グループ企業派遣の8割規制とは?計算方法・報告義務と、SES(準委任)で取引する営業の注意点

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

グループ企業派遣の8割規制とは?

グループ企業派遣の8割規制とは、派遣会社が自社のグループ企業へ派遣する割合を、80%以下に抑えるルールのことです。「グループ内派遣の規制」「8割規制」とも呼ばれます。2012年(平成24年)10月1日に施行された派遣法の改正で始まりました。

法律の上では、グループ企業のことを「関係派遣先」と呼びます。関係派遣先とは、派遣会社の経営を実質的に支配できる会社など、派遣会社と特別な関係にある会社のことです。くわしい範囲は、次の見出しで説明します。

なぜ8割に制限されるのか

グループの中だけで派遣を回すと、派遣会社が「社外の人手不足を埋める」役目を果たさなくなるからです。厚生労働省は、グループ内派遣が大半を占めると、派遣会社が本来の役割を果たせないと説明しています。

たとえば、派遣先のほとんどが親会社やグループ会社になると、その派遣会社は実質的にグループ専用の人事部門のようになります。8割規制は、派遣会社がグループの外にも人材を送り出す状態を保つためのルールです。

「グループ企業」=関係派遣先の範囲

関係派遣先は、親会社と、親会社が支配しているグループ会社です。親会社が連結決算をしているかどうかで、判定の方法が変わります。

親会社の状況関係派遣先になる会社判定の目安
連結決算をしている派遣会社を連結子会社にしている親会社と、その連結子会社親会社の連結の範囲で判断
連結決算をしていない派遣会社の議決権の過半数を持つ会社(親会社等)と、その親会社等が過半数を持つ会社議決権・出資の過半数
どちらでも過半数と同じくらい経営を支配していると認められる会社実際の支配力

連結子会社とは、親会社が決算を合算している子会社のことです。持分会社(合同会社など)の場合は、議決権ではなく資本金の過半数を出資しているかで判断します。

SES営業の身近な例でいうと、ユーザー系SIerがわかりやすいです。ユーザー系SIerとは、銀行・商社・メーカーなどの情報システム部門が独立してできたIT会社のことです。その親会社や兄弟会社は、関係派遣先にあたる可能性が高いです。ユーザー系・メーカー系などの見分け方は「メーカー系SIer一覧|ユーザー系・独立系・外資系と4系統の違い」で、系列の全体像は「SIer業界地図2026|系列・下請け構造を図解、営業先の選び方つき」で確認できます。

8割規制の計算方法

派遣割合は、1事業年度の「グループ向けの派遣の労働時間」を「すべての派遣の労働時間」で割って出します。人数や売上ではなく、総労働時間で計算する点に注意が必要です。

計算の手順は次のとおりです。

  1. その事業年度に、自社が雇う派遣社員が働いたすべての派遣の労働時間を合計する(分母)

  2. そのうち、関係派遣先での労働時間を合計する

  3. 2から、60歳以上の定年で退職し、自社に再雇用された人の労働時間を引く(分子)

  4. 分子を分母で割る。小数点以下1位未満の端数は切り捨てる

  5. 出た割合が80%以下なら規制を守れている

計算例

ある派遣会社X社は、ユーザー系SIerのA社の子会社だとします。X社の1年間の数字が、次のとおりだったとします。

項目労働時間
すべての派遣の労働時間(分母)100,000時間
A社とA社のグループ会社での労働時間85,000時間
うち、60歳以上の定年退職後に再雇用された人の時間8,000時間
分子(85,000時間-8,000時間)77,000時間

割合は、77,000時間 ÷ 100,000時間 = 77.0%です。80%以下なので、規制を守れています。

もし定年退職者の時間を引かないと、85.0%になり80%を超えます。除いてよい人の時間を正しく引くことで、結果が変わることがあります。なお、分母からは定年退職者の時間を引きません。

報告義務と、守れなかったときの流れ

派遣会社は、毎事業年度の終了後3か月以内に「関係派遣先派遣割合報告書(様式第12号の2)」を出す義務があります。提出先は厚生労働大臣で、本社を管轄する都道府県労働局を通して出します。条文上、報告はすべての派遣元事業主に求められています。

割合が80%を超えたり、報告を出さなかったりすると、次の順で国が対応します。

段階国の対応根拠
1指導・助言派遣法 第48条第1項
2指導のあとも違反が続けば、必要な措置の指示派遣法 第48条第3項
3指示のあとも違反が続けば、許可の取消しがありうる派遣法 第14条第1項第4号

つまり、いきなり罰金になるわけではありません。ただし、最後は派遣の許可そのものを失うおそれがあります。派遣会社にとっては重いルールです。

SES(準委任)との違い

8割規制は労働者派遣だけのルールで、SESの準委任契約には適用されません。準委任契約とは、仕事の「完成」ではなく「作業をすること」を約束する契約のことです。SESでは、エンジニアへの指示は受注した会社(SES会社)が出します。

比べる点労働者派遣SES(準委任)
8割規制かかるかからない
作業の指示を出す人派遣先(客先)SES会社
必要な許可労働者派遣事業の許可不要
国への割合の報告毎年必要不要

ここで大事なのは、契約書の名前ではなく実態で判断されることです。「グループ内の派遣が8割を超えそうだから、契約を準委任にしておこう」という考えは危険です。客先の社員がエンジニアに直接指示していれば、偽装請負になります。

契約の形ごとのちがいは、SESと派遣の違い|準委任・派遣・請負の比較表と確認5項目でくわしく整理しています。

SES営業の現場での使い方

SES営業がこの規制を知っておくと、ユーザー系SIerの子会社との商談で、相手の事情を読みやすくなります。よく出てくる場面は次の4つです。

場面営業が確かめること
SIerの子会社から人材を受けるその人の契約が派遣か準委任か
子会社に自社のエンジニアを提案する客先から先の商流と契約形態
自社が派遣の許可を持ち、グループ会社へ派遣するグループ向けの割合と報告の担当者
客先から「派遣で出して」と言われる自社に派遣の許可があるか

場面1:SIer子会社からの人材を再提案するとき

グループ子会社が派遣で受け入れた人を、別の会社に出すことはできません。派遣された人をさらに別の会社で働かせると、二重派遣になります。人材メールで「親会社から出向・派遣中」と書かれていたら、所属と契約形態を先に聞きましょう。出向と派遣の違いは「出向と派遣の違いとは?在籍出向の条件とSESで使うときの注意点」で整理しています。二重派遣のしくみはSESの二重派遣(多重派遣)は違法?罰則と避ける契約の組み方で解説しています。

場面2:子会社との取引を広げたいとき

派遣の許可を持つグループ子会社は、グループ外の取引先を増やしたい事情を抱えている可能性があります。8割規制を守るには、グループ外への派遣を一定以上にする必要があるからです。商談では「グループ外の案件はどのくらいありますか」と聞くと、相手の方針がつかめます。

場面3:自社がグループ会社へ派遣しているとき

自社が派遣の許可を持ち、親会社や兄弟会社へも派遣しているなら、毎年の割合を営業側でも把握しておきましょう。グループ向けの案件ばかり増やすと、年度末に80%を超えるおそれがあります。月ごとの労働時間を集計しておくと、途中で気づけます。

取引先に確認するメールの例文

件名:【ご確認】11月開始予定の案件の契約形態について

〇〇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
11月2日(月)開始予定の案件について、2点確認させてください。

・貴社と上位のお客様との契約形態(派遣/準委任)
・現場で作業の指示を出す方(貴社の責任者様/お客様)

弊社は準委任契約でのご参画を前提としております。
お手数ですが、10月9日(金)までにご返信いただけますと幸いです。

「派遣か準委任か」を最初に聞くだけで、二重派遣や偽装請負のリスクをかなり減らせます。取引先が派遣の許可を持っているかどうかは、労働者派遣の許可番号を検索する方法で確かめられます。

営業のチェックリスト

  • 取引先がどのグループに入っているかを知っている

  • 取引先から受ける人材の契約形態(派遣か準委任か)を聞いた

  • 準委任なら、指示を出すのが自社の責任者だと客先と合意した

  • 自社が派遣をしているなら、グループ向けの割合を月ごとに見ている

  • 案件ごとの契約形態と商流を記録に残した

取引先と契約形態の管理をチョータツで楽にする

自分で管理するなら、取引先ごとに「グループ名」「契約形態」「商流」をエクセルに1行ずつ残すのが基本です。ただ、案件や人材が増えると、メールとエクセルに情報が散らばりやすくなります。

もっと楽にするなら、SES営業のためのツールチョータツが使えます。チョータツは、案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

  • 案件と人材の情報を1か所にまとめ、社内で共有できる

  • AIが入力を手伝うので、案件情報の登録にかかる手間を減らせる

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる

提案の前に「準委任か」「どこのグループの案件か」をすぐ確かめられると、契約の失敗を防ぎやすくなります。

よくある質問

Q. グループ企業派遣の8割規制はいつから始まりましたか?
2012年(平成24年)10月1日に施行された労働者派遣法の改正で始まりました。条文は派遣法の第23条の2です。
Q. 8割は人数で数えますか?
いいえ。人数ではなく、1事業年度の派遣の総労働時間で計算します。60歳以上の定年で退職し再雇用された人の時間は、グループ向けの時間から除けます。
Q. 親会社から子会社への派遣はすべて違法ですか?
違法ではありません。グループ向けの割合が80%以下なら、親会社や兄弟会社へ派遣できます。80%を超えると、指導・指示などの対象になります。
Q. SES(準委任)でグループ会社に常駐する場合も8割に数えますか?
数えません。8割規制は労働者派遣だけのルールです。ただし、客先が直接指示を出している実態があれば、偽装請負とみなされるおそれがあります。
Q. 報告書はいつ、どこに出しますか?
毎事業年度の終了後3か月以内に、「関係派遣先派遣割合報告書(様式第12号の2)」を出します。本社を管轄する都道府県労働局を通して、厚生労働大臣に提出します。
Q. 80%を超えたらすぐに許可を取り消されますか?
すぐではありません。まず指導・助言があり、それでも直らないと指示が出ます。指示のあとも違反が続くと、許可の取消しがありえます。

まとめ

  • グループ企業派遣の8割規制は、グループ向けの派遣を全体の80%以下にするルール

  • 割合は総労働時間で計算し、60歳以上の定年退職後の再雇用者の時間は分子から除ける

  • 派遣会社は毎事業年度の終了後3か月以内に割合を報告する

  • SES(準委任)には適用されないが、実態が派遣なら偽装請負になる

  • 営業は取引先のグループと契約形態を確かめ、記録に残しておく

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

関連する記事