SESの注文書・注文請書は必要?違いと契約の成立時点|条文例3つと稼働前の段取り7ステップ
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
SESの注文書・注文請書とは?
注文書とは、発注する側が「この条件で仕事をお願いします」と申し込む書類のことです。注文請書とは、受注する側が「その条件で引き受けます」と返す書類のことです。
SESでは、共通のルールを基本契約書で決め、案件ごとの条件を注文書と注文請書で決めるのが一般的です。基本契約書とは、取引先との間でずっと使う共通ルールを決めた契約書のことです。
案件ごとの条件で結ぶ契約を、個別契約と呼びます。注文書と注文請書は、この個別契約を結ぶための書類です。基本契約書の作り方は、SESの基本契約書とは|テンプレートと個別契約の優先・印紙7号で解説しています。注文書が届いてから請書を返すまでの実務とメール例文は、注文書とは?SESの発行から請書返送までの流れと送付メール例文にまとめています。
| 書類 | 出す人 | 役割 | 出すタイミング |
|---|---|---|---|
| 基本契約書 | 双方 | 取引全体の共通ルール | 最初の取引の前に1回 |
| 注文書 | 発注側(上位の会社) | 個別契約の申込み | 案件が決まったとき |
| 注文請書 | 受注側(自社) | 個別契約の承諾 | 注文書を受け取った後 |
| 個別契約書 | 双方 | 注文書と請書を1枚にまとめたもの | 案件が決まったとき |
注文書と注文請書の違い
注文書と注文請書の違いは、出す人と、法律上の意味です。注文書は発注側が出す「申込み」で、注文請書は受注側が出す「承諾」です。
民法第522条第1項では、契約は申込みに対して相手が承諾したときに成立すると定めています。つまり、注文書だけでは契約はまだ成立していません。受注側の承諾があって、はじめて契約になります。
書く内容は、ほぼ同じです。注文請書は、注文書の内容を写したうえで「注文書記載の条件でお請けします」と書くのが一般的です。請書の内容を注文書から変えると、それは承諾ではなく新しい申込みとして扱われるので注意しましょう(民法第528条)。
| 項目 | 注文書 | 注文請書 |
|---|---|---|
| 出す人 | 発注側 | 受注側 |
| 法律上の意味 | 申込み | 承諾 |
| 書く内容 | 業務内容・期間・単価など | 注文書と同じ内容+引き受ける旨 |
| 印紙 | ふつうは不要(注文書だけで成立する取り決めなら必要なことがある) | 中身が請負なら必要なことがある |
SESで注文請書は必要?
SESで注文請書が必要かどうかは、基本契約書の条文で決まります。法律上は、書面がなくても契約は成立します。しかし、基本契約書が「請書の交付で成立」と決めていれば、請書がないと契約は成立しません。
民法第522条第2項は、契約の成立には法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成は要らないと定めています。メールの「承知しました」だけでも、契約が成立する可能性はあります。
それでもSESで注文請書を出すのは、あとで揉めたときの証拠になるからです。次の3つに当てはまるなら、注文請書を出しておきましょう。
基本契約書に「注文請書の交付により個別契約が成立する」と書いてある
基本契約書がなく、注文書だけが届いている
注文書の条件が、口頭やメールで決めた内容と違っている
反対に、基本契約書に「異議がなければ成立」と書いてあれば、請書を出さなくても契約は成立します。その場合も、条件の確認は必ず行い、違いがあれば期限内に連絡します。
契約はいつ成立する?基本契約書の条文例3つ
個別契約が成立するタイミングは、基本契約書の条文で3つに分かれます。「請書を交付したとき」「期限が過ぎたとき」「注文書を出したとき」です。自社の基本契約書がどれにあたるかを、まず確認しましょう。
条文例はそれぞれ次のとおりです。甲は発注側、乙は受注側(自社)です。
パターン1:請書の交付で成立する条文
第◯条(個別契約の成立) 個別契約は、甲が乙に対し、業務内容、期間、委託料その他の条件を記載した注文書を交付し、 乙が甲に対し、注文請書を交付したときに成立する。
パターン2:期限内に異議がなければ成立する条文(みなし承諾)
第◯条(個別契約の成立) 個別契約は、甲が乙に対し注文書を交付し、乙が注文書を受領した日から5営業日以内に 書面または電子メールにより異議を申し出ないときは、乙が承諾したものとみなし、成立する。
パターン3:注文書の発行だけで成立する条文
第◯条(個別契約の成立) 個別契約は、甲が乙に対し、本契約に基づき注文書を交付したときに成立する。
みなし承諾とは、決めた期限までに断らなければ、承諾したものとして扱う取り決めのことです。
| パターン | 契約が成立する時点 | 請書の必要性 | 受注側の注意点 |
|---|---|---|---|
| 1. 請書で成立 | 乙が請書を交付したとき | 必要 | 請書を出すまで契約がない |
| 2. みなし承諾 | 異議の期限が過ぎたとき | なくても成立 | 期限内に条件を確認する |
| 3. 注文書で成立 | 甲が注文書を出したとき | 不要 | 条件を事前にすり合わせる |
受注側の自社にとって安全なのは、パターン1かパターン2です。パターン3は、注文書の条件が違っていても、すでに契約が成立したと主張されるおそれがあります。
請書がないと、成立時点がどう変わるか
同じ日程でも、条文によって契約の成立日が変わります。次の例で比べます。
2026年9月24日(木):発注側から注文書がメールで届く
2026年10月1日(木):エンジニアの稼働開始日
注文請書は、稼働開始後の2026年10月5日(月)に返した
パターン1なら、契約が成立するのは10月5日(月)です。10月1日(木)と2日(金)の稼働は、契約がない状態で行われたことになります。パターン2なら、9月24日(木)から5営業日が過ぎた10月1日(木)の終わりに成立します。
パターン3なら、注文書が届いた9月24日(木)に成立しています。請書が遅れても契約はありますが、条件の食い違いに気づくのが遅れます。
基本契約書がない取引先から注文書が届いたら
基本契約書がない場合は、民法の原則どおり、申込みに承諾したときに契約が成立します。取引が続いている会社どうしでは、商法第509条にも注意が必要です。
商法第509条は、商人が平常取引をする相手から申込みを受けたら、遅滞なく諾否を通知しなければならないと定めています。通知を怠ると、申込みを承諾したものとみなされます。条件に納得できない注文書を放置せず、すぐに返事をしましょう。
注文書・注文請書に書く項目12
注文書と注文請書には、案件ごとに変わる条件をすべて書きます。基本契約書に書いたことは、「基本契約書に基づく」と一言入れれば省略できます。
| # | 項目 | 記載例 |
|---|---|---|
| 1 | 基本契約の名称と日付 | 2026年4月1日付 業務委託基本契約 |
| 2 | 契約形態 | 準委任契約(履行割合型) |
| 3 | 業務内容 | 〇〇システムの詳細設計・テスト支援 |
| 4 | 作業者 | 山田太郎(氏名またはイニシャル) |
| 5 | 契約期間 | 2026年10月1日〜2026年12月31日 |
| 6 | 作業場所 | 東京都港区(一部リモート) |
| 7 | 月額単価 | 700,000円(税抜) |
| 8 | 精算幅・精算方法 | 140〜180時間、上下割、15分単位 |
| 9 | 支払条件 | 月末締め翌月末払い |
| 10 | 業務責任者・連絡窓口 | 乙の業務責任者の氏名 |
| 11 | 再委託の可否 | 甲の書面承諾なく再委託しない |
| 12 | 発行日・番号 | 注文番号・発行日(実際の日付) |
準委任契約とは、成果物の完成ではなく、決まった業務を行うことに対して報酬を払う契約のことです。契約形態の欄に「準委任」と明記しておくと、請負と誤解されるのを防げます。
注文書を遡って発行するとどうなる?リスク5つ
稼働開始後に注文書・注文請書を遡って発行すると、契約がない期間の条件があいまいになるのが一番のリスクです。SESでは「現場が急ぎで、書類は後から」という場面がよくあります。しかし、次の5つのリスクがあります。
条件の食い違いに気づけない:単価・精算幅・期間が口頭と違っても、すでに稼働している
支払いが遅れる:注文番号がないと、発注側の経理が請求書を受け付けないことがある
下流への発注も遅れる:BPやフリーランスへの注文書も出せず、明示義務に違反しやすい
トラブル時の根拠がない:途中終了や情報漏えいが起きたとき、どの条件が適用されるか争いになる
契約形態があいまいになる:契約がない状態で客先が作業を指示すると、偽装請負を疑われやすい
リスク3の「下流への発注の遅れ」は特に重要です。取適法(中小受託取引適正化法)とは、2026年1月1日に下請法が改正されてできた法律のことです。対象の取引では、発注側は委託をしたら直ちに、内容・代金・支払期日などを明示しなければなりません(第4条)。
フリーランスへの発注でも、フリーランス法第3条が同じように直ちに条件を明示するよう求めています。SESの準委任が取適法の対象になるかは、取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つで確認できます。
上位の会社から注文書が届かないときの対応は、下請法で口頭発注は違反?SESで注文書が届かない時の対応5手順で解説しています。契約前に稼働を始める場合の対策は、業務委託で契約書なしは有効?注文書前に稼働する時の対策で扱っています。
やむを得ず稼働後に発行するときの書き方
どうしても稼働開始に間に合わないときは、発行日は実際の日付にし、契約期間の開始日を稼働開始日にするのが基本です。発行日そのものを過去の日付にすると、事実と違う書類になります。
あわせて、次の2つを行います。
稼働開始日より前に、メールで主な条件(期間・単価・精算幅)を合意しておく
注文書が届くまでの遅れの理由と、発行予定日をメールで記録に残す
単価がまだ決まらないときの扱いは、SESで単価未定のまま参画するときの仮単価|取適法上の扱いで解説しています。稼働前に送る合意メールの例文は次のとおりです。
件名:【条件確認】〇〇案件(山田)10月1日稼働開始分について 株式会社〇〇 △△様 いつもお世話になっております。株式会社□□の□□です。 10月1日(木)稼働開始の〇〇案件について、注文書の発行前に条件を確認させてください。 ・作業者:山田太郎 ・契約形態:準委任 ・期間:2026年10月1日〜2026年12月31日 ・単価:700,000円/月(税抜) ・精算:140〜180時間、上下割、15分単位 ・支払:月末締め翌月末払い 以上の条件で相違なければ、ご返信をお願いいたします。 注文書は10月5日(月)までにご送付いただけますと幸いです。
稼働前に書類をそろえる営業の段取り7ステップ
書類を稼働に間に合わせるコツは、面談に合格した日から稼働開始日までを逆算して、書類の締め切りを決めることです。稼働開始日が2026年10月1日(木)の場合の例です。
面談合格の日(9月18日・金):単価・期間・精算幅など、条件をメールで確定する
基本契約書を確認する(9月18日・金):新しい取引先なら、秘密保持契約と基本契約書を先に進める
注文書の発行を依頼する(9月18日・金):「9月25日(金)までに注文書をお願いします」と期限を伝える
注文書の中身を確認する(届いた当日):確定した条件と、12項目を1つずつ照らし合わせる
注文請書を返す(確認の翌営業日まで):違いがあれば請書を出さず、先に修正を依頼する
下流の注文書を出す(9月28日・月まで):BPやフリーランスがいれば、同じ条件で発注する
稼働3営業日前に最終確認(9月28日・月):上流・下流の書類がそろったかを確認する
新しい取引先で基本契約書がまだない場合は、ステップ2の手続きに1〜2週間かかることもあります。面談の段階で「基本契約はありますか」と確認しておくと安心です。
| 時期 | 営業がやること | 相手 |
|---|---|---|
| 面談合格の日 | 条件確定・注文書の発行依頼 | 上位の会社 |
| 稼働の1週間前 | 注文書の確認・請書の返送 | 上位の会社 |
| 稼働の3営業日前 | 下流への発注・最終確認 | BP・フリーランス |
| 稼働後の月末 | 稼働報告・請求 | 上位・下流の両方 |
毎月の書類の流れ全体は、SESの毎月の営業事務業務|注文書・請求・支払いの月次フローで整理しています。
契約更新のときも同じ段取りにする
契約を延長するときも、新しい期間の注文書と注文請書が必要です。基本契約書に自動更新の定めがあっても、個別契約の期間が切れれば新しい個別契約が要ります。
更新の返事をもらったら、その日のうちに次の期間の注文書を依頼しましょう。
注文書・注文請書に印紙は必要?
SESの注文書・注文請書は、中身が準委任だけなら、印紙は原則要りません。印紙税がかかるのは、請負の契約を証明する文書など、印紙税法が決めた文書だけだからです。
ただし、中身が請負の注文請書は、請負に関する契約書(第2号文書)として印紙が必要になることがあります。国税庁は、注文書でも基本契約書に基づき申込みだけで契約が成立するものなどは、契約書として扱うとしています。前の章のパターン3(注文書で成立)の注文書は、中身が請負なら発注側に印紙が必要になることがあります。
紙ではなくPDFをメールで送る注文請書には、印紙はかかりません。PDFなどの電磁的記録をメールで送っても、課税文書を「作成」したことにはなりません。国税庁も、印紙税はかからないと回答しています。ただし、同じ注文請書を紙に印刷して相手に渡すと、課税の対象になります。
書類ごとの判定は、業務委託契約の印紙はいくら?準委任は必要?判定表と貼り方で確認できます。PDFで受け取った書類は、電子帳簿保存法にしたがいデータのまま保存します。
チョータツで決まった案件の条件を管理する
自分で管理する場合は、案件ごとに確定した条件をExcelやメールに残し、注文書が届くたびに探して見比べます。案件が増えると、「どのメールが最終の条件か」がわからなくなりがちです。
チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールのことです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 確定した条件を残す | Excelやメールに散らばる | 案件の情報としてまとめて管理できる |
| 注文書と見比べる | 過去のメールを探して読み返す | 案件情報を開いて確認できる |
| 担当が休みの日 | 本人しか条件がわからない | チームで同じ情報を共有できる |
| 情報を入れる | 1件ずつ手で書き写す | AIが入力を手伝う |
案件の条件が1か所にまとまっていれば、注文書の確認がすぐ終わります。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材もデータベースとして見られます。
よくある質問
- Q. SESで注文請書は必ず必要ですか?
- 法律上は必須ではありません。ただし、基本契約書に「注文請書の交付で成立する」と書いてあれば、請書がないと契約は成立しません。証拠を残すためにも、出しておくのが基本です。
- Q. 注文書と注文請書で、契約はいつ成立しますか?
- 基本契約書の条文で決まります。「請書の交付で成立」なら請書を出したとき、「異議がなければ成立」なら期限が過ぎたときです。基本契約書がなければ、承諾したときに成立します。
- Q. SESの注文書を遡って発行してもいいですか?
- 発行日を過去の日付にするのは避けましょう。発行日は実際の日付にし、契約期間の開始日を稼働開始日にするのが基本です。稼働前に、主な条件をメールで合意しておきます。
- Q. 注文書が届かないまま稼働が始まったらどうすればいいですか?
- 当日中に、期間・単価・精算幅をメールで確認し、注文書の発行予定日を聞きます。そのうえで、下流のBPやフリーランスへの発注も同じ条件で進めます。
- Q. 注文請書に印紙は必要ですか?
- 中身が準委任だけなら、原則要りません。中身が請負の紙の注文請書は、印紙が必要になることがあります。PDFをメールで送る場合は、印紙はかかりません。
- Q. 個別契約書と注文書・注文請書は、どちらを使うべきですか?
- どちらでも効力は同じです。発注側の書式がある大手は注文書が多く、個別契約書は1枚で済むのが利点です。取引先に合わせましょう。
まとめ
注文書は発注側の「申込み」、注文請書は受注側の「承諾」
契約は書面がなくても成立するが、SESでは証拠として両方そろえるのが基本
注文請書が要るかは、基本契約書の「個別契約の成立」の条文で決まる
条文は「請書で成立」「みなし承諾」「注文書で成立」の3パターン。受注側はパターン1か2が安全
基本契約がない相手からの注文書は、放置すると承諾とみなされることがある(商法第509条)
遡って発行すると、条件の食い違い・支払いの遅れ・明示義務違反につながる
発行日は実際の日付にし、稼働前に主な条件をメールで合意しておく
面談合格の日から逆算し、稼働の3営業日前までに上流・下流の書類をそろえる
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「民法」(第522条 契約の成立と方式、第528条 申込みに変更を加えた承諾、第656条 準委任)
e-Gov法令検索「商法」(第509条 契約の申込みを受けた者の諾否通知義務)
e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)」(第4条 中小受託事業者の給付の内容その他の事項の明示等)
e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)」(第3条 取引条件の明示)
国税庁「取引先にメール送信した電磁的記録に関する印紙税の取扱い」(質疑応答事例)
福岡国税局「請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」(文書回答事例)