SESの事業計画書の書き方|稼働人数×単価×粗利率で作る売上計画と、日本政策金融公庫の創業計画書の記入例

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESの事業計画書とは?融資の審査で見られる3つのこと

事業計画書とは、「どんな事業で、いくら売り上げ、いくら残り、お金がいつ足りなくなるか」を数字で説明する書類のことです。 融資の審査では、この書類と面談で「返せる事業か」が判断されます。

SESの場合、審査する人が知りたいことは、おおむね次の3つです。

見られることSESで答える内容書く欄(創業計画書)
売上は本当に立つか最初に稼働する人数と、その案件の単価取引先・取引関係等/事業の見通し
利益は残るかプロパーとBPの粗利、固定費事業の見通し
お金は回るか入金と支払いのずれ、必要な運転資金必要な資金と調達方法

SESは、在庫も店舗も要らない事業です。そのぶん、人と取引先がすべての根拠になります。「人を集められる」「案件を取れる」を、書類で示せるかが勝負です。

SESの収益モデルを1行で書くと

SESの収益モデルとは、エンジニアを客先の開発に参加させ、月単価と人件費・外注費の差で稼ぐしくみのことです。 式にすると次のとおりです。

  • 売上 = 稼働人数 × 月単価

  • 粗利 = 売上 × 粗利率(プロパーとBPで別々に出す)

  • 利益 = 粗利 − 固定費(役員報酬・家賃・通信費など)

粗利率の平均的な水準や計算の考え方は、SESの粗利率の平均と計算式でくわしく解説しています。

日本政策金融公庫の創業計画書は9つの欄でできている

創業計画書とは、日本政策金融公庫(国が出資する金融機関)が創業時の融資で使う、事業計画書のひな形のことです。 公庫のサイトからExcel版とPDF版をダウンロードできます。

公庫が公開している記入例(ソフトウェア開発業)では、欄は次の9つです。

  1. 創業の動機

  2. 経営者の略歴等

  3. 取扱商品・サービス

  4. 従業員

  5. 取引先・取引関係等

  6. 関連企業

  7. お借入の状況

  8. 必要な資金と調達方法

  9. 事業の見通し(月平均)

業種別記入例にSES専用のものはありません。ソフトウェア開発業の例を土台に、SESの事情を足して書くのが近道です。

SESで使える融資制度の例

創業時によく検討されるのが、公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2026年9月時点の公式ページでは、次のように書かれています。

項目内容(公式ページより)
対象新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方
融資限度額7,200万円
返済期間(運転資金)10年以内(うち据置期間5年以内)
担保・保証人希望を聞きながら相談

据置期間とは、元金を返さず利息だけを払う期間のことです。 利率や細かな条件は人によって変わります。申し込む前に、公式ページと支店の窓口で確認してください。

会社設立から初取引までの全体の流れは、SES起業の手順と必要資金|8ステップにまとめています。

SESの欄ごとの書き方と記入例

SESで差がつくのは、「取引先・取引関係等」と「従業員」の欄です。 売上の根拠がここに集まるからです。欄ごとのポイントを記入例で示します。

1. 創業の動機・2. 経営者の略歴等

動機と略歴は、「なぜ自分ならSESで稼げるか」を数字で書きます。SES営業の経験者なら、次のような実績がそのまま強みになります。

記入例:SES企業で営業を6年担当。年間の新規提案は約300件、担当したエンジニアは常時15名前後。取引のあった元請け企業のうち、3社から独立後の取引の打診を受けている。

「頑張ります」「成長市場だから」だけの動機は、審査で評価されにくい書き方です。自分の経験と、取引先との関係を具体的に書きます。

3. 取扱商品・サービス

SESのサービスは、エンジニアの技術支援を「月単価」で提供することです。職種と単価の目安を書きます。

記入例:システム開発・運用の技術支援(準委任契約)。主な職種はJavaの開発エンジニアとインフラエンジニア。月単価は60万〜65万円、精算幅は140〜180時間を基本とする。

単価の目安は、実際に取れそうな案件の単価で書きます。相場の調べ方はSESの単価相場|職種・スキル別の月額目安を参考にしてください。

4. 従業員

プロパーを何人雇うか、BPを何人使うかを分けて書きます。プロパーは給与が固定でかかり、BPは稼働した月だけ費用がかかるという違いがあるからです。

記入例:創業時は役員1名、正社員エンジニア1名(内定済み)。案件にはBP(協力会社のエンジニア)3名を参画させる予定。1年後に正社員エンジニアを3名まで増やす。

5. 取引先・取引関係等

ここがSESの計画書の中心です。販売先(客先・元請け)と仕入先(BPの会社)の両方を書き、支払いの条件も書きます。

記入例

  • 販売先:A社(システム開発の元請け)。月末締め・翌々月末払い。取引開始の合意あり(メールで確認済み)

  • 仕入先:B社・C社(BPの提供元)。月末締め・翌月末払い

  • 人件費の支払い:月末締め・翌月25日払い

元請けのSIerと取引するには、協力会社(取引先)として登録を受ける必要があることが多いです。登録の審査で見られる点はSIerの協力会社登録の条件と流れ|審査で見られる7項目で解説しています。

支払サイトとは、締め日から実際にお金が支払われるまでの期間のことです。 売上の入金は遅く、支払いは早い。この差が、あとで出てくる運転資金の根拠になります。

稼働人数×単価×粗利率で売上計画を作る手順

売上計画は、稼働する人を1人ずつ並べて、単価と原価を足し上げれば作れます。 「月の売上は250万円くらい」と全体でざっくり書くのは避けます。

  1. 創業月から稼働が決まっている人を、プロパーとBPに分けて書き出す

  2. 1人ずつ、月単価と原価(BPは仕入れ、プロパーは給与+会社負担の社会保険料)を書く

  3. 1人ずつ粗利を出し、合計する

  4. 固定費(役員報酬・家賃・通信費・求人費など)を引く

  5. 「創業当初」と「軌道に乗った後」の2つの時点で同じ計算をする

計算例:創業当初(プロパー1名・BP3名)

条件は仮の数字です。自社の実際の単価と費用に置き換えて使ってください。

区分月単価原価粗利
プロパー1名60万円46万円(給与40万円+社保など6万円)14万円
BP 3名65万円×3=195万円58万円×3=174万円21万円
合計255万円220万円35万円

プロパーの粗利率は約23%、BPの粗利率は約11%です。BPは粗利率が低い代わりに、稼働しない月の費用がかかりません。

公庫の「事業の見通し」欄は、「売上高」「売上原価」「経費(人件費・家賃・支払利息・その他)」に分かれています。そのため、プロパーの給与は「人件費」に入れる書き方が自然です。

欄創業当初計算の根拠
① 売上高255万円60万円×1名+65万円×3名
② 売上原価174万円BP仕入れ58万円×3名
③ 経費77万円人件費66万円(役員20万円+社員46万円)、家賃5万円、支払利息1万円、その他5万円
利益(①−②−③)4万円―

計算例:軌道に乗った後(プロパー3名・BP5名)

欄軌道に乗った後計算の根拠
① 売上高505万円60万円×3名+65万円×5名
② 売上原価290万円BP仕入れ58万円×5名
③ 経費194万円人件費168万円(役員30万円+社員46万円×3名)、家賃10万円、支払利息1万円、その他15万円
利益(①−②−③)21万円―

「軌道に乗った後」は、何か月目にそうなるかも書きます。採用の予定と、増える案件の当てがセットで書けていると説得力が出ます。

稼働率と待機を計画に入れる

SESでは、案件の切れ目にエンジニアが待機(案件に入っていない状態)になることがあります。プロパーが待機すると、売上はゼロでも給与は払い続けます。

計画書では、プロパーの稼働率を100%で置かず、待機の月を見込んだ数字にしておくと安全です。稼働率の出し方はSESの稼働率の平均と計算式で解説しています。

SES特有の運転資金は「入金と支払いのずれ」で説明する

SESの運転資金とは、客先から入金されるまでの間に、先に払う給与と外注費をまかなうお金のことです。 SESの創業融資では、この運転資金が借りる金額の中心になりやすいです。

「5. 取引先・取引関係等」の記入例の条件で、お金の出入りを並べます。客先は翌々月末払い、BPは翌月末払い、給与は翌月25日払いです。

月(2026年)お金の動き
10月稼働開始(10月分の仕事)
11月25日プロパーの10月分給与を支払う
11月30日BPの10月分外注費を支払う
12月31日客先から10月分の売上が入金(翌々月末払い)

10月分の売上が入るのは12月末です。その前の11月に、給与と外注費を先に払います。同じずれが毎月続くため、およそ2か月分の支出を立て替え続けることになります。

必要な運転資金の計算式

SESの運転資金は、次の式で目安を出せます。

  • 必要な運転資金 = 1か月の支出(売上原価+経費)× 立て替える月数

創業当初の記入例なら、1か月の支出は174万円+77万円=251万円です。立て替えが2か月なら、約502万円が必要な運転資金の目安になります。

人が増えるほど運転資金も増える

SESは、稼働する人が増えると売上も増えます。一方で、立て替えるお金も同じように増えます。

BPを1名増やすと、仕入れ58万円×2か月=116万円が追加で必要です。黒字なのにお金が足りなくなる「黒字倒産」は、このしくみで起こります。

計画書には「1年後に8名まで増やすため、増加分の運転資金も必要」と書いておくと、借りる金額の理由が伝わります。支払サイトの交渉や資金繰りの対策は、SESの黒字倒産を防ぐ資金繰り|対策6つにまとめています。

「必要な資金と調達方法」の記入例

記入例

  • 設備資金:パソコン・業務用ソフトなど 30万円

  • 運転資金:給与・外注費の立て替え2か月分 約500万円

  • 調達方法:自己資金 200万円、日本政策金融公庫からの借入 330万円

設備資金と運転資金の合計と、調達方法の合計は、同じ金額にそろえます。自己資金の額と、どう貯めたかも説明できるようにしておきます。

融資の面談で説明できる根拠のそろえ方

計画書の数字は、それぞれ「何を見せれば信じてもらえるか」を決めてから書きます。 公庫の記入例でも、売上の根拠として「受注契約書あり」と書かれています。

SESで用意しやすい根拠を、数字ごとに整理しました。

計画書の数字用意する根拠の例
稼働人数(BP)取引予定のBP企業とのやりとり、参画予定の人材のスキルシート
稼働人数(プロパー)雇用契約書、内定の承諾書
月単価客先からの注文書・発注の内示メール、過去の取引実績
支払サイト基本契約書の案、客先の支払条件がわかる書類
経費オフィスの賃貸借契約書・見積書、求人媒体の見積書

提出前のセルフチェック

公庫は、創業計画書を書くときのセルフチェックリストも公開しています。SES向けには、次の点もあわせて確認してください。

  1. 売上は「人数×単価」の式で、1人ずつ説明できる

  2. プロパーとBPで、原価と粗利を分けて出している

  3. 待機の月を見込み、稼働率を100%で置いていない

  4. 入金と支払いの日付を並べ、立て替える月数を出している

  5. 人を増やす計画に合わせて、増える運転資金も書いている

  6. 労働者派遣(派遣契約)の形で人を出すなら、許可が取れる見込みがある

6番の派遣の許可は、準委任契約(SES)だけで事業をするなら不要です。派遣も行う場合は、労働者派遣事業の許可要件を先に確認しておきましょう。

チョータツで「稼働の見込み」の根拠を集める

事業計画書の弱点になりやすいのは、「BPを何名参画させる予定」の根拠です。 自分でやる場合は、次のように集めます。

  1. 前職や知り合いのBP企業に、取引の意向をメールで確認しておく(例文は下にあります)

  2. 届いた案件メール・人材メールをExcelに転記し、単価と人数の相場を記録する

  3. 取引予定の会社と条件を一覧にし、計画書の「取引先」欄に書く

取引の意向を確かめるメールは、次のように送ると返信を計画書の根拠に使えます。

例文・テンプレート
件名:【ご相談】独立後のお取引について(株式会社〇〇設立のご報告)

△△株式会社 □□様

お世話になっております。佐藤です。
2026年12月に株式会社〇〇を設立し、SES事業を始める予定です。

設立後、次の条件でお取引いただけるかご意向をお聞かせください。
・お取引の内容:Java開発・インフラのエンジニアのご提案(準委任)
・想定の人数:開始時1〜2名
・お支払い条件:月末締め・翌々月末払いを想定

融資の申込みにあたり、お取引の見込みを確認しております。
ご返信の内容は、融資先への説明にのみ使います。

返信には「前向きに検討」程度の表現でもかまいません。日付と相手の名前がわかる形で保存し、面談で見せられるようにします。

この転記の作業は、案件メールと人材メールが1日に何十通も届くと、それだけで時間がかかります。もっと楽にするなら、ツールで情報を集めておく方法があります。

やりたいこと使える機能
案件・人材の情報を管理・共有するチョータツ
他社の営業中案件・営業中人材をデータベースにするチョータツ(他社と連携)
取引先のBP企業を新しく増やすチョータツブースト

チョータツは、SES営業の案件・人材の管理・共有ツールで、3,000社以上が利用しています。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材がデータベースになります。計画書に書く人数と単価の当てを、日ごろの営業の中で集めておけます。

チョータツブーストは、チョータツの中で新しいパートナー企業を開拓できる機能です。創業時は取引先の数そのものが少ないため、BPの仕入先を増やす手段として使えます。パートナーの探し方全般は、SESパートナー募集企業の探し方7選も参考にしてください。

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よくある質問

Q. SESの事業計画書に、決まった書式はありますか?
決まった書式はありません。日本政策金融公庫の融資を申し込むなら、公庫の創業計画書の様式を使うのが一般的です。
Q. SESでも日本政策金融公庫の創業融資は使えますか?
新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業を始める方などが対象です。適正な事業計画があることが条件なので、細かな対象は支店の窓口で確認します。
Q. 売上の見通しは、どのくらい細かく書けばいいですか?
「稼働人数×月単価」の式が見える細かさで書きます。プロパーとBPを分け、1人ずつの単価と原価を示すと説明しやすくなります。
Q. 運転資金は何か月分を借りればいいですか?
客先から入金されるまでに、給与と外注費を何か月立て替えるかで決まります。翌々月末払いの客先なら、約2か月分が目安です。
Q. まだ客先が決まっていなくても申し込めますか?
申し込み自体はできますが、売上の根拠が弱くなります。取引の意向がわかるメールや、内示の書類などをできるだけそろえてから臨みましょう。
Q. 事業計画書を作ったあとは、何に使えばいいですか?
毎月の実績と比べる「予算」として使えます。計画と実績の差を毎月見て、単価・稼働人数・経費のどこがずれたかを確かめます。

まとめ

  • SESの事業計画書は、「稼働人数×月単価」を1人ずつ積み上げて作る

  • 日本政策金融公庫の創業計画書では、「取引先・取引関係等」と「事業の見通し」が中心になる

  • 粗利はプロパーとBPで分け、待機を見込んだ稼働率で計算する

  • 運転資金は「1か月の支出×立て替える月数」で出し、人を増やす分も計画に入れる

  • 数字ごとに、契約書・内示・取引予定の相手などの根拠をそろえてから申し込む

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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