を使って注意したり、打刻を義務にしたりすると管理に近づきます。
Q. 稼働報告の提出が遅れるフリーランスには、どう対応すればいいですか?
締切と提出方法を契約書に書き、毎月同じ日に案内しましょう。遅れた場合は、精算や支払いの日がずれることを事務的に伝えます。
Q. 稼働報告を自動化するには、何から始めればいいですか?
まずは入力フォームで合計時間を集め、表計算シートに自動でためる方法がおすすめです。案件ごとの精算条件は、チョータツなどで1か所にまとめておくと照合が早くなります。
Q. BPの要員の稼働が少ないとき、BPの要員本人に連絡してもいいですか?
事務的な確認でも、まずはBP企業の担当者を通すのが安全です。要員に直接指示を出すと、偽装請負と見られるおそれがあります。

まとめ

  • 業務委託の要員に、時間を「指示・管理」する勤怠管理はNG。時間を「把握」する稼働管理はOK

  • 違法になる理由は、偽装請負と労働者性の2つ。どちらも実際の働き方で判断される

  • 37号告示では、労働時間の「単なる把握」は管理から外されている

  • 準委任では受けた側に報告義務があるので、精算のための稼働報告は求めてよい

  • 報告のルールは契約書・注文書で先に決め、フォームで集めて自動集計する

  • 案件ごとの精算条件は、チョータツで管理・共有すると探す手間がなくなる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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