36協定は派遣と準委任(SES)でどう違う?残業を指示できる人・上限時間・精算幅の関係と対応手順
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
36協定とは?SES営業が押さえる基本
36協定とは、法定労働時間を超えて働かせたり、休日に働かせたりするために、会社と働く人の代表が結ぶ約束のことです。 労働基準法 第36条にもとづくので「さぶろく協定」と呼ばれます。
法律で決まった働く時間の上限を、法定労働時間といいます。1日8時間・1週40時間です(労働基準法 第32条)。これを超える残業には、36協定を結び、労働基準監督署に届け出ることが必要です。
36協定があっても、残業は無制限ではありません。2019年4月(中小企業は2020年4月)から、上限が法律で決まりました。
| 区分 | 時間外労働の上限 | 休日労働を含むか |
|---|---|---|
| 原則(限度時間) | 月45時間・年360時間 | 含まない |
| 特別条項あり(年間) | 年720時間以内 | 含まない |
| 特別条項あり(単月) | 月100時間未満 | 含む |
| 特別条項あり(複数月) | 2〜6か月の平均が月80時間以内 | 含む |
特別条項とは、忙しい時期など臨時の事情があるときに、月45時間を超えてもよいとする36協定の追加の決まりのことです。 月45時間を超えられるのは、年6か月までです。
上限を破ると、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(労働基準法 第119条)。厚生労働省の資料では「懲役」と書かれていますが、2025年6月の刑法改正で「拘禁刑」に変わりました。
派遣と準委任(SES)の36協定の違い【比較表】
派遣と準委任(SES)の一番の違いは、「残業を指示できるのは誰か」です。 派遣では派遣先が指示でき、準委任では客先は指示できません。どちらも、使う36協定は雇っている会社のものです。
| 項目 | 派遣 | 準委任(SES) | 請負 |
|---|---|---|---|
| 使う36協定 | 派遣元の36協定 | 自社(受注側)の36協定 | 自社(受注側)の36協定 |
| 残業を指示する人 | 派遣先 | 自社の責任者 | 自社の責任者 |
| 労働時間を把握する人 | 派遣先(実績を派遣元へ通知) | 自社(稼働報告で確認) | 自社 |
| 客先の36協定の適用 | なし | なし | なし |
| 契約で決めること | 就業時間・時間外の上限 | 精算幅・超過単価 | 納期・成果物 |
準委任契約とは、仕事の完成ではなく、業務を行うこと自体を約束する契約のことです。 SESの多くは準委任で結ばれます。準委任では、客先と技術者の間に指揮命令の関係がありません。
請負も同じ考え方です。請負では、発注者が見るのは成果物と納期で、働く時間ではありません。労働時間の管理と残業の指示は、請け負った会社が自分で行います。
派遣・準委任・請負の違いそのものは、SESと派遣の違い|準委任・派遣・請負の比較表と確認5項目で詳しく比べています。
派遣の36協定:派遣元が結び、派遣先が範囲内で指示する
派遣の技術者を残業させるには、派遣元の事業場で36協定を結び、届け出ておく必要があります。 派遣先は、その36協定の範囲の中でだけ残業を指示できます。
厚生労働省の派遣先向け資料は、責任の分け方を次のように示しています。
| 役割 | 派遣元(雇う会社) | 派遣先(受け入れる会社) |
|---|---|---|
| 36協定の締結・届出 | する | しない |
| 36協定の内容 | 派遣先に情報提供する | 内容を把握し、範囲内で残業させる |
| 労働時間の把握 | 派遣先から実績を受け取る | 適正に把握し、派遣元へ正確に通知する |
| 範囲を超えた残業 | ― | 派遣先が労働基準法違反になる |
このしくみは、労働者派遣法 第44条が決めています。働く時間の決まりの一部について、派遣先を「使用者」とみなす一方で、36協定は派遣元が結ぶものとしています。派遣元と派遣先の責任の分け方の全体は、派遣元・派遣先とは?違いと責任の分担をSES営業向けに一覧で解説で一覧にしています。
派遣契約に書く時間外労働
派遣の個別契約には、時間外労働をさせる場合の時間数を書きます。 労働者派遣法 第26条と施行規則 第22条で、就業時間や、就業時間を延長できる時間数を決めることになっています。
派遣元の営業は、次の3つがずれていないかを確認します。
派遣元の36協定の上限(例:月45時間)
個別契約に書く時間外労働の上限(例:月20時間)
技術者に渡す就業条件明示書の時間外労働(例:月20時間)
個別契約の上限は、36協定の上限以下にします。個別契約の作り方は、労働者派遣契約とは|基本契約と個別契約、準委任からの切替手順で説明しています。個別契約書に書く項目は、派遣の個別契約書の書き方|記載事項一覧と保管・印紙で確認できます。
準委任(SES)の36協定:客先は残業を指示できない
準委任(SES)では、客先が技術者に残業を指示すると、偽装請負と判断される要素になります。 残業を決めるのは、技術者を雇っている自社です。
厚生労働省の「37号告示」は、請負や準委任が適正かどうかの判断基準です。37号告示とは、派遣と請負(準委任を含む)の区別の基準を示した厚生労働省の告示のことです。 この告示は、時間外労働・休日労働の指示や管理を、受注した会社が自分で行うことを求めています。
準委任の技術者の残業は、2つの枠で管理します。
| 枠 | 何を決めるか | 決める人 |
|---|---|---|
| 36協定 | 法律上、残業させてよい時間の上限 | 自社と社員の代表 |
| 精算幅 | 客先に請求する時間の範囲と超過単価 | 自社と客先の契約 |
精算幅とは、月額単価の対象になる稼働時間の範囲のことです。 たとえば「140〜180時間」と決めます。精算幅は請求のルールであって、残業の許可ではありません。
精算幅と36協定の計算例
2026年10月で考えてみます。平日は22日で、10月12日(スポーツの日)を除くと21日です。1日8時間なら、所定の時間は168時間です。
| 精算幅の上限 | 所定時間(21日×8時間) | 上限まで働いたときの時間外 |
|---|---|---|
| 180時間 | 168時間 | 12時間 |
| 200時間 | 168時間 | 32時間 |
| 220時間 | 168時間 | 52時間(月45時間を超える) |
精算幅の上限が220時間だと、上限まで働くと月45時間を超えます。特別条項がない会社では違法になります。精算幅を決めるときは、自社の36協定の範囲に収まるかを先に確かめます。
精算幅の決め方は、SESの稼働時間の上限・下限の決め方|契約前の確認12項目つきにまとめています。
客先から残業を頼まれたときの営業の対応手順
SESで客先から残業を頼まれたら、技術者に直接答えさせず、自社の責任者が引き取って判断します。 技術者がその場で引き受けると、客先が指示した形になりやすいからです。
窓口を確認する:客先には「残業のご相談は弊社の責任者へ」と、契約開始時に伝えておきます。
内容を聞く:いつまでに、何の作業が、何時間ほど必要かを聞きます。
36協定を確認する:本人の今月の時間外が、自社の36協定の上限にどれだけ近いかを見ます。
精算幅を確認する:精算幅の上限を超えるなら、超過単価で請求できるかを契約で確かめます。
本人の状況を聞く:体調や予定を確認します。
自社から指示する:自社の責任者が、本人に作業の時間と範囲を伝えます。
記録を残す:相談の日時、内容、判断をメールで残します。
客先への返信の例文
件名:【ご相談】10月の追加作業の件
〇〇株式会社 〇〇様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
10月20日(火)までの追加作業の件、ご相談ありがとうございます。
弊社にて、担当者の稼働状況と契約の精算幅を確認いたしました。
今月は残り10時間程度であれば、弊社の管理のもとで対応可能です。
精算幅(140〜180時間)を超える分は、契約の超過単価でご請求いたします。
作業の進め方は、弊社から担当者へ指示いたします。
何卒よろしくお願いいたします。
社内の残業アラートのルール例
残業の超過は、月末に気づいても手遅れです。次のように、段階ごとに誰が動くかを社内で決めておきます。
| 当月の時間外 | 誰が | すること |
|---|---|---|
| 30時間に達した | 責任者 | 本人と残りの作業量を確認し、客先に見通しを共有 |
| 40時間に達した | 営業責任者 | 客先と作業の優先順位・体制の追加を相談 |
| 45時間が見込まれる | 経営者・労務担当 | 特別条項の手続きの有無を確認。なければ残業を止める |
やってはいけないこと
技術者に「客先に言われたら残業してよい」と伝える
客先に技術者の勤怠を管理してもらう
精算幅の上限を、36協定を確かめずに大きくする
残業の相談を口頭だけで済ませる
客先による勤怠の管理がなぜ問題になるかは、SESの勤怠管理は違法?客先が管理するNG例と日報・週報の扱いで解説しています。
契約前に確認する残業のチェックリスト
残業のトラブルは、契約を結ぶ前の確認でほとんど防げます。 派遣と準委任で、確認することは少し違います。
| 確認すること | 派遣 | 準委任(SES) |
|---|---|---|
| 自社の36協定の上限と特別条項 | 派遣元として確認 | 自社として確認 |
| 契約に書く時間外の上限 | 個別契約に記載 | 精算幅の上限で調整 |
| 残業の相談の窓口 | 派遣先の指揮命令者 | 自社の責任者 |
| 時間の実績の受け取り方 | 派遣先から通知 | 稼働報告書で確認 |
| 超えそうなときの連絡 | 派遣先から派遣元へ | 自社から客先へ |
BPの技術者を再委託で出す場合も同じです。BPの36協定と、BP側の精算幅も確認しておきます。
精算幅を超えた分が支払われないときの対応は、SESで残業が上限を超えたら?超過精算が支払われない時の対応手順にまとめています。残業が何か月も続く現場で、客先と体制や納期を交渉する方法は、SESの客先で残業が続くときの営業の対応|安全配慮義務と交渉で解説しています。
チョータツで案件ごとの条件を管理する
案件ごとの精算幅や契約形態は、1か所にまとめておくと確認が早くなります。 まずはExcelで、案件名・契約形態(派遣/準委任)・精算幅・超過単価の列を作るだけでも効果があります。
案件が増えると、Excelの更新が追いつかなくなります。そのときはチョータツが使えます。チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。
案件・人材の情報を管理・共有できる
提案の前に、案件の条件を確認できる
AIが入力を手伝う
3,000社以上が利用し、無料で始められる
36協定の時間そのものは、自社の勤怠の記録で管理します。チョータツは、その前の「どの案件がどんな条件か」をそろえる役目です。
よくある質問
- Q. 派遣社員に派遣先の36協定は適用されますか?
- 適用されません。派遣の技術者に適用されるのは、雇っている派遣元の36協定です。派遣先は、派遣元の36協定の範囲で残業を指示します。
- Q. 派遣元が36協定を結んでいないと、派遣先は残業させられますか?
- させられません。派遣元に36協定がなければ、法定労働時間を超える残業はできません。派遣先がさせると、派遣先が労働基準法違反になります。
- Q. 準委任契約(SES)で客先が残業をお願いするのは違法ですか?
- 客先が自社の責任者に、作業量や期限の相談をすること自体は問題ありません。ただ、客先が技術者に直接残業を指示すると、偽装請負と判断される要素になります。残業の判断と指示は、自社の責任者が行います。
- Q. 精算幅の上限までなら、36協定を気にしなくてよいですか?
- いいえ。精算幅は請求のルールで、残業の許可ではありません。精算幅の中でも、36協定の上限を超えれば違法になります。
- Q. 請負契約では労働時間を報告する必要はありますか?
- 請負では、発注者は成果物と納期を見るのが基本です。労働時間の管理は、請け負った会社が自分で行います。
まとめ
派遣の技術者に使うのは、派遣元の36協定。派遣先はその範囲で残業を指示する
準委任(SES)では、客先は残業を指示できない。自社が36協定と精算幅で管理する
36協定の上限は原則月45時間・年360時間。特別条項でも年720時間などの上限がある
精算幅の上限は、自社の36協定に収まるように決める
客先から残業を頼まれたら、自社の責任者が引き取り、確認してから返事をする
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「労働基準法」(第32条 労働時間、第36条 時間外及び休日の労働、第119条 罰則)
e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(第26条 契約の内容等、第44条 労働基準法の適用に関する特例)
厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
厚生労働省「請負を適正に行うために」(37号告示:労働時間の指示は請負事業主が自ら行う)