SES・技術者派遣の上場企業5社の決算を比較|営業利益率ランキングと「儲かり方の違い」、自社の粗利率との比べ方

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

決算で見る数字は「粗利率・販管費率・営業利益率・稼働率」の4つ

上場企業の決算を営業目線で読むなら、見る数字は4つで足ります。 粗利率、販管費率、営業利益率、稼働率です。売上の大きさだけを見ても、「どうやって儲けているか」はわかりません。

決算短信とは、上場企業が決算の内容を証券取引所に出す速報資料のことです。 決算期末から45日以内に出すのが目安とされています。有価証券報告書とは、金融商品取引法にもとづいて出す、より詳しい年次の報告書のことです。

4つの数字の意味は次のとおりです。

数字意味計算のしかた
粗利率売上から原価を引いた残りの割合売上総利益 ÷ 売上高
販管費率営業・管理・採用などにかかる費用の割合販売費及び一般管理費 ÷ 売上高
営業利益率本業で残った利益の割合営業利益 ÷ 売上高
稼働率在籍する技術者のうち、客先で働いている人の割合稼働人数 ÷ 在籍人数(会社ごとに定義が違う)

売上総利益(粗利)とは、売上から、エンジニアの給与や外注費などの原価を引いた利益のことです。 販管費とは、営業担当・管理部門の人件費、採用費、家賃など、原価に入らない費用のことです。

この4つには、「営業利益率 = 粗利率 − 販管費率」という関係があります。営業利益率が低い会社は、粗利率が低いか、販管費率が高いかのどちらかです。

SES・技術者派遣の上場企業5社の決算比較表【2026年】

5社の営業利益率は10.0〜14.5%の間に収まり、差は最大で4.5ポイントです。 ただし、その差が生まれる理由は会社ごとにまったく違います。

数字は各社の決算短信・決算説明資料で2026年9月30日に確認しました。百万円単位を億円にし、1億円未満は四捨五入しています。率は編集部が計算しました。

売上と営業利益率

会社名(決算期)売上高営業利益営業利益率
メイテックグループHD(2026年3月期)1,377億円199億円14.5%
DTS(2026年3月期)1,352億円164億円12.2%
アルプス技研(2025年12月期)526億円54億円10.3%
オープンアップグループ(2026年6月期)1,675億円167億円10.0%
テクノプロ・HD(2025年7〜9月の3か月)625億円71億円11.4%

表の補足です。

  • テクノプロは2025年12月に上場をやめたため、上場中に出た最後の決算(2026年6月期の第1四半期)の数字です。通期ではないので、ほかの4社と単純には比べられません。

  • オープンアップグループは国際会計基準(IFRS)で、英国事業を手放した影響で売上が前の期より10.9%減りました。国内の続いている事業だけで見ると4.3%の増収です。

  • DTSは技術者派遣ではなく、受託開発とSESを組み合わせた独立系のシステム会社です。比べる相手として入れています。

粗利率・販管費率と稼働率

会社名粗利率販管費率稼働率・技術者数
メイテックグループHD26.4%11.9%98.5%(メイテック)・12,103名
DTS21.9%9.8%決算短信に記載なし
アルプス技研23.0%12.8%決算短信に記載なし
オープンアップグループ27.6%17.8%ITインフラ92%台・IT領域6,325人
テクノプロ・HD本記事では未確認本記事では未確認94.4%・国内28,078人(2025年9月末)

オープンアップグループの粗利率・販管費率は会社全体の数字です。同社は国際会計基準(IFRS)のため、「その他の収益・費用」があります。そのため「粗利率 − 販管費率」(9.8%)と営業利益率(10.0%)が0.2ポイントずれます。IT領域だけのセグメント(事業の区分)では、粗利率27.0%・販管費比率17.0%・営業利益率10.0%です。

上場企業の売上規模の順位は、別の記事で20社をまとめています。

SESの上場企業一覧と大手ランキング|売上規模で見る20社

営業利益率ランキングで見る「儲かり方」の3つの型

5社の儲かり方は、「高稼働型」「低コスト型」「採用投資型」の3つに分けられます。 自社がどの型に近いかを知ると、真似すべき打ち手が見えてきます。

1位 メイテックグループHD(14.5%):高稼働型

メイテックは、稼働率の高さで粗利率を押し上げている会社です。 2026年3月期の稼働率は、メイテックが98.5%、メイテックフィルダーズが97.2%でした。

正社員の技術者は、客先にいない期間も給料が出ます。そのため稼働率が1ポイント下がるだけで、粗利が大きく減ります。メイテックは待機の人がほとんどいないため、粗利率26.4%を保てています。

売上高を技術者数で割ると、1人あたり年間約1,138万円、月にすると約95万円です。グループ全体の売上で割った目安ですが、単価の高い設計・開発の仕事が中心であることがわかります。

2位 DTS(12.2%):低コスト型

DTSは、粗利率は21.9%と5社で一番低いものの、販管費率を9.8%に抑えて利益を残しています。 売上1,352億円の規模で管理のコストを薄く広げられるのが強みです。

受託開発では、協力会社への外注費が原価に入ります。そのため粗利率は低めになりやすいです。代わりに、1件あたりの売上が大きく、営業や管理の手間が売上ほど増えません。

3位 アルプス技研(10.3%)・4位 オープンアップ(10.0%):採用投資型

アルプス技研とオープンアップは、採用や人材育成にお金をかけて、人数と売上を伸ばそうとしている会社です。 販管費率が高めなのはそのためです。なお、オープンアップのIT領域の技術者数は2026年6月末で6,325人と、前の年より4.9%減っています。

オープンアップのIT領域は、粗利率が27.0%と5社の中でも高い水準です。ところが販管費比率が17.0%あるため、営業利益率は10.0%にとどまります。同社は2026年4〜6月期(第4四半期)に、営業利益が前年同期より減りました。決算説明資料では、要因の1つにIT・建設領域の採用費の増加を挙げています。

アルプス技研は2025年12月期に売上5.6%増、営業利益4.6%増でした。2026年12月期は売上555億円、営業利益57億円を見込んでいます。

型代表の会社利益が残る理由SES中小が真似できる点
高稼働型メイテック待機がほぼない契約終了の2か月前から次の案件を探す
低コスト型DTS販管費率が低い事務作業を減らし、1人の営業が担当できる数を増やす
採用投資型オープンアップ・アルプス技研人数を増やして売上を伸ばす採用費を1人あたりで管理する

テクノプロの非公開化はエンジニア派遣業界にどう影響する?

テクノプロ・ホールディングスは、TOB(株式の公開買付け)を受けて2025年12月に上場をやめました。 買い手は、米国の投資ファンドであるブラックストーンのグループ会社です。公開買付けは2025年9月24日に終わり、株式は2025年12月9日に上場廃止となりました。

TOBとは、買いたい会社が期間・価格・株数を公表し、市場の外で株主から株を買い集める方法のことです。 買い手が十分な株を集めると、上場をやめて「非上場の会社」になることがあります。

SES営業にとっての影響は、次の3つです。

  1. 決算の数字が見えなくなる:業界最大級の会社の稼働率や単価の動きが、四半期ごとには出なくなります。

  2. 比べる相手が変わる:上場大手の比較は、メイテック・オープンアップ・アルプス技研などが中心になります。

  3. 取引の相手としては変わらない:上場をやめても、会社がなくなるわけではありません。客先で一緒になったときの見方は同じです。

参考として、上場中に出た最後の四半期(2025年7〜9月)の数字を残しておきます。国内在籍技術者は28,078人、平均稼働率は94.4%でした。月次平均の売上単価は70.9万円で、前の年の同じ時期より2.4万円上がっています。

IT業界の再編や買収の動きは、別の記事にまとめています。

自社の粗利率と大手を比べる手順【計算例つき】

自社の数字と大手を比べるときは、営業利益率ではなく、まず粗利率から比べます。 営業利益率は会社の規模で大きく変わりますが、粗利率は1人ごとの単価と原価で決まるからです。

次の手順で進めます。

  1. 1か月分の売上を出す:稼働しているエンジニア全員の請求額を足します。

  2. 原価を出す:自社エンジニアの給与・社会保険料・交通費と、BPへの支払いを足します。

  3. 粗利率を計算する:(売上 − 原価)÷ 売上 で出します。

  4. 大手と並べる:大手の粗利率(約22〜28%)と比べます。

  5. 販管費率を出す:営業・管理の人件費、家賃、採用費などを売上で割ります。

  6. 差の原因を書き出す:粗利率の差か、販管費率の差かを分けて考えます。

計算例:エンジニア30人のSES企業

次の数字は説明のための例です。実在の会社の数字ではありません。

項目金額(月)売上に対する割合
売上(平均単価70万円 × 30人)2,100万円100%
原価(給与・社保・BP支払いなど)1,575万円75.0%
粗利525万円25.0%
販管費(営業2人・事務1人・家賃など)420万円20.0%
営業利益105万円5.0%

この例では、粗利率25.0%は大手とほぼ同じです。一方で販管費率が20.0%あり、メイテック(11.9%)やDTS(9.8%)を大きく上回っています。

つまり「単価が安いから儲からない」のではありません。人数が少ないのに、営業や事務の固定費が重いことが、利益が残らない原因です。

差が出たときの打ち手

差が出た場所よくある原因最初にやること
粗利率が20%未満待機が多い、BPの仕入れ単価が高い契約終了予定の一覧を作り、2か月前から次の案件を探す
販管費率が15%超手作業の事務、営業1人の担当数が少ない案件・人材の管理を1か所にまとめる
両方とも低い単価が相場より低い単価交渉の材料をそろえる

粗利率の平均や計算式は、別の記事でくわしく扱っています。

大手の決算をSES営業の仕事に使う3つの場面

大手の決算は、読んで終わりにせず、営業の動き方を決める材料として使います。 代表的な場面は3つです。

場面1:BPへの打診のタイミングを決める

大手の稼働率が下がった時期は、大手にも「空いている技術者」がいるサインです。 テクノプロは2025年7〜9月の稼働率が前の年より0.8ポイント下がりました。オープンアップのIT領域も、ITインフラの稼働率は92%台でした。

こうした時期は、協力会社を受け入れている大手やその子会社に、案件を持ちかけやすくなります。反対に、稼働率が高い時期は人材を出してもらいにくくなります。

自社にも待機のエンジニアが複数いるなら、誰から先に決めるかを先に決めておきます。考え方は待機エンジニアが複数いるときの営業の優先順位|決め方と進め方にまとめています。

場面2:単価交渉の材料にする

大手の単価が上がっているという事実は、客先との単価交渉で使える材料になります。 テクノプロの月次平均売上単価は、前の年より2.4万円上がっていました。オープンアップも決算説明資料で、IT領域の契約単価の更新が順調と説明しています。

交渉のときは、数字の出典(会社名・資料名・時期)を必ず添えましょう。客先への伝え方は、たとえば次のとおりです。

次回の契約更新にあたり、単価のご相談をさせてください。
技術者派遣大手のテクノプロでは、2025年7〜9月の平均売上単価が前年より月2.4万円上がっています。
(出典:テクノプロ・ホールディングス 2026年6月期 第1四半期決算短信)
〇〇さんは担当範囲も広がっておりますので、月3万円の見直しをご検討いただけますでしょうか。

単価交渉の時期と材料のそろえ方はSESの単価交渉のタイミング|更新の何か月前か・例文と資料5点にまとめています。

場面3:競合か取引先かを見分ける

IT領域の売上が大きい会社ほど、同じエンドで提案がぶつかる競合になりやすいです。 オープンアップの2026年6月期のIT領域の売上は約409億円です。機電(機械・電気)領域の約667億円より小さい規模です。

技術者派遣の会社が競合か、BPとして組める相手かを見分ける方法は、別の記事で5つの質問にまとめています。

エンジニア派遣会社一覧|技術者派遣の大手5社とSESの違い

決算短信・有価証券報告書を自分で調べる方法

上場企業の決算資料は、すべて無料で見られます。 使うサイトは3つです。

  1. 各社のIRページ:「決算短信」「決算説明資料」がまとまっています。稼働率・技術者数・単価は、決算説明資料に載っていることが多いです。

  2. TDnet(適時開示情報閲覧サービス):日本取引所グループのサイトで、直近の決算短信を会社名で探せます。

  3. EDINET:金融庁のサイトで、有価証券報告書を見られます。セグメントごとの数字や従業員数がくわしく載っています。

資料を開いたら、次の順に数字を拾います。

  1. 決算短信の1ページ目で、売上高と営業利益を見る

  2. 連結損益計算書で、売上総利益と販売費及び一般管理費を見る

  3. 決算説明資料で、稼働率・技術者数・単価を探す

  4. 拾った数字をExcelに並べ、粗利率・販管費率・営業利益率を計算する

注意したいのは、稼働率の定義が会社ごとに違うことです。たとえばオープンアップは、BP(協力会社の人材)を含めて計算すると資料に書いています。会社どうしで比べるときは、定義の欄を確認しましょう。

チョータツで「高稼働型」の営業に近づける

大手の儲かり方で、中小のSES企業が一番真似しやすいのは「待機を減らして稼働率を上げる」ことです。 そのためには、案件と人材の情報をすばやく照らし合わせる仕組みが必要です。

自分でやるなら、案件と人材をExcelで管理し、契約終了予定の人を毎週確認します。ただ、BPから届く案件メールや人材メールが多いと、転記だけで時間がなくなります。

場面自分でやる場合チョータツを使う場合
案件・人材の管理Excelに1件ずつ転記1か所で管理・共有。AIが入力を手伝う
他社の空き人材・案件を知る届いたメールを読んで探す他社と連携し、営業中案件・営業中人材をDB化
自社の空き人材を知らせるBCCで一斉送信パートナーへのメール配信機能を使う

連携したBPの営業中案件が見えれば、自社エンジニアの次の案件を早めに探せます。販管費率を下げるうえでも、事務作業を減らす効果があります。チョータツは3,000社以上が使っていて、無料で始められます。

よくある質問

Q. SESの上場企業で営業利益率が高いのはどこですか?
直近の通期決算では、メイテックグループホールディングスの14.5%が最も高いです。DTSが12.2%で続きます(2026年9月30日確認)。
Q. 技術者派遣の大手の決算を比較すると、どこが一番大きいですか?
上場を続けている4社では、オープンアップグループの売上高が最大です(1,675億円、2026年6月期)。テクノプロは2025年12月に上場をやめたため、通期の最新の数字は出ていません。
Q. テクノプロの非公開化で、エンジニア派遣業界はどう変わりますか?
業界最大級の会社の決算が四半期ごとには見えなくなります。会社自体は続くため、客先での競合や取引の相手としての位置づけは変わりません。
Q. SES中小の営業利益率は、大手と比べて低いのが普通ですか?
規模が小さいと販管費率が高くなりやすく、営業利益率は下がりがちです。まず粗利率を大手(約22〜28%)と比べ、差が粗利か販管費かを分けて考えましょう。
Q. 稼働率は何%あれば良いですか?
大手ではメイテックが98.5%、テクノプロが94.4%でした。会社ごとに計算方法が違うため、自社は毎月同じ方法で出し、上がったか下がったかを見るのが大切です。

まとめ

  • 直近の通期決算の営業利益率は、メイテック14.5%、DTS 12.2%、アルプス技研10.3%、オープンアップ10.0%

  • 営業利益率は「粗利率 − 販管費率」。差の理由は会社ごとに違う

  • 儲かり方は、高稼働型・低コスト型・採用投資型の3つに分けられる

  • テクノプロは2025年12月に上場をやめ、最後の四半期の営業利益率は11.4%

  • 自社と比べるときは粗利率から。次に販管費率を見て、利益が残らない原因を探す

  • 大手の稼働率と単価の動きは、BPへの打診や単価交渉のタイミングに使える

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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