SIerの将来性はある?生成AI・内製化で変わる仕事と、SES営業が営業先を組み替える5ステップ
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
SIerの将来性はある?結論は「なくならないが、中身が変わる」
SIerの将来性はあります。ただし、今までと同じ売り方のままでは、仕事が減る分野があります。SES営業にとって大事なのは、「SIerが伸びるか」より「SIerのどの仕事が伸びるか」です。
SIer(エスアイヤー)とは、企業のシステムを企画・設計・開発・運用まで請け負う会社のことです。 System Integrator(システムを組み立てる会社)の略です。
人月(にんげつ)とは、1人が1か月働く作業量の単位のことです。 SIerの多くは「何人が何か月働くか」で見積もり、売上を立ててきました。これを人月ビジネスと呼びます。
SES企業の多くは、このSIerから案件を受けています。つまりSIerの人月の仕事が変われば、SES企業に来る案件も変わります。SIerとSESの関係は「SIerとSESの違い|商流の位置と営業先の見分け方5つ」で詳しく解説しています。
「SIerはやばい」「なくなる」と言われる理由4つ
「SIerはやばい」と言われる理由は、主に4つです。どれも「人月で人を多く出すほど売上が上がる」仕組みを弱める変化です。
| 理由 | 何が起きているか | SES企業への影響 |
|---|---|---|
| 生成AIの普及 | コードやテスト、資料をAIが下書きする | 同じ仕事に必要な人数が減りやすい |
| ユーザー企業の内製化 | 発注元が自社でエンジニアを抱える | SIerへの丸投げ発注が減る分野が出る |
| クラウド・SaaSの普及 | 一から作らず、既製のサービスを使う | 大規模な新規開発の案件が減りやすい |
| 多重下請けへの目線 | 何社も間に入る構造が問題視される | 下の階層ほど単価と案件が不安定になる |
内製化とは、システムの開発や運用を外に任せず、自社の社員で行うことです。 生成AIとは、文章やプログラムなどを自動で作るAIのことです。
多重下請けとは、仕事が元請けから二次請け・三次請けへと何社も通って流れる構造のことです。
それでもSIerの需要が続く理由:公的データで見る
公的データを見ると、IT投資とIT人材の需要は今も伸びています。「SIerがなくなる」というほど、仕事の総量は減っていません。
| データ | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 情報サービス業の売上高(2026年7月分) | 約2兆9,453億円、前年同月比8.2%増 | 総務省 サービス産業動態統計 |
| 同上の連続増加 | 52か月連続の増加 | 同上(JISAの集計資料) |
| DXを進める人材の「量」が足りない企業 | 85.5% | IPA「DX動向2026」 |
| AIを導入している大企業(従業員1,001人以上) | 8割近く | IPA「DX動向2026」 |
2つのポイントがあります。1つ目は、売上が4年以上伸び続けていることです。IT投資の「総額」は減っていません。
2つ目は、ユーザー企業が人材不足のままだということです。内製化したくても、自社だけでは人が足りません。そのため、外部の力を借りる需要は残ります。
経済産業省は2018年に「DXレポート」を出しました。古いシステムを放置すると、2025年以降に最大で年12兆円の損失が出るおそれがあるという内容です。古いシステムの作り直しは今も続いています。その後の動きは「2025年の崖のその後|SIer需要の変化とSES営業が狙う案件」で解説しています。
生成AIでSIerの仕事はどう変わる?減る工程・増える工程
生成AIで減りやすいのは、手順が決まった「作業」の工程です。増えるのは、AIを使いこなすための「上流」と「つなぐ」工程です。
| 工程 | 変化 | 理由 |
|---|---|---|
| 単純なプログラミング | 減りやすい | AIがコードの下書きを作れる |
| テスト・テスト仕様書づくり | 減りやすい | テストケースや手順書をAIが作れる |
| 設計書・議事録などの資料作成 | 減りやすい | IPAの調査でもAIの主な用途が文書作成・要約 |
| 要件定義・業務の整理 | 増えやすい | 何をAIに任せるかを決める人が要る |
| AI導入・データ整備 | 増えやすい | AIの前提となるデータの整理が必要 |
| クラウド移行・セキュリティ | 増えやすい | 古いシステムの作り直しとAI活用に必須 |
IPAの「DX動向2026」で、AIの用途の上位は「要約・翻訳・校正」82.5%でした。次いで「文書・レポート作成」80.5%です。効果は「業務効率化・迅速化」が91.6%と高い一方、「売上・利益向上」は3.9%です。
つまりAIは今、作業を速くする道具として使われています。作業の人数は減りやすく、AIを業務に組み込む人の需要は増える、という流れです。単価への影響は「SESへの生成AIの影響|人月モデルと単価の変化、営業の備え5つ」で詳しく扱っています。
内製化でSIerとユーザー企業の関係はどう変わる?
内製化で変わるのは、「全部SIerに任せる」から「中心は自社、足りない所だけ外部」への変化です。SIerの役割は、丸ごと作る会社から、内製を手伝う会社へ広がっています。
総務省の「情報通信白書(平成30年版)」では、日本のIT人材の72%がITベンダー側にいます。ITベンダーとは、システムを作って売る会社のことです。IPA「IT人材白書2017」の2015年の推計で、アメリカでは逆に65%がユーザー企業側です。経済産業省も2025年のレポートで「IT人材が過度にベンダー企業に偏っている」と指摘しています。ユーザー企業が自社でエンジニアを抱えるほど、この比率は少しずつ変わります。
SES営業から見ると、ここにチャンスがあります。内製化を進めるユーザー企業は、社員と一緒に働くエンジニアを求めています。SIerを通さず、エンド(発注元の企業)から直接声がかかる案件が出てきます。
内製化の影響と営業の打ち手は「SESへの内製化の影響|ユーザー企業の動きと営業の打ち手5つ」で解説しています。エンドに直接出す提案書は「エンド直案件の提案書の作り方|SESの体制提案の構成と見本」が参考になります。
SES営業への影響:発注が減る領域・増える領域
SES営業への影響は、「SIerからの案件が全部減る」ことではありません。減る領域に偏っている会社ほど影響が大きく、増える領域を持つ会社は伸びる、という二極化です。
| 領域 | これからの発注 | 営業の動き方 |
|---|---|---|
| 下流の開発・テストの大人数案件 | 人数が減りやすい | 1人あたりのスキルを上げて提案する |
| 古いシステムの保守・運用 | 当面は続くが縮む | 作り直し案件の情報を早めに聞く |
| クラウド移行・インフラ | 増えやすい | 資格・経験のある人材を前に出す |
| AI導入・データ整備の支援 | 増えやすい | 小さな支援から提案して実績を作る |
| エンド企業の内製化支援 | 増えやすい | SIerを通さないエンド直の窓口を作る |
ここで大事なのは、自社の売上がどの領域から来ているかを数字で知ることです。感覚で「うちは大丈夫」と考えるのが一番危険です。
SIerの案件に頼るSES企業が営業先を組み替える5ステップ
営業先の組み替えは、今の取引を切ることではありません。今の取引を守りながら、増える領域とエンド直の取引先を少しずつ足すことです。
売上を「取引先」と「領域」で分ける
直近6か月の売上を、取引先ごと・領域ごと(開発、テスト、保守、インフラ、AI・データなど)に分けます。「減る領域」の比率を計算する
下流の開発・テスト・保守の売上が全体の何%かを出します。計算例は下にあります。主要なSIerの担当者に、来期の動きを聞く
AI活用や内製化で、発注の中身がどう変わるかを聞きます。質問の例文は下にあります。増える領域で出せる人材を棚卸しする
クラウド・セキュリティ・データ・AIの経験がある人を一覧にします。足りなければ採用やBPの力を借ります。エンド直と一次請けの取引先を月1社ずつ増やす
既存のSIerとの取引は続けたまま、新しい窓口を少しずつ作ります。別のSIerと新しく取引するなら「SIerの協力会社登録の条件と流れ|審査で見られる7項目」で登録の流れを確認します。
計算例:「減る領域」の比率を出す
エンジニア20名が稼働し、月の売上が1,500万円のSES企業を例にします。
| 領域 | 月の売上 | 構成比 |
|---|---|---|
| SIer経由の開発・テスト | 750万円 | 50% |
| SIer経由の保守・運用 | 300万円 | 20% |
| クラウド・インフラ | 300万円 | 20% |
| エンド直の内製化支援 | 150万円 | 10% |
この会社の「減る領域」は、開発・テストと保守・運用の合計で70%(1,050万円)です。まずは1年で60%まで下げる、などの目標を置きます。
目標にすると、何をすべきかがはっきりします。たとえば150万円分を、クラウドやエンド直の案件に置き換える、という計画です。
例文:SIerの担当者に来期の動きを聞くメール
件名:来期の案件のご予定について(〇〇株式会社 営業部 山田)
〇〇株式会社
△△様いつもお世話になっております。〇〇株式会社の山田です。
来期の体制づくりの参考に、2点お聞かせいただけないでしょうか。
生成AIの活用で、開発やテストの体制に変化のご予定はありますか。
クラウド移行やデータ整備など、人を増やす予定の分野はありますか。
弊社でも、ご要望に合わせてエンジニアの育成を進めたいと考えています。
10月1日(木)以降で、15分ほどお時間をいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。
相手に「減らしますか」とは聞かず、「どこを増やしますか」と聞くのがコツです。相手も答えやすく、自社の育成方針にも使えます。
IT企業の将来性をどう見分ける?取引先SIerのチェックリスト
IT企業の将来性は、会社の大きさより「どの仕事で稼いでいるか」で見分けます。取引先のSIerを見直すときは、次の8項目を確認しましょう。
| チェック項目 | 将来性が高いサイン | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 商流の位置 | エンドから直接受けている | 担当者に聞く、案件メールの商流表記 |
| 事業の中身 | クラウド・データ・AIの案件がある | 公式サイトの事業紹介、案件の傾向 |
| 保守だけに偏っていないか | 新しい開発や移行の案件もある | 直近の依頼内容を振り返る |
| AIへの取り組み | 社内でAI活用を進めている | ニュースリリース、担当者の話 |
| 支払い条件 | 支払いサイトが安定している | 過去の入金実績 |
| 依頼の頻度 | 毎月、案件の相談が来る | 自社の記録で件数を数える |
| 単価の動き | 単価の見直しに応じてくれる | 過去の交渉の結果 |
| 担当者との関係 | 来期の計画を話してくれる | 例文のメールで聞いてみる |
商流とは、仕事がエンドから何社を通って自社に届くかという流れのことです。 自社の位置を上げる方法は「SESの一次請け・二次請けの違い|単価差と商流を上げる方法」を参考にしてください。
やってはいけないのは、1社のSIerに売上の半分以上を頼ったまま何もしないことです。その1社の方針が変わるだけで、多くのエンジニアが待機になるおそれがあります。取引をやめる判断が要るときは「BPとの取引停止の判断基準と伝え方|SESの連絡例文と注意点」の考え方が使えます。
営業先の組み替えをチョータツで楽にする方法
営業先の組み替えは、自分でもできます。案件メールを領域ごとにExcelに記録し、毎月の件数を数えれば、増える領域がわかります。ただ、メールを1件ずつ写す作業は時間がかかります。
もっと楽にするなら、チョータツを使う方法があります。チョータツは、SES営業の案件・人材を管理・共有するツールです。3,000社以上が利用し、無料で始められます。
他社と連携すると、連携先の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。 どんな領域の案件が流れているかを、1か所で見られます。
パートナーへのメール配信機能があります。 増える領域で出せる人材を、まとめてパートナーに届けられます。
AIが入力を手伝います。 案件や人材の登録の手間を減らせます。
情報を集める時間が減れば、その分をエンド直の開拓や、SIer担当者へのヒアリングに回せます。組み替えの「考える時間」を作るための道具として使ってください。
よくある質問
- Q. SIerは本当になくなるのですか?
- なくなる可能性は低いです。情報サービス業の売上は2026年7月分で52か月連続の増加です。ただし、下流の大人数の開発やテストは、AIで人数が減りやすくなります。
- Q. SIerにAIはどんな影響を与えますか?
- コードやテスト、資料の下書きをAIが作れるため、作業の人数が減りやすくなります。一方で、AI導入やデータ整備、要件定義の仕事は増えやすくなります。
- Q. SIerの未来で、SES企業はどう動けばいいですか?
- 自社の売上のうち「減る領域」が何%かを数字で出しましょう。そのうえで、クラウドやAI、エンド直の内製化支援の取引を少しずつ増やします。
- Q. 「SIerはやばい」と言われる一番の理由は何ですか?
- 人を多く出すほど売上が上がる人月の仕組みが、AIと内製化で弱まるためです。仕事の総量より、仕事の中身が変わることが本質です。
- Q. IT企業の将来性は何で判断すればいいですか?
- 商流の位置、クラウド・データ・AIの案件があるか、保守だけに偏っていないかの3点をまず見ます。取引先の見直しには、支払い条件や依頼の頻度も含めた8項目で確認します。
- Q. SIerとSESの違いは何ですか?
- SIerはシステム全体を請け負う会社、SESはエンジニアの技術力を提供する契約・事業です。SES企業の多くは、SIerから案件を受ける立場にあります。
まとめ
SIerはなくならないが、人月の仕事は「減る工程」と「増える工程」に分かれる
情報サービス業の売上は52か月連続で増えており、IT投資の総額は伸びている
AIで減りやすいのは単純なプログラミング・テスト・資料作成。増えるのはAI導入・データ整備・クラウド移行・内製化支援
SES企業は、自社の売上のうち「減る領域」の比率を数字で出すことから始める
既存のSIerとの取引は続けつつ、増える領域とエンド直の取引先を月1社ずつ足す
案件の流れをつかむ情報集めは、チョータツの連携で楽にできる
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
総務省統計局「サービス産業動態統計調査 結果の概要」
JISA(情報サービス産業協会)「情報サービス業売上高(2026年7月分速報)」
IPA(情報処理推進機構)「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイント(DX動向2026)」(2026年7月16日)
経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月)
経済産業省「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて(レガシーシステムモダン化委員会総括レポート)」(2025年5月28日)