労働者派遣事業の許可要件|資産2,000万円などの基準一覧と申請の流れ・SES企業が取るべきかの判断表つき

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

労働者派遣事業の許可とは?

労働者派遣事業の許可とは、自社で雇うエンジニアを派遣先の指示で働かせるために、厚生労働大臣から受ける許可のことです。許可がないまま派遣をすると、労働者派遣法違反になります。

SESは通常、準委任契約(仕事の遂行を引き受ける契約)で動きます。準委任では、現場のエンジニアに指示を出すのは自社です。客先が直接指示を出したいなら、派遣契約と派遣許可が必要になります。

比べる点SES(準委任)労働者派遣
現場で指示を出す人自社(SES企業)派遣先(客先)
国の許可不要必要(厚生労働大臣の許可)
資産の条件なし基準資産額2,000万円以上など
許可後の報告なし毎年の事業報告など

契約の違いは、SES会社は派遣許可を取るべき?判断の目安6つと手順でくわしく比べています。

派遣許可の要件一覧(厚生労働省の許可基準)

派遣許可の要件は、お金・事務所・人・社内ルールの4つに分けると整理しやすいです。厚生労働省の「労働者派遣事業関係業務取扱要領」の許可基準をもとに、主な項目を表にしました(2026年9月確認)。

分類要件数字・中身
お金基準資産額2,000万円×事業所数以上
お金負債とのバランス基準資産額が負債総額の7分の1以上
お金現金・預金自己名義で1,500万円×事業所数以上
事務所広さと設備事業に使える面積がおおむね20㎡以上
人派遣元責任者成年後3年以上の雇用管理経験、講習受講など
社内ルールキャリア形成支援制度教育訓練計画、キャリア相談窓口など
社内ルール個人情報の管理派遣労働者の情報を適正に管理する規程

このほか、特定の会社だけに派遣する目的でないことも基準に入っています。労働保険・社会保険に正しく入っていることも確認されます。

資産要件のくわしい中身と計算例

資産要件は、直近の決算書(貸借対照表)の数字で判断されます。3つの条件を、すべて満たす必要があります。

基準資産額とは

基準資産額とは、資産の総額から負債の総額を引き、さらに繰延資産と営業権を除いた額のことです。繰延資産とは、創立費や開業費など、支払い済みの費用を資産として計上したものです。営業権とは、会社を買ったときなどに計上する「のれん」のことです。

つまり、ざっくり言えば「純資産から、中身のない資産を引いた額」です。赤字が続いて純資産が小さい会社は、この条件でつまずきます。

計算例(1事業所の場合)

あるSES企業の決算書が、次の数字だったとします。

項目金額判定
資産合計−負債合計2,500万円―
繰延資産(開業費など)100万円差し引く
基準資産額2,400万円2,000万円以上なのでOK
負債合計3,500万円の7分の1500万円2,400万円はそれ以上なのでOK
現金・預金1,300万円1,500万円に届かずNG

この会社は、現金・預金があと200万円足りないため、このままでは許可基準を満たしません。売掛金が多く、入金が遅いSES企業ほど、現金・預金の条件で引っかかりやすいです。

直近の決算で足りないときの方法

直近の決算で基準に届かない場合も、道はあります。増資などで資産を増やし、公認会計士または監査法人の監査証明を受けた中間決算書・月次決算書を出す方法です。その決算書で要件を満たせば、確認してもらえます。

なお、小さな事業主向けに、基準資産額1,000万円・現金預金800万円とする暫定的な配慮措置があります。ただし、いまの業務取扱要領では、2016年9月29日までにこの措置で許可や更新を受けた事業主などに限られています。これから新しく許可を取る会社は、原則どおり2,000万円・1,500万円の基準で考えてください。

事務所と派遣元責任者の要件

事務所はおおむね20㎡以上が目安です。個人情報を守れる設備(鍵のかかる書庫など)もあわせて整えます。賃貸の事務所なら、使用権を示す賃貸借契約書を申請で出します。

派遣元責任者とは、派遣で働く人の相談に乗り、派遣先との連絡や台帳の管理をする、派遣元側の責任者のことです。派遣元・派遣先の役割分担は派遣元・派遣先とは?違いと責任の分担をSES営業向けに一覧で解説で整理しています。主な条件は次のとおりです。

条件中身
年齢成年であること
経験成年後3年以上の雇用管理の経験(人事・労務の担当など)
講習申請の受理日前3年以内に派遣元責任者講習を受けている
人数事業所ごとに、派遣労働者100人ごとに1人以上。不在時の代わりの人も決める

派遣元責任者講習とは、厚生労働省が定めた機関が開く、派遣法や労務管理の講習のことです。予約が埋まることがあるので、申請スケジュールの最初に講習の日程を押さえるのがおすすめです。

許可を取ったあとは、派遣した人ごとに派遣元管理台帳を作り、3年保存します。書く項目は派遣元管理台帳とは?記載項目・保管期間と派遣先管理台帳との違いで確認できます。

許可にかかる費用と有効期間

1事業所で申請するなら、国に払う費用は合計21万円です。事業所が増えると、手数料が上がります。

費用・期間中身
許可手数料12万円+5万5千円×(事業所数−1)。収入印紙で納める
登録免許税許可1件あたり9万円
許可の有効期間新規は3年。更新後は5年ごと

このほかに、講習の受講料や、社会保険労務士に申請を頼む場合はその報酬がかかります。金額は依頼先によって違うため、見積もりを取って比べましょう。

申請から許可までの流れ(番号付き手順)

厚生労働省の案内では、申請から許可まではおおむね2〜3か月です。書類に不備があると、直すまでの日数は処理期間に数えられません。事業を始めたい日のおおむね2〜3か月前までに申請します。

  1. 事業所を準備する:20㎡以上の事務所と、個人情報を守る設備を整えます。

  2. 派遣元責任者講習を受ける:責任者になる人が受講し、受講証明書をもらいます。

  3. 決算書で資産要件を確かめる:基準資産額・負債の7分の1・現金預金の3つを計算します。

  4. 社内ルールを作る:就業規則、教育訓練計画、個人情報の管理規程を整えます。

  5. 申請書類をそろえる:定款、登記事項証明書、役員の履歴書、決算書、納税証明書などです。

  6. 管轄の都道府県労働局に申請する:本社を管轄する労働局に出します。手数料と登録免許税も納めます。

  7. 調査・確認を受ける:労働局が書類を確認し、事務所の実地調査をすることもあります。

  8. 許可証を受け取る:厚生労働大臣の許可が出たら、許可証が届きます。

スケジュール例(2026年の暦)

2027年2月から派遣契約の案件を受けたい場合の例です。

時期やること
2026年10月講習を予約・受講し、決算書で資産要件を計算する
2026年11月上旬就業規則などを整え、労働局に申請する
2026年11月〜2027年1月調査・確認に対応する(おおむね2〜3か月)
2027年2月許可が出たら、派遣契約で受注を始める

許可が出る前に、派遣契約で客先に人を出してはいけません。取引先が許可を持っているかは、労働者派遣の許可番号を検索する方法|取引前の確認手順3つの手順で確かめられます。「許可見込み」で営業を先走らせないよう、営業チームにも日程を共有しましょう。

SES企業は派遣許可を取るべき?判断のポイント

結論として、派遣契約でしか受けられない案件が継続的にある会社は、取る価値があります。反対に、準委任で回っている会社が「念のため」で取る必要は薄いです。許可を取ると、毎年6月30日までの事業報告や、派遣元管理台帳の作成・保存など、守ることが増えるからです。

状況おすすめの判断
客先が「派遣契約でないと受けない」と言う案件が月に何件もある取る方向で検討する
現場で客先から直接指示を受ける働き方になりがち取るか、準委任の運用を直すかを決める
案件はほぼ準委任で決まっている取らずに準委任を正しく運用する
現金・預金が1,500万円に届かない先に資金を整える。無理に急がない

営業担当がまずやるべきことは、失注理由の記録です。「派遣契約でないと不可」で落ちた案件の件数と金額を3か月ほど集めると、経営者が判断しやすくなります。

記録は、次の4列の表で十分です。

日付・案件名月単価×人数派遣でないと不可の理由準委任で出せたか
10/3 A社 運用保守60万円×2名客先の社内規程で派遣のみ不可
10/10 B社 PMO80万円×1名常駐先が直接指示したい体制を組めば可

3か月分を足して「月あたり何件・いくら」を出し、許可の維持にかかる手間と比べます。

「派遣契約でないと受けない」と言われたとき、準委任で出せる余地があるかを確かめる返し方の例です。

例文・テンプレート
ご要望ありがとうございます。弊社は現在、準委任契約でのご支援となります。
作業のご指示は弊社のリーダーを通してお受けする形で、
これまで同様の案件でもご支援してきました。
体制と報告の方法をご提案しますので、
準委任でご検討いただける余地があるか、ご相談させてください。

客先が現場で直接指示を出す前提なら、準委任では受けません。無理に受けると偽装請負になるためです。

許可がないときに避けたいこと

派遣許可がない会社が、実態として客先に指示を任せると偽装請負になるおそれがあります。偽装請負とは、契約は準委任や請負なのに、実際は派遣と同じように客先が指示を出している状態のことです。判断の目安は偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策にまとめています。

また、派遣許可を持つBPから受け入れたエンジニアを、さらに別の客先へ派遣すると二重派遣になります。くわしくはSESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方を確認してください。

許可を取るか迷ったときのチェックリスト

申請の前に、次の10項目を社内で確かめてください。半分以上が「いいえ」なら、まだ準備の段階です。

  1. 「派遣契約のみ」で失注した案件の件数と金額を記録している

  2. 直近の決算で、基準資産額が2,000万円以上ある

  3. 基準資産額が、負債総額の7分の1以上ある

  4. 自己名義の現金・預金が1,500万円以上ある

  5. おおむね20㎡以上の事務所がある

  6. 成年後3年以上の雇用管理経験がある人を、派遣元責任者にできる

  7. 派遣元責任者講習の受講日を押さえている

  8. 教育訓練計画とキャリア相談の窓口を用意できる

  9. 労働保険・社会保険に全員正しく入っている

  10. 毎年の事業報告など、許可後の事務を担当する人が決まっている

案件管理をもっと楽にするなら:チョータツ

派遣許可を取るかの判断は、どんな案件がどの契約形態で来ているかが見えていないとできません。Excelやメールで案件を追っていると、「派遣のみ」の案件が何件あったか後から数えにくくなります。

チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。3,000社以上が利用し、無料で始められます。

  • 案件・人材の情報を管理・共有できる:契約形態などの条件をチームで確認できます。

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・人材をデータベース化できる:自社に来る案件の傾向もつかみやすくなります。

  • AIが入力を手伝う:案件情報の登録の手間を減らせます。

  • パートナーへのメール配信機能がある:準委任で提案できる人材の案内もまとめて送れます。

まずは自分で失注理由を記録し、そのうえで管理をチョータツに移すと、判断に必要な数字が集まりやすくなります。

よくある質問

Q. 労働者派遣事業の許可に必要な資産はいくらですか?
1事業所なら、基準資産額2,000万円以上、現金・預金1,500万円以上です。基準資産額が負債総額の7分の1以上であることも必要です。
Q. 派遣許可の申請から許可まで、どれくらいかかりますか?
厚生労働省の案内では、おおむね2〜3か月です。講習の受講や書類づくりを含めると、3〜4か月を見ておくと安心です。
Q. 派遣許可の申請費用はいくらですか?
1事業所なら、許可手数料12万円と登録免許税9万円の合計21万円です。事業所が1つ増えるごとに手数料が5万5千円増えます。
Q. SES企業に派遣許可は必要ですか?
準委任契約で、自社がエンジニアに指示を出すなら不要です。客先が直接指示を出す派遣契約で受けるなら必要です。
Q. 資産要件を満たさないと、派遣許可は取れませんか?
直近の決算で足りなくても、増資後の監査証明付きの中間決算書や月次決算書で満たせば確認してもらえます。小規模事業主向けの暫定的な配慮措置は、2016年9月29日までにこの措置で許可を受けた事業主などに限られます。新しく許可を取る会社は、原則の基準で考えてください。
Q. 派遣許可の有効期間は何年ですか?
新規の許可は3年です。更新すると、その後は5年ごとになります。

まとめ

  • 派遣許可のお金の条件は、基準資産額2,000万円・負債の7分の1・現金預金1,500万円(1事業所あたり)

  • 基準資産額は、純資産から繰延資産と営業権を引いた額

  • お金以外に、20㎡以上の事務所と、講習を受けた派遣元責任者が必要

  • 費用は1事業所で21万円。有効期間は新規3年、更新後5年

  • 申請から許可まではおおむね2〜3か月。講習から数えて3〜4か月を見込む

  • SES企業は「派遣契約のみ」の失注を記録し、件数と金額で取るかを判断する

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

関連する記事