労働者派遣契約とは|基本契約と個別契約の違いと、SESの準委任から派遣契約へ切り替える手順10ステップ

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

労働者派遣契約とは?

労働者派遣契約とは、派遣元が派遣先に対して、労働者派遣をすることを約束する契約のことです(派遣法26条1項)。派遣元はエンジニアを雇う会社、派遣先はエンジニアに仕事の指示を出す客先です。

労働者派遣とは、自社で雇った人を、雇ったまま他社に行かせ、その他社の指示を受けて働かせることです(派遣法2条1号)。「雇う会社」と「指示する会社」が別になるのが特徴です。

派遣事業を行うには、厚生労働大臣の許可が必要です(派遣法5条)。SES企業でも、派遣契約でエンジニアを出すなら許可を持っていなければなりません。

登場する会社・人SESでの例役割
派遣元自社(SES企業)エンジニアを雇い、給料を払う
派遣先客先(元請け・エンド)エンジニアに仕事の指示を出す
派遣労働者自社のエンジニア客先の指示を受けて働く

派遣元・派遣先それぞれの責任は、派遣元・派遣先とは?違いと責任の分担をSES営業向けに一覧で解説で一覧にしています。

派遣契約の基本契約と個別契約の違い

派遣契約は、基本契約と個別契約の2本立てで結ぶのが一般的です。法律が「労働者派遣契約」と呼んでいるのは、このうち個別契約です(厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」)。

労働者派遣基本契約とは、取引先との間で、派遣取引全体に共通するルールを決める契約のことです。料金の支払い方法、損害賠償、秘密保持、契約解除などを書きます。1社と1回結べば、その後の派遣に共通して使えます。

個別契約とは、1件の派遣ごとに、業務内容・場所・期間・人数などの具体的な条件を決める契約のことです。派遣法26条1項の事項は、個別契約に書きます。

比べる点基本契約個別契約
何を決めるか取引全体の共通ルール1件ごとの具体的な条件
結ぶタイミング最初の派遣の前に1回派遣・更新のたびに
法律で決まった記載事項特になし(当事者で決める)派遣法26条1項・施行規則22条の事項
SESの準委任でいうとSES基本契約書個別契約書・注文書

準委任の基本契約は、派遣には使えません。準委任の基本契約は「客先は指示しない」ことを前提に作られているためです。派遣に切り替えるときは、派遣用の基本契約を新しく結びます。

個別契約に決める事項(要点)

個別契約では、派遣法26条1項と施行規則22条で決められた事項を決め、書面に記載して残します(施行規則21条3項)。ここでは契約の中身として押さえる要点だけを並べます。

電磁的記録(電子データ)で作成・保存することも認められています(業務取扱要領)。書き漏れがあると法律違反になるので、ひな形を使うのが安全です。

主な記載事項は次のとおりです。

区分書く事項SES営業が確認するポイント
仕事業務の内容、業務に伴う責任の程度「Javaでの詳細設計・実装」など具体的に書く
場所就業場所、組織単位(課・グループなど)客先の住所と部署名。在宅の有無
指示指揮命令者客先の誰が指示を出すか(氏名・役職)
期間派遣期間、就業日開始日・終了日、土日祝の扱い
時間始業・終業の時刻、休憩時間9:00〜18:00、休憩60分など
時間外就業日以外の就業、時間延長の上限残業の上限時間。36協定と合わせる
安全安全・衛生に関する事項健康診断、作業環境
苦情苦情の処理方法派遣元・派遣先それぞれの窓口
解除契約解除のときの雇用安定措置次の仕事の確保、休業手当の負担
責任者派遣元責任者・派遣先責任者両社の責任者の氏名・連絡先
その他福利厚生施設の利用、派遣終了後の直接雇用の扱い、協定対象派遣労働者・無期雇用派遣労働者に限るか客先が本人を直接雇いたいときの手数料など

このほか、派遣先は派遣元から示された許可番号を、同じ書面に記載しておきます(施行規則21条4項)。

契約書の書式としての記載事項一覧、作成チェックリスト、保管期間、印紙の要否は、派遣の個別契約書の書き方|記載事項一覧と保管・印紙で解説しています。

派遣契約と準委任契約の違い

派遣契約と準委任契約の違いは、客先がエンジニアに直接指示を出せるかどうかです。派遣は客先が指示を出せます。準委任は、指示は自社(受託側)が出し、客先は直接指示できません。

準委任契約とは、決められた仕事を行うこと(作業そのもの)を引き受ける契約です。SESの多くはこの形です。

比べる点派遣契約準委任契約(SES)
仕事の指示を出す人客先(派遣先)自社(受託側)
許可派遣の許可が必要不要
出せる人自社で雇っている社員だけ自社社員のほか、BP・フリーランスも(再委託の条件による)
客先の人選び事前面接など人を選ぶ行為はしない(法は努力義務、派遣先指針は「行わない」)契約の中身による
期間の制限原則3年まで(個人単位・事業所単位)法律上の上限はない
必要な書類個別契約、就業条件明示書、派遣先への通知、台帳など基本契約、個別契約・注文書など

準委任なのに客先が直接指示を出していると、実態は派遣とみなされ、偽装請負になるおそれがあります。偽装請負とは、契約の名前は請負や準委任なのに、実態が派遣になっている状態のことです。

どこまでの指示がNGかは、準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20で具体例を挙げています。

準委任から派遣契約に切り替えるべきケース

客先がエンジニアに直接指示を出す必要があるなら、派遣契約への切り替えを考えます。準委任のまま客先の指示を受け続けるのは、偽装請負のリスクがあるからです。

SES営業の現場では、次のような相談が切り替えのきっかけになります。

  • 客先のリーダーが、毎朝エンジニアに直接タスクを割り振りたい

  • 客先が、残業や休日出勤をエンジニア本人に直接頼みたい

  • 自社の業務責任者が現場にいられず、指示の窓口を置けない

  • 客先のチームに入り、客先社員と同じ指示系統で動いてほしいと言われた

ただし、切り替えられるのは自社が派遣の許可を持っていて、出す人が自社の社員の場合だけです。許可がない場合や、BP・フリーランスの場合は、準委任のまま「指示は自社の責任者を通す」形に戻す方法を客先と話し合います。

準委任から派遣契約への切替手順10ステップ

切り替えは、契約を結ぶ前に客先から受け取るものがあるため、順番が大切です。ここでは、2026年12月1日(火)から派遣に切り替える例で、時系列に並べます。

日程の例ステップ主に動く人
2026年10月26日(月)1. 切り替えの判断と、許可・人の確認自社の営業・責任者
10月30日(金)ごろ2. 準委任契約の終わらせ方を決める自社の営業・客先
11月6日(金)ごろ3. 派遣の基本契約を結ぶ自社・客先
11月13日(金)ごろ4. 客先から抵触日と待遇情報を受け取る客先 → 自社
11月16日(月)ごろ5. 待遇と派遣料金を決める自社
11月20日(金)ごろ6. 個別契約を結ぶ自社・客先
11月24日(火)ごろ7. エンジニア本人の同意と就業条件の明示自社 → 本人
11月27日(金)ごろ8. 客先へ派遣する人の情報を通知する自社 → 客先
11月30日(月)まで9. 派遣元管理台帳を作る自社
12月1日(火)以降10. 開始後の月次管理自社・客先

1. 切り替えの判断と、許可・人の確認

最初に、派遣に切り替えてよい条件がそろっているかを確かめます。1つでも欠けると、派遣契約は結べません。

  1. 自社が労働者派遣事業の許可を持っているか(許可番号を手元に用意)

  2. 出す人が自社で雇っている社員か(BP・フリーランスは不可)

  3. 業務が派遣の禁止業務(建設・警備・港湾運送など)に当たらないか

  4. 客先が、自社から受け入れた人をさらに別の会社へ派遣しないか

BPの社員を自社経由で派遣すると、二重派遣になります。二重派遣とは、派遣された人を、さらに別の会社に派遣して働かせることです。くわしくはSESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方を読んでください。

2. 準委任契約の終わらせ方を決める

次に、今の準委任契約をいつ、どう終えるかを客先と決めます。準委任の最終日と派遣の開始日の間に、空白や重なりが出ないようにします。

多くの場合は、準委任の個別契約・注文書の期間を11月30日で終え、更新しません。中途解約が必要なら、基本契約の解約予告の条項を確認します。

3. 派遣の基本契約を結ぶ

派遣用の基本契約を、客先と新しく結びます。準委任の基本契約とは別の書類です。

料金の支払いサイト、損害賠償の上限、秘密保持、反社会的勢力の排除などを決めます。自社のひな形を先に出すと、条件を自社に合わせやすくなります。

4. 客先から抵触日と待遇情報を受け取る

個別契約を結ぶ前に、客先から2つの情報を書面やメールで受け取ります。受け取らないまま契約を結ぶことは、法律で禁止されています(派遣法26条5項・9項)。

  • 抵触日の通知(派遣法26条4項):抵触日とは、客先が派遣を受け入れられる期間(原則3年)が切れる最初の日のことです。

  • 比較対象労働者の待遇情報(派遣法26条7項):比較対象労働者とは、待遇を比べる相手となる客先の正社員などのことです。客先が、その人の賃金や待遇の情報を提供します。

客先がすでに他社から派遣を受け入れていると、抵触日が近いこともあります。抵触日は必ず客先に確認し、自社で推測しないでください。期間の考え方は派遣契約の期間は?3年ルールと抵触日をSES営業向けに解説で解説しています。

5. 待遇と派遣料金を決める

受け取った情報をもとに、エンジニアの待遇と客先に請求する派遣料金を決めます。派遣で働く人の待遇は、「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」のどちらかで決めます(派遣法30条の3・30条の4)。

労使協定方式とは、派遣元が社員の代表と協定を結び、国が示す一般的な賃金の水準以上で待遇を決める方式のことです。多くの派遣元はこの方式を使っています。自社がどちらの方式かは、社内の派遣担当に確認します。

SESの単金と派遣料金は、同じ金額にしなくてもかまいません。派遣は社会保険料や有給休暇の費用も含めて考えます。派遣単価(派遣料金)の相場とは|内訳とマージン率の計算方法で計算してから提示します。

6. 個別契約を結ぶ

条件が決まったら、派遣法26条1項などの事項を書いた個別契約を結びます。この時点で、派遣元は客先に許可を受けていることを明示します(派遣法26条3項)。

個別契約では、特に次の3つを客先とすり合わせます。

  • 指揮命令者(客先の誰が指示するか)

  • 時間外・休日の就業の上限

  • 派遣先責任者(客先側の窓口となる責任者)

7. エンジニア本人の同意と就業条件の明示

準委任で働いていた自社社員を派遣の対象にするときは、事前に本人の同意を得る必要があります(派遣法32条2項)。本人が同意しなければ、派遣には切り替えられません。

同意を得たら、派遣が始まる前に、本人へ次の内容を書面などで示します。

  • 就業条件の明示(派遣法34条):個別契約の内容、抵触日など

  • 派遣料金の額の明示(派遣法34条の2)

  • 待遇の決め方の説明(派遣法31条の2)

就業条件の明示は、書面の交付が原則です。FAXや電子メールで示すのは、本人が希望した場合に限られます(施行規則26条)。

8. 客先へ派遣する人の情報を通知する

派遣が始まる前に、派遣する人の情報を客先に通知します(派遣法35条)。書面・FAX・電子メールなどで行います(施行規則27条)。

主な通知内容は、氏名、労使協定の対象かどうか、無期か有期か、性別などです。健康保険・厚生年金・雇用保険の加入状況も伝えます。

9. 派遣元管理台帳を作る

自社は、派遣する人ごとに派遣元管理台帳を作り、3年間保存します(派遣法37条)。派遣先名、就業場所、期間、始業・終業時刻、業務の種類、苦情の処理などを記録します。

客先も、派遣先管理台帳を作って3年間保存します(派遣法42条)。台帳の書き方は派遣元管理台帳とは?記載項目・保管期間と派遣先管理台帳との違いにまとめています。

10. 開始後の月次管理

派遣が始まったら、毎月の就業実績を客先から受け取り、台帳と請求を合わせます。客先は、派遣先管理台帳の就業日・時間などを、1か月に1回以上、派遣元に通知します(施行規則38条)。

あわせて、抵触日と個別契約の終了日を管理表に入れ、終了日の1か月前には更新の相談を始めます。

切替チェックリストと客先への連絡例文

切り替えの抜け漏れを防ぐには、チェックリストを案件ごとに1枚使うのがおすすめです。社内の営業事務と分担するときにも使えます。

準委任→派遣 切替チェックリスト

  • 自社の派遣許可番号を確認した

  • 出す人が自社の社員である(BP・フリーランスではない)

  • 業務が派遣の禁止業務に当たらない

  • 準委任契約の最終日を決め、客先と合意した

  • 派遣の基本契約を結んだ

  • 客先から抵触日の通知を書面・メールで受け取った

  • 客先から比較対象労働者の待遇情報を受け取った

  • 待遇の決め方(労使協定方式など)と派遣料金を決めた

  • 個別契約に指揮命令者・派遣先責任者・時間外の上限を書いた

  • エンジニア本人の同意を得た

  • 就業条件の明示と派遣料金の明示をした

  • 客先へ派遣する人の情報を通知した

  • 派遣元管理台帳を作った

  • 抵触日と契約終了日を管理表に入れた

客先への連絡例文(切り替えの提案)

件名:【ご相談】〇〇様の契約形態の切り替え(準委任→派遣)について

株式会社△△ □□様

いつもお世話になっております。株式会社◇◇の××です。
先日ご相談いただいた、〇〇へのタスクの直接のご指示について、社内で確認いたしました。

現在の準委任契約では、作業のご指示は弊社の業務責任者を通していただく必要がございます。
貴社から直接ご指示いただける形にするため、2026年12月1日から労働者派遣契約へ切り替えるご提案です。
弊社は労働者派遣事業の許可(許可番号:派13-XXXXXX)を受けております。

切り替えにあたり、11月13日(金)までに、次の2点を書面またはメールでご提供いただけますでしょうか。

  1. 派遣可能期間の抵触日

  2. 比較対象労働者の待遇に関する情報

現在の準委任契約は、11月30日(月)で終了とさせていただく予定です。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお申し付けください。

チョータツで案件ごとの契約形態を共有する

切り替えのミスの多くは、「派遣で出す案件」「BPの社員」といった情報が、担当者の頭の中だけにあることから起きます。まずは自分でできる方法として、案件管理のスプレッドシートに列を足してください。足す列は「契約形態」「所属(自社社員/BP/フリーランス)」「抵触日」の3つです。

案件と人材の数が増え、スプレッドシートの更新が追いつかなくなったら、チョータツが役に立ちます。チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を1か所で管理・共有できるツールです。

  • 案件と人材の情報を営業チームで共有でき、「派遣で出せる人か」を提案前に確かめやすくなる

  • AIが入力を手伝うので、案件情報の登録にかかる手間を減らせる

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる

チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

よくある質問

Q. 派遣契約と準委任契約の違いは何ですか?
客先がエンジニアに直接指示を出せるかどうかです。派遣は客先が指示を出し、準委任は自社が指示を出します。派遣には許可が必要で、原則3年の期間制限もあります。
Q. 労働者派遣契約書は、基本契約書だけでよいですか?
よくありません。法律が求める記載事項は、個別契約に書く必要があります。基本契約は取引全体のルール、個別契約は1件ごとの条件と考えてください。
Q. 派遣契約書は電子契約でも結べますか?
結べます。厚生労働省の業務取扱要領で、電磁的記録で作成・保存する方法が示されています。ただし、エンジニア本人への就業条件の明示を電子メールで行うのは、本人が希望した場合に限られます。
Q. BPのエンジニアやフリーランスを派遣契約で出せますか?
出せません。派遣できるのは、派遣元が雇っている社員だけです。BPの社員を自社経由で派遣すると二重派遣になり、フリーランスは雇用関係がないため派遣の対象になりません。
Q. 準委任から派遣に切り替えるとき、客先の面談はできますか?
人を選ぶための面接はできません。派遣法26条6項は努力義務ですが、厚生労働省の派遣先指針は事前面接などを「行わないこと」と定めています。紹介予定派遣は例外です。
Q. 切り替えにはどのくらいの期間が必要ですか?
目安は1か月です。客先からの抵触日・待遇情報の受け取りと、本人の同意に時間がかかるためです。本記事の日程例では、10月下旬に動き始めて12月1日に切り替えています。

まとめ

  • 労働者派遣契約とは、派遣元が派遣先に人を派遣することを約束する契約。法律上は個別契約を指す

  • 実務では、取引全体の基本契約と、1件ごとの個別契約の2本立てで結ぶ

  • 個別契約には、業務内容・場所・指揮命令者・期間・時間などの法定事項を書く

  • 準委任との違いは、客先が直接指示を出せるかどうか

  • 切り替えられるのは、派遣の許可があり、出す人が自社の社員のときだけ

  • 個別契約の前に、客先から抵触日と比較対象労働者の待遇情報を受け取る

  • 本人の同意・就業条件の明示・客先への通知・台帳まで終えてから派遣を始める

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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