下請けからの脱却|SES・受託開発会社が直案件比率を上げる5つの方法と90日の進め方

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

下請けからの脱却とは?SES・受託開発会社が目指すゴール

下請けからの脱却とは、深い商流の取引を減らし、エンドや一次請けとの直接取引を増やすことです。深い商流とは、三次請け・四次請けなどを指します。すべての取引を元請けにする必要はありません。

下請けとは、元請けなど上の会社から仕事を受ける会社のことです。商流とは、仕事がエンド(発注元)から何社を通って流れてくるかという経路のことです。直案件とは、この記事では「エンドまたは元請けから、間に会社を挟まずにもらう案件」のことを指します。

位置どんな会社か自社から見た特徴
エンドシステムを使う会社(発注の出発点)単価が高く、要望が直接聞ける
元請け(一次請け)エンドから直接仕事を受ける会社案件の数が多く、条件が安定しやすい
二次請け元請けから仕事を受ける会社間に1社入るぶん、単価が下がる
三次請け以降さらに下で仕事を受ける会社情報が遅く、単価も条件も不利になりやすい

一次請け・二次請けの違いはSESの一次請け・二次請けの違い|単価差と商流を上げる方法でくわしく比べています。

SESと受託開発で「脱却」の意味は少し違う

SESと受託開発では、脱却のゴールが少し違います。SESは人を出す先の商流を浅くすること、受託開発はエンドから直接、開発を請けることがゴールです。

事業下請けの状態脱却のゴール
SES三次請け以降の案件に人を出している一次請け・エンドの案件に出す人を増やす
受託開発SIerから開発の一部を請けているエンドから直接、小さな開発を請ける

下請けのままだと起きること3つ

下請けのままだと、単価・情報・交渉力の3つが弱くなります。間に入る会社が増えるほど、その分の手数料が引かれ、情報も遅れて届きます。

  1. 単価が下がる:間の会社が1社増えるごとに、その会社の取り分が引かれます。

  2. 情報が遅い・不正確:エンドの要望が何社も通るうちに、変わったり遅れたりします。

  3. 交渉しにくい:単価や条件の相談が、エンドまで届きにくくなります。

公正取引委員会は2022年6月29日、ソフトウェア業の取引の調査結果を公表しました。形だけ商流に入って利益を得る「中抜き」事業者の存在を感じた企業は、全体で25.9%でした(回答4,346社)。元請けでは18.5%ですが、最終下請けでは33.5%に上ります。

取引の位置「中抜き」事業者の存在を感じたことがある
元請け18.5%
中間下請け29.2%
最終下請け33.5%
全体25.9%

出典:公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」

2026年1月から下請法は「取適法」に変わった

2026年1月1日から、下請法は改正されて取適法(中小受託取引適正化法)という名前になりました。取適法とは、発注する側と中小の受ける側の取引を公正にするための法律のことです。

法律で守られる場面は増えましたが、深い商流のままでは交渉の相手が遠いことに変わりはありません。対象になるかは、資本金・従業員数と取引内容で決まります。くわしくは下請法をわかりやすく|取適法への改正点とSES企業の義務4つで確認してください。

ステップ1:今の取引先と案件の「商流の棚卸し」をする

下請けから脱却する最初の一歩は、今の稼働案件すべての商流を一覧にすることです。自社が何次請けかを数字で知らないと、どこから変えるかが決められません。

商流の棚卸しとは、稼働中の案件ごとに「どの会社から受けて、その上に何社いるか」を書き出す作業のことです。次の4列の表で十分です。

案件・要員発注元(取引先)自社の位置月額の売上
例:A社 基幹保守(Tさん)B社(一次請け)二次請け70万円
例:C社 Web開発(Yさん)D社(二次請け)三次請け60万円
例:E社 インフラ(Kさん)E社(エンド)一次請け80万円

棚卸しの手順

  1. 稼働中の要員と案件を、全員分書き出す

  2. 案件ごとに、注文書をくれている会社(取引先)を書く

  3. 取引先の上に何社いるかを、案件メールや面談の記録から確認する

  4. わからない案件は、取引先に商流を確認する

  5. 取引先ごとに「何人出しているか」「平均の位置」をまとめる

商流の聞き方がわからないときは、SESの商流の確認方法|何次請けかの見分け方と質問例文の例文が使えます。

棚卸しで見るポイント

棚卸しができたら、取引先を3つのグループに分けます。この分け方が、どこから手を付けるかの判断材料になります。

グループ条件次にやること
伸ばすエンド・一次請けで、追加の案件がありそう人数を増やす提案をする
維持する二次請けで、関係は良好そのまま続け、上の会社の情報を集める
減らす三次請け以降で、単価も条件も悪い契約更新のタイミングで入れ替えを検討する

ステップ2:直案件の比率目標を決める

棚卸しの次は、直案件の比率を数字の目標にします。「商流を上げる」だけでは、営業の毎日の動きが変わらないからです。

直案件比率とは、稼働している要員のうち、エンドまたは元請け(一次請け)との直接取引で動いている人の割合のことです。計算式は次のとおりです。

直案件比率 = 直案件で稼働している人数 ÷ 稼働している全人数 × 100

計算例

稼働20人の会社を例に計算します。数字は説明のための例です。

時期直案件の人数稼働の全人数直案件比率
今3人20人15%
6か月後の目標4人20人20%
12か月後の目標6人20人30%

目標は1年で10〜15ポイント上げるくらいから始めるのが現実的です。いきなり50%をめざすと、既存の取引先との関係を無理に切ることになります。

比率とあわせて見る数字

比率だけでなく、1人あたりの粗利も見ます。商流が1段上がっても、粗利が増えなければ意味がないからです。

下請けから脱却する5つの方法

下請けから脱却する方法は5つあります。上から順に、手間が小さく結果が出やすい方法です。

方法相手結果が出るまでの目安
① 浅い取引先に寄せる今の取引先のうち、一次請け・エンド1〜3か月
② 一次請けにパートナー登録する大手・中堅のSIer3〜6か月
③ 既存のエンドから横に広げる今つながっているエンド3〜6か月
④ 小さな受託でエンドと直接つながる中小企業のエンド6か月以上
⑤ 得意分野を絞って指名される分野に強い一次請け・エンド6か月以上

目安は、この記事での考え方の目安です。会社の規模や取引先によって変わります。

① 浅い取引先に人と時間を寄せる

一番早いのは、今すでに一次請けやエンドと取引している先に、要員を寄せることです。新しい会社を探すより、信頼がある会社で人数を増やすほうが決まりやすいからです。

棚卸しで「伸ばす」に入った取引先に、次の案件の予定を聞きましょう。待機中や契約更新が近い要員がいれば、先にスキルシートを渡しておきます。

② 一次請けのSIerにパートナー登録を申し込む

2つ目は、一次請けになっているSIerに、パートナー(協力会社)として登録を申し込むことです。多くのSIerは、協力会社を募集するページや窓口を持っています。

登録には、会社の情報や実績の提出が求められることがあります。条件と流れはSIerの協力会社登録の条件と流れ|審査で見られる7項目で確認できます。登録後は、最初の1件を早く決めることが大切です。

③ 既存のエンドから別の部署・関連会社へ広げる

3つ目は、今つながっているエンドの別の部署や、関連会社を紹介してもらうことです。すでに実績があるので、ゼロから開拓するより話が早く進みます。

現場のエンジニアの評判がよいときが、紹介を頼むよいタイミングです。この記事の後半に、紹介を頼むメール例文を載せています。

④ 小さな受託開発でエンドと直接つながる

4つ目は、中小企業のエンドから、小さな開発や改修を直接請けることです。受託開発の会社なら、SIerの下で請けていた工程のうち、得意な部分を切り出して提案します。

いきなり大きな開発を請けると、品質や納期の責任を負いきれません。まずは小さな改修から実績を作りましょう。提案書の組み立てはエンド直案件の提案書の作り方|SESの体制提案の構成と見本が参考になります。

請負で受けるときは、契約の形にも注意が必要です。請負なのに発注者がエンジニアに直接指示を出すと、偽装請負になるおそれがあります。受ける前に請負契約とは?民法の意味・特徴とSESが受ける前の確認点7つを読んでおきましょう。

⑤ 得意分野を絞って「指名される会社」になる

5つ目は、特定の技術や業界に強い会社として、名前で選ばれるようにすることです。「インフラの運用保守ならこの会社」と思われると、一次請けやエンドから直接声がかかります。

分野を決めたら、その分野の要員のスキルシートをそろえ、実績を1枚の資料にまとめます。

商流を上げる90日の進め方

5つの方法は、90日を3つの期間に分けて進めると、営業チームで回しやすくなります。

  1. 1〜30日目:棚卸しと目標づくり
    稼働案件の商流を一覧にし、取引先を「伸ばす・維持する・減らす」に分けます。直案件比率の今の数字と、12か月後の目標を決めます。

  2. 31〜60日目:浅い取引先への提案と登録申し込み
    「伸ばす」の取引先に追加の提案をします(方法①)。一次請けのSIerを10社選び、パートナー登録を申し込みます(方法②)。

  3. 61〜90日目:エンドへの横展開と振り返り
    既存のエンドに紹介を頼みます(方法③)。90日目に直案件比率を計算し直し、次の90日の目標を決めます。

毎週見るチェックリスト

  • 直案件の提案を、今週何件出したか

  • 一次請け・エンドとの面談が、今週何件あったか

  • 契約更新が近い要員を、浅い取引先の案件に回せないか

  • パートナー登録の申し込みに、返事が来ていない会社はないか

  • 「減らす」グループの取引先に、要員を新しく出していないか

下請けから脱却するときにやってはいけないこと3つ

商流を上げるときは、今の取引先との信頼を壊さないことが一番大切です。次の3つは避けましょう。

間の会社を飛ばしてエンドと直接取引する

商流飛ばしとは、間に入っている会社を通さず、上の会社やエンドと直接契約することです。法律で直接禁止されてはいませんが、契約書の直接取引禁止条項に反すると、損害賠償を求められるおそれがあります。

現場でエンドと仲良くなっても、その案件で直接取引を持ちかけてはいけません。くわしくはSESの商流飛ばしは違法?営業が知るべきリスクと防ぎ方5つを読んでください。

既存の取引先をいきなり切る

深い商流の取引先でも、今の売上を支えている大事な相手です。代わりの案件が決まる前に取引を減らすと、要員の待機が増えます。入れ替えは、契約更新のタイミングで少しずつ行いましょう。

体制が整わないまま大きな請負を受ける

直接受けたい気持ちが強いと、自社で責任を持てない規模の請負を受けてしまいがちです。納期遅れや品質の問題が起きると、エンドとの関係を失います。最初は小さな案件から実績を積みましょう。

チョータツで商流の浅い取引先と案件を増やす

ここまでの方法は、すべて自分たちで進められます。ただ、商流の浅い取引先を探し、各社の案件を追い続けるのは手間がかかります。チョータツを使うと、この作業を楽にできます。

チョータツとは、株式会社DrivenXが提供する、SES営業の案件・人材の管理・共有ツールのことです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

やりたいこと自分でやる方法チョータツでできること
浅い取引先の案件を見る取引先ごとのメールを1通ずつ読む他社と連携すると、営業中案件・人材をデータベース化できる
新しい取引先を増やす募集ページを探して1社ずつ連絡するチョータツブーストで新しいパートナー企業を開拓できる
自社の要員を案内する取引先ごとにメールを作るパートナーへのメール配信機能で案内できる
社内で情報を共有するExcelやチャットで回す案件・人材の情報を管理・共有できる

連携で、上位の取引先の案件を見落とさない

チョータツでは、他社と連携すると、その会社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。一次請けやエンドに近い取引先とつながれば、その会社の案件をまとめて確認できます。

チョータツブーストで、新しい取引先を開拓する

チョータツブーストは、チョータツの中で新しいパートナー企業を開拓できる機能です。方法②の「一次請けへの申し込み」とあわせて使うと、取引先を増やす手間を減らせます。

商流の位置は、つながった後に必ず相手に確認してください。

一次請け・エンドへの連絡メール例文

最初の連絡は、自社の得意分野と、出せる要員を短く伝えるのが基本です。例文の日付は2026年の暦に合わせています。

一次請けのSIerにパートナー登録を申し込むメール

件名:協力会社登録のご相談(株式会社〇〇)

株式会社△△ パートナー窓口ご担当者様

はじめてご連絡いたします。株式会社〇〇の営業の□□と申します。
貴社の協力会社募集ページを拝見し、ご連絡いたしました。

弊社はインフラの運用保守を中心に、エンジニア20名が稼働しております。
2026年11月以降に参画可能な要員が2名おります。

協力会社として登録の手続きを進めたく、必要な書類をご教示いただけますでしょうか。
会社案内と要員のスキルシートは、ご指示をいただき次第お送りいたします。

何卒よろしくお願いいたします。

既存のエンドに別部署の紹介を頼むメール

件名:いつもありがとうございます(株式会社〇〇 □□)

〇〇部 △△様

いつもお世話になっております。株式会社〇〇の□□です。
Tさんの参画から1年がたち、2026年10月15日(木)で更新の区切りを迎えます。

現場でのご評価を伺い、大変うれしく思っております。
もし社内でインフラ運用の人手が足りない部署がございましたら、ご紹介いただけないでしょうか。

短い打ち合わせでも構いません。ご都合のよい日時をお知らせいただけますと幸いです。

よくある質問

Q. 下請けから脱却するには、自社サービスを作るしかありませんか?
いいえ。SESや受託開発のまま、直案件の比率を上げることで脱却に近づけます。まずは今の取引先の商流を棚卸しし、浅い取引先に人を寄せるところから始めましょう。
Q. 受託開発の下請けから抜け出すには、何から始めればいいですか?
SIerから請けている工程のうち、得意な部分を切り出します。それを中小企業のエンドに、小さな改修として提案するのが始めやすい方法です。最初は責任を負える規模の案件で実績を作りましょう。
Q. 直案件比率の目標は、何%にすればいいですか?
決まった正解はありません。今の比率から1年で10〜15ポイント上げるくらいが、既存の取引先との関係を保ちながら進めやすい目安です。
Q. 下請けのままでも、利益を守る方法はありますか?
あります。契約更新の前に単価交渉をする、三次請けより深い案件は受けないという社内ルールを作る、などの方法です。
Q. BPからの案件だけで営業している会社でも、脱却できますか?
できます。ただし、エンドを持たない状態のリスクを先に知っておくと、優先順位を決めやすくなります。依存度の自己チェックはSESのBPのみ営業のリスク|エンドを持たない会社の弱点と対策5つにあります。
Q. 下請けから脱却するまで、どのくらいかかりますか?
浅い取引先に人を寄せる方法なら1〜3か月で変化が出ることがあります。エンドとの直接取引は、半年以上かけて少しずつ増やすつもりで計画しましょう。

まとめ

  • 下請けからの脱却は、元請けになることではなく、直案件の比率を上げること

  • 最初にやるのは、今の取引先と案件の商流の棚卸し

  • 次に、直案件比率の目標を数字で決める(例:15%→12か月で30%)

  • 方法は5つ:①浅い取引先に寄せる ②一次請けに登録 ③エンドから横展開 ④小さな受託 ⑤得意分野で指名

  • 商流飛ばし・既存取引先の急な打ち切り・無理な請負は避ける

  • 浅い取引先を探し、案件を追う手間は、チョータツとチョータツブーストで減らせる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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