SIerとSESの違い|商流・契約・工程の比較表と取引先の見分け方5つ
公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日
SIerとSESの違いは「商流の位置」と「売っているもの」
SIerとSESのいちばん大きな違いは、SIerはシステムの完成を売り、SESはエンジニアの作業を売ることです。売るものが違うため、商流の中での位置も変わります。
SIer(エスアイヤー)とは、お客さんのシステムを企画から開発・運用までまとめて請け負う会社のことです。システムインテグレーター(System Integrator)の略です。
SES(システムエンジニアリングサービス)とは、エンジニアの技術や作業をお客さんに提供する事業のことです。契約は多くの場合、準委任契約で結びます。
自社開発企業とは、自社のアプリやサービスを作り、利用者に売る会社のことです。お客さんから開発を頼まれて作る会社ではありません。
| 観点 | SIer | SES企業 | 自社開発企業 |
|---|---|---|---|
| 売っているもの | システムの完成(開発一式) | エンジニアの技術・作業 | 自社のサービス・製品 |
| 主な契約 | 請負(一部は準委任) | 準委任 | 利用契約・販売 |
| 商流での位置 | エンドの直下(元請け)が多い | 元請けの下(一次・二次)が多い | 商流の外(自分が発注者) |
| SES営業から見た相手 | 案件をくれる相手 | 案件・人材を交換する相手 | 人材を受け入れる相手 |
表の「主な契約」と「位置」は、よくある形です。実際には、SESもする中堅SIerや、元請けとしてエンドと直接取引するSES企業もあります。会社の名乗りではなく、案件ごとの位置と契約で見るのが営業の基本です。
商流の中でのSIerとSESの位置
商流の中でSIerは上流(エンドに近い側)、SES企業は中流から下流にいることが多いです。上にいる会社ほど、案件の情報が早く、単価の決定にも近くなります。
商流とは、システム開発の仕事がエンド(発注元)から、いくつもの会社を通って流れていく経路のことです。
| 位置 | 主な会社 | 営業にとっての意味 |
|---|---|---|
| エンド | システムを使う会社(銀行・メーカーなど) | 発注の出発点。直接取引できれば最も上流 |
| 元請け | 大手・中堅SIer | エンドから直接受ける。協力会社を募集する側 |
| 一次請け・二次請け | 中堅SIer・SES企業 | 元請けから受け、足りない人材をさらに集める |
| 最終の受け手 | 小規模なSES企業・フリーランス | 実際に作業するエンジニアを出す |
公正取引委員会は2022年6月の報告書で、ソフトウェア業の会社を「元請」「中間下請」「最終下請」に分けて調べました。資本金3億円以下の回答企業では、元請40.4%・中間下請38.2%・最終下請21.3%でした。
同じ報告書は、多重下請けが生まれる理由も挙げています。大きなプロジェクトでも、人手が要るのはピーク時だけという事情です。
元請けのSIerは、ピーク時の人手をSES企業から集めます。そのため、SIerとSES企業は競争相手というより、つながった取引先になりやすいのです。
→ 段ごとの単価の違いはSESの一次請け・二次請けの違い|単価差と商流を上げる方法で解説しています。
契約形態の違い:SIerは請負、SESは準委任が中心
SIerはエンドと請負契約、SES企業は上位の会社と準委任契約を結ぶことが多いです。契約の違いは、責任の重さと、単価の決まり方の違いにつながります。
請負契約とは、仕事を完成させることを約束し、その結果に報酬を払う契約のことです(民法632条)。完成した物が約束と違えば、直す責任などを負います。
準委任契約とは、完成ではなく、決められた作業を行うこと自体を約束する契約のことです(民法656条)。SESでは「月額いくら・精算幅140〜180時間」のように、作業の時間をもとに精算します。
| 観点 | 請負(SIerに多い) | 準委任(SESに多い) |
|---|---|---|
| 約束すること | システムの完成 | 決められた作業の実施 |
| 報酬の決まり方 | 見積もりの一式金額 | 月額+精算幅など |
| 作業の指示を出す人 | 受けた会社(SIer)の責任者 | 受けた会社(SES企業)の責任者 |
どちらの契約でも、お客さんがエンジニアに直接指示すると偽装請負になるおそれがあります。派遣との違いはSES契約と派遣契約の違い|指揮命令など営業の確認ポイント7つで整理しています。契約書の見分け方は準委任と請負の違い|SES・システム開発の契約書で見分ける6点にまとめています。
担当する工程の違い:SIerは上流、SESは開発・テスト・運用が多い
SIerは要件定義・設計とプロジェクト管理を担うことが多いです。SES企業は開発・テスト・運用の作業を担うことが多いです。工程の違いは、営業が提案する人材の選び方に直結します。
上流工程とは、お客さんの要望をまとめる「要件定義」や、システムの形を決める「設計」のことです。下流工程とは、プログラムを作る「開発」、動きを確かめる「テスト」、動かし続ける「運用・保守」のことです。
| 工程 | SIerの主な役割 | SES企業の主な役割 |
|---|---|---|
| 要件定義・基本設計 | お客さんと決める・まとめる | PMO(管理の補佐)などで入ることもある |
| 詳細設計・開発・テスト | 進み具合と品質を管理する | エンジニアを出して作業する |
| 運用・保守 | 契約をまとめ、体制を決める | 運用・監視・保守の作業に人を出す |
営業としては、SIerの案件では「どの工程の人か」を先に聞くのがおすすめです。同じ「Java経験5年」でも、設計ができる人とテスト中心の人では、合う案件がまったく違います。
独立系SIerとSESの違い
独立系SIerとSES企業の違いは、自社で開発を請け負う力(プロジェクトをまとめる力)があるかです。どちらも親会社を持たないことが多く、外から見ると似ています。
独立系SIerとは、メーカーや銀行などの親会社を持たないSIerのことです。親会社の案件に頼らず、業界を問わずに仕事を受けます。
SIerには、成り立ちで4つの種類があります。
| 種類 | どんな会社か | SES営業との関係 |
|---|---|---|
| メーカー系 | コンピューターメーカーの子会社 | 親会社の製品を使う案件の元請けになる |
| ユーザー系 | 銀行・商社などの情報システム部門が独立した会社 | 親会社グループの案件が中心 |
| 独立系 | 親会社を持たない会社 | 協力会社を広く募集しやすい |
| 外資系・コンサル系 | 海外IT企業やコンサル会社 | 上流工程やPMOの案件が多い |
独立系SIerとSESの境目はあいまいです。中堅の独立系SIerの多くは、請負の開発とSESの両方を行っています。そのため「独立系SIerだから請負だけ」とは決めつけず、案件ごとに契約形態を確認しましょう。
→ 種類別の会社名はSIerの種類別一覧|メーカー系・ユーザー系・独立系・外資系で確認できます。
客先常駐はSIerにもSESにもある
客先常駐は、SIerにもSESにもある働き方です。違いは、常駐先で誰が作業の指示を出すかにあります。
客先常駐とは、エンジニアが自社ではなく、お客さんの会社のオフィスで働くことです。
| 観点 | SIerの客先常駐 | SESの客先常駐 |
|---|---|---|
| 常駐する理由 | 請け負った開発をお客さんの設備で進めるため | お客さんのプロジェクトに作業を提供するため |
| 指示を出す人 | SIerのプロジェクトマネージャー | SES企業の責任者(お客さんではない) |
| チームの形 | SIerの社員がチームで入ることが多い | 1人〜数人で入ることが多い |
求職者向けの記事では「常駐ならSES」と書かれがちです。しかし営業の立場では、常駐かどうかでは取引先の種類は見分けられません。見るべきは、指示の流れと契約形態です。
取引先がSIerかSESかを見分ける5つのチェック
取引先候補がSIerかSESかは、公式サイトと公的な情報を10分ほど見ればだいたい見分けられます。次の5つを順に確認しましょう。
事業内容の言葉を見る:「受託開発」「システムインテグレーション」「一括請負」が中心ならSIer寄りです。「SES」「技術者派遣」「エンジニア支援」が中心ならSES寄りです。
主要取引先を見る:銀行・メーカーなどエンド企業の名前が多ければ、元請けに近いSIerです。取引先がSIerの名前ばかりなら、SES企業か下請けのSIerです。
派遣の許可番号を見る:「派13-」のような許可番号があれば、派遣も行う会社です。SES中心の会社によくあります。許可は厚生労働省の人材サービス総合サイトで確かめられます。
パートナー募集ページの中身を見る:「一括請負の協力会社募集」ならSIer寄りです。「SES案件・要員の情報交換」ならSES企業の可能性が高いです。
開示資料を見る:上場企業なら、有価証券報告書の事業の内容や主要な顧客を読みます。未上場なら、gBizINFOで補助金・受注などの公的な記録を確認します。
| チェック | SIer寄りのサイン | SES寄りのサイン |
|---|---|---|
| 事業内容 | 受託開発・システムインテグレーション | SES・技術者派遣・エンジニア支援 |
| 主要取引先 | エンド企業の名前が多い | SIerの名前が多い |
| 派遣の許可 | ないことも多い | あることが多い |
| パートナー募集 | 請負の協力会社募集 | 案件・要員の情報交換 |
5つのうち3つ以上が同じ側なら、その会社はそちら寄りと考えてよいです。私たちのおすすめは、1と2を先に見ることです。この2つだけで、多くの会社は見当がつきます。
見分けた後の営業アプローチ
見分けた後は、相手の困りごとに合わせて持っていく話を変えると、返事が来やすくなります。
| 相手 | 相手の困りごと | 持っていく話 |
|---|---|---|
| 元請けのSIer | ピーク時の人手が足りない | 自社エンジニア・BP人材の提案、チーム単位の提案 |
| 下請けのSIer | 元請けから急に増員を頼まれる | すぐ動ける人材の情報、定期的な人材情報の配信 |
| SES企業 | 案件と人材の組み合わせが足りない | 案件と人材の交換、お互いの営業中情報の共有 |
元請けSIerの見分け方はSESの元請けとは|一次請けとの違いと元請け企業の見分け方で解説しています。募集している会社の探し方はSESパートナー募集企業の一覧と探し方7選にまとめました。
会社情報を調べる手順(自分でやる方法)
取引先候補の調べ方は、次の順番がおすすめです。公式サイト→公的サイト→本人への確認、の順で進めると、ムダな連絡が減ります。
公式サイトの会社概要を開く:事業内容・主要取引先・許可番号の3つを書き写す
国税庁の法人番号公表サイトで実在を確かめる:正式な社名と所在地が一致するかを見る
厚生労働省の人材サービス総合サイトで派遣の許可を確かめる:許可番号が有効かを見る
上場企業ならEDINETで有価証券報告書を読む:事業の内容と、売上の大きい取引先を見る
初回の連絡で商流を聞く:「エンドから数えて何社目の案件が多いですか」と数字で聞く
5番は、どんなに調べても最後に必要です。公開情報だけでは、案件ごとの商流の位置まではわからないからです。
派遣の許可の調べ方は、労働者派遣の許可番号を検索する方法|取引前の確認手順3つで画面の順に説明しています。
チョータツで取引先の案件・人材をまとめて管理する
取引先がSIerかSESかを見分けた後は、相手ごとに届く案件・人材の情報を見落とさないことが大切です。取引先が増えるほど、情報はメールやExcelに散らばります。
自分で管理するなら、取引先の一覧表に「種類(SIer/SES)」「商流の位置」「得意分野」の列を足しましょう。そのうえで、届いた案件・人材を取引先ごとに記録します。
もっと楽にするなら、チョータツが使えます。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件・人材の情報をまとめる | メールを読んでExcelに転記 | 案件・人材の情報を管理・共有。AIが入力を手伝う |
| SES企業の営業中情報を知る | 届く配信メールを1通ずつ確認 | 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化 |
| 自社の人材をSIerに届ける | BCCでメールを一斉送信 | パートナーへのメール配信機能で届ける |
チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。SIerからの案件とSES企業からの人材を同じ場所で見られるので、組み合わせを早く見つけられます。
よくある質問
- Q. SIerとSESと自社開発の違いを一言でいうと?
- SIerは「お客さんのシステムを作る会社」、SESは「エンジニアの作業を提供する会社」です。自社開発は「自分のサービスを作る会社」です。
- Q. SIerなのにSESもしている会社はありますか?
- あります。中堅の独立系SIerの多くは、請負の開発とSESの両方を行っています。会社の名乗りではなく、案件ごとの契約形態を確認しましょう。
- Q. SIerとSESの見分け方で、いちばん早い方法は?
- 公式サイトの「事業内容」と「主要取引先」を見る方法です。エンド企業の名前が多ければ元請けに近いSIer、SIerの名前が多ければSES企業か下請けのSIerです。
- Q. 客先常駐ならSESですか?
- そうとは限りません。SIerも請け負った開発のために客先に常駐します。違いは、常駐先で誰が作業の指示を出すかです。
- Q. SES企業がSIerと直接取引するには?
- SIerのパートナー募集ページから申し込むのが一般的です。会社の実績、エンジニアのスキル、取引できる契約形態をまとめた資料を用意しましょう。
- Q. SIerとSESで担当する工程は違いますか?
- 違うことが多いです。SIerは要件定義・設計と管理、SES企業は開発・テスト・運用の作業を担う傾向があります。
まとめ
SIerとSESの違いは、売っているもの(完成か作業か)と商流の位置
SIerは要件定義・設計と管理、SESは開発・テスト・運用の作業が多い
SIerは上流で案件をくれる相手、SES企業は案件・人材を交換する相手、自社開発企業は人材の受け入れ先
独立系SIerとSESの境目はあいまい。案件ごとに契約形態を確認する
客先常駐かどうかでは見分けられない。見るのは指示の流れと契約
事業内容・主要取引先・派遣許可・パートナー募集・開示資料の5つで見分け、相手に合わせて持っていく話を変える
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。契約形態の判断は、弁護士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日
参考資料(2026年9月28日確認)
公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書について」(2022年6月29日)
公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書(本文PDF)」(多重下請の理由と元請などの割合)
e-Gov法令検索「民法」(632条・656条)
総務省 政府統計の総合窓口「3911 受託開発ソフトウェア業」
国税庁「法人番号公表サイト」
経済産業省「gBizINFO」
厚生労働省「人材サービス総合サイト」
金融庁「EDINETについて」