SESの客先で長時間労働が続くときの営業の対応|36協定の上限、自社が負う安全配慮義務、客先への申し入れ例文と増員提案

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

客先で残業が続くとき、責任を負うのは誰?

客先で働いていても、社員の労働時間と健康に責任を負うのは、雇っているSES企業です。36協定を結ぶのも、残業代を払うのも、健康を守る配慮をするのも、雇い主である自社です。

安全配慮義務とは、雇い主が、働く人の命や体の安全を守りながら働けるよう配慮する義務のことです。労働契約法第5条に「使用者は…必要な配慮をするものとする」と書かれています。

準委任契約で常駐している場合、客先は要員の雇い主ではありません。そのため「客先が長く働かせたから、自社は知らない」という言い分は通りにくいと考えてください。営業は、客先の現場を一番知っている自社の窓口として、残業の状況をつかむ役目を持ちます。

立場主な責任根拠
自社(SES企業)36協定の範囲で働かせる、健康への配慮、労働時間の把握労働基準法第32条・第36条、労働契約法第5条、労働安全衛生法第66条の8の3
客先(準委任の発注者)要員に直接指示をしない、無理な条件を付けない37号告示、契約の内容
BP(要員の所属会社)BPの社員の労働時間・健康の管理BPが雇い主として負う

BPとは、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。業界の言葉はSES用語一覧|営業が現場で使う用語60と意味・例文つきで確認できます。BPの要員の場合、雇い主はBPです。自社はBPに状況を伝え、一緒に客先と話す立場になります。

36協定の上限は何時間?超えるとどうなる?

36協定で残業させられるのは、原則月45時間・年360時間までです。臨時の特別な事情があって特別条項を結んでいても、次の上限は超えられません(労働基準法第36条)。

36協定とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせるために、会社と社員の代表が結ぶ約束のことです。

項目上限
原則月45時間・年360時間
特別条項の年間年720時間
単月(休日労働を含む)100時間未満
2〜6か月の平均(休日労働を含む)80時間以内
月45時間を超えられる月数年6か月まで

上限を超えると、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(同法第119条)。罰則の相手は雇い主の自社で、客先ではありません。

さらに、医師による面接指導の義務もあります。対象は、週40時間を超えた時間が月80時間を超え、疲労がたまった社員が申し出たときです。根拠は労働安全衛生法第66条の8と同規則第52条の2・第52条の3です。会社は、そのために社員の労働時間を把握しなければなりません(同法第66条の8の3)。

派遣と準委任で36協定の扱いがどう違うかは36協定は派遣と準委任でどう違う?SES営業の残業管理のポイントでくわしく解説しています。

準委任で客先が残業を指示するのは問題?

準委任契約(SES)では、客先が要員に「今日は残って」と直接指示することはできません。残業を含めた働く時間の指示は、雇い主の自社が行うものだからです。

厚生労働省の「37号告示」(第2条第1号ロ)は、準委任などと認められる条件の1つに、残業の指示を受託側が行うことを挙げています。客先が直接残業を指示している状態が続くと、偽装請負と判断されるおそれがあります。

偽装請負とは、契約は準委任や請負なのに、実際は客先が要員に直接指示していて、派遣と同じ状態になっていることです。

現場でよくあるのは、客先のリーダーが要員に「この件、今日中にお願い」と頼む場面です。営業としては、次の形に直してもらうよう申し入れます。

  • 作業の依頼は、自社の業務責任者(リーダー役)を通してもらう

  • 1人常駐で責任者がいない場合は、依頼を自社の営業か窓口にも共有してもらう

  • 残業が必要かどうかは、自社が要員と話して決める

どこまでがOKでどこからがNGかは準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20で具体例を挙げています。

勤怠の数字をどう確かめるか

営業が残業に気づくのは、たいてい月末の稼働報告を受け取ったときです。それでは手遅れになりやすいため、週に1回、その週までの累計時間を確かめるのがおすすめです。

確かめ方の例は次のとおりです。

  1. 要員に、毎週金曜に「今週の稼働時間」と「月初からの累計」をチャットで送ってもらう

  2. 営業は、累計を月の上限(精算幅の上限や月45時間)と比べる

  3. 月の半ばで上限の半分を超えていたら、要員と短く話す

  4. 客先の勤怠システムの数字と、要員の申告がずれていないかを月末に照らし合わせる

精算幅とは、SES契約で決める「月の稼働時間の下限と上限」のことです(例:140〜180時間)。上限を超えた分は追加で請求し、下限を下回った分は差し引く約束にする会社が多いです。

精算幅の上限は「客先に請求できる時間」の話で、36協定の上限とは別物です。たとえば所定労働時間が月160時間の社員なら、180時間働くと残業は20時間です。精算幅の上限が200時間なら残業は40時間になり、月45時間の手前まで来ます。

超過した時間の請求はSESで残業が上限を超えたら?超過精算が支払われない時の対応手順で解説しています。

残業時間ごとの判断表

残業が増えたとき、営業がどこで何をするかを、あらかじめ決めておくと迷いません。次の表は、社内ルールのひな形としてそのまま使えます(36協定の特別条項がある会社の例)。

月の時間外・休日労働営業がやること客先への動き
30時間未満週1回の数字確認を続けるなし
30〜45時間要員と面談し、原因(一時的か、続きそうか)を聞く業務責任者経由で状況を共有
45時間超(特別条項の範囲)上司に報告し、翌月も続く見込みなら申し入れを準備是正の申し入れ(例文1)
80時間に近い医師の面接指導の案内、要員の体調確認業務量の削減か増員を正式に依頼(例文2)
100時間に近い・2か月以上80時間超残業を止める判断。退場や交代も検討契約条件の見直しを提案

表の数字は、自社の36協定の内容に合わせて変えてください。特別条項がない会社は、月45時間の手前で客先に申し入れる必要があります。

客先への申し入れの例文

客先への申し入れは、①事実(数字)②自社の立場(法律上守る必要がある)③代わりの案の順で伝えます。「きついので減らしてください」だけでは、客先も動きにくいからです。

例1:月45時間を超えた時点での申し入れ(メール)

件名:〇〇の稼働状況のご報告とご相談

株式会社△△ ■■様

いつもお世話になっております。株式会社□□の◇◇です。
弊社〇〇の今月の稼働が、20日時点で172時間(所定を超える時間が約44時間)となっております。
弊社では、社員の時間外労働を月45時間以内に収める社内ルールを設けております。
今月の残りの期間について、作業の優先順位を弊社リーダー経由でご相談させていただけますでしょうか。
あわせて、来月も同じ業務量が続く見込みであれば、体制の追加もご提案できます。

例2:2か月続けて80時間に近いときの申し入れ(面談の言い方)

「2か月続けて、〇〇の時間外が80時間近くになっています。弊社には、社員の健康を守る法律上の義務があり、このままの状態は続けられません。来月からは、〇〇の稼働を月170時間以内にさせてください。そのうえで、足りない分は、弊社からもう1名を追加するか、作業の範囲を見直す形でご相談させてください。」

例3:客先のリーダーが直接残業を頼んでいるとき

「現場で、〇〇に直接『今日は残ってほしい』とお声がけいただいていると聞きました。準委任の契約では、作業時間の判断は弊社が行う決まりになっています。お急ぎの作業は、弊社リーダーの◆◆にご依頼いただけますでしょうか。弊社で調整して対応いたします。」

業務量が減らないときの3つの提案

申し入れても業務量が減らないときは、①増員 ②精算条件の見直し ③作業範囲の見直しのどれかを提案します。客先にとっても、要員が倒れて抜けるほうが大きな損失です。

提案内容向いている場面
増員同じスキルの要員をもう1名追加する業務量の増加が数か月続く
精算条件の見直し精算幅の上限を下げる、固定時間にする月ごとの波が大きい
作業範囲の見直し担当する機能や工程を絞る予算の都合で増員できない

増員の提案は、候補者のスキルシートを添えて出すと通りやすくなります。「人を足すべきです」だけでは、客先は判断できません。

案件そのものが炎上しているときは、SES案件が炎上したときの営業の対応|増員・交代・契約見直しの手順も参考にしてください。精算幅の設計はSESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いで解説しています。

要員の体調が崩れたら、すぐにやること

要員が「眠れない」「朝起きられない」などと話したら、残業時間の数字より体調を優先します。長時間労働が続いたあとの体調不良は、あとで労災かどうかが問われることもあります。

  1. その日のうちに上司と情報を共有する

  2. 本人に、医師の診察を受けるよう勧める

  3. 翌日からの残業を止め、客先には「弊社の判断で稼働を調整します」と伝える

  4. 休職や退場が必要なら、契約書の終了・交代の条項を確認する

休職や退場になったときの客先への連絡は、SESで体調不良のエンジニアが退場・休職するとき|客先連絡の例文付きで例文を紹介しています。

増員の候補探しを、チョータツとxhoursで早くする

自分で増員の候補を探す場合、BPに一斉にメールを送り、返ってきたスキルシートを1通ずつ確かめます。客先に「来月から1名追加します」と言えるまでに、数日かかることも珍しくありません。

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有するツールのことです。3,000社以上が利用し、無料で始められます。

やること自分でやる場合DrivenXのツールを使う場合
BPの営業中人材を探すBPに一斉メールし、返信を待つチョータツで連携した会社の営業中人材がデータベースになる
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よくある質問

Q. 客先常駐のエンジニアの残業は、誰が管理するのですか?
雇っている会社が管理します。自社の社員なら自社、BPの社員ならBPです。客先は、準委任契約では要員に直接残業を指示できません。
Q. SESで36協定の上限を超えたら、客先も罰せられますか?
36協定の上限違反の罰則の対象は、雇い主の会社です(労働基準法第119条)。ただし客先が直接指示していた場合は、偽装請負として別の問題になるおそれがあります。
Q. 安全配慮義務はSESの客先にもありますか?
労働契約法第5条で安全配慮義務を負うのは、労働契約を結んでいる使用者、つまり雇い主です。客先がどこまで責任を負うかは、指示の実態などによって個別に判断されます。
Q. 精算幅の上限まで働かせれば、問題ありませんか?
精算幅の上限は客先に請求できる時間で、36協定の上限とは別です。精算幅の範囲内でも、自社の36協定の上限を超えれば違反になります。
Q. 残業が多いことを理由に、案件から退場させてもよいですか?
自社の判断で退場を申し出ることはできますが、契約の終了や交代の条項に従う必要があります。まず申し入れと増員の提案を行い、それでも改善しないときの最後の手段にします。

まとめ

  • 客先常駐でも、労働時間と健康に責任を負うのは雇っている自社

  • 36協定の上限は原則月45時間・年360時間、特別条項でも単月100時間未満・2〜6か月平均80時間以内

  • 準委任では客先は残業を直接指示できず、続けば偽装請負のおそれがある

  • 勤怠は週1回確かめ、判断表に沿って申し入れる

  • 申し入れは数字と代わりの案(増員・精算条件・作業範囲)をセットで出す

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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