SES業界の今後はどうなる?生成AI・法改正など5つの動向と営業会社の備え5つ

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

SES業界の今後は「需要は続くが、中身とルールが変わる」

SES業界の今後は、「エンジニアを求める需要は続く一方で、仕事の中身と取引のルールが変わる」と整理できます。なくなる業界ではありませんが、同じやり方を続ける会社は苦しくなります。

SESとは、エンジニアの技術力を提供し、稼働時間などに応じて報酬を受け取る事業のことです。正式にはシステムエンジニアリングサービスと言います。多くは準委任契約で結ばれます。

この記事では、公的な資料で確認できる5つの動向を取り上げます。

#動向SES営業への影響
1IT人材不足が続く人を集められる会社が強くなる
2生成AIが広まる求められるスキルが変わる
3フリーランス法の施行フリーランスとの取引に義務が増える
4下請法が取適法に変わった支払い・価格決定のルールが厳しくなる
5多重下請構造への目線商流の深い取引が不利になる

動向1:IT人材不足は続き、市場も伸びている

1つ目の動向は、IT人材の不足と、情報サービス市場の伸びが続いていることです。SESの需要を支える土台は、当面は崩れないと考えられます。

経済産業省の2019年の試算では、2030年にIT人材が約16万〜79万人足りなくなります。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」でも、DXを進める人材が足りない日本企業は85.1%でした。

市場の面では、経済産業省の統計で、情報サービス業の売上高が2024年に前年比5.5%増の約17.9兆円でした。前年比のプラスは、2019年から6年続いています。

2025年からは、総務省統計局の「サービス産業動態統計調査」が同じ役割を引き継いでいます。2026年7月の速報では、情報サービスを含む情報通信業の売上高が前年同月比6.4%増でした。増加は52か月続いています。

くわしい数字と読み方は、IT人材不足の2030年予測とデータとSES業界の市場規模と推移で解説しています。

ただし「誰でも決まる」時期は終わりつつある

厚生労働省によると、2026年3月の情報通信業の新規求人は、前年同月より15.8%減りました。1か月の数字なので決めつけはできませんが、求人の勢いには落ち着きも見えます。

経産省の試算でも、AIなどの先端IT人材は大きく不足する一方、従来型のIT人材は余る可能性が示されています。これからは、スキルによって決まりやすさの差が広がると考えるのが自然です。

動向2:生成AIが広まり、求められるスキルが変わる

2つ目の動向は、生成AIの広がりです。プログラムを書く作業の一部をAIが手伝うようになり、エンジニアに求められる力が変わり始めています。

生成AIとは、文章や画像、プログラムなどを自動で作るAIのことです。

総務省の「令和7年版 情報通信白書」は、企業の生成AIの活用方針を調べています。「積極的に活用する」「領域を限定して活用する」と答えた日本企業は49.7%でした。前の調査の42.7%から増えています。

SES業界への影響

私たちは、生成AIの影響を次のように見ています。

影響起こりやすいこと
決まった作業の案件テストや簡単な修正など、AIで置きかえやすい作業は減る可能性がある
AIを使える人の案件AIを使って早く作れる人、AIを組み込める人の需要は増える
提案の中身「何人月か」より「何ができるか」を問われやすくなる

経産省の試算では、AI人材は2030年に最大約12.4万人不足します。AIに仕事を奪われるというより、AIを使える人への需要に移っていくと考えられます。

営業の仕事にもAIは入ってきます。案件と人材の組み合わせをAIで探す方法は、SESマッチングのAI活用で紹介しています。

見落としやすい動き:ユーザー企業の内製化

生成AIとあわせて注目したいのが、ユーザー企業の内製化です。内製化とは、システムの開発や運用を外部に任せず、自社の社員で行うことです。

経済産業省は2025年5月、古いシステム(レガシーシステム)の刷新に関するレポートをまとめました。その中で、ユーザー企業にはシステムの内製化を、ベンダー企業には内製化の支援・伴走を求めています。

SES営業にとっては、「人を出す」だけでなく「お客さまの社員と一緒に作り、育てる」提案が求められる流れです。内製化を支える経験を持つエンジニアは、提案の強みになります。

動向3:フリーランス法で、フリーランスとの取引ルールが増えた

3つ目の動向は、2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)です。SES企業がフリーランスのエンジニアに仕事を頼むとき、守る義務が増えました。

フリーランス法とは、フリーランスに仕事を頼む事業者の義務を定めた法律のことです。会社に属さずに働く人が、安心して仕事をできるようにするのが目的です。

政府広報オンラインによると、主な義務は次のとおりです。

対象となる取引発注する事業者の主な義務
すべての業務委託取引条件を書面やメールなどで明示する
従業員を使う発注者の業務委託受け取った日から60日以内に報酬を支払う
従業員を使う発注者の募集募集情報をうそや誤解のない形で出す
従業員を使う発注者の業務委託ハラスメント対策の体制をつくる
6か月以上の業務委託中途解除は原則30日前までに予告する

このほか、1か月以上の業務委託では、報酬の減額ややり直しなど7つの禁止行為があります。

SES営業が気をつけること

フリーランスを案件に入れるときは、単価・期間・支払い日などの条件を、メールでもよいので必ず文字で残しましょう。案件の終了を伝える時期も、契約期間に合わせて早めに決めておく必要があります。

契約終了の伝え方は、SESの契約終了メール例文も参考にしてください。

動向4:下請法が「取適法」に変わり、支払いのルールが厳しくなった

4つ目の動向は、2026年1月1日に、下請法が改正されて取適法になったことです。支払いの方法や、代金の決め方のルールが厳しくなりました。

取適法とは、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」の略称です。仕事を頼む会社が、立場の弱い受け手に不利な取引をしないよう定めた法律です。

政府広報オンラインによると、主な変更点は次の4つです。

  1. 手形払いの禁止:支払いに手形を使えなくなりました。支払日までに現金にしにくい電子記録債権なども禁止です。

  2. 一方的な代金決定の禁止:価格の相談に応じず、説明もせずに代金を決めることが禁止されました。

  3. 従業員数の基準の追加:資本金に加えて、従業員数でも対象かを判断します。役務提供委託などの基準は100人です。

  4. 呼び方の変更:「親事業者」は「委託事業者」、「下請事業者」は「中小受託事業者」になりました。

SES営業が気をつけること

SES企業どうしの再委託でも、資本金や従業員数などの条件に当てはまれば、取適法の対象になる場合があります。自社が頼む側・受ける側のどちらになるかを、取引ごとに確認しましょう。

受ける側にとっては、単価の相談をしやすくなる変化です。値上げの相談のしかたは、SESの単価交渉のタイミングと例文で解説しています。

動向5:多重下請構造に国の目線が向いている

5つ目の動向は、SES業界の多重下請構造に、国の目線が向いていることです。商流の深い取引ほど、条件が悪くなりやすいことが問題にされています。

多重下請構造とは、1つの仕事が何社も通って下へ流れていくしくみのことです。エンド(発注元)から元請け、一次請け、二次請けと流れます。

公正取引委員会は2022年6月、ソフトウェア業の約2万1,000社を対象にした実態調査の報告書を公表しました。報告書では、多重下請構造の中で、買いたたきや仕様変更への無償対応といった問題が起きることへの懸念が示されています。

偽装請負のリスクにも注意

商流が深くなると、現場で誰がエンジニアに指示を出しているのかが見えにくくなります。準委任契約なのに、発注者が直接エンジニアに指示を出すと、偽装請負と判断されるおそれがあります。

線引きは、偽装請負の判断基準とSES営業が避けたいNG行為で確認してください。

SES企業の今後:大手と中小で分かれる道

SES企業の今後は、会社の規模や商流の位置によって分かれると考えられます。大手は元請けに近い位置を強め、中小は専門分野と取引先の広さで勝負する流れです。

会社のタイプ強みこれからの課題
大手SIer・大手SES元請けに近く、案件が多い人材の確保、AIへの対応
中堅SES取引先と人材のバランスがよい商流を上げ、得意分野をつくる
小規模SES動きが早く、融通が利く商流の深さ、情報の少なさ

大手の顔ぶれは、SESの上場企業一覧と大手ランキングで確認できます。

SES営業会社が今から取るべき5つの備え

5つの動向をふまえると、SES営業会社が今から取るべき備えは次の5つです。上から順に、効果が大きく、すぐ始められるものを並べました。

  1. 商流を上げる:元請けやエンドに近い会社との取引を増やします。取適法や多重下請への目線の変化は、商流の浅い会社に追い風です。方法はSESの一次請け・二次請けの違いと商流を上げる方法にまとめています。

  2. 案件・人材の情報管理を効率化する:メールをExcelに写す作業を減らし、提案のスピードを上げます。浮いた時間を、商流を上げる営業に回します。

  3. 契約と支払いを法改正に合わせる:フリーランスとの取引条件を文字で残し、手形払いをやめます。条項の見直しにはSES基本契約書のテンプレートと条項チェックが使えます。

  4. AIを使えるエンジニアを増やす:自社エンジニアに、生成AIを使う経験が積める案件を優先して紹介します。提案の書き方も「何ができるか」を中心にします。

  5. 取引先(BP)を広げる:人材不足でも提案できるよう、他社の営業中人材を見られる取引先を増やします。探し方はSESパートナー募集企業の一覧と探し方を参考にしてください。

自分で始めるならこの順番

ツールを使わずに始めるなら、まずExcelで「取引先ごとの商流の位置」と「案件の単価」を一覧にしましょう。商流の深い取引先が多いとわかれば、どこから上流を開拓するかが見えてきます。

あわせて、フリーランスとの取引で条件を文字で残しているかを、担当者ごとに確認します。

チョータツで情報管理を効率化し、上流開拓に時間を使う

備えの2つ目「情報管理の効率化」は、ツールを使うと一気に楽になります。取引先が増えるほど、メールを読んで写す作業が営業の時間を奪うからです。

作業自分でやる場合チョータツを使う場合
BPの案件・人材の把握メールを読んでExcelに転記連携先の営業中案件・営業中人材がデータベースになる
自社の案件・人材の登録1件ずつ手入力AIが入力を手伝う
自社の情報を届けるBCCでメールを一斉送信メール配信機能でパートナーに配信

チョータツでできること

チョータツとは、SES営業の案件・人材を管理・共有するためのツールのことです。3,000社以上が使っており、無料で始められます。

  • 自社の案件・人材の情報を管理・共有できる(AIが入力を手伝う)

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる

  • パートナーへのメール配信機能がある

情報を集める作業にかかる時間が減れば、そのぶん元請けやエンドへの営業に時間を使えます。業界の変化に合わせて、営業の時間の使い方から変えていきましょう。

よくある質問

Q. SES業界に将来性はありますか?
需要は当面続く見込みです。情報サービス業の売上高は2024年に前年比5.5%増え、DX人材が足りない日本企業も85.1%あります。ただし、仕事の中身とルールは変わります。
Q. SES業界はAIでなくなりますか?
なくなるとは考えにくいです。決まった作業の案件は減る可能性がありますが、AIを使える人やAIを組み込める人への需要は増えると考えられます。
Q. SES業界の最近の動向で、法律に関わるものは何ですか?
2024年11月施行のフリーランス法と、2026年1月施行の取適法(改正下請法)が代表的です。取引条件の明示や支払いのルールが厳しくなりました。
Q. SES営業の今後はどうなりますか?
案件と人材をつなぐだけの営業は、ツールやAIに置きかわる部分が増えます。商流を上げる営業や、スキルを伸ばす提案ができる営業の価値が高まります。求められるスキルはSES営業の市場価値で整理しています。
Q. SES業界の大手はどう動いていますか?
大手は元請けに近い位置にいることが多く、人材の確保とAIへの対応が課題です。具体的な企業は、大手SIer一覧と売上ランキングで確認できます。
Q. ユーザー企業の内製化はSESに不利ですか?
一概に不利とは言えません。経済産業省はベンダー企業に内製化の支援・伴走を求めており、お客さまの社員と一緒に作れる人材の出番は残ります。

まとめ

  • SES業界の需要は当面続くが、仕事の中身と取引のルールが変わる

  • 動向は、人材不足、生成AI、フリーランス法、取適法、多重下請構造への目線の5つ

  • 生成AIを活用する方針の日本企業は49.7%。決まった作業の案件は減り、AIを使える人の需要が増える

  • フリーランス法と取適法で、条件の明示や支払いのルールが厳しくなった

  • 備えは、商流を上げる・情報管理の効率化・契約の見直し・AI人材の育成・取引先の拡大の5つ

※ この記事の法律に関する内容は、2026年9月時点の一般的な情報であり、法的助言ではありません。個別の取引は、弁護士などの専門家に確認してください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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