SES起業の手順と必要資金|会社設立・運転資金の計算から初取引までの8ステップと失敗例

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SES起業とは?儲かる仕組みを先に確認する

SES起業とは、エンジニアの技術力を提供する「SES事業」を行う会社を、自分で立ち上げることです。SESは多くの場合、準委任契約という契約で結ばれます。準委任契約とは、仕事の完成ではなく「作業をすること」に対して報酬が払われる契約のことです。

SES会社のもうけは、客先からもらう単価と、エンジニアにかかるお金の差(粗利)です。仕組みはシンプルなので、営業経験があれば始めやすい事業です。

要員の種類かかるお金(原価)起業直後の特徴
自社社員給与+会社負担の社会保険料など粗利は大きいが、待機中も給与が出る
BP要員(他社の社員)BP企業への支払い粗利は小さいが、待機のリスクがない
フリーランス本人への業務委託費粗利は中くらい。契約のルールに注意

BPとは、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。起業直後は自社社員がいないことが多いので、BP要員やフリーランスから始める会社が多いです。

ステップ1:事業の形を決める(準委任か派遣か)

最初に決めるのは、準委任契約のSESだけで始めるか、派遣もやるかです。準委任のSESだけなら、国の許可なしで始められます。

一方で、客先がエンジニアに直接指示を出す「派遣」をするなら、労働者派遣事業の許可が必要です。許可には資産などの基準があり、起業直後にすぐ取るのは簡単ではありません。

決めること選択肢起業直後のおすすめ
契約の形準委任のみ/派遣も準委任のみで始める
要員の中心自社社員/BP・フリーランスBP・フリーランス中心
狙う商流元請け直/二次請け以降前職の人脈がある位置から
得意分野開発/インフラ/PMOなど自分が営業してきた分野

準委任で始めても、現場で客先が直接指示を出すと偽装請負になるおそれがあります。偽装請負とは、契約は準委任や請負なのに、実態が派遣になっている状態のことです。必要な許可・認証の全体像は、SESに派遣免許やPマークは必要?事業に要る許可・認証一覧で確認してください。

ステップ2:設立費用と資本金を決める

SES起業に必要なお金は、会社を作るお金と、入金まで会社を回すお金(運転資金)の2つです。金額が大きいのは運転資金のほうです。

株式会社の設立にかかる法定費用

株式会社を作るときに国や公証役場に払うお金は、次のとおりです(2026年9月時点)。

費用金額根拠
登録免許税資本金×0.7%(15万円未満なら15万円)登録免許税法
定款認証の手数料資本金100万円未満:3万円/100万〜300万円未満:4万円/それ以外:5万円公証人手数料令 第35条
定款の収入印紙紙の定款は4万円。電子定款は不要印紙税法
合計の目安約18万〜24万円―

定款とは、会社の名前や目的など、基本ルールを書いた書類のことです。定款認証の手数料は、一定の条件を満たす小さな会社なら1万5千円に下がります。

資本金はいくらにするか

資本金とは、会社を始めるときに株主が出すお金のことです。会社法には最低額の決まりがなく、1円でも会社は作れます。

ただし、SESでは資本金が少なすぎると困る場面があります。取引先の審査(口座開設)で、資本金や決算書を見られるからです。

一方で、資本金1,000万円以上で設立すると、1期目から消費税の納税義務が出ます。起業直後は「数百万円以上、1,000万円未満」で考える人が多いです。どの金額が合うかは、税理士に相談して決めましょう。

ステップ3:運転資金を支払いサイトから逆算する

SESの運転資金は、「給与やBPへの支払いが、客先からの入金より先に来る」期間の分だけ必要になります。この差を計算しておかないと、黒字でも資金が尽きます。

支払いサイトとは、締め日から実際にお金が支払われるまでの期間のことです。SESでは「月末締め・翌月末払い」がよく使われます。相場や交渉のコツは「SESの支払いサイトの相場は?」を確認してください。

計算例:エンジニア2人+BP要員1人で始める場合

次の条件で、10月から3人が稼働すると仮定します。数字は計算の例で、実際の金額は会社ごとに変わります。

項目条件金額
客先からの入金月末締め・翌月末払い10月分は11月30日に入る
自社社員2人給与+会社負担分で1人45万円、翌月25日払い月90万円
BP要員1人月末締め・翌月末払い月60万円
固定費家賃・ツール・税理士・役員報酬など月40万円

この例で、最初の入金(11月30日)までに出ていくお金は次のとおりです。

  1. 10月と11月の固定費:40万円×2か月=80万円

  2. 11月25日の社員の給与:90万円

  3. BPへの支払い60万円は入金と同じ日なので、入金が遅れなければ差はなし

合計で約170万円が先に出ていきます。ここに、次の2つの備えを足します。

  1. 待機の備え:社員1人が2か月案件に入れない場合、45万円×2か月=90万円

  2. 入金遅れの備え:1か月分の支払い合計(90万+60万+40万)=190万円

すべて足すと、170万+90万+190万=約450万円が運転資金の目安です。人数が増えるほど、必要な額も増えます。資金繰りの対策は「SESの黒字倒産を防ぐ資金繰り」で詳しく解説しています。

足りないときは融資も検討する

自己資金で足りない分は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」などの融資を使う方法があります。この制度は、新しく事業を始める人や、事業を始めておおむね7年以内の人が対象です(2026年9月時点)。

融資の審査では、事業計画書の数字が見られます。書き方は「SESの事業計画書の書き方」を参考にしてください。

ステップ4:会社を設立する

資金の見通しが立ったら、会社を設立します。株式会社の設立は、定款を作る→公証役場で認証を受ける→資本金を払い込む→法務局に登記を申請するの順で進みます。

  1. 会社名・事業目的・本店所在地・資本金・決算月を決める

  2. 定款を作る(電子定款にすると印紙4万円がかからない)

  3. 公証役場で定款の認証を受ける

  4. 発起人の個人口座に資本金を払い込む

  5. 法務局に設立登記を申請する(申請した日が設立日になる)

事業目的には、「ソフトウェアの開発」「システムエンジニアリングサービス」など、SES事業が読み取れる言葉を入れましょう。将来、派遣や人材紹介をする予定があれば、その目的も入れておくと手直しが減ります。

ステップ5:設立後の届出と、お金まわりの準備をする

設立したら、税金・社会保険・銀行口座の3つをすぐに整えます。どれも取引や給与の支払いに関わるからです。

分野主な手続き・準備提出先・相手
税金法人設立届出書、青色申告の承認申請など税務署・都道府県・市区町村
社会保険健康保険・厚生年金の新規適用の届出年金事務所
労働保険社員を雇ったら労災保険・雇用保険の手続き労働基準監督署・ハローワーク
銀行法人口座の開設銀行

株式会社は、社長1人だけでも社会保険の適用事業所になります。社長に役員報酬を払う場合は健康保険と厚生年金に入る必要があり、会社負担分の保険料も毎月かかります。

インボイス制度への対応も早めに決めましょう。取引先の多くは、適格請求書(インボイス)を出せる会社との取引を望みます。登録すると消費税の課税事業者になるので、税理士と相談して判断してください。

ステップ6:契約書のひな形をそろえる

初取引の前に、基本契約書・個別契約書(注文書)・秘密保持契約書(NDA)のひな形を用意します。取引先から契約書を出されることも多いですが、自社のひな形があると確認が速くなります。

契約書で特に確認するのは、単価・精算幅・支払いサイト・再委託の可否です。再委託とは、受けた仕事をさらに別の会社やフリーランスに任せることです。BP要員を出すなら、再委託が認められているかを必ず確認しましょう。

基本契約書のひな形と確認する条項は、SESの基本契約書とは|テンプレートと個別契約の優先・印紙7号にまとめています。

ステップ7:最初のBPを開拓する

独立したSES営業が最初にやるべきことは、案件をもらえるBPと、人材をもらえるBPを両方つくることです。自社社員がいない状態でも、BP同士をつなげば売上をつくれます。

自分でBPを開拓する方法

  1. 前職で付き合いのあった会社に独立のあいさつをする(前職の就業規則や誓約書で禁止されていないか先に確認する)

  2. 各社のパートナー募集ページから協業の相談を送る

  3. SESの交流会に参加して、名刺交換から情報交換につなげる

  4. 取引を始める前に、相手の会社が実在するか、派遣の許可があるか、反社会的勢力と関係がないかを確認する

相談を送るときは、自社の会社紹介資料があると話が早く進みます。作り方はSESの会社紹介資料の作り方|BP・エンド向けの構成10枚で紹介しています。

初取引までの流れは例文付きで「SESのBP営業のやり方|挨拶から初取引までの6ステップと例文」にまとめています。

独立あいさつのメール例文

件名:【ご挨拶】独立のご報告と今後のお取引のお願い(株式会社〇〇 山田)

〇〇株式会社 営業部 △△様

いつもお世話になっております。株式会社〇〇の山田です。
このたび2026年10月1日に独立し、SES事業の会社を設立しました。
開発・インフラ領域を中心に、案件と人材の情報交換をお願いできればと存じます。
30分ほどオンラインでお話しできる日程を、いくつかいただけますと幸いです。

チョータツブーストでBP開拓を楽にする

1社ずつ探して連絡するのは、1人で起業した直後には大きな負担です。チョータツブーストは、チョータツの中で新しいパートナー企業を開拓できる機能です。

チョータツは、3,000社以上が使うSES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。つながった会社と連携すると、相手の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。社員がいない時期でも、BPの案件と人材を見比べて提案しやすくなります。

ステップ8:要員を確保し、初案件を決めて入金まで見届ける

最後のステップは、提案できる要員を確保し、初案件の契約・請求・入金までを1回やりきることです。1回通すと、毎月の流れが見えてきます。

要員を確保する3つの方法

方法向いている場面注意点
BPの要員を提案する社員ゼロの立ち上げ期商流が深くなると粗利が減る
フリーランスに直接声をかける早く提案できる人を増やしたいフリーランス法に沿って条件を書面などで示す
自社社員を採用する粗利を大きくしたい待機中も給与がかかる

フリーランスへの直接の声かけには、DrivenXのxhours(エックスアワーズ)が使えます。企業がITフリーランスに直接スカウトを送れるサービスで、数千名のフリーランスのデータベースから探せます。

フリーランスに仕事を出すときは、フリーランス法に注意します。正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、2024年11月1日に施行されました。この法律は、業務の内容・報酬の額・支払期日などを書面やメールで示すことを発注する会社に求めています。契約と支払いの管理は「業務委託の管理方法」で解説しています。

初案件から入金までの流れ

  1. 案件と要員を合わせ、客先に提案する

  2. 面談を調整し、参画が決まったら個別契約(注文書)を交わす

  3. BP要員なら、BPとも同じ条件で注文書を交わす

  4. 月末に稼働時間を確定し、精算して請求書を出す

  5. 入金を確認してから、BPへの支払い日と金額を再確認する

2か月目以降は、この流れを毎月くり返します。

SES起業の失敗例と、営業目線での防ぎ方

SES起業でよくある失敗は、資金ショート・要員ゼロ・取引先1社への依存の3つです。どれも、設立前の準備で防げます。

失敗例何が起きるか防ぎ方
資金ショート入金前に給与が払えなくなる支払いサイトから運転資金を逆算する
要員ゼロ案件があっても出せる人がいない設立前からBP・フリーランスのあてを作る
取引先1社への依存その1社の終了で売上が消える案件をもらう先を3社以上に分ける
深い商流ばかり単価が低く粗利が残らない上の商流を持つBPを少しずつ増やす

失敗例1:社員を先に採用して資金ショート

「案件は前職のつながりで取れる」と考え、先に社員を2人採用したケースです。案件の開始が1か月遅れ、給与だけが先に出ていきました。

防ぐには、案件が決まる見込みと採用のタイミングを合わせることです。最初はBP要員で実績を作り、案件が安定してから社員を増やす順番が安全です。

失敗例2:取引先はあるのに要員ゼロ

案件をくれる元請けとは付き合いがあったものの、人材を出してくれるBPがいなかったケースです。毎週案件が届いても、提案できる人がいませんでした。

防ぐには、人材をもらえるBPを案件をもらえるBPと同じ数だけ作ることです。独立前の3か月で、人材側の取引先リストを作っておきましょう。

よくある質問

Q. SES起業に必要な資金はいくらですか?
設立の法定費用が約18万〜24万円、これに運転資金が加わります。エンジニア2人・BP1人で始める例では、運転資金は約450万円が目安です。
Q. SESの会社設立で資本金はいくらが良いですか?
法律上は1円でも作れます。ただし取引先の審査で見られるため、数百万円以上を用意する人が多いです。1,000万円以上だと1期目から消費税の納税義務が出る点に注意しましょう。
Q. SES起業に許可や免許は必要ですか?
準委任契約のSESだけなら、許可は不要です。派遣をするなら労働者派遣事業の許可、紹介料を取るなら有料職業紹介の許可が必要です。
Q. 社員ゼロでもSES起業はできますか?
できます。BPの要員やフリーランスを客先に提案し、案件と人材をつなぐ形で始められます。粗利は小さくなるので、実績ができたら自社社員を増やしましょう。
Q. SES営業から独立するとき、前職の取引先に連絡してもいいですか?
まず前職の就業規則や誓約書に、競業や取引先への連絡を制限する決まりがないか確認しましょう。不安な場合は、弁護士に相談してから連絡するのが安全です。
Q. SES起業は儲かりますか?
単価とエンジニア原価の差がそのまま粗利になるので、仕組みはわかりやすい事業です。一方で、待機や入金遅れで資金が減りやすいため、運転資金の準備が欠かせません。

まとめ

  • SES起業は、事業の形→設立費用と資本金→運転資金→設立→届出→契約書→BP開拓→要員確保と初取引の8ステップ

  • 株式会社の設立の法定費用は約18万〜24万円

  • 資本金は1円から可能だが、取引先の審査と消費税を考えて決める

  • 運転資金は「初入金までの支出+待機の備え+入金遅れの備え」で逆算する

  • 準委任のSESだけなら許可は不要。派遣や紹介をするなら許可が必要

  • 失敗の多くは資金ショートと要員ゼロ。設立前からBPと要員のあてを作る

  • BP開拓はチョータツブースト、要員の直接スカウトはxhoursで手間を減らせる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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