2025年の崖のその後|公的資料で見るレガシー刷新の実態とSIer需要の変化、SES営業が狙う案件5種類

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

2025年の崖とは?

2025年の崖とは、古いシステムが足かせになって企業のDXが進まず、大きな経済損失が出るおそれを表した言葉です。経済産業省が2018年9月に公表した「DXレポート」で使われました。

DXレポートは、古いシステムの問題を放置した場合の損失を試算しました。2025年以降、最大で年12兆円の経済損失が出るおそれがあるとしています。「2025年」は、多くの古いシステムの保守や人材が限界を迎える時期の目安として置かれた年です。

よく出てくる用語

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を使って、会社の仕事の進め方や商売のやり方を変えることです。

  • レガシーシステムとは、長く使われて複雑になり、直すのが難しく、お金がかかるようになった古いシステムのことです。

  • メインフレームとは、銀行や大企業の基幹業務で昔から使われてきた、大型の専用コンピューターのことです。

  • モダン化とは、古いシステムを、今の技術で動く新しいシステムに作り直すことです。

経済産業省の2025年のレポートでは、レガシーシステムを「単に古いだけのシステムではない」と説明しています。技術が古い・大きく複雑になった・中身がわからない(ブラックボックス化)、といった状態が重なったものです。

2025年の崖は来たのか?その後の実態

「崖」は一度に来たのではなく、今も「坂道」として続いている、と見るのが正確です。2025年になっても、古いシステムを持つ企業は多く残っています。

経済産業省は2024年度に「レガシーシステムモダン化委員会」を作りました。2025年5月28日には、その議論をまとめた「総括レポート」を公表しています。調査は約4,000社に送られ、799社が答えました(2024年12月〜2025年2月)。

項目数字読み方
レガシーシステムを持つユーザー企業61%6割以上に古いシステムが残っている
メインフレームから別の仕組みへ移った企業52%残りの約半分はまだ移っていない
ベンダーの人材供給の充足率66%必要な人の3分の2しかいない
大規模システムの刷新を中期経営計画に書いた企業12%経営の計画に入っている会社は少ない

※ 経済産業省「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」(2025年5月)より。

大企業ほど古いシステムが残っている

レポートでは、中小企業よりも大企業のほうがレガシーシステムの保有率が高いとされています。大企業のシステムは大きく、作り直しに時間とお金がかかるためです。

大規模なシステムの作り直しは、ふつう数年がかりの計画になります。途中で問題が起きて計画を見直すと、さらに長くかかります。2025年を過ぎても移行案件が続いているのは、作り直しが長期化しやすいためです。

作り直しがなかなか進まない理由

レポートは、作り直しが「総じて難しい」と書いています。主な理由は次の4つです。

  1. 仕様がわからない:昔作ったシステムの中身が、誰にもわからなくなっている

  2. 今と同じ動きを求められる:「今のシステムと同じように動くこと」へのこだわりが強い

  3. 経営と現場の協力が弱い:費用や期間への理解が足りず、話が進まない

  4. 古い技術がわかる人が足りない:案件が重なり、古い技術の技術者が取り合いになっている

4つ目の「古い技術がわかる人の不足」は、SES営業にとって大事な点です。COBOLやメインフレームの経験者は、今も案件メールで指名されやすい人材です。

SIerの需要はどう変わったか

SIerの需要は減っていません。ただし、求められる仕事の中身が「作り直しの上流」と「移行の現場」に寄っています。SIerとは、企業のシステムを企画から開発・運用までまとめて請け負う会社のことです。

IT投資の総額は伸び続けている

総務省の「サービス産業動態統計調査」によると、情報サービス業の売上高は2026年7月分で約2兆9,453億円でした。前年同月比は8.2%増で、52か月連続の増加です(JISAの集計資料より)。

「2025年の崖」のあとも、企業はITにお金を使い続けています。統計は業種全体の売上なので、作り直し案件だけの金額はわかりません。ただ、移行・保守の案件メールが減っていないことは、現場の実感とも合います。

求められるのは「上流」と「移行」ができる人

レポートによると、ユーザー企業が必要とするIT人材に対し、ベンダー企業が出せる人は66%にとどまります。特に足りないのは、システム全体を設計する人(アーキテクト)やデータの専門家などの上流人材です。

上流人材とは、システムの企画・要件定義・全体設計など、工程の最初のほうを担当できる人のことです。

一方で、移行の現場では古い技術と新しい技術の両方がわかる人が求められます。たとえば「COBOLのプログラムを読んで、クラウドの新システムに置き換える」といった仕事です。

経済産業省はベンダーに「内製化の伴走」を求めている

レポートは、ユーザー企業にシステムの見える化と内製化を求めています。内製化とは、システムの開発や運用を外に任せず、自社の社員で行うことです。

ベンダー企業には、作り直しを速く進める技術の開発と、ユーザー企業の内製化を支えること(伴走)を求めています。「全部請け負って作る」から「一緒に作って教える」へ、SIerの役割が変わり始めています。

内製化の影響は「SESへの内製化の影響|ユーザー企業の動きと営業の打ち手」で詳しく解説しています。

SES営業が狙う案件5種類

SES営業が狙いやすいのは、現行調査・移行とテスト・旧システムの保守・パッケージ導入・内製化の伴走の5種類です。作り直しは何年も続くため、どの段階にも人が必要です。

案件の種類仕事の中身提案したい人材
① 現行調査・見える化古いプログラムを読み、仕様書を作り直す古い言語が読める人
② 移行・テストデータやプログラムを新システムへ移し、同じ動きか確かめる移行・テストの経験者
③ 旧システムの保守作り直しの間も、今のシステムを動かし続ける保守の経験者(ベテラン含む)
④ パッケージ・クラウド導入既製品のシステムやクラウドに乗り換える導入・設定の経験者
⑤ 内製化の伴走・PMOお客さんの社員と一緒に進め、教える上流経験のある中堅〜上級者

① 現行調査・見える化の案件

作り直しの最初は、今のシステムが何をしているかを調べる仕事です。レポートでも、仕様がわからないことが大きな壁とされています。

古い言語のプログラムを読み、設計書を作り直す仕事が出ます。案件メールでは「現行調査」「現行分析」「ドキュメント整備」などの言葉で出てきます。

② 移行・テストの案件

マイグレーションとは、古いシステムのプログラムやデータを、新しい仕組みへ移すことです。移したあと、同じ結果が出るかを確かめるテストも大量に必要です。

移行の現場は、人数が多く必要になりやすい工程です。テスト経験のあるエンジニアも提案しやすくなります。

③ 作り直しの間の旧システム保守

見落としやすいのが、新しいシステムができるまで、古いシステムを動かし続ける仕事です。新旧のシステムを同時に動かす期間を並行稼働といいます。

作り直しが数年かかれば、その間ずっと保守の人が要ります。長期で稼働が読みやすいので、待機を減らしたい営業には狙い目です。保守の案件の特徴は「保守開発とは?運用保守との違いと案件の特徴」で解説しています。

④ パッケージ・クラウド導入の案件

レポートでは、移行先として標準システムや標準パッケージ(既製品)を選ぶ企業の割合が高いとされています。一方で、今のシステムに手を加えている企業は、移行後も手を加える割合が高いとされています。

既製品を入れる案件でも、会社に合わせる設定や追加開発の仕事が出ます。案件票の読み分けは「スクラッチ開発とパッケージ開発の違い」が参考になります。

⑤ 内製化の伴走・PMOの案件

経済産業省がベンダーに求めている「内製化の伴走」は、エンドから直接声がかかりやすい仕事です。PMOとは、プロジェクトの進み具合や課題を管理し、責任者を支える役割のことです。

教えながら作れる人、お客さんの社員と話せる人が向いています。提案の型は「内製化支援をSES営業で提案する方法」で紹介しています。

移行・保守の案件を取る6ステップ

移行・保守の案件は「人材を棚卸しする→案件の言葉で探す→先回りで提案する」の順で取りにいきます。まずは自分でできる方法です。

  1. 自社とBPの人材を棚卸しする:COBOL・PL/I・メインフレーム・データ移行など、古い技術の経験者を洗い出す

  2. スキルシートに移行経験を書く:「何から何へ移したか」「件数や規模」「担当工程」を1行ずつ書く

  3. 案件メールを言葉で探す:「マイグレーション」「リプレース」「現行調査」「データ移行」などで探す

  4. 元請け・エンドに計画を聞く:刷新の予定と時期、今の保守体制を聞いておく

  5. 先回りで人材を提案する:案件が出る前に、移行経験者のスキルシートを送っておく。複数名で出すならSESのチーム提案のやり方|複数名の体制の組み方と単価の出し方を参考に体制で提案する

  6. 契約形態と期間を確認する:準委任か請負か、延長の可能性、責任の範囲を確かめる

元請け・エンドに刷新の計画を聞くメール例文

件名:システム刷新のご予定について(〇〇株式会社 営業部 △△)

いつもお世話になっております。〇〇株式会社の△△です。
2026年10月以降に、システムの刷新や移行のご予定はございますでしょうか。
弊社には、メインフレームやCOBOLの保守経験があるエンジニアがおります。
クラウドへの移行にも携わった者で、2026年11月から参画可能です。
現行調査・移行テスト・並行稼働中の保守など、一部の工程からでもお手伝いできます。
ご関心があれば、スキルシートをお送りいたします。

移行案件で気をつけたいこと

作り直しの案件は難しく、炎上(予定どおりに進まない状態)しやすい点に注意が必要です。レポートでも、発注側の「失敗ゼロ」への要求が高いことが課題として挙がっています。

移行案件の案件メールを受けたら、提案前に次の8点を上位に確認します。

#確認すること聞き方の例
1契約形態「準委任でしょうか、請負でしょうか」
2担当工程「現行調査・移行・テストのどこからですか」
3移行元と移行先「COBOLからJavaへ、オンプレからクラウドへ等ですか」
4現行の設計書「現行の設計書はどの程度残っていますか」
5並行稼働の期間「新旧を同時に動かす期間は決まっていますか」
6期間と延長「全体の予定と、延長の見込みはありますか」
7商流「エンドから数えて何社目でしょうか」
8体制「何名体制で、弊社から何名まで入れますか」

設計書がない現場や、並行稼働の期間が決まっていない現場は、延長も炎上も起きやすくなります。エンジニアの次の予定も早めに考えておきます。

契約の違いは「準委任と請負の違い」、危ない案件の見分け方は「炎上案件とは?意味と見分け方」で確認できます。エンドに直接提案するときの資料は「エンド直案件の提案書の作り方|SESの体制提案の構成と見本」が使えます。

チョータツで移行・保守の案件と人材をすぐ合わせる

移行・保守の案件は、「古い技術がわかる人」をすぐ出せる会社が有利です。チョータツを使うと、案件と人材の情報をまとめて管理し、チームで共有できます。

困りごと自分でやる方法チョータツでできること
古い技術の経験者がすぐ見つからないExcelやフォルダを探す人材の情報をまとめて管理・共有できる
BPの人材情報がメールに散らばるメールを1件ずつ探す他社と連携すると、他社の営業中人材をデータベースにできる
移行案件の情報を見逃す案件メールを目で追う他社と連携すると、他社の営業中案件もデータベースにできる
人材をまとめて紹介したい1社ずつメールを書くパートナーへのメール配信機能で送れる

チョータツは3,000社以上が使っており、無料で始められます。入力はAIが手伝うので、情報をためる手間も小さくなります。

まずは自社とBPの「古い技術がわかる人」を登録するところから始めてみてください。

よくある質問

Q. 2025年の崖は結局どうなったのですか?
一度に何かが起きたわけではありません。経済産業省の2025年のレポートでは、ユーザー企業の61%が今もレガシーシステムを持っています。作り直しは数年がかりで続いています。
Q. 2025年の崖で、SIerの需要は減りましたか?
減っていません。情報サービス業の売上高は、2026年7月分で52か月連続の増加です。ただし、上流や移行の仕事に需要が寄っています。
Q. COBOLなど古い技術のエンジニアは、今も需要がありますか?
あります。レポートでは、案件が重なって古い技術の技術者が足りなくなっていると書かれています。移行の現場では、古いプログラムを読める人が欠かせません。
Q. 2025年の崖の「12兆円」とは何ですか?
経済産業省が2018年の「DXレポート」で示した数字です。古いシステムの問題を放置すると、2025年以降に最大で年12兆円の経済損失が出るおそれがある、という内容です。
Q. SES企業は移行案件を請負で受けてもいいですか?
受けることはできますが、完成の責任を負うため、リスクが大きくなります。移行は計画が延びやすいので、準委任で工程の一部に入る形から始めるのがおすすめです。

まとめ

  • 2025年の崖は「一度に落ちる崖」ではなく、古いシステムの作り直しは今も続いている

  • 経済産業省の2025年のレポートでは、ユーザー企業の61%がレガシーシステムを持ち、ベンダーの人材供給は需要の66%

  • 情報サービス業の売上は52か月連続で増え、IT投資の総額は伸びている

  • SIerの需要は「作り直しの上流」と「移行の現場」に寄り、内製化の伴走も求められている

  • SES営業は、現行調査・移行とテスト・旧システムの保守・パッケージ導入・内製化の伴走の5種類を狙う

  • まずは自社とBPの古い技術の経験者を棚卸しし、先回りで提案する

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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