高還元SESのビジネスモデルと利益|還元率別の計算例と、競合・取引先としての付き合い方

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

高還元SESとは?

高還元SESとは、単価のうちエンジニアに払う割合(還元率)を高くし、採用の強みにしているSES企業のことです。求人広告で「還元率◯%」「単価を公開」とうたう会社が多いのが特徴です。

還元率とは、客先からの単価のうち、エンジニアの給与として支払う割合のことです。計算式は「エンジニアへの支払い ÷ 単価 × 100」です。

「何%から高還元」という決まりはない

「還元率が何%以上なら高還元」という法律や公的な基準はありません。各社が自分で名乗っている呼び名です。そのため、営業が他社の還元率を聞いたときは、数字の大きさより中身を確かめることが大切です。

SESと派遣で「数字の公開ルール」が違う

労働者派遣の会社は、法律でマージン率などの情報を公開する義務があります(労働者派遣法第23条第5項)。一方、準委任契約のSESには同じ義務はありません。

そのため、SESの「還元率」は各社が独自の計算方法で出している数字です。公開の義務がないぶん、定義が会社ごとにばらばらになりやすいのです。マージン率との違いはSESのマージン率の平均と相場|計算式・適正ライン・説明例文付きで整理しています。

高還元SESのビジネスモデル(収益構造)

高還元SESの収益構造は、「1人あたりの粗利を小さくし、その代わりに固定費を削って利益を残す」形です。売上の入り方そのものは、通常のSESと変わりません。

SESの利益は、次の3段階で考えるとわかりやすくなります。

  1. 売上:客先(上位の会社)から受け取る単価の合計

  2. 粗利:売上から、エンジニアの給与・会社負担の社会保険料・BPへの支払いなどを引いた残り

  3. 営業利益:粗利から、営業・事務の人件費、オフィス代、採用広告費などの販管費を引いた残り

販管費とは、「販売費及び一般管理費」の略で、本業を回すためにかかる共通の費用のことです。SESでは営業担当の給与や採用費が大きな割合を占めます。

通常のSESとの違い

項目通常のSES高還元SES
還元率の目安公開しないことが多い70〜80%台を打ち出す会社が多い
1人あたり粗利厚め薄い
利益の出し方粗利の厚さ人数・稼働率・固定費の小ささ
採用の打ち出し方教育・安定・福利厚生給与の高さと透明性

「70〜80%台」は、各社の求人でよく見かける打ち出し方の傾向です。公的な統計ではありません。

還元率と会社の利益の計算例

還元率を10ポイント上げると、会社に残る粗利は単価の約1割以上減ります。社会保険料の会社負担も給与に連動して増えるためです。ここでは、同じエンジニアで還元率だけを変えて計算します。

計算の前提(説明用の仮の数字)

  • 単価:月70万円

  • 会社負担の社会保険料:給与の15%と置く(厚生年金だけで会社負担は9.15%。健康保険・雇用保険なども加わります。料率は2026年9月時点で確認)

  • 交通費・PC代などは計算から外す

還元率の条件エンジニアの給与会社負担の社会保険料会社に残る粗利
60%(社保は別)42.0万円6.3万円21.7万円(31.0%)
70%(社保は別)49.0万円7.35万円13.65万円(19.5%)
80%(社保込み)約48.7万円約7.3万円14.0万円(20.0%)
80%(社保は別)56.0万円8.4万円5.6万円(8.0%)
85%(社保は別)59.5万円約8.9万円約1.6万円(2.3%)

「80%(社保込み)」は、給与と会社負担の社会保険料を足して単価の80%にする計算です。同じ80%でも、社保を含むかどうかで会社に残る額は5.6万円と14.0万円、2.5倍の差になります。

販管費を引くと、どこから赤字になるか

仮に、エンジニア1人あたりの販管費を月6万円とします。営業・事務の人件費やオフィス代を、在籍人数で割った金額です。

還元率の条件粗利販管費(1人あたり)営業利益(1人あたり)
60%(社保は別)21.7万円6万円+15.7万円
70%(社保は別)13.65万円6万円+7.65万円
80%(社保込み)14.0万円6万円+8.0万円
80%(社保は別)5.6万円6万円−0.4万円

「80%(社保は別)」で黒字にするには、単価が約75万円以上必要です。計算式は「販管費 ÷(1 − 還元率 × 1.15)」で、6万円 ÷ 0.08 = 75万円です。

「85%(社保は別)」では、同じ販管費だと単価が約267万円必要になり、現実的ではありません。高い還元率を打ち出す会社ほど、社保込みの定義や極めて小さい販管費で成り立たせていると考えられます。

待機1か月で、何か月分の利益が消えるか

高還元型の弱点は待機です。待機とは、エンジニアが案件に入っておらず、売上が立たない期間のことです。

還元率70%(社保は別)の例で計算します。

  1. 待機中も給与を全額払う場合:給与49万円+社保7.35万円=56.35万円の持ち出し

  2. 1か月の粗利は13.65万円なので、取り戻すのに約4.1か月かかる

  3. 休業手当(平均賃金の60%以上。労働基準法第26条)だけ払う場合でも、約2.7か月分の粗利が消える。給与29.4万円+社保7.35万円で計算(月給の60%で簡略化。社保は標準報酬月額が変わるまで同じ額の前提)

利益が薄いほど、1か月の待機の重みが大きくなります。待機中の扱いはSESの待機期間の給与と対応|休業手当の計算例と早く案件に入る7手順で詳しく解説しています。

高還元SESが利益を出すために変えていること

高還元型の会社は、薄い粗利を守るために「待機をなくす」「単価を上げる」「固定費を削る」の3つを徹底しています。営業の現場では、次の5つの形で表れます。

1. 商流の浅い、単価の高い案件を優先する

商流が1段深くなると、間の会社の手数料で単価が下がります。高還元型は、単価の数万円の差が利益を大きく左右するため、エンドや元請けに近い案件を強く求めます。

2. 営業と管理の人数を少なくする

販管費の大部分は人件費です。営業1人が担当するエンジニアの数を増やし、事務はツールで減らします。そのぶん、連絡が短く、判断が速い営業スタイルになりやすいです。

3. 待機を出さないよう、次の案件を早めに探す

契約終了の前から次の案件を探し始めます。複数のBPに同時に提案し、面談の日程をすぐ決めたがる傾向があります。待機が複数出たときの提案の順番はSESの待機エンジニアが複数いるときの営業の優先順位|判断表つきが参考になります。

4. 給与を単価に連動させる

単価が下がれば給与も下がる仕組みにして、会社のリスクを減らします。待機中の給与を基本給だけにするなど、待機時のルールも明確にしている会社が多いです。

5. 採用広告費を「還元率」で置き換える

「還元率◯%」という分かりやすい訴求で、口コミやSNSからの応募を集めます。広告費を抑えられれば、そのぶんを還元に回せます。

高還元SESが増えると、SES営業の何が変わるか

高還元SESの増加で影響を受けるのは、採用・BP取引・単価交渉の3つの場面です。自社がどちらの型でも、相手の事情を知っておくと交渉がスムーズになります。

場面起きやすいこと営業への影響営業の打ち手
採用候補者が還元率で会社を比べる自社の説明を求められる還元の考え方と使い道を説明する
BPから人材をもらう仕入れ単価を下げにくい自社の粗利が薄くなる商流と単価を先に確認する
BPへ案件を渡す単価と商流を細かく聞かれる情報を出し渋ると断られる条件を最初にそろえて出す
在籍エンジニア他社の還元率を聞いて転職を考える離職・引き抜きのリスク単価アップの道筋を示す

競合としての付き合い方(採用・定着で負けないために)

採用で高還元型と戦うときは、還元率の数字で張り合わず、「総額」と「待機の少なさ」で比べてもらうのが基本です。還元率が高くても、単価が低い案件ばかりなら手取りは増えないからです。

候補者やエンジニアへの説明で使える3つのポイント

  1. 総額で比べる:還元率80%×単価55万円は44万円、還元率65%×単価80万円は52万円です。還元率が低いほうが給与は高くなります

  2. 定義をそろえる:社会保険料を含む数字かどうかを一緒に確かめます

  3. 会社に残る分の使い道を示す:待機中の給与保証、教育、単価交渉の営業力など、エンジニアに返る部分を伝えます

エンジニアに「他社は還元率80%です」と言われたときの答え方の例

教えてくれてありがとうございます。還元率は会社ごとに計算のしかたが違うので、まず中身を比べさせてください。
その80%に、会社が払う社会保険料が入っているかを確認してみてください。
弊社は社会保険料を別にして、単価の約65%を給与にしています。
今の単価は月80万円なので、給与は約52万円です。
次の更新で単価を上げられるよう、担当範囲を広げる相談を客先にしていきます。

単価をどこまで伝えるかは、SESの単価に開示義務はある?派遣との違いとエンジニアへの説明例で整理しています。

やってはいけないこと

  • 他社の還元率を根拠なく「うそだ」と否定する

  • 自社の還元率を、社保込みなのに社保別のように見せる

  • 利益が出ないのに、採用のためだけに還元率を上げる

特に3つ目は、待機が1人出ただけで赤字になる体質をつくります。先に単価と商流を上げてから還元率を見直す順番がおすすめです。粗利との関係はSESの粗利率の平均は?利益率の計算式と計算例・上げる方法5つで詳しく計算しています。

取引先(BP)としての付き合い方

高還元型のSES企業は、単価の数万円に敏感で、スピードを重視するBPです。この特徴を知っておくと、取引をうまく進められます。

高還元型から人材の提案を受けるとき

  • 仕入れ単価の値下げ交渉は通りにくいと考え、最初の提示で条件を固める

  • 精算幅(稼働時間の上下限)や支払いサイトの条件を、早めにすり合わせる

  • 面談から決定までを速く進める。返事が遅いと、ほかの案件に決まってしまう

高還元型に案件を渡すとき

  • 単価・商流・精算幅・期間を最初のメールにそろえて書く

  • 商流を正直に伝える。後から深い商流だとわかると、信頼を失う

  • 次の案件の相談も早めに受ける。待機を嫌うため、継続の相談が早い傾向がある

取引前に確認したい5項目

  1. 相手の還元率が、社保込みか社保別か(エンジニアの離職リスクの目安になる)

  2. 待機中の給与ルール(案件終了時の動きの速さがわかる)

  3. 支払いサイトと、自社の入金とのずれ

  4. 引き抜き禁止の取り決め(契約書の条項)

  5. 会社の設立年と在籍人数(薄利なので、規模が小さいと資金繰りの影響を受けやすい)

取引前の確認はSESパートナーの選び方と注意点|取引前に見る10項目チェック表を参考にしてください。引き抜き対策は引き抜き禁止条項の有効性と期間|SES契約で守られる書き方と例文で解説しています。

自社の還元率を見直す6つの手順

還元率を上げるかどうかは、「上げても黒字が続くか」を1人ずつ計算してから決めます。次の順番で進めましょう。

  1. 在籍エンジニア全員の単価と給与を一覧にする:社保の会社負担も横に書きます

  2. 今の還元率を、社保込み・社保別の両方で出す:他社と比べるときの基準をそろえます

  3. 1人あたりの販管費を出す:年間の販管費 ÷ 12か月 ÷ 在籍人数で求めます

  4. 1人ずつ営業利益を計算する:単価 − 給与 − 社保 − 販管費です

  5. 待機1か月の影響を試算する:何か月分の利益が消えるかを確かめます

  6. 単価アップの見込みがある人から見直す:単価が上がる人は、還元率を上げても利益を保てます

この計算表は、Excelやスプレッドシートで十分作れます。単価の決め方はSESの提案単価の決め方|仕入れ単価から逆算する計算式と5つの要素も参考になります。

チョータツで「待機を減らす営業」を楽にする

高還元型と戦うにしても、取引するにしても、大事なのは待機を減らし、単価の良い案件を早く見つけることです。自分でやるなら、BPから届く案件メールを毎日読み、Excelに転記して探す方法があります。

ただ、案件メールは1日に何十通も届きます。すべて読んで転記するのは、営業の時間を大きく奪います。そこで、DrivenXのツールを使うと次のように楽になります。

困りごと使う機能できること
BPの案件を探すのに時間がかかるチョータツ連携した他社の営業中案件・人材をデータベース化できる
自社人材の提案を一斉に送りたいチョータツパートナーへのメール配信機能がある
案件メールと人材メールが混ざるチョータツメールAI届いたメールをAIが案件メールと人材メールに切り分ける
エンジニアの採用で負けているxhoursITフリーランスに直接スカウトできる

チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。AIが入力を手伝うので、案件・人材情報の登録の手間も減らせます。

採用で高還元型に負けやすい場合は、正社員だけにこだわらず、フリーランスの力を借りる方法もあります。xhoursなら、数千名のフリーランスのデータベースから探して、企業が直接スカウトできます。

よくある質問

Q. 高還元SESは本当に利益が出るのですか?
出せますが、1人あたりの利益は薄くなります。単価70万円・還元率70%(社保は別)なら、会社に残る粗利は約13.7万円です。待機を減らし、販管費を小さくすることで利益を残しています。
Q. SESのビジネスモデルでは、どこで収益が出ますか?
客先から受け取る単価と、エンジニアに払う給与(BPなら仕入れ単価)の差が粗利です。粗利から営業・事務の費用などを引いた残りが、会社の営業利益になります。
Q. 還元率80%と書かれていたら、会社の取り分は20%ですか?
そうとは限りません。社会保険料の会社負担を含まない計算なら、会社に残るのは単価の1割未満になることもあります。何を含めた数字かを確かめましょう。
Q. 高還元SESはBPとして取引しても大丈夫ですか?
問題なく取引できます。ただし利益が薄いため、単価や支払い条件には厳しい傾向があります。条件を最初にそろえ、返事を速くすると取引が進みやすいです。
Q. 自社も高還元に切り替えるべきですか?
先に単価と商流を上げるのがおすすめです。単価が低いまま還元率だけ上げると、待機が1人出ただけで赤字になりやすいからです。
Q. 高還元型の会社にエンジニアを引き抜かれないか心配です。
契約書に引き抜き禁止の条項を入れ、在籍エンジニアには単価アップの道筋を示しましょう。還元率の数字より、手取りの総額と待機の少なさを伝えるのが効果的です。

まとめ

  • 高還元SESは、単価の多くを給与に回し、人数・稼働率・固定費の小ささで利益を出すビジネスモデル

  • 単価70万円なら、還元率70%(社保は別)で粗利約13.7万円、80%(社保は別)で約5.6万円

  • 「還元率◯%」は社保込みか社保別かで意味が大きく変わる。比べる前に定義をそろえる

  • 高還元型は待機に弱いため、商流の浅い案件を求め、判断も速い

  • 競合としては総額と待機の少なさで勝負し、取引先としては条件を最初にそろえて速く返す

  • 待機を減らす営業は、チョータツで案件・人材の情報を1か所にまとめると楽になる

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)