見積書とは?意味・法的効力・有効期限をSES営業向けに解説|必要事項9つと、古い見積が残った時の対応

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

見積書とは?意味と役割

見積書とは、「この条件なら、この金額で引き受けます」と契約前に相手へ示す書類のことです。英語では「クオテーション(Quotation)」と呼ばれます。受け取った側は、見積書を見て発注するかどうかを決めます。

SESの場合、見積書に書くのは「商品◯個でいくら」ではありません。エンジニアが作業する期間・時間と、月額の単価を書きます。SES契約の多くは準委任契約だからです。

準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた業務を行うことにお金を払う契約のことです。そのため、働いた時間によって代金が変わる「精算」のルールも見積書に書きます。

「御見積書」「お見積書」とは

「御見積書」「お見積書」とは、見積書を丁寧に呼んだ言い方です。書類の中身や効力は、ただの「見積書」と変わりません。

表記使う場面効力の違い
見積書社内の呼び方、書類の一般名なし
御見積書相手に出す書類のタイトルなし
お見積書メール本文など、やわらかく伝えるときなし

相手に出す書類のタイトルは「御見積書」が一般的です。自社がもらった見積書を社内で話すときは、「見積書」と呼べば十分です。

SES営業にとっての見積書の役割

SES営業にとって見積書は、「言った・言わない」を防ぐための最初の記録です。面談で決まった単価や精算幅を、口頭のまま終わらせずに文字で残します。

役割は、次の3つです。

  1. 条件をすり合わせる:注文書を出す前に、単価・期間・精算条件を相手と確認できる

  2. 相手の社内手続きを進める:客先や上位企業は、見積書をもとに発注の承認をとる

  3. あとで照らし合わせる:注文書や請求書が届いたとき、見積書と比べてずれを見つけられる

見積書の必要性|法律で義務はあるのか

見積書を出すことは、法律で義務づけられていません。それでもSESの取引では、ほぼ必ず出します。理由は、注文書に書く条件を先に固めておけるからです。

見積書を出さずに注文書だけで進めると、次のような問題が起きやすくなります。

見積書がないと起きやすいこと
単価を口頭で伝えただけ注文書に古い単価や違う金額が書かれる
精算幅を決めていない稼働が少ない月に、想定外の控除をされる
期間を決めていない契約の終わりと更新の時期があいまいになる
交通費の扱いを決めていない請求のたびに「含む・含まない」で揉める

なお、発注する側には別の義務があります。対象は、取適法やフリーランス法がかかる取引です。取適法とは、下請法を改正・改称し2026年1月1日に施行された中小受託取引適正化法のことです。これらの取引では、発注する側が取引条件を書面やメールで示す義務があります(取適法第4条、フリーランス法第3条)。

見積書を出すのは受注側の習慣です。条件を示す発注書は発注側の義務、と分けて覚えましょう。

見積書の法的効力|それだけでは契約にならない

見積書は、それだけでは契約書として扱われません。契約は「申込み」に対して相手が「承諾」したときに成立するからです(民法第522条第1項)。

申込みとは、契約の内容を示して「この内容で契約したい」と申し入れることです。承諾とは、その申込みを受け入れる返事のことです。見積書は、一般に「申込みを誘う(申込みの誘引)」段階の書類と考えられています。

SESで契約が成立する流れ

SESでは、次の順番で書類が動き、契約が固まります。

順番書類出す側法的な意味
1見積書受注側(SES企業)条件の提案
2注文書発注側(客先・上位企業)申込み
3注文請書受注側承諾
4稼働・請求受注側契約の実行

基本契約書に「注文書を受け取ってから◯営業日以内に異議がなければ成立」と書かれている場合もあります。この場合は、請書を出さなくても契約が成立することがあります。成立のタイミングは、SESの注文書・注文請書は必要?違いと成立時点|条文例3つで条文例とあわせて確認できます。

見積書が「効力」を持つ3つの場面

見積書は契約書ではありませんが、次の3つの場面では契約の中身を決める書類として重みを持ちます。

  1. 注文書が見積書を引用したとき:注文書に「見積書No.〇〇のとおり」と書かれると、見積書の条件が契約の内容になる

  2. 相手がそのまま「お願いします」と返したとき:見積書が具体的なら、見積書が申込み、返事が承諾と見られる場合がある

  3. 揉めたときの証拠:契約書に書かれていない点は、見積書やメールが「何を約束したか」の証拠になる

契約は、法律で特別に決まっている場合を除き、書面がなくても成立します(民法第522条第2項)。メールでの「その条件でお願いします」も、承諾と見られることがあります。見積書を送った後のやりとりも、記録として残しておきましょう。

→ 注文書が出ないまま稼働した場合の考え方は、業務委託で契約書なしは有効?注文書前に稼働する時の対策で詳しく解説しています。

見積書と印紙の関係

見積書そのものには、収入印紙は要りません。見積書は、契約の成立を証明する文書ではないからです。

注意したいのは注文書です。国税庁は、「見積書に基づく申込みである」と書かれた注文書を、原則として契約書として扱うとしています。ただし、相手が別に請書を作ると書かれている注文書は除かれます。SESの準委任契約で実際に印紙がかかるかは、契約の中身で決まります。

→ 書類別の判定は、請求書に印紙は必要?兼領収書の金額とSES書類8種の判定表で確認できます。

見積書の有効期限|書く理由と目安

見積書の有効期限に、法律で決まった長さはありません。発行する側が自由に決めます。SESでは、発行日から2週間〜1か月を目安に書くのがおすすめです。

有効期限を書く理由

有効期限を書く一番の理由は、古い条件で発注されるのを防ぐためです。SESの単価は、エンジニアのスキルアップや相場の変化で見直されます。期限のない見積書は、半年後でも「この金額で」と言われる根拠になりかねません。

民法には、承諾の期間を決めて申込みをした場合のルールがあります。期間内に承諾がなければ、申込みは効力を失います(民法第523条第2項)。見積書が申込みと見られる場合に備えても、期限をはっきり書いておくほうが安全です。

SESでの有効期限の目安

場面有効期限の目安理由
新規の参画(面談前後)発行から2週間他社の提案と並んで、すぐ決まることが多い
契約の更新次の契約開始日の前日まで更新の条件をその期間だけに限る
単価改定の前後改定日の前日まで改定後に古い単価で発注されるのを防ぐ
仮見積(概算)発行から1週間条件が固まっていないため短くする

有効期限は、日数ではなく日付で書くと間違いがありません。例えば「有効期限:2026年10月30日」のように書きます。

有効期限が切れた見積書で発注されたら

期限が切れた見積書をもとに注文書が届いたら、そのまま請書を返さずに条件を確認します。期限切れの見積書の条件に、受注側が従う義務は一般にありません。

とはいえ、黙って請書を返すと、その条件で承諾したことになります。次の順番で対応しましょう。

  1. 注文書の金額・期間を、最新の見積書と比べる

  2. 違いがあれば、請書を出す前にメールで連絡する

  3. 最新の条件で見積書を出し直し、注文書の修正をお願いする

  4. 修正された注文書を確認してから、請書を返す

そのまま使える連絡メールの例

件名:【ご確認】注文書(〇〇案件・11月分)の単価について

〇〇株式会社 〇〇様
注文書をお送りいただき、ありがとうございます。
記載の単価650,000円は、有効期限(2026年6月30日)を過ぎた見積No.2026-0401-03の金額でした。
10月以降の単価は、見積No.2026-0915-02のとおり700,000円でお願いしております。
お手数ですが、最新の見積書を添付しますので、注文書の修正をお願いできますでしょうか。
修正版を確認でき次第、注文請書をお送りします。

見積書の必要事項9つ

見積書に書く項目は、決まった法律の様式はありませんが、次の9つがそろっていれば実務で困りません。SESでは、7と8を特にていねいに書きます。

#項目SESでの書き方の例
1タイトル御見積書
2宛名株式会社〇〇 御中
3見積番号・発行日No.2026-0930-01/2026年9月30日
4発行者自社名・住所・担当者名・連絡先
5件名・作業内容〇〇システム開発支援(Java)
6期間2026年11月1日〜2027年1月31日
7月額単価・合計月額650,000円(税抜)×3か月
8精算条件精算幅140〜180時間、上下割、15分単位
9有効期限・支払条件2026年10月30日まで/月末締め翌月末払い

見積番号は、あとで注文書と照らし合わせるための「背番号」です。注文書に同じ番号を書いてもらうと、どの見積をもとにした発注かがすぐわかります。

各項目の書き方と、そのまま使える記入例はSESの見積書の書き方|テンプレートと記載項目10・注意点にまとめています。

単価改定で古い見積が残るリスク

SESで見積書が一番トラブルになりやすいのは、単価を改定したのに古い見積書が相手の手元に残っているときです。相手の担当者が変わると、古い見積書をもとに注文書を作られることがあります。

よくある流れ(例)

時期できごと
2026年4月月額650,000円で見積書を出す(有効期限なし)
2026年9月10月から月額700,000円に改定することで口頭合意
2026年10月客先の担当者が交代し、4月の見積書をもとに650,000円の注文書が届く
2026年11月請求の段階で差額50,000円に気づき、揉める

この例では、9月の合意を口頭だけで済ませたことと、4月の見積書に有効期限がなかったことが原因です。

古い見積を残さないための5つの手順

  1. 見積書には必ず有効期限を日付で書く

  2. 単価改定が決まったら、その週のうちに新しい見積書を出す(件名に「改定」と入れる)

  3. 新しい見積書に「見積No.〇〇は無効とします」と書く

  4. 契約中の単価変更は、覚書か変更後の注文書で残す

  5. 自社の案件管理にも、改定日と新しい単価をすぐ反映する

契約期間の途中で単価を変える場合は、見積書だけでなく覚書で残すのが確実です。→ 契約書を変更するには?覚書の書き方とSESの単価変更の文例

取適法の対象になる取引では、発注側のある行為が禁止されています。受注側が値上げの協議を求めたのに、協議に応じず一方的に代金を決めることです。単価改定の相談は、メールで記録が残る形で申し入れましょう。→ SESの単価交渉のタイミング|更新の何か月前か・例文と資料5点

SESで請求額が見積と違う時の対応

SESでは、精算幅を上下した月に請求額が見積書の金額と違うのはふつうで、精算条件を見積書や注文書に書いてあれば問題ありません。差額の計算例、請求前に客先へ送るメール例文、見積より高い請求が届いたときの確認項目は、見積書と請求書の金額が違う?SESで超過精算を請求する時の伝え方で解説しています。

見積書を送る前のチェックリスト

見積書を送る前に、次の8項目を確認すると、あとのずれをほぼ防げます。

#確認することOKの状態
1宛名正式な社名で「御中」になっている
2見積番号ほかの見積と重ならない番号がある
3単価最新の合意どおりで、税抜・税込が書いてある
4精算条件精算幅・計算方法・精算単位の3つがある
5期間開始日と終了日が日付で書いてある
6有効期限日付で書いてある
7支払条件締め日と支払日が書いてある
8古い見積前の見積を無効にする一文がある(改定時)

宛名・件名・送付状は、見積番号と有効期限が件名だけで分かる形にしておくと、相手の社内で探しやすくなります。

見積書の保存期間

受け取った見積書も、出した見積書の控えも、法人は原則7年間保存します。法人税法で、取引に関する書類の保存期間が決まっているためです。欠損金が出た事業年度などは、10年になる場合があります。

メールでPDFをやりとりした見積書は、電子データのまま保存するのが原則です(電子帳簿保存法)。印刷して紙だけで残すのではなく、見積番号や日付で探せるように保存しましょう。

自分で見積の条件を管理する方法

見積の条件は、案件ごとに1行で「最新の単価・精算条件・有効期限」がわかる表をつくると管理できます。Excelやスプレッドシートで始められます。

おすすめの列は、次の6つです。

  1. 案件名・客先名

  2. 要員(イニシャル)

  3. 最新の月額単価と改定日

  4. 精算条件(精算幅・計算方法・精算単位)

  5. 見積番号・有効期限

  6. 注文書・請書の受領日

単価を改定したら、その日のうちにこの表を直すのがルールです。表が古いままだと、次の見積も古い単価で作ってしまいます。

チョータツで案件の条件をチームで共有する

案件が増えて、Excelの更新が追いつかない場合は、チョータツで案件の情報を管理すると楽になります。チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールで、3,000社以上が利用しています。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
最新の単価を確かめる担当者に聞くか、ファイルを探す案件の情報を1か所で見られる
チームで共有するファイルを送り合う同じ情報をチームで共有できる
情報を入力する1件ずつ手入力AIが入力を手伝う
他社の案件・人材を見る届いたメールを読んで転記連携すると、他社の営業中案件・人材をデータベース化できる

見積の元になる条件を、チームの誰が見ても同じ状態にしておくことが、古い見積のトラブルを防ぐ近道です。チョータツは無料で始められます。

よくある質問

Q. 見積書とは簡単に言うと何ですか?
「この条件ならこの金額で引き受けます」と、契約の前に相手へ示す書類です。SESでは、単価・期間・精算条件を書きます。
Q. 見積書に法的効力はありますか?
見積書だけでは、一般に契約書として扱われません。ただし、注文書が見積書を引用した場合などは、見積書の条件が契約の内容になります。
Q. 見積書の有効期限は何日が一般的ですか?
法律の決まりはありません。SESでは発行から2週間〜1か月が目安です。単価改定の前後は、改定日の前日までにしましょう。
Q. 「御見積書」と「見積書」は違う書類ですか?
同じ書類です。「御」は相手への敬意を表すだけで、効力は変わりません。相手に出す書類のタイトルは「御見積書」が一般的です。
Q. 見積書に印紙は必要ですか?
見積書そのものには不要です。ただし、見積書に基づく申込みと書かれた注文書は、契約書として扱われることがあります。
Q. 見積書は必ず出さないといけませんか?
法律上の義務はありません。ただしSESでは、注文書の条件を先にすり合わせるために、出すのが一般的です。

まとめ

  • 見積書とは、契約の前に条件と金額を示す書類。「御見積書」も同じもの

  • 見積書だけでは契約にならない。SESでは「見積書 → 注文書 → 注文請書」で契約が固まる

  • 注文書が見積書を引用すると、見積書の条件がそのまま契約の内容になる

  • 有効期限は法律の決まりがない。SESでは2週間〜1か月を目安に日付で書く

  • 単価改定のときは、新しい見積書と覚書を出し、古い見積を無効にする

  • 見積書に精算条件まで書いておけば、請求額が見積と違う月も説明できる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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