見積書と請求書の金額が違う?SESで超過精算を請求する時の伝え方とメール例文3つ

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESで見積と請求の金額が違うのはよくあること

SESの請求額は、見積書の金額と毎月ぴったり同じになるとは限りません。多くの契約が「月額単価+精算幅」で、働いた時間によって金額が上下するからです。

見積書とは、取引の前に「この条件なら、この金額で引き受けます」と相手に示す書類のことです。見積書だけでは契約は成り立たず、客先から注文書を受け取り、自社が請けることで契約になります。

精算幅とは、月額単価のまま請求できる稼働時間の範囲のことです。たとえば「140〜180時間」と決めれば、その範囲の稼働なら月額どおりの請求です。

書類役割金額の決まり方
見積書条件と金額を先に示す月額単価と精算条件を書く
注文書(個別契約)客先が発注する。契約の中身になる見積の条件を引き継ぐ
稼働報告書その月に働いた時間を確かめる実際の時間を記録する
請求書その月の代金を請求する月額単価±精算額で決まる

つまり、見積書の金額は「基本の金額」です。請求書の金額は「基本の金額に、その月の精算を足し引きしたもの」と考えると、違っていても不自然ではありません。書類の流れ全体は見積書・注文書・請求書の違い|SES取引の書類の流れを図で解説、見積書そのものの意味や法的効力は見積書とは?法的効力と有効期限、必要事項9つで解説しています。この記事では、見積と請求の金額の差をどう計算し、どう伝えるかに絞って説明します。

見積と請求の金額が変わる7つのパターン

差額が出る理由は、大きく7つです。1〜4は契約に書いてあれば請求どおりで問題ありません。5〜7は、事前の合意がないと揉めやすくなります。

#差額が出る理由契約に書いてあれば注意点
1稼働が精算幅の上限を超えた(超過精算)そのまま請求できる事前承認の条項があるか確かめる
2稼働が精算幅の下限を下回った(控除)減らして請求する有給・祝日の月に起きやすい
3月の途中で入場・退場した(日割り)日割りで請求する日割りの計算方法を確かめる
4交通費・出張費を実費で請求する別に請求できる精算の対象か注文書で確かめる
5範囲外の追加作業が発生した追加の注文が必要口頭だけの依頼は証拠が残らない
6単価を改定したのに古い見積が残っていた新しい注文書で判断古い見積が残ると誤解の元になる
7端数処理・消費税の計算がずれた契約の丸め方に合わせる1円・10円単位の違いでも差し戻される

超過精算とは、稼働が精算幅の上限を超えたときに、超えた時間分の料金を追加で請求することです。控除とは、反対に下限を下回ったときに、足りない時間分を差し引くことです。

パターン5の追加作業は、精算幅の話とは別です。進め方はSESで追加作業の報酬は請求できる?範囲外業務の見分け方と例文を見てください。

見積より高い請求ができる根拠は「注文書の精算条件」

見積より高い金額を請求できるかどうかは、注文書(個別契約)に精算条件が書いてあるかで決まります。書いてあれば、超過精算は約束どおりの請求です。

SESの多くは準委任契約です。準委任契約とは、作業の完成ではなく、決められた業務を行うこと自体を約束する契約のことです。民法では、受任者(仕事を受けた側)は特約がなければ報酬を請求できません(第648条第1項、第656条)。

つまり、準委任で報酬を受け取るには報酬の約束があることが前提です。超過分も同じで、「上限を超えたら超過単価で精算する」という約束が根拠になります。

注文書で確かめる5項目

請求の前に、客先から受けた注文書と基本契約書を開き、次の5つを確かめます。

  1. 精算幅:上限・下限の時間(例:140〜180時間)

  2. 計算方法:上下割か中間割か、超過単価・控除単価の金額

  3. 精算単位:15分・30分・1時間のどれで数えるか

  4. 端数処理:1円未満を切り捨てるか、10円単位か

  5. 事前承認:「上限超えは事前に承認を得る」という条項があるか

上下割とは、月額単価を上限・下限の時間で割って超過単価・控除単価を出す方法のことです。中間割とは、上限と下限の真ん中の時間で割る方法のことです。細かい計算ルールはSESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いで解説しています。

契約の書き方別の請求のしかた

契約の書き方見積より高い請求営業の動き
精算幅と超過単価の定めがある原則できる稼働報告書をそろえ、計算どおり請求する
事前承認の条項がある承認があればできる承認のメールやチャットを探してから請求する
固定精算(毎月同額)原則できない今月は請求せず、次の更新で条件を見直す
精算条件の記載がない話し合いで決める過去の請求実績やメールを根拠に相談する

事前承認の条項がある場合や、客先が超過分を払わない場合の対応は、SESで残業が上限を超えたら?超過精算が支払われない時の対応手順にまとめています。

計算例:見積65万円が67万8,888円になる月

超過精算の請求額は「月額単価+超過時間×超過単価」で出します。数字で見ると、見積との差額の理由をそのまま客先に説明できます。

月額65万円・精算幅140〜180時間・上下割・1円未満切り捨ての契約です。2026年10月の稼働が188時間だった例で計算します(税抜)。

項目計算金額
超過単価650,000円÷180時間3,611円
超過時間188時間−180時間8時間
超過額3,611円×8時間28,888円
請求額650,000円+28,888円678,888円

同じ契約で、稼働が130時間だった月は反対に下がります。控除単価は650,000円÷140時間=4,642円、10時間分で46,420円を引き、請求額は603,580円です。

このように、同じ見積でも月によって60万円台前半から後半まで動きます。見積書に精算条件を書いておけば、どちらの月も「見積どおり」と説明できます。控除を請求書にどう書くかは請求書の値引きの書き方|SESの出精値引き・控除の記載例を参考にしてください。

超過精算を請求する前にやる5ステップ

見積と違う金額を請求するときは、請求書より先に「時間」と「金額」を客先とそろえます。順番を守るだけで、差し戻しや支払いの遅れはかなり減ります。

  1. 稼働時間を確定する:エンジニアの稼働報告書を集め、客先が確認した時間と同じか確かめる

  2. 注文書の精算条件を読み直す:精算幅・計算方法・精算単位・事前承認の有無を確かめる

  3. 計算して金額を出す:超過単価・超過時間・超過額・請求額を表にする

  4. 請求書の前にメールで伝える:金額と計算の内訳を送り、確認をもらう

  5. 内訳つきの請求書を送る:基本料金と超過額を別の行に分けて書く

ステップ1で時間がずれていると、ステップ4以降がすべてやり直しになります。月末に上限を超えそうだとわかった時点で、月の途中に一度連絡しておくのがいちばん確実です。

やってはいけないこと

  • 連絡なしで高い請求書を送る:経理で止まり、入金が1か月遅れることがある

  • 超過額を「その他」とだけ書く:何の費用かわからず、差し戻される

  • エンジニアに客先へ説明させる:お金の話は会社どうし、営業どうしで行う

  • 超過を黙って「サービス」にする:翌月以降も無償が当たり前になる

客先へ伝えるメール例文3つ

見積と違う金額を伝えるメールは、「理由」「計算式」「金額」「確認のお願い」の4つを入れます。短くても、この4つがあれば客先の経理にそのまま回してもらえます。

例文1:月の途中で上限超えを予告する

例文・テンプレート
件名:【ご連絡】〇〇プロジェクト 10月稼働の見込みについて(株式会社△△)

株式会社〇〇
□□様

いつもお世話になっております。株式会社△△の◇◇です。

弊社エンジニア××の10月の稼働について、ご連絡いたします。
10月23日(金)時点で158時間となっており、
このまま進むと月末で約188時間の見込みです。

注文書の精算条件(140〜180時間、上下割)により、
180時間を超えた分は超過精算の対象となります。

作業量の調整が必要でしたら、ご相談させてください。
このまま進める場合は、その旨ご返信いただけますと幸いです。

よろしくお願いいたします。

例文2:請求前に確定金額を伝える

例文・テンプレート
件名:【ご確認】10月分ご請求額のお知らせ(株式会社△△)

株式会社〇〇
□□様

いつもお世話になっております。株式会社△△の◇◇です。

10月分のご請求額について、請求書の送付前にご連絡いたします。
稼働時間が精算幅の上限を超えたため、超過精算を含めた金額となります。

・稼働時間:188時間(稼働報告書にてご確認済み)
・精算幅:140〜180時間(上下割)
・超過単価:650,000円÷180時間=3,611円
・超過額:3,611円×8時間=28,888円
・ご請求額:678,888円(税抜)

内容に問題がなければ、11月2日(月)に請求書をお送りします。
ご不明な点があれば、お気軽にお知らせください。

例文3:追加作業で見積が変わることを先に伝える

例文・テンプレート
件名:【ご相談】追加作業の御見積について(株式会社△△)

株式会社〇〇
□□様

いつもお世話になっております。株式会社△△の◇◇です。

先日ご依頼いただいたデータ移行の作業について、
現在の注文書の業務内容(画面の改修)には含まれていないため、
別途お見積りのうえ、追加のご注文をいただけますでしょうか。

御見積書は10月30日(金)までにお送りします。
ご注文をいただいてから、作業に着手いたします。

例文3のように、精算幅の外で増える分は、作業の前に見積と注文をもらうのが原則です。あとから請求すると「頼んでいない」と言われやすくなります。

客先が「見積と違う」と言ってきた時の返し方

客先に「見積と金額が違う」と言われたら、まず注文書の精算条件と稼働報告書を示して、計算の根拠を説明します。感情的に言い返さず、書類と数字で話すのがいちばん早い解決です。

客先の言い分確かめること返し方の例
見積は65万円だったはず注文書に精算幅があるか「注文書の精算条件により、180時間を超えた分を精算しています」
超過は承認していない承認のメール・チャット「10月23日のメールで見込みをお伝えし、継続のご返信をいただいています」
時間が多すぎるのでは客先が確認した稼働報告書「ご確認いただいた稼働報告書の188時間で計算しています」
予算がないので払えない契約の条件「今月分は契約どおりお願いし、来月以降の作業量をご相談させてください」

精算条件がない、承認の記録もない、という場合は、無理に押し通すより今月の着地点と次の契約の見直しをセットで相談します。

金額の食い違いが、自社の請求書の書き間違いだったと後で分かることもあります。訂正の仕方とお詫びの例文は、請求書の金額間違いに後から気づいたら|SESの訂正と再発行の例文にまとめています。

BPから見積より高い請求が届いた時の確認8項目

BP(取引先のSES会社やフリーランス)から見積より高い請求が届いたら、すぐに減らさず、次の8項目を順に確かめます。多くは精算条件どおりの超過で、正しい請求です。

#確かめること見る書類
1請求の対象月と対象者が合っているか請求書・注文書
2月額単価が最新の注文書どおりか注文書
3稼働時間が稼働報告書と同じか稼働報告書
4精算幅と計算方法(上下割・中間割)が合っているか注文書
5精算単位と端数処理が契約どおりか注文書・基本契約書
6交通費などの実費が対象になっているか注文書・領収書
7上位(客先)の精算条件と同じか上位の注文書
8税率・インボイスの登録番号が正しいか請求書

確認で計算の誤りが見つかったら、理由を伝えて訂正した請求書を出し直してもらいます。自社で勝手に金額を書き換えて払うのは避けましょう。

一方的に減らして払うと違反になるおそれ

取適法とは、下請法を改正して2026年1月1日に施行された、委託取引のルールを定める法律のことです。資本金や従業員数の基準にあてはまる委託取引が対象です。受託側に責任がないのに、決めた代金をあとから減らすことは禁止されています(第5条第1項第3号)。

フリーランスへの発注も、フリーランス法で報酬の減額が禁止されています(第5条第1項第2号。1か月以上の業務委託が対象)。

上位が超過分を払わないから、BPへの超過分も払わないという対応は、取適法やフリーランス法に違反するおそれがあります。上位とBPで精算条件をそろえておくことが、いちばんの予防です。減額の例外についてはフリーランス法の報酬の減額は違反?SESで許される例外と相殺の扱いで解説しています。

チョータツで、案件ごとの精算条件をすぐ確かめる

見積と請求のずれは、案件ごとの精算条件をすぐ確かめられないことから起きがちです。請求のたびに注文書のPDFやExcelを探すのは、案件が増えるほど手間になります。

チョータツとは、SES営業が案件と人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。見積と請求の差額の場面では、次のように使えます。

使う場面チョータツでできること差額トラブルでの使い方
条件を確かめる案件・人材の情報を管理・共有できる精算幅・超過単価・事前承認の有無を案件ごとに残し、チームで共有する
次の提案を選ぶ他社と連携すると、他社の営業中案件をデータベース化できる精算条件がはっきりした案件を選んで提案する
パートナーに伝えるパートナーへのメール配信機能がある人材を探すとき、精算条件をそろえて伝える

上位とBPの精算条件がずれていると、差額を自社がかぶることになります。案件の条件を一か所で管理し、見積を出す段階で上位とBPの条件をそろえる習慣をつけましょう。

次から差額で揉めないための見積書の書き方

差額トラブルのいちばんの予防は、見積書の段階で精算条件まで書いておくことです。金額だけの見積書は、あとで「65万円と聞いていた」と言われる原因になります。

見積書に入れておきたい項目は次のとおりです。

  • 月額単価(税抜・税込の区別)

  • 精算幅(例:140〜180時間)と計算方法(上下割・中間割)

  • 超過単価・控除単価の金額、精算単位、端数処理

  • 交通費・出張費の扱い(単価に含むか、実費で別に請求するか)

  • 業務内容の範囲(範囲外の作業は別見積と書く)

  • 見積の有効期限

見積書の具体的な書き方は、SESの見積書の書き方|テンプレートと記載項目10・注意点を参考にしてください。

よくある質問

Q. 見積書と請求書の金額が違うのは違法ですか?
違法ではありません。見積書は契約の前に条件を示す書類で、請求額は注文書の条件とその月の稼働で決まります。精算条件どおりの差額なら問題ありません。
Q. 見積もりより高い請求をされたら、払わなくてもいいですか?
注文書に精算条件があり、計算が合っていれば払う必要があります。まず稼働報告書と計算式を確かめ、誤りがあれば訂正した請求書を出し直してもらいましょう。
Q. 見積もり以上の金額を請求するとき、事前の連絡は必要ですか?
法律で決まった義務はありませんが、請求書の前にメールで金額と内訳を伝えるのが安全です。客先の経理で止まるのを防げます。
Q. 見積書に精算幅を書いていなかった場合、超過分は請求できませんか?
注文書や基本契約書に精算条件があれば請求できます。どこにも書いていない場合は、過去の請求実績やメールを根拠に客先と話し合って決めます。
Q. 見積と違う請求書は、訂正して出し直すべきですか?
計算の誤りなら訂正して出し直します。精算による正しい差額なら出し直す必要はありません。内訳を書いた請求書と、確認のメールを残しておきましょう。
Q. 見積より安い金額で請求するのも問題ありませんか?
控除や日割りなど、契約どおりの減額なら問題ありません。請求書には基本料金と控除額を分けて書くと、客先が確認しやすくなります。

まとめ

  • SESでは、精算幅の超過・控除や日割りで、見積と請求の金額が違うのはふつう

  • 見積より高く請求できる根拠は、注文書(個別契約)の精算条件

  • 請求の前に、稼働時間の確定→条件の確認→計算→メールで連絡→内訳つき請求書の順に進める

  • 範囲外の追加作業は、作業の前に追加の見積と注文をもらう

  • BPから見積より高い請求が届いたら、確認8項目で確かめる。一方的に減らして払うのは違反のおそれ

  • 次の見積から、精算条件まで書いておくのがいちばんの予防

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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