SESエンジニアの離職対策|退職理由別に営業ができる定着施策7つと帰属意識の高め方

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESエンジニアの離職率はどれくらい?

公的な統計に「SESだけの離職率」はありません。近い数字として、厚生労働省の雇用動向調査が使えます。令和7年(2025年)の情報通信業の離職率は10.4%で、全産業の13.7%より低い結果でした。

離職率とは、年の初めにいた常用労働者のうち、1年間に辞めた人の割合のことです。反対に定着率とは、ある期間の初めにいた人のうち、終わりにも在籍している人の割合のことです。

区分(令和7年)入職率離職率
全産業14.7%13.7%
情報通信業13.6%10.4%
情報通信業(一般労働者)13.1%10.0%

出典:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要」(2026年9月30日確認)

情報通信業には、自社サービスの会社やSIerも入っています。客先常駐が中心のSES企業は、この平均と同じとは限りません。まず自社の数字を出すところから始めましょう。

自社の定着率の計算例

計算式はシンプルです。

  • 定着率(%)= 期間の終わりにも在籍している人 ÷ 期間の初めにいた人 × 100

  • 離職率(%)= 100 − 定着率(期間中に入社した人は分けて数える)

例:2026年1月1日に社員エンジニアが40人、12月31日まで在籍したのが34人とします。定着率は85%、離職率は15%です。

入社1年以内の人だけで同じ計算もしてみましょう。全体より明らかに低いなら、早期離職(入社してすぐ辞めること)が課題だとわかります。

1人辞めると、いくら失うか

離職の損失は、採用費だけではありません。営業の目線では、稼働が止まる期間の粗利が大きいです。

例(仮の数字):粗利が月15万円のエンジニアが辞め、代わりの人が決まるまで2か月かかったとします。粗利だけで30万円が消えます。そこに求人広告や紹介手数料などの採用費が加わります。

SESエンジニアが辞める3つの理由と、営業が気づけるサイン

SESエンジニアの退職理由は、現場でよく聞く話をまとめると3つに分かれます。どれも客先常駐だから起きやすい理由です。営業は、面談やチャットでその前ぶれに気づける立場にいます。

参考として、同じ調査(令和7年)で転職した人が前の職場を辞めた理由を見ます。「その他の個人的理由」を除いた上位です。

順位男性女性
1定年・契約期間の満了 16.1%労働時間、休日等の労働条件が悪かった 12.9%
2給料等収入が少なかった 9.9%職場の人間関係が好ましくなかった 11.5%
3職場の人間関係が好ましくなかった 8.9%給料等収入が少なかった 8.6%
退職理由エンジニアの本音営業が気づけるサイン効く施策
案件が選べない「やりたい技術に触れない」次の案件の希望を聞くと黙る案件選択制・早めの相談
評価が見えない「頑張っても給料が上がらない」単価や給与の質問が増える評価基準の見える化・単価の説明
孤立している「自分はどこの社員かわからない」連絡への返信が遅く短くなる定期面談・帰社日・同じ現場への複数配置

帰属意識とは、「自分はこの会社の一員だ」と感じる気持ちのことです。SESでは、毎日いる場所が客先なので、自社への帰属意識が育ちにくくなります。

SESエンジニアの定着率を上げる施策7つ

定着率を上げるには、3つの退職理由に1つずつ手を打つのが近道です。ここでは、営業が主役になれる施策を7つ、始めやすい順に並べます。

#施策効く退職理由営業の手間
1案件選択制案件が選べない中
2次の案件を2か月前に相談案件が選べない小
3月1回の定期面談孤立中
4単価と還元の考え方を説明評価が見えない小
5評価基準を見える化評価が見えない中
6帰社日・社内の場づくり孤立中
7入社後90日のフォロー早期離職中

施策1:案件選択制で「選べる」を約束する

案件選択制とは、会社が決めた案件に入ってもらうのではなく、エンジニアが複数の候補から選べるしくみのことです。「案件が選べない」という退職理由に、いちばん直接効きます。

ポイントは、候補を2〜3件そろえてから見せることです。1件しかないと、選択制とは言えません。進め方は次の見出しで手順にしています。

施策2:次の案件は「契約終了の2か月前」に相談する

契約が終わる直前に次の案件を決めると、エンジニアは選べません。契約終了の約2か月前に、延長したいか・次は何をしたいかを聞きましょう。

例:契約が2026年12月31日に終わるなら、10月末までに本人と話します。お客さんへの更新の返事の前に、本人の気持ちを確かめておけます。

→ SESの契約更新はいつ決まる?通知時期と更新しない時の4手順

施策3:月1回の定期面談で孤立を防ぐ

月1回、15〜30分でよいので、営業とエンジニアで話す時間を決めます。オンラインでもかまいません。大切なのは「困ったらこの人に言えばいい」と思ってもらうことです。

面談では、仕事の不満だけでなく、将来の希望も聞きます。聞く内容は、この記事の「定期面談で使える質問リスト」にまとめました。

施策4:単価と還元の考え方を説明する

SESエンジニアは「お客さんからいくらもらっているのか」「会社がいくら取っているのか」を気にしています。見えないと、中抜き(会社が取りすぎていること)を疑われます。

準委任契約で行うSESには、エンジニアに単価を伝える法律上の義務はありません(2026年9月時点)。派遣では、労働者派遣法でマージン率などの情報提供が決められています。

おすすめは、「伝えられる範囲」と「給与への還元の考え方」を社内ルールで決めることです。お客さんとの秘密保持の約束は、先に確認しましょう。

→ SESの単価に開示義務はある?派遣との違いとエンジニアへの説明例

施策5:評価基準を見える化する

「何をすれば給料が上がるか」がわかると、評価への不満は減ります。客先の評判だけで決めず、スキル・資格・お客さんの評価・社内への貢献など、複数の軸を紙に書いて渡しましょう。

営業は、お客さんから聞いた良い評価をその日のうちに本人へ伝えるだけでも効果があります。評価は、客先に任せきりにせず自社で行います。

評価制度の作り方は、SESの評価制度の作り方|客先常駐でも公平に評価する5つの軸で解説しています。

施策6:帰社日と社内の場をつくる

帰社日とは、客先に常駐しているエンジニアが月に1回ほど自社に集まる日のことです。勉強会や情報共有、懇親会などを行います。

集まるのが難しい会社は、社内チャットで技術の話をする場所を作るだけでもかまいません。同じ現場に自社の人を2人以上入れるのも、孤立を防ぐ方法です。

施策7:入社後90日のフォローで早期離職を防ぐ

面談シートの記入例は、SESの定期面談(FB面談)のやり方|質問10とシート例にあります。

入社してすぐの時期は、「聞いていた話と違う」と感じやすい時期です。最初の90日は、面談の回数を増やしましょう。具体的な流れは、この記事の「早期離職を防ぐ入社後90日の流れ」にまとめました。

案件選択制の導入手順とメリット

案件選択制のメリットは、エンジニアが自分で選んだ案件なので、不満が出にくく長く続きやすいことです。一方で、営業は候補を多く集める必要があります。次の5ステップで始めましょう。

  1. 希望を聞く:やりたい技術、避けたい業務、通勤できる範囲、希望の単価帯を聞きます。

  2. 候補を2〜3件集める:自社の案件だけで足りなければ、BP(取引先の会社)の案件も探します。

  3. 良い点と注意点をセットで見せる:単価、商流、業務内容、残業の目安を、同じ形の表で並べます。

  4. 本人に選んでもらう:選んだ理由を記録しておくと、次の面談で役立ちます。

  5. 並行して提案する場合はルールを守る:複数社に同時に出すときは、それぞれに伝えておきます。

項目案件選択制のメリット注意点
エンジニアやりたい仕事を選べる希望が偏ると待機が長くなる
営業退場・途中退職のリスクが下がる候補を集める手間が増える
会社採用で「選べる」を約束できる候補がそろわないと約束が守れない

「選べる」と言ったのに候補が1件しかないと、かえって信頼を失います。候補を集める力がある範囲で導入するのが、失敗しないコツです。

定期面談で使える質問リスト

定期面談は、「今の不満」「将来の希望」「会社への要望」の3つを毎回聞くと、辞める前ぶれに気づけます。そのまま使える質問を10個まとめました。

今の現場について

  1. 今の仕事で、いちばん時間を使っている作業は何ですか?

  2. 残業や休日の出勤は、先月と比べて増えましたか?

  3. 現場で困っていること、聞きにくいことはありますか?

将来の希望について
4. 次の案件で、使ってみたい技術はありますか?
5. 1年後に、どんな仕事をしていたいですか?
6. 取りたい資格や、学びたいことはありますか?

会社への要望について
7. 給与や評価について、気になっていることはありますか?
8. 会社からの連絡で、足りないと感じる情報はありますか?
9. 同じ会社のメンバーと話す機会は、今のままで足りていますか?
10. 今の案件は、延長したいですか? それとも次を考えたいですか?

面談の記録は、案件情報や人材情報と同じ場所に残すと、ほかの営業に引き継ぐときにも困りません。

「辞めたい」と言われたときの最初の返し方

退職の相談を受けたら、まず理由を聞き、その場で結論を出さないことが大切です。そのまま使える言い方の例です。

話してくれてありがとうございます。まず、何がいちばんつらいのかを教えてもらえますか。
案件の内容が理由なら、次の案件の候補を2〜3件、今週中に用意できます。
そのうえで、辞めるかどうかは〇〇さんが決めてください。どちらになっても、お客さんへの引き継ぎは私が責任を持って調整します。

理由が案件なら施策1・2、評価なら施策4・5、孤立なら施策3・6に戻って対策します。

客先で面談するときの注意点

面談で聞いた不満を、エンジニアの代わりにお客さんの担当者へ伝えて直してもらうことはよくあります。ただし、お客さんがエンジニアに直接仕事の指示や評価をしていると、偽装請負と見られるおそれがあります。偽装請負とは、形は準委任でも実態が派遣になっている状態のことです。

厚生労働省の37号告示では、請負事業主が自ら業務の遂行に関する指示や評価などを行うことが求められています。面談の中で「誰から指示を受けているか」も確かめておきましょう。

残業が続いていると聞いたら、SESの客先で残業が続くときの営業の対応|安全配慮義務と交渉を参考に動きます。

早期離職を防ぐ入社後90日の流れ

早期離職を防ぐには、入社前に聞いた話と、入社後の現実のずれを早く見つけて埋めることが大切です。次の表を、営業と採用担当で分けて進めましょう。

時期やること担当
入社前待機時の給与、案件の決め方、評価のしくみを書面で説明採用担当・営業
初日〜1週間最初の案件の業務内容と、困ったときの連絡先を伝える営業
1か月目30分の面談。現場の人間関係と仕事量を確認営業
2か月目面談。評価の軸と、次に目指すスキルを一緒に決める営業・上長
3か月目面談。次の案件の希望を聞き、案件選択制の流れを説明営業

入社前の説明で特に大事なのが待機(案件に入っていない期間)の扱いです。給与がどうなるかを曖昧にすると、入社後の不信につながります。

最初の客先へ入る前の準備には、SESの参画初日までに営業がやる準備|入場チェックリストと案内文が使えます。

離職対策でやってはいけないこと

離職対策は、やり方を間違えると逆に辞める人を増やします。次の4つは避けましょう。

  • 辞めたいと言った人を強く引き止める:条件の話をせず感情で止めると、周りのエンジニアの不信も招きます。

  • 案件を選ばせると言って選ばせない:守れない約束は、何もしないより信頼を下げます。

  • 面談を「営業の進捗確認」だけにする:本人の話を聞かない面談は、回数を増やしても意味がありません。

  • 評価をお客さんに任せきりにする:本人が納得しにくくなるうえ、偽装請負のリスクもあります。

チョータツとxhoursで離職対策と欠員補充を楽にする

ここまでの施策は、どれも自社だけで始められます。そのうえで、「案件の候補を集める」「欠員をすぐ埋める」の2つの手間は、DrivenXのプロダクトで軽くできます。

チョータツで案件選択制の「候補」を増やす

案件選択制でいちばん大変なのは、候補の案件を2〜3件そろえることです。チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。

他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。自社の案件だけでは足りないときに、BPの案件からエンジニアの希望に合うものを探しやすくなります。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。

自社のエンジニアの情報も人材情報として管理・共有できます。担当の営業が変わっても、本人の希望を社内で引き継ぎやすくなります。

xhoursで欠員が出たときに直接スカウトする

どれだけ対策しても、辞める人をゼロにはできません。xhours(エックスアワーズ)は、企業がITフリーランスに直接スカウトを送れるサービスです。数千名のフリーランスのデータベースから探せます。

社員の退職で現場に穴が空いたとき、フリーランスに入ってもらえれば、お客さんとの取引を続けられます。

欠員が出たときの補充手段

欠員の補充は、スピード重視ならBPかフリーランス、長く続けるなら自社採用が基本です。お客さんへの影響を小さくするため、辞めると決まった時点で3つのルートを同時に動かしましょう。

補充ルート決まるまでの速さ向いている場面
BPのエンジニア速い同じスキルの人をすぐ入れたい
フリーランス(xhoursなど)速い〜中くらい専門性の高い人を探したい
自社採用(社員)遅い長く同じお客さんと取引したい
社内の異動状況しだい待機中の社員がいる

退職する人の引き継ぎ期間も、お客さんとの相談が必要です。途中で現場を離れる場合の連絡方法は、次の記事にまとめています。

→ SESの契約途中の退場|営業がやる対応5ステップと連絡例文

よくある質問

Q. SESの離職率の平均はどれくらいですか?
SESだけの公的な統計はありません。厚生労働省の令和7年雇用動向調査では、情報通信業の離職率は10.4%、全産業は13.7%でした。
Q. SESエンジニアの帰属意識を高めるには何から始めればいいですか?
月1回の定期面談から始めるのがおすすめです。営業が毎月話を聞くだけで、「会社が見てくれている」と感じてもらいやすくなります。
Q. 案件選択制を導入するメリットは何ですか?
エンジニアが自分で選んだ案件なので、不満が出にくく長く続きやすいことです。採用のときに「案件を選べる」と伝えられる点もメリットです。
Q. SESの早期離職を防ぐ方法は?
入社前に待機の給与や案件の決め方を書面で説明し、入社後90日は毎月面談することです。聞いていた話とのずれを早く見つけられます。
Q. エンジニアに単価を伝えないといけませんか?
準委任契約のSESには、単価を伝える法律上の義務はありません(2026年9月時点)。伝える範囲を社内ルールで決めておくと、不信を防げます。
Q. 社員が辞めて現場に穴が空いたら、どう補充しますか?
BPのエンジニア、フリーランス、自社採用を同時に動かします。フリーランスに直接声をかけるなら、DrivenXのxhoursが使えます。

まとめ

  • SESエンジニアの退職理由は「案件が選べない」「評価が見えない」「孤立」の3つが中心

  • 情報通信業の離職率は10.4%(令和7年)。まず自社の定着率を計算する

  • 効果が出やすいのは、案件選択制・2か月前の次案件相談・月1回の定期面談

  • 単価は「伝える範囲」と「還元の考え方」を社内ルールで決める

  • 評価は客先に任せきりにしない。偽装請負のリスクにも注意する

  • 案件の候補集めはチョータツ、欠員の補充はxhoursで手間を減らせる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)