SESの勤怠管理は違法?客先が始業・終業を決める・遅刻を注意するNG例8つと、日報・週報・稼働報告のOKな出し方

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESで客先が勤怠を管理すると違法になる?

客先がSESエンジニアの勤怠を管理すると、偽装請負と判断されるおそれがあります。偽装請負は、許可のない労働者派遣として労働者派遣法の違反になります。

勤怠管理とは、始業・終業の時刻、休憩、休日、休暇、残業などを決めたり、記録したり、守らせたりすることです。SESの準委任契約では、これを自社が行うのが原則です。

偽装請負とは、契約は準委任や請負なのに、客先がエンジニアに直接指示し、派遣と同じ状態になっていることです。準委任契約とは、成果物の完成ではなく、決まった業務を行うことに報酬を払う契約のことです。

なぜ客先が勤怠を管理するとダメなのか

派遣では、派遣先が働く人に直接指示を出せます。そのかわり、派遣元は国の許可を受けなければなりません。

SESの準委任契約は派遣ではないので、客先はエンジニアに直接指示を出せません。勤務時間を決めることも「指示」の一つです。客先が勤怠を管理していると、実態は派遣だと見られます。

勤怠を自社でどう管理するかの具体的な方法は、SESの勤怠管理の方法|営業が押さえる注意点5つとツールで解説しています。本記事は「どこから違法になるか」に絞ります。

境目は37号告示の「単なる把握」

客先がしてよいのは、勤務時間を単なる把握にとどめることです。単なる把握とは、勤務時間を「知っておく」だけで、決めたり命じたりしないことです。

37号告示とは、派遣と請負(準委任を含む)を分けるための厚生労働省の基準のことです。正式名は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)です。条文と厚生労働省Q&AのSESに関係する箇所は、偽装請負の37号告示をやさしく解説|厚労省Q&AのSES該当箇所でまとめています。

37号告示の第2条第1号ロは、次の2つを自社で行うことを求めています。

条文原文やさしく言うと
ロ(1)労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと勤務時間・休み・休暇は自社が決める
ロ(2)労働時間を延長する場合又は休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと残業・休日出勤は自社が決める

厚生労働省のガイドが示す4つの確認点

厚生労働省の「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」は、ロ(1)の判断で見る点を示しています。まとめると次の4つです。

  1. 仕事をする日時(始業・終業、休憩、休日など)を、事前に自社と客先で打ち合わせているか

  2. 仕事中に客先から直接指示を受けないよう、書面を作っているか

  3. その書面にもとづき、自社の責任者を通じて具体的に指示しているか

  4. 実際に働いた時間を、自社が自分で把握しているか

残業(ロ(2))では、自社の責任者が進み具合を見て決めているかが見られます。業務量が増えるとき、客先から事前に連絡をもらう体制かも確認されます。

また、同じガイドは、仕事の評価の項目で「勤惰点検」(出勤や勤務態度のチェック)も自社で行うよう示しています。遅刻や欠勤を注意するのも、自社の仕事です。

客先が勤怠を管理するNG例8つ

客先の勤怠管理がNGになるのは、客先が勤務時間・休み・残業を決める、命じる、承認する、注意する場合です。現場でよくある8つを整理しました。

#NGになる場面37号告示の項目
1客先がエンジニアに「9時に来て18時まで」と始業・終業を直接指定するロ(1)
2客先の担当者が、遅刻したエンジニアを直接注意するロ(1)・イ(2)
3客先のタイムカードや勤怠システムに打刻させ、客先が承認するロ(1)
4有給や休みの申請を、客先の担当者が承認・却下するロ(1)
5客先が「今日は残業して」「土曜も出て」とエンジニアに直接命じるロ(2)
6休憩の時間や取り方を、客先がエンジニアに直接決めるロ(1)
7客先が遅刻・欠勤の回数でエンジニアを評価し、交代を求めるイ(2)・ハ(2)
8在宅のエンジニアに、客先へ始業・終業をチャットで直接報告させ、客先が確認・注意するロ(1)

どれも1回で直ちにアウトと決まるわけではありません。しかし、毎日のルールとして定着していると、客先が労働時間を管理していると判断されやすくなります。

NG例1:始業時刻を客先が決める

始業時刻を客先の就業時間に合わせること自体は、問題ありません。問題は、客先がエンジニアに直接時刻を命じることです。

厚生労働省の疑義応答集(第2集)Q11の考え方は次のとおりです。合理的な理由があって客先と同じ就業時間になっても、それだけで派遣とはなりません。つまり、自社が自社のルールとして「9時〜18時」と決める形ならOKです。

NG例2:遅刻を客先が注意する

遅刻の注意は、エンジニアの勤務態度の管理にあたります。客先が気づいたら、自社の責任者に連絡してもらい、責任者から本人に注意します。

遅刻や欠勤が続くエンジニアへの対応は、SESの勤怠不良エンジニアへの対応|遅刻・欠勤を止める6ステップで手順を解説しています。

NG例5:残業を客先が直接命じる

残業は、エンジニアを雇う自社が36協定の範囲で決めるものです。36協定とは、残業や休日出勤をさせるために、会社と従業員の代表が結ぶ約束のことです。

客先は、業務量が増えそうなときに自社の責任者へ連絡します。責任者が進み具合を見て、残業が必要かを判断します。残業が上限に近づいたときの客先との交渉は、SESの客先で残業が続くときの営業の対応|安全配慮義務と交渉で解説しています。

客先がしてもよいOK例

客先が勤務時間を知っておく・確認するだけなら、「単なる把握」なので問題ありません。精算や入館管理のために必要な場面は多くあります。

#OKな場面ポイント
1月末に、自社がまとめた稼働報告書を客先が確認する精算のための把握
2入館証の記録で、客先が入退館の時刻を知っている施設管理のための把握
3客先と同じ就業時間を、自社のルールとして決めている第2集Q11
4休みの予定を、自社の責任者から客先に事前に共有する自社が決めたことの連絡
5業務量が増えそうなとき、客先が自社の責任者に連絡する残業を決めるのは自社
6作業の進み具合を、日報・週報で客先に報告する業務の報告(次の章)

「決める人」と「知る人」を分けて考えるとわかりやすくなります。決めるのは自社、客先は知るだけ。これが基本の線引きです。

SESで日報・週報を客先に提出するのは違法?

日報・週報を客先に出すこと自体は、違法ではありません。作業の進み具合を報告するものなら、準委任の受けた仕事についての報告として自然なものです。

民法第645条は、仕事を受けた側(受任者)に報告の義務を定めています。頼んだ側(委任者)に求められれば、いつでも状況を報告します。第656条で、この決まりは準委任にも使われます。

ただし、日報・週報が客先による勤怠管理や作業指示の道具になると、偽装請負に近づきます。中身と使われ方で判断しましょう。

OKな日報・週報とNGな日報・週報

見る点OKな例NGに近い例
書く内容作業した内容、進み具合、課題出退勤の時刻、遅刻の理由
誰が受け取るか自社の責任者、または責任者経由で客先客先だけが受け取り、自社は見ない
客先の返し方内容の確認、仕様の補足翌日の作業を個人に指示、勤務態度の注意
誰がまとめるか自社の責任者がまとめて出すエンジニア個人が客先に直接出す

日報・週報の出し方の手順

  1. 提出ルートを決める:エンジニア→自社の責任者→客先、の順にする

  2. 書く項目を決める:作業内容・進み具合・課題・次の予定(自社が決めたもの)に絞る

  3. 時刻の欄は入れない:出退勤の時刻は、自社の勤怠システムだけで管理する

  4. 客先の返信先を決める:返信や追加の依頼は、自社の責任者宛てにしてもらう

  5. 自社の責任者が読む:責任者が毎回目を通し、必要なら作業の指示を出す

週報の書き方の例

例文・テンプレート
【週報】2026年10月5日(月)〜10月9日(金)
株式会社△△ 管理責任者:□□

■ 今週の作業
・会員登録画面の入力チェック機能を実装(完了)
・決済APIの結合テスト(8割完了)

■ 課題・確認したいこと
・決済エラー時の表示文言について、仕様のご確認をお願いします

■ 来週の予定(弊社で割り振り済み)
・決済APIの結合テストの残り
・不具合の修正

ご依頼・ご質問は、弊社の□□までお願いいたします。

ポイントは、週報の出し手を自社の責任者にしていることと、来週の予定を自社が決めていることです。客先に仕事の状況は伝わり、指示の流れは自社に残ります。

稼働報告書で稼働時間を確認してもらうのはOK

月末に、稼働時間をまとめた稼働報告書を客先に確認してもらうのは問題ありません。稼働時間は、精算幅の計算や請求に必要な情報だからです。

稼働報告書とは、エンジニアがその月に何時間働いたかをまとめ、客先に報告する書類のことです。作業報告書と呼ぶこともあります。

注意したいのは、客先の確認が「承認して直させる」ところまで行くケースです。客先が1日ごとの時刻を直させたり、遅刻を理由に時間を削ったりすると、勤怠の管理に近づきます。

客先の関わり方判断の目安
月の合計時間を確認し、請求の根拠にするOK(精算のための把握)
数字の食い違いを、自社の責任者に問い合わせるOK
1日ごとの出退勤を客先が決めて、エンジニアに書き直させるNGに近い

稼働報告書の書き方と回収の流れは、稼働報告書のテンプレート|SES・業務委託の書き方と精算前チェックで解説しています。報告書が締め日に出てこないときの対応は、SESの稼働報告書が遅れる・出ないときの対応|請求を間に合わせる手順にまとめています。

フリーランスを客先に出すときと、勤怠ルールの社内ひな形

フリーランスとの業務委託で発注者が勤務時間を細かく管理すると、その人が「労働者」と判断されるおそれがあります。フリーランスには、始業・終業の時刻を決めるのではなく、稼働時間の実績を報告してもらう形にしましょう。業務委託で許される稼働管理の範囲は業務委託の勤怠管理は違法?準委任で許される稼働管理の範囲、労働者性の見方は業務委託の労働者性の判断基準|偽装フリーランスを防ぐ8項目で解説しています。

勤怠ルールの社内ひな形

社員・フリーランスどちらの案件でも、案件ごとに次のひな形を個別契約の前に埋めておくと、稼働後のずれを防げます。

項目記入例
勤務時間を決める人自社(9:00〜18:00、休憩12:00〜13:00)
打刻・勤怠の記録自社の勤怠システム(客先の入館記録は参考のみ)
遅刻・欠勤の連絡先本人→自社責任者→客先窓口
残業の判断客先から責任者へ相談→責任者が判断して本人に指示
休暇の申請・承認本人が自社に申請、自社が承認し客先へ共有
日報・週報作業内容のみ。責任者経由で毎週金曜に提出
稼働報告月末締め、翌月第1営業日に自社から提出

客先に勤怠管理をやめてもらうときの伝え方

客先が悪気なく勤怠を管理しているケースは多くあります。伝えるときは、客先のリスクを減らすためという理由を添え、代わりの方法をセットで提案しましょう。

  1. 事実を確認する:どんな管理が、誰から、どのくらいの頻度で行われているかをエンジニアに聞く

  2. 代わりの方法を用意する:自社の勤怠記録を月1回共有する、遅刻は責任者に連絡してもらう、など

  3. 責任者から客先の窓口に連絡する:エンジニア本人に交渉させない

  4. 文書で残す:合意した内容をメールで送り、個別契約の更新時に反映する

例文・テンプレート
件名:勤怠のご連絡方法の見直しについて(ご相談)

株式会社〇〇
〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
弊社エンジニア△△の勤怠のご連絡方法について、ご相談です。

現在、始業・終業のご報告を御社に直接差し上げておりますが、
10月16日(金)以降は、以下の形に変更させていただけますでしょうか。

・始業・終業の管理は、弊社の勤怠システムで行います
・稼働時間は、毎月第1営業日に弊社からまとめてご報告します
・遅刻や休みのご連絡、作業量のご相談は、弊社□□宛てにお願いします

準委任契約として、御社と弊社の双方が適正な形でご支援するための変更です。
ご不便をおかけしますが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。

チョータツで案件ごとの報告ルールを管理する

自分で管理するなら、案件一覧に「管理責任者」「勤怠の管理方法」「日報・週報の提出先」「稼働報告の締め日」を足します。案件ごとに客先のルールが違っても、一覧を見ればすぐわかる状態にします。

ただ、案件が増えるほど、Excelやメールに情報が散らばりがちです。チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件の条件を残すExcelやメールに散らばる案件の情報としてまとめて管理できる
提案前に確認する過去のメールを探す案件情報を開いて確認できる
担当が変わったとき口頭で引き継ぐチームで同じ情報を共有できる
情報を入れる1件ずつ手で書き写すAIが入力を手伝う

報告ルールを提案前に確認しておけば、稼働が始まってから「客先が勤怠を管理していた」と気づく事態を減らせます。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材もデータベースとして見られます。

よくある質問

Q. SESで客先が勤怠を管理するのは違法ですか?
客先が始業・終業を決めたり、遅刻を注意したり、残業を命じたりすると、偽装請負と判断されるおそれがあります。勤務時間を知っておくだけの「単なる把握」なら問題ありません。
Q. 客先のタイムカードで打刻するのは偽装請負ですか?
入館管理などのために客先の記録が残ること自体は、直ちに問題ではありません。問題になるのは、客先がその記録で勤怠を承認したり、遅刻を注意したりすることです。勤怠の管理は自社の記録で行いましょう。
Q. SESの日報・週報を客先に提出してもよいですか?
作業の進み具合を報告する日報・週報なら問題ありません。自社の責任者を通して出し、出退勤の時刻や遅刻の理由は書かない形にしましょう。客先が日報で翌日の作業を個人に指示するのは避けます。
Q. 客先から直接「明日休んでいいよ」と言われたら、どうすればよいですか?
休みを決めるのは自社です。エンジニアには自社の責任者に申請してもらい、責任者から客先に予定を共有します。客先の了解を得ることと、休みを承認することは分けて考えましょう。
Q. 客先と同じ就業時間で働くのは問題ですか?
合理的な理由があり、結果的に同じ時間になっているだけなら、直ちに派遣とはされません(第2集Q11)。自社のルールとして時間を決め、自社から本人に伝える形にしましょう。

まとめ

  • SESで客先が勤怠を「管理」すると、偽装請負として違法になるおそれがある

  • 境目は37号告示の「単なる把握を除く」。客先は知る・確認するまで、決める・命じる・注意するのは自社

  • NG例は、始業時刻の直接指定、遅刻の注意、客先による打刻の承認、有給の承認、残業の直接指示など

  • 日報・週報は、作業の報告としてなら提出してよい。自社の責任者を通し、時刻や遅刻理由は書かない

  • 月末の稼働報告書を客先が確認するのは、精算のための把握なのでOK

  • フリーランスの時間を細かく管理すると、労働者性が問題になる

  • 客先への見直しは、責任者から代わりの方法とセットで伝える

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

関連する記事