SESへの内製化の影響|IPA調査で見るユーザー企業の動きと、営業が取るべき打ち手5つ・売れる提案の形4つ

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

内製化とは?SESに関係する理由

内製化とは、システムの開発や運用を外部に任せず、自社の社員で行うことです。 これまで多くの企業は、システム作りをSIerにまとめて発注してきました。SIerとは、企業のシステムを設計・開発してまとめて納める会社のことです。

ユーザー企業とは、システムを実際に使う会社のことです。SESでは「エンド」とも呼びます。ユーザー企業が内製化すると、SIerへの発注が減り、その下で働くSES企業の仕事の流れも変わります。

SESに関係する理由は、仕事の流れ(商流)が変わるからです。商流とは、仕事がエンドからいくつもの会社を通って流れてくる経路のことです。内製化は、この経路の「入口」を動かします。

立場内製化の前内製化の後
ユーザー企業SIerにまとめて発注する中心は自社社員で作り、足りない所だけ外に頼む
SIer丸ごと作って納める内製の支援や、大きな基盤づくりに役割が広がる
SES企業SIerの下で作業を受けるエンドの内製チームに直接入る道が増える

内製化はどこまで進んでいる?IPAの調査データ

日本の内製化は「進めている企業が2割強、済んでいる企業が2割弱」の段階です。米国と比べるとまだ差があり、外部に頼る企業も多く残っています。

IPA(情報処理推進機構)とは、経済産業省が所管する、IT分野の調査や人材育成を行う独立行政法人です。IPAは毎年、企業のDXの取り組みを調べた「DX動向」を公表しています。ここでは2025年6月26日公表の「DX動向2025」の数字を使います(調査は2025年2〜3月)。

システム開発の内製化の状況(日本・米国)

回答日本(1,500社)米国(509社)
内製化を進めている22.3%46.4%
必要な部分は内製化済みなので、現在は進めていない16.7%37.1%
パッケージやSaaSを利用しているので、内製化は進めていない22.5%9.2%
外部開発を今後も利用予定であり、内製化は進めていない29.3%6.5%
その他9.3%0.8%

出典:IPA「DX動向2025」図表2-14

日本では「進めている」と「済んでいる」を合わせても39.0%です。米国は83.5%なので、日本の内製化はまだ伸びる途中だといえます。一方で、「外部開発を今後も使う」企業も29.3%あります。

大事なシステムほど外部委託がまだ多い

IPAは、会社の強みになる「コア事業/競争領域」のシステムを、どう作っているかも聞いています。日本は「外部委託による開発」が37.8%で一番多く、「内製による自社開発」は28.2%でした。米国は「内製による自社開発」が48.5%で一番多い結果です。

つまり日本では、大事なシステムを外部に任せている企業が多く、ここが内製化の次の対象になります。SES営業にとっては、今後もっとも動きが出やすい領域です。

内製化を進める企業の最大の悩みは「人」

内製化を進めている日本企業(334社)に課題を聞くと、上位は次のとおりでした。

内製化を進めるにあたっての課題回答率
人材の確保や育成が難しい82.3%
新しい技術への対応が難しい48.8%
内製化には利点も欠点もあるため、判断が難しい34.7%
開発量の増減への対応が難しい33.2%

出典:IPA「DX動向2025」図表2-16

8割以上が「人が足りない・育てられない」と答えています。「DX動向2026」(2026年7月16日公表)でも、DX人材の量の不足は85.5%でした。

内製化したい企業ほど、外部のエンジニアと教える力を必要としていることがわかります。

内製化でSESの仕事はどう変わる?減る仕事・増える仕事

内製化でSESの仕事は「なくなる」のではなく「中身が入れ替わる」と考えるのが現実的です。減るのは下請けの作業で、増えるのはエンドの近くで一緒に働く仕事です。

仕事の種類増える・減る理由
SIer経由の開発の下請け作業減りやすいエンドがSIerへの丸投げ発注を減らすため
エンドの内製チームに入る開発増えやすい社員だけでは人数が足りないため(課題1位82.3%)
新しい技術を教える・移す支援増えやすい新技術への対応が難しい企業が48.8%
繁忙期だけの増員増えやすい開発量の増減への対応が難しい企業が33.2%
パッケージ・SaaSの導入と運用続く内製しない企業が22.5%あるため

SIerとSES企業への影響の違い

SIerへの影響は、「丸ごと作る仕事」が減り、「内製を手伝う仕事」に変わることです。経済産業省は2025年5月28日に「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」を公表しました。この中で、ベンダー企業に内製化の支援・伴走を求めています。伴走とは、横について一緒に進めることです。

SES企業への影響は、どの商流にいるかで大きく変わります。SIerの二次・三次請けの作業が中心の会社は、仕事が減るおそれがあります。エンドと直接取引できる会社は、むしろ新しい窓口が開きます。

SIer側の変化は「SIerの将来性|AI・内製化で変わる仕事とSES営業への影響」でまとめています。刷新で出る移行・保守の案件は「2025年の崖のその後|SIer需要の変化とSES営業が狙う案件」で解説しています。

エンジニアに求められることの変化

内製化の現場で求められるのは、作れるだけでなく、社員と一緒に働き、教えられるエンジニアです。設計の考え方を説明する力や、手順を資料に残す力が評価されます。

営業は、スキルシートにこの点を書き足すと提案が通りやすくなります。たとえば「新人2名のコードレビューを担当」「運用手順書を30本作成」のような実績です。

内製化する企業に売れる提案の形4つ

内製化する企業に売れるのは、「人を出す」だけでなく「社員が自分でできるようになる」ところまで見せる提案です。相手の段階に合わせて、次の4つから選びます。

提案の形向いている相手契約・期間の例
① 混成チームへの常駐内製チームを作ったが人数が足りない準委任・6か月〜
② 技術移転つき常駐新しい技術を社員に身につけさせたい準委任・3〜12か月(卒業条件つき)
③ 立ち上げ期の短期支援これから内製チームを作る準委任・1〜3か月
④ 内製しない部分の受け皿大事な所だけ内製し、残りは外に出す準委任または請負・継続

① 混成チームへの常駐

混成チームとは、ユーザー企業の社員と外部のエンジニアが一緒に作るチームのことです。社員が方針を決め、外部エンジニアが開発の手を増やします。内製化を進める企業でもっとも多い入り方です。

例:小売業のA社が、アプリを内製するチームを社員4名で作った。開発量に人が追いつかず、SES企業からエンジニア2名が入って一緒に開発した。

② 技術移転つき常駐

技術移転とは、外部のエンジニアが持つ技術や手順を、お客さまの社員に引き継いで身につけてもらうことです。 一緒に開発しながら、コードレビューや勉強会で社員に教えます。「いつまでに、社員が何をできたら卒業か」を最初に決めるのがポイントです。

例:製造業のB社が、クラウドへの移行を社員だけでできるようにしたいと考えた。SES企業のエンジニア1名が6か月入り、手順書づくりと社員2名の育成まで担当した。

卒業条件は、提案書に次のような形で書きます。

時期社員ができるようになること確かめ方
2か月目手順書を見ながら環境を作れる社員1名が単独で検証環境を作る
4か月目障害の一次対応ができる訓練で社員が切り分けを行う
6か月目小さな改修を設計から行える社員が設計したものをレビューで合格

③ 立ち上げ期の短期支援

内製チームを作ったばかりの企業は、開発のルールや道具の選び方で迷います。経験のあるエンジニアが1〜3か月入り、開発の進め方の型を一緒に作る支援です。期間は短くても、その後の増員の相談につながりやすいのが特徴です。複数名で入るときの体制の組み方は「SESのチーム提案のやり方|複数名の体制の組み方と単価の出し方」が参考になります。

④ 内製しない部分の受け皿

内製化する企業も、すべてを社員で作るわけではありません。IPAの調査でも、会社の強みにならない「ノンコア」の領域では、パッケージやSaaSを使う企業が多い結果でした。社員は大事なシステムに集中し、既存システムの保守や運用は外に任せる形です。

SES営業は「内製化で空いた社員の穴」を埋める提案ができます。たとえば、社員が新しい開発に移ったあとの、古いシステムの保守要員です。

ヒアリングの質問は「内製化支援をSES営業で提案する方法|エンドに刺さる提案の型と例」で詳しく解説しています。

SES営業が取るべき打ち手5つ

内製化への備えは、今の取引先の予定を知ることから始めます。いきなり新しい営業先を探すより、今のエンドやSIerに聞くほうが早く、確かな情報が集まります。

  1. 自社の売上を「商流の位置」で分ける
    直近3か月の稼働を、エンド直・一次請け・二次請け以下に分けます。二次請け以下が半分を超えるなら、内製化の影響を受けやすい状態です。

  2. 今の取引先に内製化の予定を聞く
    エンドには「内製化の予定」、SIerには「エンドの発注の変化」を聞きます。質問の例は次の見出しに載せています。

  3. エンド直の窓口を1社ずつ作る
    内製化を進めるエンドは、SIerを通さずに外部エンジニアを探すことがあります。やり方は「SESのエンド開拓のやり方|元請け・直案件を取る7ステップ」を参考にしてください。

  4. 「教えられるエンジニア」をリストにする
    自社とパートナー企業のエンジニアから、育成やレビューの経験がある人を選びます。スキルシートに教えた実績を書き足します。

  5. 提案メニューに「卒業条件つき」の形を加える
    技術移転つき常駐のように、期間とゴールを決めたメニューを用意します。内製化を進める企業に「ずっと頼る」不安を与えないためです。

自社の商流の位置を数えるための表

商流の位置稼働人数の例内製化の影響
エンド直3名新しい相談が増えやすい
一次請け5名SIerの役割次第で変わる
二次請け以下12名下請け作業の減少を受けやすい

この例では20名のうち12名、つまり60%が二次請け以下です。この会社は、打ち手の2と3を優先すると効果が出やすくなります。

取引先の内製化の動きを見抜くサインと質問

内製化の動きは、求人・組織・発注の3か所に出ます。次のサインがあれば、営業から早めに声をかける価値があります。

内製化のサイン(チェックリスト)

  • 求人サイトで「社内SE」「内製開発エンジニア」を募集している

  • 「DX推進部」「デジタル戦略室」など、新しい部署を作った

  • 中期経営計画や採用ページに「内製化」「自社開発」と書いている

  • SIer経由の案件で「エンドの社員と一緒に作業」という条件が増えた

  • エンドの担当者から、クラウドや開発のやり方について質問を受ける

ヒアリングで使える質問例

  1. 今後2〜3年で、自社で作るシステムを増やすご予定はありますか?

  2. 内製チームは、今何名で、何名まで増やす予定ですか?

  3. 社員の方だけで難しいのは、人数と技術のどちらですか?

  4. 外部のエンジニアに、教える役割も期待されますか?

  5. 保守や運用など、今後も外に任せたい部分はどこですか?

エンドに直接出す提案書の構成は「エンド直案件の提案書の作り方|SESの体制提案の構成と見本」で紹介しています。

取引先への確認メールの例文

例文・テンプレート
件名:今後の開発体制についてのご相談(株式会社△△ □□)

株式会社〇〇
システム部 ◇◇様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。

来期に向けて、弊社の体制づくりを進めております。
そこで、御社の今後の開発体制について、
15分ほどお話を伺えないでしょうか。

・自社で開発する範囲を広げるご予定があるか
・外部のエンジニアに期待される役割(開発・教育など)

10月1日(木)〜10月9日(金)でご都合のよい日時を
いくつかお知らせいただけますと幸いです。

よろしくお願いいたします。

内製化の現場で気をつけたい指揮命令のルール

内製化の現場では、お客さまの社員が自社エンジニアに直接仕事の指示をしない形を守ることが大切です。社員と同じチームで働くほど距離が近くなり、この線を越えやすくなります。

指揮命令とは、仕事のやり方や働く時間について、具体的に指示を出すことです。 準委任契約で常駐する場合、指示は自社(受ける側)の責任者から出すのが原則です。お客さまの社員が直接指示すると、偽装請負と判断されるおそれがあります。

場面OKの例NGの例
仕事の割り振り自社の責任者がお客さまと合意して決めるお客さまの社員が毎日直接作業を割り振る
勤務時間契約で決めた範囲で自社が管理するお客さまが残業や休みを直接指示する
技術を教える契約で決めた育成の範囲で教える範囲外の作業を「ついでに」頼まれて受ける

線引きの基準は、厚生労働省の「37号告示」です。正式名は「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」です。現場での判断のしかたは「偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策」で確認できます。

チョータツで内製化の相談に早く応える

内製化の相談は、条件に合う人を早く出せるかで決まることが多いです。自社のエンジニアだけでそろわないとき、パートナー企業から探す手間を減らせるのがチョータツです。

チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

やること自分でやる場合チョータツを使う場合
教えられる人を探すパートナーに1社ずつメールで聞く他社と連携し、他社の営業中人材をデータベースで探す
案件の条件を残すExcelやメールに散らばる案件・人材の情報をまとめて管理・共有する
提案をお知らせする1通ずつメールを送るパートナーへのメール配信機能を使う
情報を入れる手で入力するAIが入力を手伝う

内製化支援では、「リーダー1名は自社、メンバーはパートナーから」のようにチームで入ることもあります。連携できるパートナーが多いほど、チームを組みやすくなります。

よくある質問

Q. 内製化が進むとSESの仕事はなくなりますか?
なくなるより、中身が入れ替わると考えるのが現実的です。SIer経由の下請け作業は減りやすい一方、エンドの内製チームに入る仕事は増えやすくなります。内製化を進める企業の82.3%が人材の確保や育成に悩んでいます(IPA「DX動向2025」)。
Q. 日本企業の内製化はどのくらい進んでいますか?
IPA「DX動向2025」では、「内製化を進めている」が22.3%、「必要な部分は内製化済み」が16.7%でした。合わせて39.0%で、米国の83.5%より低い水準です。
Q. 内製化はSIerにどんな影響がありますか?
丸ごと作って納める仕事が減り、内製の支援や伴走へ役割が広がります。経済産業省も2025年5月28日のレポートで、ベンダー企業に内製化の支援・伴走を求めています。
Q. 内製化する企業にSESはどんな提案ができますか?
混成チームへの常駐、技術移転つき常駐、立ち上げ期の短期支援、内製しない部分の受け皿の4つが基本です。どの形でも、期間とゴールを決めて示すと受け入れられやすくなります。
Q. 内製化の現場に常駐させるとき、偽装請負にならないか心配です。
準委任契約では、お客さまの社員が自社エンジニアに直接仕事の指示をしない形にします。仕事の割り振りや勤務時間は、自社の責任者を通して決めるのが原則です。
Q. SESエンジニアには内製化でどんな影響がありますか?
作るだけでなく、社員と一緒に働き、教えられる力が求められるようになります。営業は、レビューや育成の経験をスキルシートに書き足すと提案が通りやすくなります。

まとめ

  • 内製化とは、システムの開発や運用を外部に任せず、自社の社員で行うこと

  • 日本は「内製化を進めている」22.3%、「内製化済み」16.7%で、合わせて4割弱(IPA「DX動向2025」)

  • 大事なシステムは「外部委託による開発」が37.8%で最多。ここが内製化の次の対象になる

  • 内製化を進める企業の82.3%が「人材の確保や育成が難しい」と回答している

  • SIer経由の下請け作業は減りやすく、エンドの内製チームに入る仕事は増えやすい

  • 売れる提案は、混成チーム・技術移転つき常駐・短期の立ち上げ支援・内製しない部分の受け皿の4つ

  • 打ち手は、商流の位置を数える→取引先に聞く→エンド直の窓口を作る→教えられる人をそろえる→卒業条件つきのメニューを作る

  • 常駐では、お客さまの社員が直接指示しない形を守る

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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