SES案件が炎上したときの営業の対応|増員・残業の精算・交代・契約見直しの手順と例文

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESの炎上案件とは?営業が最初に知っておくこと

炎上案件とは、スケジュールの遅れや品質の問題が続き、現場が長時間労働や混乱に陥っているプロジェクトのことです。SES営業にとっての炎上は、「客先の問題」であると同時に「自社の要員と売上の問題」でもあります。

炎上すると、営業のもとには次のような連絡が来ます。

客先・上位からの連絡営業が考えること
「あと2人増やしてほしい」出せる人はいるか。条件は同じでよいか
「今月は残業が増えます」精算幅を超えるか。36協定の上限は大丈夫か
「〇〇さんのせいで遅れている」本当に要員の問題か。契約上の責任はあるか
「来月から体制を変えたい」契約の変更か終了か。予告期間はどうか

炎上の見分け方や、提案前に避ける方法は炎上案件とは?意味と見分け方|SES営業が提案前に確認する10点で詳しく解説しています。この記事は「もう炎上してしまった後」の動き方をまとめます。

準委任の炎上案件で、自社はどこまで責任を負う?

準委任契約なら、システムを完成させる責任はありません。自社が負うのは、プロとして注意を尽くして作業する「善管注意義務」です。

準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決まった業務を行うこと自体を約束する契約のことです。民法第656条で、委任のルールが準委任にも使われると決められています。善管注意義務とは、その仕事のプロとして普通に求められる注意を払って働く義務のことです(民法第644条)。

契約の形完成責任炎上したときの報酬の考え方
準委任(履行割合型)なし働いた時間・期間に応じて請求できる
準委任(成果完成型)なし(ただし報酬は成果に連動)成果の引き渡しと報酬が結びつく
請負あり完成しないと報酬の全額は請求しにくい
派遣なし派遣した時間に応じて請求する

注意したい3つの例外

完成責任がなくても、次の場合は責任を問われることがあります。

  1. 契約書の名前は準委任でも、中身が請負に近い(納品物と検収が決まっている、など)

  2. 成果完成型の準委任で、報酬が成果の引き渡しと結びついている(民法第648条の2)

  3. 要員がプロとして明らかに手を抜いていた(善管注意義務の違反)

炎上したら、まず契約書を開いて「契約の形」「報酬の決め方」「解約予告の期間」を確認します。善管注意義務の範囲はSESの善管注意義務はどこまで?準委任の責任範囲と具体例10が参考になります。

客先に説明するときの言い方

「完成責任はありません」と正面から言うと、客先との関係がこじれやすくなります。事実は変えずに、言い方を工夫します。

弊社は準委任契約として、〇〇さんが業務に誠実に取り組めるよう全力で支えます。そのうえで、スケジュールの立て直しに必要な体制を一緒に考えさせてください。

炎上したときに営業がやる5つの手順

炎上の連絡を受けたら、5つの手順で動きます。大切なのは、客先の要望にすぐ「はい」と答える前に、事実とエンジニアの状態を確かめることです。

手順1:状況を確認する(当日中)

客先・上位の担当者に、次のことを聞きます。

  • 何がどれくらい遅れているか(例:結合テストが3週間遅れ)

  • いつまでに立て直したいか

  • 自社の要員に求めていること(作業の範囲・時間)

  • 増員・交代・体制変更の予定があるか

二次請け以下なら、話は上位の会社を通して受けます。エンドの担当者と直接決めると、商流の中で話がずれる原因になります。

手順2:エンジニアの状態を確認する(2日以内)

現場のエンジニアと、客先の目がない場所で話します。オンライン面談でも構いません。

  • 直近1か月の残業時間と休日出勤の日数

  • 担当している作業が契約の範囲に入っているか

  • 客先から直接、細かい作業指示や叱責を受けていないか

  • 体調や睡眠に不安がないか

  • 「続けたい」「抜けたい」の本音

手順3:客先と条件を話し合う(1週間以内)

増員・残業・作業範囲について、口頭で決めず、メールか書面で残します。話し合う項目は、この記事の後半にある「増員依頼を受ける前の確認項目」と「超過精算」を使ってください。

手順4:増員・交代・契約見直しを判断する

エンジニアの状態と客先の要望をそろえて、次のどれにするかを社内で決めます。

判断選ぶ場面
今の体制で続ける残業が上限内で、本人も続けたい
増員する出せる人がいて、条件が今と同じかそれ以上
交代する本人の疲れが強い、または相性の問題が大きい
契約を見直す・終了する作業範囲外の仕事が続く、条件が守られない

手順5:記録を残し、振り返る

やりとりの日付・相手・内容を、案件ごとに記録します。後で報酬や損害賠償の話になったとき、記録が自社を守ります。炎上が落ち着いたら、「提案前に何を確認していれば防げたか」を営業チームで話し合います。

増員依頼が来たら?受ける前に確認する8項目

増員依頼は、条件を確認してから受けます。炎上中は客先も急いでいるため、単価や期間があいまいなまま人を出してしまいがちです。

  1. 人数と開始日:何人を、いつから入れたいか

  2. スキル:今の要員と同じ作業か、別の作業か

  3. 期間:炎上が落ち着くまでの短期か、長期か

  4. 単価:今の要員と同じか。急ぎの対応を考えて上げられるか

  5. 精算幅:今の要員と同じ幅か

  6. 契約の形:準委任か派遣か。今の契約に追加するのか別契約か

  7. 再委託:BPの要員を出してよいか。上位の契約で再委託が認められているか

  8. 作業の指示の出し方:誰が要員に作業を割り振るか

増員で気をつけたい偽装請負のリスク

準委任では、作業の割り振りや労働時間の管理は、受ける側(自社)が行うのが原則です。客先が個人を指名して「明日から入れて、毎日20時まで残って」と細かく指示するのは、指揮命令にあたるおそれがあります。

偽装請負とは、契約は請負や準委任なのに、実態は客先が要員に直接指示を出す派遣の形になっていることです。増員の人選と配置は自社で決め、客先には「体制として何人必要か」を話し合ってもらいます。複数名をまとめて出すときの体制の組み方と単価の出し方は、SESのチーム提案のやり方|複数名の体制の組み方と単価の出し方が参考になります。詳しくは準委任契約の指揮命令はどこまで?SES現場のOK・NG具体例20を確認してください。

増員依頼への返信例文

〇〇様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
増員のご相談ありがとうございます。候補者の確認を進めます。
あわせて、次の条件を確認させてください。
・人数と開始希望日(例:2名、2026年10月13日〜)
・担当いただく工程と必要なスキル
・期間の見込み、単価、精算幅
・弊社の協力会社の要員でもよいか
10月2日(金)までに、候補者の状況をご連絡いたします。

炎上で残業が増えたら?超過精算と残業の上限

残業が精算幅を超えたら、超えた時間分を「超過精算」として請求します。同時に、自社社員の残業が法律の上限を超えないよう、雇い主として管理します。

精算幅とは、月の稼働時間の基準の範囲のことです(例:140〜180時間)。超過精算とは、その上限を超えた時間分の報酬を追加で請求することです。

超過精算の計算例

単価60万円、精算幅140〜180時間、超過単価を「単価÷上限時間」で決めている場合の例です。

項目数字
月の稼働時間200時間
超えた時間200 − 180 = 20時間
超過単価600,000 ÷ 180 ≒ 3,333円(1円未満切り捨て)
超過精算の金額3,333 × 20 = 66,660円

計算のしかた(上限割り・中間割りなど)や端数の扱いは、契約ごとに違います。必ず契約書の精算条項で確認します。支払われないときはSESで残業が上限を超えたら?超過精算が支払われない時の対応手順で解説しています。

自社社員の残業には法律の上限がある

36協定とは、社員に残業をさせるために会社と社員の代表が結ぶ約束のことです。労働基準法第36条にもとづき、残業の上限が決まっています。

ルール上限
原則月45時間・年360時間
特別条項があっても(年)年720時間以内
特別条項があっても(月)残業と休日労働の合計が月100時間未満
特別条項があっても(平均)2〜6か月の平均で月80時間以内

月45時間を超えられるのは、特別条項があっても年6か月までです。違反すると、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(労働基準法第119条)。客先の都合で残業が増えても、上限を守る責任は雇い主である自社にあります。

残業時間ごとの判断表や、客先への申し入れの進め方は、SESの客先で残業が続くときの営業の対応|安全配慮義務と交渉でくわしく解説しています。

客先に残業の条件を確認する例文

今月は残業が増える見込みとのこと、承知しました。
弊社の労務管理上、〇〇さんの残業は月45時間以内に収めたいと考えております。
精算幅(180時間)を超えた分は、契約どおり超過精算でご請求いたします。
作業量がこれを超える見込みの場合は、増員を含めてご相談させてください。

エンジニアを炎上案件から抜けさせる判断基準

エンジニアの疲れが続いていると判断したら、営業から交代を申し入れます。「炎上中に抜けるのは失礼」と先延ばしにすると、体調を崩して突然の退場や退職につながります。客先にも自社にも大きな損です。

次のチェックリストは、自社で判断するための目安です(法律の基準ではありません)。

  • 残業が月45時間を超える月が2か月以上続いている

  • 休日出勤が月2回以上ある

  • 本人から「眠れない」「体調が悪い」と相談があった

  • 契約の範囲外の作業(別工程・別システム)を任されている

  • 客先から直接、強い叱責や細かい指示を受けている

  • 本人が「抜けたい」とはっきり言っている

1つでも当てはまれば社内で相談し、3つ以上なら交代の申し入れを検討するのが、営業としての1つの目安です。雇い主には、社員の心と体の安全に配慮する「安全配慮義務」があります(労働契約法第5条)。

交代を申し入れるときの手順

  1. 契約書で解約予告の期間(例:1か月前)を確認する

  2. 代わりの要員の候補を先に探す

  3. 客先・上位の担当者に、口頭で事情を伝える

  4. 同じ内容をメールで送り、交代の時期を決める

  5. 引継ぎの期間と費用の負担を話し合う

引継ぎ期間の費用をどちらが持つかは揉めやすい点です。SESの要員交代の引継ぎ費用は誰が負担?条項例と交渉トーク付きで条項の例を確認できます。

交代を申し入れる例文

〇〇様
いつも〇〇プロジェクトでお世話になっております。
弊社の□□について、ここ2か月、稼働が高い状態が続いております。
本人の健康を守るため、2026年11月末をめどに交代させていただきたく、ご相談いたします。
後任の候補は、弊社で10月中にご提案いたします。
引継ぎの期間と進め方について、一度お打ち合わせの時間をいただけますでしょうか。

炎上を理由に報酬の減額や損害賠償を言われたら?

準委任(履行割合型)なら、働いた分の報酬は請求できます。民法第648条第3項では、途中で契約が終わった場合も、すでに行った仕事の割合に応じて報酬を請求できるとされています。

客先から「遅れたから今月は減額したい」と言われても、すぐに受け入れる必要はありません。まず次の3点を確認します。

  1. 契約の形(準委任か請負か、成果完成型か)

  2. 要員に善管注意義務の違反があったか(手抜き・無断欠勤など)

  3. 遅れの原因が客先側の計画や仕様変更ではないか

反論のしかたと例文はSESの開発遅延で支払い拒否されたら?準委任の報酬請求と反論例文にまとめています。

契約の途中解除については、民法第651条で「いつでも解除できる」とされています。ただし、相手に不利な時期の解除は、やむを得ない事情がない限り損害賠償の対象になることがあります。自社から抜けるときも、契約の予告期間を守るのが安全です。

チョータツで、増員と交代の候補をすぐ探す

炎上時の営業の強さは「代わり・追加の人をどれだけ早く出せるか」で決まります。自分で探す場合は、社内の待機要員の確認、BPへのメール、過去に提案した人材の見直しを順に行います。

ただ、炎上時は数日で候補を出す必要があります。1社ずつメールで聞いて回ると、返事を待つ間に客先が別の会社に頼んでしまうこともあります。

もっと楽にするなら、次の方法があります。

やりたいこと使う機能楽になること
BPの空いている人を探すチョータツ(他社との連携)連携した会社の営業中人材がデータベースになり、条件で探せる
増員の募集を一斉に出すチョータツ(メール配信)パートナーへ募集メールをまとめて送れる
BPで見つからないxhoursITフリーランスに直接スカウトできる

チョータツは3,000社以上が使うSES営業向けの案件・人材の管理・共有ツールで、無料で始められます。BPで候補が見つからないときは、数千名のフリーランスのデータベースから直接スカウトできるxhoursも使えます。

よくある質問

Q. SESの炎上案件から、エンジニアを途中で抜けさせることはできますか?
できます。契約書の解約予告の期間を守り、代わりの要員を提案しながら申し入れると、客先との関係を保ちやすくなります。
Q. 準委任で炎上したら、自社に責任はありますか?
準委任には完成責任がないため、遅れそのものの責任は原則負いません。ただし、要員が善管注意義務に違反していた場合や、中身が請負に近い契約の場合は責任を問われることがあります。
Q. 炎上で残業が増えた分は、客先に請求できますか?
精算幅の上限を超えた時間は、契約の精算条項にしたがって超過精算として請求できます。精算幅の中に収まる残業は、単価に含まれるのが一般的です。
Q. 炎上案件の増員依頼は、断ってもいいですか?
断ってかまいません。出せる人がいない、条件が合わないなどの場合は、理由と代わりの案を添えて返します。代わりの案は、時期をずらす、別のBPを紹介する、などです。
Q. 炎上しそうな案件を、提案前に見分ける方法はありますか?
開始が急すぎる、前任者が短期間で抜けている、工程の遅れを面談で濁される、などが目安です。確認の10項目は、炎上案件の用語解説の記事にまとめています。

まとめ

  • SESの多くは準委任で、完成責任はない。ただし善管注意義務はある

  • 炎上したら、状況確認・エンジニアの状態確認・条件の話し合い・判断・記録の5手順で動く

  • 増員依頼は、人数・単価・精算幅・再委託の可否など8項目を確認してから受ける

  • 人選と配置は自社で決め、客先から要員への直接指示が続かないようにする

  • 精算幅を超えた残業は超過精算で請求し、自社社員の残業は月45時間・年360時間の原則を守る

  • 疲れのサインが続いたら、解約予告の期間を守って交代を申し入れる

  • ふだんからチョータツで連携先の営業中人材を探せる状態にしておくと、増員にも交代にもすぐ動ける

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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