人材派遣業(労働者派遣事業)とは?事業の仕組み・マージン・許可の要件と、許可後に毎年必要な事業報告
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
人材派遣業(労働者派遣事業)とは?
人材派遣業とは、自社が雇用する労働者を、ほかの会社(派遣先)に送り、派遣先の指揮命令のもとで働かせる事業のことです。法律(労働者派遣法)では「労働者派遣事業」と呼びます。「派遣業」「派遣事業」「人材派遣事業」も、すべて同じ意味です。
登場するのは3者です。
| 立場 | 役割 | お金の流れ |
|---|---|---|
| 派遣元(派遣会社) | スタッフを雇い、給与を払う | 派遣先から派遣料金を受け取る |
| 派遣先(客先) | スタッフに仕事の指示を出す | 派遣元に派遣料金を払う |
| 派遣労働者(スタッフ) | 派遣先で働く | 派遣元から給与を受け取る |
ポイントは、雇う会社(派遣元)と指示する会社(派遣先)が別であることです。この「雇用と指揮命令が分かれる」形は、法律で許可を受けた会社にしか認められていません。派遣という働き方そのものの意味や三者の関係は、派遣とは?仕組みと派遣会社の役割|SES営業が知る準委任との差で図を使って説明しています。この記事は、派遣を事業として営むときの仕組みと義務を扱います。
指揮命令とは、仕事の進め方・順番・時間などを、働く人に直接指示することです。SESでよく問題になる偽装請負は、この指揮命令を許可なしで客先にさせてしまうことで起こります。
人材派遣業の業種(産業分類)
人材派遣業の業種は、国の「日本標準産業分類」の中分類91「職業紹介・労働者派遣業」です。大分類はR「サービス業(他に分類されないもの)」です。
一方、IT企業のSES事業は、ふつう大分類G「情報通信業」の「情報サービス業」として扱われます。派遣事業を始めても、会社の主な事業が変わるとは限りません。登記の目的欄や、各種の申告で書く業種は、売上の大きい事業に合わせて決めるのが一般的です。
登記の目的に「労働者派遣事業」がないと、許可申請の前に目的変更の登記が必要になります。手続きの順番は、司法書士や社会保険労務士に確認しましょう。
派遣の働き方は3種類
派遣には、雇い方の違いで3つの型があります。
| 型 | 雇い方 | IT業界での例 |
|---|---|---|
| 登録型派遣 | 派遣の期間だけ雇う(有期雇用) | 事務・ヘルプデスクの派遣 |
| 常用型派遣(無期雇用派遣) | 派遣がない期間も雇い続ける | 技術者派遣・エンジニア派遣 |
| 紹介予定派遣 | 派遣の後、客先に直接雇用される前提 | 客先の社員採用につなげる派遣 |
SES企業が派遣を始める場合、すでに正社員として雇っているエンジニアを派遣する「常用型」が中心になります。3つの型の違いと、旧「一般派遣」という言葉の今の意味は派遣の種類|登録型・常用型・紹介予定派遣の違いとSES会社が出せる人で比べています。
一般派遣と特定派遣の区分は、今どうなった?
旧「一般労働者派遣事業」と旧「特定労働者派遣事業」の区分は、2015年9月30日施行の改正派遣法で廃止されました。今は区分がなく、すべての派遣事業が「労働者派遣事業」として許可制に一本化されています。
改正前の2つの違いは次のとおりです。
| 区分(改正前) | 手続き | 派遣できた人 |
|---|---|---|
| 一般労働者派遣事業(一般派遣) | 許可制 | 登録型を含む、すべての派遣労働者 |
| 特定労働者派遣事業(特定派遣) | 届出制 | 常時雇用する労働者だけ |
一般派遣とは、改正前に許可を受けて行う派遣事業のことでした。特定派遣とは、自社の常用社員だけを派遣する場合に、届け出だけで行えた派遣事業のことです。
IT業界では、エンジニアを正社員で雇って客先に出す会社の多くが、届け出だけで済む特定派遣を使っていました。改正後は経過措置があり、特定派遣は2018年9月29日まで続けられました。それ以降も派遣を続けるには、許可を取る必要があります。
経営者が今気をつけたいこと
今でも「一般派遣」「特定派遣」という言葉は、求人や会社案内に残っています。次の2点を確認しましょう。
自社の資料に「特定派遣」と書いていないか:今は存在しない区分です。許可番号(「派13-XXXXXX」のような形式)を書くのが正確です。
取引先が今も許可を持っているか:特定派遣のころの届出番号しか持っていない会社は、派遣ができません。労働者派遣の許可番号を検索する方法|取引前の確認手順3つで確認できます。
人材派遣業のビジネスモデル|マージンの構造
人材派遣業の売上は「派遣料金」、利益の元は派遣料金とスタッフの賃金の差(マージン)です。
マージン率とは、派遣料金のうち、スタッフの賃金以外に残るお金の割合のことです。計算式は次のとおりです。
マージン率 =(派遣料金 − 派遣労働者の賃金)÷ 派遣料金 × 100
国の集計で見る平均の数字
厚生労働省の「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」では、次の数字が出ています。
| 項目 | 平均(8時間あたり) |
|---|---|
| 派遣料金 | 26,257円 |
| 派遣労働者の賃金 | 16,735円 |
| 差額(マージン) | 9,522円 |
この2つの数字から計算すると、差額の割合は約36%(9,522円÷26,257円)です。ただし、集計の派遣料金は消費税込みで、事業所ごとの平均を単純に平均した値です。法律で公開するマージン率とは計算の前提が違うため、あくまで目安として見てください。また、この平均にはIT以外の職種もすべて含まれます。
マージンはすべてが利益ではない
マージンの中から、派遣会社は次の費用を払います。残ったものが営業利益です。
社会保険料・労働保険料の会社負担分
有給休暇の賃金
教育訓練(キャリアアップ研修)の費用
営業・事務スタッフの人件費、事務所の家賃
許可の維持や管理システムの費用
差額が36%あっても、利益がそのまま36%残るわけではありません。社会保険料の会社負担だけでも、賃金の1割を超えるのが普通です。内訳と営業利益率は、派遣会社の利益の仕組み|派遣とSESのマージン・営業利益率の違いで解説しています。
マージン率は公開する義務がある
派遣会社は、マージン率・派遣労働者の数・派遣先の数・教育訓練の内容などを公開します。方法はインターネットなどです(派遣法23条5項)。SESの準委任にはこの義務がありません。
つまり、派遣を始めると自社の取り分が外から見えるようになります。客先やエンジニアに説明できる料金体系を、先に作っておきましょう。
人材派遣業の許可|要件・費用・期間
人材派遣業を始めるには、厚生労働大臣の許可が必要です。申請の窓口は、本社を管轄する都道府県労働局です。許可なしに派遣をすると無許可派遣となり、罰則の対象になります。
主な許可要件
厚生労働省の許可・更新等手続マニュアル(令和8年1月版)に書かれている主な要件です。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 財産 | 基準資産額2,000万円以上(1事業所あたり) |
| 財産 | 基準資産額が負債総額の7分の1以上 |
| 財産 | 自己名義の現金・預金1,500万円以上(1事業所あたり) |
| 人 | 派遣元責任者を置く(雇用管理の経験3年以上、受理日前3年以内に講習を受講) |
| 事務所 | おおむね20㎡以上の広さなど |
基準資産額とは、会社の資産から負債と繰延資産などを引いた、実質的な財産の額のことです。SES企業は、決算書の純資産が2,000万円に届かないことがよくあります。まず直近の決算書で計算してみるのが第一歩です。計算方法は労働者派遣事業の許可要件|資産2,000万円など基準と申請の流れ、責任者の選び方は派遣元責任者の条件とは?講習・人数と退職・不在時の手順で解説しています。
費用と期間の目安
| 項目 | 金額・期間 |
|---|---|
| 申請手数料 | 12万円+5万5千円×(事業所数−1) |
| 登録免許税 | 9万円 |
| 申請の時期 | 事業開始の予定日のおおむね2〜3か月前まで |
| 許可の有効期間 | 新規3年、更新後は5年 |
1事業所なら、国に払う費用は合計21万円です。このほか、派遣元責任者の講習費用や、社会保険労務士に申請を頼む場合の報酬がかかります。
厚生労働省のマニュアルは、事業開始の2〜3か月前までに申請するよう求めています。客先の「来月から派遣で」という要望には間に合わないので、準備は少なくとも3〜4か月前から始めましょう。
許可を取った後の義務|毎年の事業報告
派遣会社は、許可を取った後も毎年、労働局に報告書を出す義務があります。派遣の実績がない年も提出が必要です。
| 報告書 | 期限 | 単位 |
|---|---|---|
| 労働者派遣事業報告書(年度報告・6月1日現在の状況報告) | 毎年6月30日まで | 事業所ごと |
| 労働者派遣事業収支決算書 | 事業年度の終わりから3か月以内 | 事業所ごと |
| 関係派遣先派遣割合報告書 | 事業年度の終わりから3か月以内 | 事業主ごと |
たとえば3月決算の会社なら、2027年3月期の収支決算書と関係派遣先派遣割合報告書は2027年6月30日までに出します。労働者派遣事業報告書も同じ6月中なので、毎年6月は派遣の報告が集中する月と覚えておきましょう。
関係派遣先派遣割合報告書とは、グループ会社への派遣が8割以下かを報告する書類です。割合は総労働時間で計算します(派遣法23条3項・23条の2)。
日々の運用で増える仕事
報告書のほかに、派遣を始めると次の仕事が増えます。
派遣先と労働者派遣契約(個別契約)を結ぶ
スタッフに就業条件を明示する
派遣元管理台帳を作り、3年間保管する
派遣先ごとの期間制限(抵触日)を管理する
同一労働同一賃金に対応する(多くの会社は労使協定方式を選ぶ)
キャリアアップのための教育訓練を行う
マージン率などを毎年公開する
労使協定方式とは、派遣会社が社員の代表と協定を結び、国が示す一般的な賃金水準以上の給与を払う方式のことです。
派遣事業とSES(準委任)の違い|収益とリスクで比べる
派遣とSESの一番の違いは、客先がエンジニアに直接指示できるかどうかです。この違いから、許可・管理の手間・リスクの差が生まれます。
準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決められた業務を行うこと自体を約束する契約のことです。SES契約の多くは準委任契約です。
制度の違い
| 比べる点 | 派遣事業 | SES(準委任) |
|---|---|---|
| 国の許可 | 必要 | 不要 |
| 客先の指揮命令 | できる | できない(自社が指示) |
| 期間の制限 | 原則3年(無期雇用なら対象外) | なし |
| 出せる人 | 自社で雇用する人だけ | 社員・BP・フリーランス(契約による) |
| 待遇のルール | 同一労働同一賃金の対応が必要 | 派遣法の待遇ルールは対象外 |
| 報告・公開 | 事業報告・マージン率の公開 | なし |
収益とリスクの違い
| 比べる点 | 派遣事業 | SES(準委任) |
|---|---|---|
| 売上の決まり方 | 時間単価×実働時間が多い | 月額単価+精算幅が多い |
| 営業の強み | 「直接指示したい」客先に提案できる | 許可のない会社でも取引でき、BPも出せる |
| 主なリスク | 許可の取り消し、報告漏れ、待遇ルール違反 | 偽装請負(客先の直接指示) |
| 管理コスト | 高い(台帳・抵触日・協定・報告) | 比較的低い |
SESの一番のリスクは偽装請負です。客先がエンジニアに直接指示すると、準委任のつもりでも違法な派遣と見なされます。派遣の許可があれば、そうした案件を正しい契約で受けられます。
一方で、派遣ではBPのエンジニアを客先に出すことはできません。BPの社員を自社経由で派遣すると、二重派遣になります。BP中心で回しているSES企業ほど、派遣に切り替えられる人は少なくなります。二重派遣の仕組みはSESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方で確認できます。
計算例:同じエンジニアを出した場合
※ 数字は説明のための例です。実際の単価や給与は会社・案件で変わります。
| 項目 | 派遣で出す | SESで出す |
|---|---|---|
| 客先からの売上 | 時給4,000円×160時間=64万円 | 月額64万円(精算幅140〜180時間) |
| エンジニアの給与+会社負担の保険料 | 約45万円 | 約45万円 |
| 粗利(1か月) | 約19万円 | 約19万円 |
| 増える費用 | 許可維持・報告・台帳などの管理コスト | ほぼなし |
同じ単価なら、1人あたりの粗利はほぼ同じです。派遣の管理コストを上回るのは、派遣でしか受けられない案件が増えたときです。単価を上げる手段ではなく、受けられる案件を増やす手段と考えましょう。
SES企業が派遣事業を併営するかの判断
併営するかは、「派遣でしか受けられない案件がどれだけあるか」と「財産要件・管理の担当を用意できるか」で決めます。客先から「直接指示したい」と言われる案件が続き、資産と担当者の目途が立つなら、検討する価値があります。
判断の目安6つと、許可がない会社が派遣を求める客先に返す例文は、SES会社は派遣許可を取るべき?判断の目安6つと手順にまとめています。
併営を決めた後の進め方
直近の決算書で、基準資産額と現金預金を計算する
派遣元責任者の候補を決め、講習を受ける
登記の目的に「労働者派遣事業」があるか確認する
就業規則・労使協定・教育訓練計画を準備する
労働局に許可を申請する(事業開始の2〜3か月前まで)
派遣の基本契約書・個別契約書のひな形を用意する
既存の準委任案件のうち、派遣に切り替える案件を選ぶ
切り替える案件の選び方と手順は、労働者派遣契約とは|基本契約と個別契約、準委任からの切替手順にまとめています。
やってはいけないこと
許可が出る前に「派遣」として人を出す:無許可派遣になります。
準委任の契約のまま、客先の直接指示を黙認する:偽装請負になります。許可を取っても、契約を派遣に切り替えなければ違法のままです。
BPのエンジニアを派遣契約で出す:二重派遣になります。
準委任と派遣が混ざる案件管理をチョータツで楽にする
派遣を併営すると、同じ会社の中に「準委任の案件」と「派遣の案件」が混ざります。営業が契約の形を取り違えると、BPを派遣案件に提案してしまうような事故が起きます。
自分で管理するなら、案件の一覧表に次の列を必ず作りましょう。
契約の形(準委任/派遣)
出せる人の条件(自社社員のみ/BP可)
派遣の場合は抵触日
Excelやスプレッドシートでも管理はできます。ただ、案件が増えると、最新の表がどれかわからなくなりがちです。
チョータツを使うと、案件・人材の情報を1か所で管理し、チームで共有できます。案件の情報に契約の形や条件を書いておけば、提案する前に営業全員が同じ情報を確認できます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件の条件を共有する | Excelをメールやチャットで回す | 案件情報を1か所で管理・共有 |
| 入力の手間 | 1件ずつ手で転記 | AIが入力を手伝う |
| 他社の案件・人材を集める | 届いたメールを読んで転記 | 連携した会社の営業中案件・人材をデータベース化 |
| 自社の案件・人材を届ける | BCCで一斉送信 | メール配信機能でパートナーに配信 |
チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。
よくある質問
- Q. 人材派遣業と派遣事業、労働者派遣事業は違うものですか?
- 同じものです。法律上の正式な名前が「労働者派遣事業」で、一般には「人材派遣業」「派遣業」とも呼ばれます。
- Q. 特定派遣の届出をしていた会社は、今も派遣できますか?
- できません。特定派遣は2018年9月29日で経過措置が終わりました。今派遣をするには、労働者派遣事業の許可が必要です。
- Q. 人材派遣会社の業種は何になりますか?
- 日本標準産業分類では、大分類R「サービス業(他に分類されないもの)」の中分類91「職業紹介・労働者派遣業」です。SES事業は、ふつう「情報サービス業」として扱われます。
- Q. SES企業は派遣の許可がなくても違法ではないですか?
- 準委任契約で、客先がエンジニアに直接指示しない形なら、派遣の許可は要りません。客先が直接指示する場合は、派遣の許可と派遣契約が必要です。
- Q. 派遣とSESでは、どちらが儲かりますか?
- 同じ単価なら、1人あたりの粗利に大きな差は出にくいです。派遣は管理コストが増える分、派遣でしか受けられない案件が取れるかどうかで判断します。
- Q. 許可を取るのにいくらかかりますか?
- 1事業所なら、申請手数料12万円と登録免許税9万円の合計21万円を国に払います。このほか、基準資産額2,000万円以上などの財産の条件を満たす必要があります。
まとめ
人材派遣業(労働者派遣事業)は、自社で雇った人を客先に送り、客先の指示で働いてもらう事業。国の許可が必要
利益の元は「派遣料金−賃金」のマージン。国の集計(令和6年度速報)では平均の派遣料金26,257円、賃金16,735円(8時間あたり)
許可の要件は基準資産額2,000万円以上・現金預金1,500万円以上など。国に払う費用は1事業所21万円、申請は事業開始の2〜3か月前まで
許可後は毎年6月を中心に事業報告があり、マージン率の公開も必要
一般派遣・特定派遣の区分は2015年に廃止。今はすべて許可制
SESとの違いは「客先が直接指示できるか」。単価を上げる手段ではなく、受けられる案件を増やす手段として検討する
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(第2条、第5条、第23条、第23条の2)
厚生労働省「令和6年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)」
厚生労働省 石川労働局「労働者派遣事業報告書の提出について」
厚生労働省「平成27年労働者派遣法改正法の概要」
厚生労働省 栃木労働局「(旧)特定労働者派遣事業を行っている事業主の皆さまへ」
総務省(e-Stat)「日本標準産業分類(令和5年7月改定)中分類91 職業紹介・労働者派遣業」