中小SESの生き残り戦略|商流・BP網・採用・受託転換など打ち手5つと会社規模別の着手順

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

中小SESの生き残りが難しくなっている3つの理由

中小SESの経営が難しくなっている理由は、法改正・生成AI・採用難の3つが同時に進んでいるからです。どれか1つなら対応できても、3つ重なると「今までどおり」では利益が残りにくくなります。

SESとは、エンジニアの技術や労働力を、お客様の会社に提供する契約(システムエンジニアリングサービス)のことです。多くの場合、準委任契約という形で結ばれます。

変化何が起きているか中小SESへの影響
法改正フリーランス法(2024年11月)、取適法(2026年1月)が施行契約書・支払いの管理の手間が増える
生成AI生成AIを活用する方針の日本企業が68.9%に増加決まった作業だけの案件が減る可能性
採用難2030年にIT人材が約16万〜79万人不足する試算人が採れず、売上が伸びない

法改正で、管理の手間が増えた

2024年11月1日にフリーランス法が施行されました。フリーランスに仕事を頼むとき、条件をはっきり示すなどの義務が増えています。

2026年1月1日には、下請法が改正されて取適法になりました。取適法とは、仕事を頼む会社が、立場の弱い受け手に不利な取引をしないよう定めた法律のことです。支払いや代金の決め方のルールが厳しくなっています。

中小SESは、仕事を受ける側と頼む側の両方になります。契約書や支払いの管理を人の手だけで回していると、ミスが起きやすくなります。

生成AIで、案件の中身が変わり始めた

総務省の「令和8年版 情報通信白書」によると、生成AIを活用する方針の日本企業は68.9%でした。「積極的に活用」と「領域を限定して活用」の合計です。前年度の49.7%から大きく増えています。

テストや簡単な修正など、AIで置きかえやすい作業の案件は減る可能性があります。一方で、AIを使いこなせるエンジニアの需要は増えると考えられます。

エンジニアの採用が難しい

経済産業省の2019年の試算では、2030年のIT人材の不足は約16万〜79万人です。需要の伸びが小さい場合で約16万人、大きい場合で約79万人(中位で約45万人)です。

IPA(情報処理推進機構)が2026年7月16日に公表したDX動向調査もあります。DXを進める人材の量が「不足している」と答えた国内企業は85.5%でした。

人が足りないのは大手も同じです。そのため、知名度の低い中小SESほど、採用で不利になりやすい状況です。業界全体の流れはSES業界の今後と5つの動向で詳しく解説しています。

生き残りの打ち手5つの全体像

打ち手は、すぐ効くものと時間がかかるものに分けて考えます。先に効くものから手をつけ、利益の余裕ができてから時間のかかる打ち手へ進むのが安全です。

打ち手効果が出るまで主に良くなる数字
①商流を上げる6か月〜1年単価・粗利率
②BP網を広げる1〜3か月成約数・待機の減少
③採用と定着6か月〜稼働人数
④営業の仕組み化3〜6か月営業1人あたりの売上
⑤受託・自社サービスへの転換1〜3年利益の安定・会社の価値

効果が出るまでの期間は、私たちが営業の現場で見てきた目安です。会社の状況によって前後します。

打ち手①:商流を上げて、単価と粗利率を上げる

商流を上げるとは、エンドや元請けに近い会社と直接取引することです。間に入る会社が減るほど、同じエンジニアでも単価が上がり、粗利率が良くなります。

商流とは、1つの案件がエンド(発注元の会社)から何社を通って流れてくるかという流れのことです。粗利率とは、売上から原価(エンジニアへの支払いなど)を引いた利益が、売上の何%かを表す数字です。

商流を上げる手順は次のとおりです。

  1. 今の取引を全部書き出し、それぞれ「エンドから何社目か」を記録する

  2. 二次請け以下の取引のうち、単価が低いものに印をつける

  3. 一次請けや元請けの会社とのつながりを、BPや交流会から探す

  4. 実績のあるエンジニアを、一次請けの案件へ優先して提案する

  5. 3か月ごとに、商流別の売上と粗利率を比べる

商流の深さと単価の関係は、SESの一次請け・二次請けの違い|単価差と商流を上げる方法で詳しく説明しています。

やってはいけないことは、商流飛ばしです。取引先を通さずに、その先の会社と勝手に契約すると、信用を失い、契約違反になる場合もあります。

打ち手②:BP網を広げて、案件と人材の選択肢を増やす

BP網を広げるとは、案件や人材を紹介し合う取引先を増やすことです。中小SESにとって、最も早く効果が出やすい打ち手です。

BP(ビジネスパートナー)とは、案件や人材を紹介し合う取引先の会社のことです。自社の人材だけで埋められない案件にも、BPの人材を提案できます。

BP網を広げるメリットは3つあります。

  • 自社の待機エンジニアを入れられる案件が増える

  • 自社で人を採らなくても、BPの人材で売上を作れる

  • 一次請けの会社とつながれば、商流を上げるきっかけになる

ただし、BPから流れてくる案件だけに頼る「BPのみ営業」は、商流が深くなりがちです。弱点と対策はSESのBPのみ営業のリスクにまとめています。

自分でBPを増やす方法

自分でやるなら、次の3つから始めましょう。

  1. 公式サイトで「パートナー募集」をしている会社に連絡する

  2. SES企業の交流会に参加して、名刺交換から情報交換につなげる

  3. 取引中のBPに、ほかの会社を紹介してもらう

取引を始める前には、商流や支払い条件などを確認します。

チョータツブーストなら、BP開拓を楽にできる

1社ずつ探して連絡する時間がないなら、チョータツブーストが使えます。チョータツブーストは、チョータツの中で新しいパートナー企業を開拓できる機能です。

さらにチョータツは、他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。BPから届く情報を1か所にまとめられるので、提案先を探す時間を減らせます。

打ち手③:採用と定着で、稼働人数を増やす

採用の打ち手は、「採る」より先に「辞めさせない」を優先します。1人辞めると、その人の売上がなくなるうえ、採用費を払って穴を埋める必要があるからです。

まず定着を固める

客先常駐のエンジニアは、自社との接点が少なく、帰属意識が薄れやすい傾向があります。次のような取り組みから始めましょう。

  1. 営業担当が、月1回はエンジニアと面談する

  2. 次の案件の希望を聞き、スキルが伸びる案件を探す

  3. 評価の基準を決めて、給与が上がる道筋を見せる

具体的な施策はSESエンジニアの離職対策|定着率を上げる施策7つと帰属意識で解説しています。

社員採用だけにこだわらない

正社員の採用が難しいなら、フリーランスのエンジニアと組む方法もあります。フリーランスと契約すれば、正社員を採るより早く、案件に合う人を確保できる場合があります。

ただし、フリーランス法で定められた義務(取引条件をはっきり示すことなど)を守る必要があります。

xhoursで、フリーランスに直接スカウトする

フリーランスを探す手間を減らしたいなら、xhoursが使えます。xhoursは、企業がITフリーランスに直接スカウトできるサービスです。数千名のフリーランスのデータベースから、案件に合う人を探せます。

案件に合うエンジニアが、社内にいないときは:xhoursでフリーランスを探す

打ち手④:営業の仕組み化で、「30名の壁」を越える

営業の仕組み化とは、案件・人材・取引先の情報を、誰でも見られる形で共有することです。社長やベテラン営業の頭の中だけに情報がある状態では、会社は一定の規模で伸びなくなります。

SES業界では、社員30名前後で成長が止まることを「30名の壁」と呼ぶことがあります。社長が全員の顔と案件を覚えられるのは、このくらいの人数までだからです。

30名の壁で起きること

起きること原因対策
待機が急に増える次の案件探しが担当者任せ案件終了の2か月前に共有する
同じ案件に二重提案提案の記録がバラバラ提案履歴を1か所で管理する
営業が辞めると売上が落ちる取引先情報が個人の中にある取引先の情報を会社で共有する
社長が現場から離れられない判断の基準がない単価や商流の基準を文字にする

属人化とは、仕事のやり方や情報が特定の人にしかわからない状態のことです。解消の手順はSES営業の属人化を解消する方法|マニュアル作りと共有の5手順で紹介しています。

自分で仕組み化する方法

まずはExcelやスプレッドシートで、案件表と人材表を作りましょう。項目をそろえて、全員が同じファイルに書くだけでも、二重提案や見落としは減ります。

人数が増えてきたら、案件担当・人材担当・事務担当に分ける方法もあります。分け方はSES営業の分業体制の作り方|案件・人材・事務の担当分けの型で紹介しています。

チョータツで、案件と人材の情報を一元化する

人数が増えてExcelが回らなくなったら、チョータツが使えます。チョータツは、案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。パートナーへのメール配信機能もあり、AIが入力を手伝います。

案件と人材の情報がチームで同じ画面に集まれば、担当者が休んでも、ほかの人が提案を続けられます。3,000社以上が利用していて、無料で始められます。

打ち手⑤:受託・自社サービスへ段階的に転換する

「SESのみ」から脱却するには、SESの利益を土台に、受託開発から小さく始めるのが現実的です。いきなり自社サービスに大きな資金を入れると、売れるまでの間に資金が尽きる危険があります。

受託開発とは、お客様から「このシステムを作ってほしい」と頼まれ、完成させて納める仕事のことです。SESと違い、完成したものに責任を負います。自社サービスとは、自社で作ったシステムやアプリを、多くの会社に使ってもらって利用料を得る事業のことです。

事業売上の立ち方主なリスク
SES稼働した時間や月で入る待機・人の退職
受託開発納品して入る赤字案件・納期遅れ
自社サービス利用料が毎月入る売れるまで赤字が続く

段階的に転換する手順

  1. SESで常駐しているチームの中から、同じお客様の仕事をまとめて受けられる人を育てる

  2. 小さな改修や保守など、範囲がはっきりした仕事を受託で受ける

  3. 受託の実績を3〜5件作り、見積もりと進め方の型を決める

  4. 受託でくり返し頼まれる機能を、自社サービスの候補にする

  5. SESの利益の一部だけを、自社サービスの開発にあてる

受託では、仕事の範囲や検収(納品物の確認)の条件を、契約書にはっきり書くことが大切です。偽装請負にならないよう、契約の形と働き方を合わせる必要もあります。

会社規模別:どの打ち手から着手すべきか

どの打ち手から始めるかは、社員の人数で決めるのがわかりやすい方法です。規模によって、足りないものが違うからです。

会社の規模最初にやること次にやること
社員10名以下②BP網を広げる①商流を上げる
社員11〜49名④営業の仕組み化③採用と定着
社員50名以上⑤受託・自社サービス①商流を上げる

社員10名以下:BP網と商流で売上を作る

10名以下の会社は、自社のエンジニアだけでは売上が伸びません。まずBP網を広げ、BPの人材で売上を作りましょう。取引先が増えたら、一次請けに近い会社を選んで商流を上げます。

社員11〜49名:仕組み化と定着で30名の壁を越える

この規模では、情報の属人化と離職が、成長を止める一番の原因になります。案件・人材の情報を共有する仕組みを作り、エンジニアとの面談を定例にしましょう。

社員50名以上:受託転換で会社の価値を上げる

50名を超えると、受託を任せられるリーダー層が育ってきます。SESの安定した利益を使って、受託や自社サービスに挑戦しやすい段階です。会社の価値を高めたい場合も、SES以外の売上があると評価されやすくなります。

着手前に確認する数字チェックリスト

打ち手を選ぶ前に、自社の数字を1枚の表にまとめることが最初の一歩です。数字がないまま打ち手を選ぶと、効果があったかどうかも判断できません。

  • 取引ごとの商流(エンドから何社目か)を把握している

  • 案件ごとの粗利率を毎月計算している

  • 待機中のエンジニアの人数と期間がわかる

  • 取引中のBPの社数と、そのうち一次請けの社数がわかる

  • 過去1年の退職者数と、退職の理由がわかる

  • 営業1人あたりの月の提案数・成約数がわかる

  • 契約書と支払い条件を、取適法・フリーランス法に合わせて見直した

チェックが3つ以下なら、まず打ち手④の仕組み化から始めるのがおすすめです。数字を集める仕組みがないと、ほかの打ち手の効果も測れないからです。

棚卸しの1枚表(記入例)

営業責任者が月初に次の表を埋め、経営会議に出すと、どの打ち手から始めるかを数字で話し合えます。

見る数字今月3か月前次の打ち手の目安
三次請け以下の取引の割合45%50%30%を超えるなら①商流
平均の粗利率18%17%下がり続けるなら①②
待機人数(月末時点)2名1名2名以上が続くなら②
取引中のBPの社数25社22社20社未満なら②
過去1年の退職者4名3名社員の1割を超えるなら③

数字と目安は記入例です。自社の規模と過去の実績に合わせて決めてください。

よくある質問

Q. 中小SESは、これから本当に生き残れますか?
打ち手を選べば、生き残る余地は十分にあります。IT人材は2030年に最大約79万人不足する試算があり、人材を届けるSESの需要は続くと考えられます。ただし、商流が深く、情報管理が人任せの会社は利益が残りにくくなります。
Q. SESのみの会社が、自社サービスに転換するコツは?
SESの利益を土台に、受託の小さな仕事から始めることです。受託で実績と型を作り、くり返し頼まれる機能を自社サービスの候補にします。SESをやめて一気に移るのはおすすめしません。
Q. SES経営で成功するコツは何ですか?
数字を見て、打ち手の順番を決めることです。商流、粗利率、待機人数、BPの社数を毎月確認しましょう。そのうえで、会社の規模に合った打ち手から1つずつ進めます。
Q. SESの「30名の壁」とは何ですか?
社員30名前後で成長が止まりやすいことを表す言葉です。社長や一部の営業だけが案件や人材の情報を持っていると、人数が増えたときに回らなくなります。情報を共有する仕組みを作ることが対策です。
Q. 生成AIでSESの仕事はなくなりますか?
すぐになくなるとは考えにくいです。ただし、テストや簡単な修正など、AIで置きかえやすい作業の案件は減る可能性があります。AIを使えるエンジニアを育て、提案できる案件の幅を広げましょう。

まとめ

  • 中小SESの経営は、法改正・生成AI・採用難の3つの変化で難しくなっています。

  • 打ち手は5つです。①商流を上げる ②BP網を広げる ③採用と定着 ④営業の仕組み化 ⑤受託・自社サービスへの転換です。

  • 社員10名以下はBP網、11〜49名は仕組み化、50名以上は受託転換から始めるのがおすすめです。

  • 最初の一歩は、商流・粗利率・待機・BPの社数を1枚の表にまとめることです。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

関連する記事