仮見積と本見積の違い|SES案件の概算単価の出し方5ステップと、金額が独り歩きしない書き方・メール例文3つ
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
仮見積と本見積の違いとは?
仮見積と本見積の違いは、「条件が決まっているかどうか」です。条件が決まる前の目安が仮見積、決まった後の正式な金額が本見積です。
仮見積とは、要員・期間・作業範囲などが決まる前に、おおよその金額を示す見積のことです。「概算見積」「仮見積書」とも呼ばれます。
本見積とは、条件がすべて決まった後に出す、正式な見積のことです。「正式な見積書」とも呼ばれ、注文書(発注書)の元になります。
| 種類 | 出すタイミング | 金額の確かさ | 役割 |
|---|---|---|---|
| 仮見積(概算見積) | 要員・条件が決まる前 | 幅がある目安 | 予算感を合わせる |
| 本見積(正式な見積) | 要員・条件が決まった後 | 1つの金額 | 注文書の元になる |
| 再見積 | 条件が変わったとき | 変更後の金額 | 前の見積を差し替える |
| 最終見積 | 交渉が終わったとき | 確定した金額 | 発注直前の最終版 |
下見積書とは
下見積書とは、正式な見積を出す前に作る「下書き」の見積のことです。社内で上長に確認するための案として使う会社もあれば、相手と条件をすり合わせるために出す会社もあります。
呼び方は会社によって違います。そのため、相手に出すときは表題に「概算」「仮」「正式」のどれなのかを書き、書類の立場をはっきりさせることが大切です。
SESで仮見積を求められる4つの場面
SESで仮見積を求められるのは、要員がまだ決まっていないのに、金額だけ先に知りたい場面です。よくあるのは次の4つです。
面談の前:客先や商流上位の会社が、候補者を比べる前に「このスキルならいくらか」を知りたい
予算取りの段階:エンド(発注元の会社)が、来期の予算を組むために概算を集めている
複数名の体制を組むとき:リーダー1名+メンバー3名など、チーム全体の金額を先に知りたい
人材を探しながら案件を受けるとき:自社にもBP(取引先の会社)にもまだ候補がいない
どの場面でも共通するのは、あとで金額が変わる可能性があることです。そのため、仮見積の段階で「変わる条件」を伝えておく必要があります。
概算単価の出し方5ステップ
概算単価は、「仕入れ単価の幅」に「自社の粗利」を足して、幅で出すのが基本です。次の5ステップで進めます。
案件の条件を確認する:スキル・工程・期間・勤務地・リモート可否・精算幅を案件票で確かめます。精算幅とは、稼働時間の上限と下限のことです。
候補の仕入れ単価の幅を出す:自社社員なら原価、BPの人材なら仕入れ単価を、似た案件の実績から見積もります。
自社の粗利を足す:会社で決めている粗利額や粗利率を足し、提案単価の幅にします。
下限と上限の幅で出す:スキルの高い人が決まった場合も考え、上限にも余裕を持たせます。
前提条件を添えて送る:金額と一緒に、どの条件で計算したかを必ず書きます。
計算例:Javaの開発案件、面談前の概算
仕入れ単価は「似た経験の人なら55万〜62万円」と見込んだとします。自社の粗利を1人あたり月8万円と決めている場合は、次のようになります。
| 項目 | 下限 | 上限 |
|---|---|---|
| 仕入れ単価(見込み) | 550,000円 | 620,000円 |
| 自社の粗利 | 80,000円 | 80,000円 |
| 提案単価(仮見積) | 630,000円 | 700,000円 |
このとき仮見積は「月額63万〜70万円(税抜)」と書きます。数字はあくまで計算の例です。実際の金額は、自社の実績や似た案件の条件をもとに決めてください。
提案単価の決め方をもっと詳しく知りたい方は、次の記事も参考にしてください。
→ SESの提案単価の決め方|仕入れ単価から逆算する計算式と5つの要素
1つの金額で出すしかないときは
相手のフォーマットの都合で、1つの金額しか書けないこともあります。その場合は上限に近い金額で出し、「要員確定後に調整します」と書き添えます。下限で出すと、あとで上げる交渉が難しくなるからです。
仮見積の金額が独り歩きしない書き方5つ
仮見積で一番多いトラブルは、目安のつもりで出した金額が、そのまま発注額として扱われることです。次の5つを書いておくと防げます。
表題に「概算」と書く:「御見積書(概算)」「仮見積書」とし、正式な見積と区別します。
金額を幅で書く:「月額63万〜70万円(税抜)」のように下限と上限を書きます。
前提条件を書く:スキル・期間・精算幅・リモート可否など、計算の元にした条件を書きます。
有効期限を短くする:仮見積は2週間程度など、本見積より短めにします。
本見積に切り替える条件を書く:「要員確定後に正式な見積書を提出します」と書きます。
備考欄の例文
この見積書は概算です。要員確定後、正式な見積書を改めて提出いたします。
前提条件:Java開発経験3年以上、2026年11月〜2027年1月(3か月)、精算幅140〜180時間、週2日出社。
前提条件が変わった場合は、金額を見直させていただきます。
有効期限:発行日から2週間
契約は、申込みに対して相手が承諾したときに成立します(民法第522条)。仮見積の金額のまま注文書が届き、それに注文請書を返すと、その金額で契約が決まってしまうことがあります。注文書が届いたら、本見積の金額と合っているかを必ず照らし合わせましょう。
→ 見積書の備考欄の書き方|SESの精算条件・注意書きの例文10選
本見積・再見積・最終見積に切り替えるタイミング
本見積に切り替えるのは、面談に合格して要員と条件が決まったときです。その後に条件が変われば再見積、最後の調整が終われば最終見積を出します。
| タイミング | 出す見積 | 変わること |
|---|---|---|
| 面談の前 | 仮見積 | 幅のある金額と前提条件を示す |
| 面談に合格し要員が決まった | 本見積 | 要員に合わせた1つの金額にする |
| 期間・人数・精算幅が変わった | 再見積 | 変わった条件で計算し直す |
| 単価の交渉がまとまった | 最終見積 | 注文書と同じ金額にそろえる |
見積書を修正するときの注意
見積書を修正するときは、古い見積と新しい見積を取り違えないことが大切です。次の3点を守りましょう。
新しい見積書には発行日と版数(第2版など)を書く
備考に「2026年10月1日付の概算見積は無効とします」と書く
送付メールの件名にも「再見積」「修正版」と入れる
契約の途中で単価が変わる場合は、見積の出し直しに加えて、覚書などで条件の変更を残しておきます。単価が決まらないまま参画が先になる場合は、SESで単価未定のまま参画するときの仮単価|取適法上の扱いを確認してください。
SES営業の提案フローで見る、仮見積から注文書までの流れ
仮見積から注文書までは、面談の結果をはさんで1〜2週間ほどで進むことが多いです。2026年10月の例で流れを見てみましょう。
10月1日(木):客先から案件を受け取り、「このスキルでいくらか」と聞かれる
10月1日(木):月額63万〜70万円(税抜)の仮見積を出す
10月6日(火):候補者の面談を行う
10月7日(水):面談に合格。要員が決まったので、月額67万円(税抜)の本見積を出す
10月9日(金):注文書を受け取り、本見積と照らし合わせてから注文請書を返す
11月2日(月):参画(仕事を始める日)
面談の段取りについては、次の記事で詳しく解説しています。
→ SES面談の流れ|2回面談になる理由と営業の段取り7ステップ
BPへの仕入れ条件は本見積の後で確定する
BPの人材を提案する場合は、客先の本見積が決まってから、BPとの仕入れ単価を確定させるのが安全です。仮見積の段階でBPに金額を約束すると、客先の金額が下がったときに粗利がなくなります。
SES企業がBPに発注する側になるとき、取引によっては取適法(中小受託取引適正化法。2026年1月1日に下請法から改正・改称)の対象になります。取適法では、受託側から協議を求められたのに応じず、一方的に代金を決めることが禁止されています。仕入れ単価を話し合うときは、一方的に決めず、協議した記録を残すようにしましょう。
→ SESの仕入れ単価のBP交渉|関係を壊さない伝え方と例文5つ
そのまま使えるメール例文3つ
仮見積・本見積・再見積の送付メールは、「どの段階の見積か」を件名と本文の1行目で伝えるのがコツです。
例文1:仮見積(概算)を送るメール
件名:【概算見積】Java開発案件(2026年11月〜)のご提案単価について
株式会社〇〇 〇〇様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
ご相談いただいたJava開発案件につきまして、概算のお見積をお送りします。・概算単価:月額63万〜70万円(税抜)
・前提:Java開発経験3年以上、精算幅140〜180時間、週2日出社要員が決まりましたら、正式なお見積を改めてお送りします。
条件に変更がございましたら、お気軽にお知らせください。
例文2:本見積に切り替えるメール
件名:【正式見積】Java開発案件 T.Y.様のお見積について
株式会社〇〇 〇〇様
先日は面談のお時間をいただき、ありがとうございました。
T.Y.様のご参画にあたり、正式なお見積をお送りします。・月額単価:67万円(税抜)
・精算幅:140〜180時間(上下割)2026年10月1日にお送りした概算見積は、本見積をもって無効とさせていただきます。
例文3:条件が変わり再見積を送るメール
件名:【再見積】Java開発案件(期間変更に伴う修正版)
株式会社〇〇 〇〇様
契約期間が3か月から6か月に変更となりましたので、お見積を修正いたしました。
修正版(第2版)を添付いたします。以前のお見積は無効とさせていただきます。
仮見積でやってはいけないこと3つ
仮見積でやってはいけないのは、あとで説明できない形で金額を出すことです。次の3つは避けましょう。
電話や口頭だけで金額を伝える:言った金額だけが相手の記憶に残ります。あとで必ずメールか書面で送り直します。
下限だけを伝える:「63万円からいけます」と伝えると、相手は63万円で考え始めます。必ず上限とセットで伝えます。
前提条件を書かない:スキルや精算幅が違う人が決まったとき、金額を変える理由を説明できなくなります。
見積と請求の金額がずれてしまったときの対応は、次の記事で解説しています。
→ 見積書と請求書の金額が違う?SESで超過精算を請求する時の伝え方
自分で仮見積の根拠を管理する方法
仮見積をすばやく、ぶれずに出すには、過去の案件の条件と単価を記録しておくことが一番の近道です。まずはExcelやスプレッドシートで始められます。
案件ごとに「スキル・工程・期間・精算幅・提案単価・仕入れ単価」の列を作る
仮見積・本見積・最終見積の金額を、それぞれ別の列に記録する
仮見積と最終見積の差が大きかった案件に、理由をメモする
この記録があると、次に似た案件が来たとき、幅の根拠を数字で説明できるようになります。一方で、案件が増えるとシートが分かれたり、チームで最新版がわからなくなったりしがちです。
チョータツで概算単価の材料をそろえる
チョータツを使うと、案件の条件と単価の目安を、チームで1か所にまとめて管理できます。仮見積を出すときに、過去の似た案件の条件を見返しやすくなります。
案件・人材の情報を管理・共有できる:スキルや精算幅などの条件を、営業チームの全員が同じように見られます。
他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる:似た条件の案件・人材と比べて、概算単価の幅を考えられます。
AIが入力を手伝う:案件情報を登録する手間を減らせます。
パートナーへのメール配信機能がある:人材を探すとき、取引先にまとめて案件情報を届けられます。
チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。
よくある質問
- Q. 仮見積もりに法的な効力はありますか?
- 仮見積だけで契約が成立することは基本的にありません。ただし、その金額で注文書が届き、承諾すると契約になることがあります。注文書の金額は必ず確認しましょう。
- Q. 概算見積のフォーマットは、正式な見積書と別に作るべきですか?
- 同じフォーマットで問題ありません。表題を「御見積書(概算)」にし、金額を幅で書き、備考に前提条件と「要員確定後に正式な見積を出す」旨を書けば十分です。
- Q. 本見積書とは何ですか?仮見積と何が違いますか?
- 本見積書とは、要員と条件が決まった後に出す正式な見積書のことです。仮見積と違い、金額は1つに決まっており、注文書の元になります。
- Q. 再見積書と最終見積書はどう違いますか?
- 再見積書は、条件が変わったときに出し直す見積書です。最終見積書は、交渉がまとまった後に出す最後の版で、注文書と同じ金額になります。
- Q. 見積書を修正したいときは、前の見積を取り消す必要がありますか?
- 新しい見積書の備考に「〇月〇日付の見積は無効とします」と書くのがおすすめです。発行日と版数も書き、どれが最新かをはっきりさせましょう。
- Q. 仮見積の有効期限はどれくらいにすればいいですか?
- 法律で決まった期間はありません。SESは要員の空き状況が早く変わるため、2週間程度など短めにしておくと、古い金額が残りにくくなります。
まとめ
仮見積は条件が決まる前の目安、本見積は条件が決まった後の正式な金額
SESでは、面談前は仮見積、面談合格で要員が決まったら本見積に切り替える
概算単価は「仕入れ単価の幅+自社の粗利」で計算し、幅で出す
表題に「概算」、前提条件、短い有効期限、本見積への切り替え条件を書くと、金額が独り歩きしない
条件が変われば再見積、交渉がまとまれば最終見積。古い見積は「無効」と明記する
過去の案件の条件と単価を記録しておくと、仮見積の根拠をすぐ説明できる
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「民法」(第522条 契約の成立と方式)
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」
政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」