下請法をわかりやすく解説|2026年に取適法へ改正。改正点とSES企業の義務4つ・禁止行為11
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
下請法とは?読み方と目的をわかりやすく
下請法とは、発注する側の会社が、代金の支払いを遅らせたり、勝手に減らしたりしないよう定めた法律のことです。読み方は「したうけほう」です。正式な名前は「下請代金支払遅延等防止法」で、1956年(昭和31年)にできました。
目的は、立場の弱い受注側の会社を守ることです。大きな会社から仕事をもらう小さな会社は、不利な条件でも断りにくいからです。そこで、発注側に守るべきルールを決めています。
下請取引とは
下請取引とは、ある会社が受けた仕事や自社の仕事の一部を、別の会社に任せる取引のことです。SESでいえば、元請けから受けた開発の作業を、BPのエンジニアに手伝ってもらう取引が当たります。
「下請け業法」という法律はない
「下請け業法」という名前の法律はありません。下請取引を広く守るのは、下請法(今の取適法)です。建設工事の下請けは、別に建設業法が定めています。
2026年1月の改正で「取適法」へ|主な改正点の一覧
下請法は、2025年5月23日に改正法が公布され、2026年1月1日に施行されました。名前は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わりました。略して取適法(とりてきほう)と呼びます。
呼び方も変わりました。発注する側は「親事業者」から委託事業者に、受ける側は「下請事業者」から中小受託事業者になりました。「下請」という言葉が、上下関係を感じさせるためです。改正点ごとの営業の対応は下請法改正のポイント|2026年施行の取適法でSES営業が変える6点で詳しく扱います。
| 改正点 | 下請法(2025年まで) | 取適法(2026年1月から) |
|---|---|---|
| 対象を決める基準 | 資本金だけ | 資本金+従業員数 |
| 対象の取引 | 製造・修理・情報成果物・役務の4つ | 特定運送委託を加えた5つ |
| 手形での支払い | 条件つきで使えた | 禁止 |
| 単価の話し合い | 定めなし | 協議に応じない一方的な決定を禁止 |
| 発注内容の伝え方 | 書面(電子は相手の承諾が必要) | 書面かメールなどの電子の方法 |
| 取り締まる役所 | 公正取引委員会・中小企業庁 | 加えて事業を所管する省庁も指導・助言 |
この記事では、ふだん使われる「下請法」の呼び方も残しつつ、2026年以降のルールは取適法として説明します。
下請法(取適法)の対象になる取引と規模の基準
取適法の対象になるのは、決められた5つの取引で、かつ発注側と受注側の規模の差が基準に当てはまる場合です。契約の名前が準委任か請負かは関係ありません。
SESに関係する取引は2つ
5つの取引のうち、SESに関係するのは主に次の2つです。
情報成果物作成委託とは、プログラムや設計書などの作成を、ほかの会社に任せることです。
役務提供委託とは、自社が受けたサービスの提供を、ほかの会社に任せることです。システムの運用などが当たります。
法律の定義(第2条第3項)は作業する場所を問いません。そのため、客先に常駐してプログラムを作る場合も、情報成果物作成委託に当たることがあります。
規模の基準(資本金か従業員数)
プログラムの作成や情報処理(運用など)を任せる場合は、次のどれかに当てはまると対象です。
| 基準 | 発注側(委託事業者) | 受注側(中小受託事業者) |
|---|---|---|
| 資本金① | 3億円超 | 3億円以下(個人を含む) |
| 資本金② | 1,000万円超〜3億円以下 | 1,000万円以下(個人を含む) |
| 従業員 | 300人超 | 300人以下(個人を含む) |
それ以外の役務や成果物の作成は、別の区分です。資本金「5,000万円」「1,000万円」と従業員「100人」で判定します。自社とBPの組み合わせ別の判定例は、取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つで表にしています。
SES企業は発注側にも受注側にもなる
SES企業は、1つの案件の中で受注側と発注側の両方になります。客先から仕事を受け、その一部をBPや個人のエンジニアに任せるからです。
| 取引 | 自社の立場 | 取適法での意味 |
|---|---|---|
| 客先(元請け)→ 自社 | 受注側 | 条件を満たせば、自社が守られる |
| 自社 → BP | 発注側 | 条件を満たせば、自社が義務を負う |
| 自社 → 個人のエンジニア | 発注側 | 取適法に加え、フリーランス法の義務もかかる |
| エンドが自社で使うシステムの外注 | ― | 対象外になることが多い |
特に気をつけたいのがBPへの発注です。元請けとの取引では守られる側でも、BPとの取引では守る側になります。「うちは下請けだから関係ない」と考えると、知らないうちに違反することがあります。
個人のエンジニアとの取引は、取適法とフリーランス法の違い|SESで両方かかる取引を表で整理で整理しています。
発注側が守る義務4つ
取適法の対象になると、発注側(委託事業者)には4つの義務がかかります。SESの営業で言いかえると、「注文書を先に出す」「60日以内に払う」「遅れたら利息を払う」「記録を残す」の4つです。
| 義務 | 内容 | SESでの例 |
|---|---|---|
| 1. 発注内容の明示 | 発注したら直ちに、内容を書面かメールで伝える | 注文書を稼働開始前に送る |
| 2. 支払期日を定める | 受け取った日から60日以内で決める | 月末締め翌月末払いにする |
| 3. 遅延利息を払う | 期日に払わなければ年14.6%の利息 | 支払いが遅れた日数分を上乗せ |
| 4. 取引記録の作成・保存 | 取引の記録を作り、2年間保存する | 注文書・稼働報告・支払記録を残す |
1. 発注内容の明示|注文書は稼働の前に
発注したら、直ちに仕事の内容・金額・支払期日などを伝えます。2026年からは、相手の承諾がなくてもメールなどで伝えられます。
SESで多い「先に現場に入り、注文書は後から」は避けましょう。たとえば10月1日(木)からの稼働なら、9月30日(水)までに注文書を送ります。
2. 支払期日|60日以内の計算例
支払期日は、役務の提供を受けた日から60日以内で、できるだけ短く決めます。検収日や請求書を受け取った日から数えるのではありません。
毎月続くSESの準委任では、条件を満たせば月の締め日を「提供を受けた日」として数えられます(運用基準)。条件は、締め日までの分を払うと合意して明示し、金額か計算方法を示し、同じ種類の役務であることです。
| 支払条件(2026年10月分の稼働) | 支払日 | 判定 |
|---|---|---|
| 月末締め翌月末払い | 11月30日(月) | 問題ない |
| 月末締め翌々月15日払い | 12月15日(火) | 60日以内に収まる |
| 月末締め翌々月末払い | 12月31日(木) | 60日を超えるので見直し |
10月31日を1日目とすると、60日目は12月29日(火)です。翌々月末払いのBP取引があれば、最初に見直しましょう。支払サイトの計算例は、取適法の支払期日60日とSESの支払サイト|計算例と手形禁止にまとめています。
3. 遅延利息|年14.6%
支払期日までに払わなかった場合は、受け取った日から60日を過ぎた日から、年14.6%の遅延利息を払います。改正で、代金を減らした場合も利息の対象になりました。
4. 取引記録の作成・保存|2年間
発注した内容、受け取った日、支払った金額などを記録し、2年間保存します。SESでは、注文書・稼働報告書・請求書・振込の記録をまとめて残しておくと安心です。
禁止行為11の一覧
発注側には、11の禁止行為があります。相手の了解があっても、違反になることがある点に注意が必要です。
受領拒否
支払遅延(手形払いも含む)
減額
返品
買いたたき
購入・利用強制
報復措置
有償支給原材料の早期決済
不当な経済上の利益の提供要請
不当な給付内容の変更・やり直し
協議に応じない一方的な代金決定
なお、1番の受領拒否と4番の返品は、役務提供委託(運用など)には当てはまりません(第5条第1項)。プログラムなどの作成を任せる情報成果物作成委託では対象です。
それぞれの内容と、精算幅の控除・参画直前のキャンセル・契約途中の値下げなどSESの場面ごとの判定は、下請法の禁止事項11個|SESの減額・買いたたき・発注取消の例で表にしています。11番は改正で新しく加わった禁止行為です。BPから単価の相談が来たら、必ず話し合いの場を持ちましょう。進め方は取適法で単価交渉の協議拒否は違反?一方的な代金決定のNG例と対処法で解説しています。
相殺は下請法違反になる?
代金から契約にない金額を差し引く(相殺する)と、減額として違反になるおそれがあります。たとえば、振込手数料を代金から差し引く運用です。取適法の施行にあわせて運用基準が見直されました。振込手数料を受注側に負担させることは、合意があっても減額として扱われます。
一方、注文書で決めた精算幅どおりの控除は、減額には当たらないと考えられます。支払いから差し引かれたときの受注側の対応は、下請法の相殺・減額は違反?SESで支払いから差し引かれた時の対応で解説しています。
でんさい(電子記録債権)で払ってもよい?
電子記録債権(でんさい)とは、手形の代わりに電子的に記録してやりとりする、お金を受け取る権利のことです。取適法では、支払期日までに満額を現金にしにくい電子記録債権や一括決済方式での支払いが禁止されました。
SESの支払いは、銀行振込などの現金にそろえるのが一番安全です。
違反するとどうなる?管轄と罰則
取適法を取り締まるのは、公正取引委員会と中小企業庁です。改正で、業界を所管する省庁(ITなら経済産業省など)も、指導や助言ができるようになりました。
違反すると、次のような対応を受けることがあります。
公正取引委員会からの勧告(違反をやめ、相手の不利益を元に戻すよう求められる)
公正取引委員会や中小企業庁、所管する省庁からの指導・助言
発注内容を明示しない、記録を作らない場合などは50万円以下の罰金
受注側として違反を受けたときの手順
自社が受注側で、客先や元請けから不当な扱いを受けた場合は、次の順で動きます。
事実を記録する:注文書、メール、支払日、差し引かれた金額を保存します。
契約書を確認する:支払期日や精算の決まりが、どう書かれているかを見ます。
相手に書面で確認する:「〇月分の支払いが△円少ない理由を教えてください」と聞きます。
窓口に相談する:公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に相談します。相談を理由にした取引停止は、報復措置として禁止されています。窓口の選び方は下請法の相談窓口はどこ?SESが取引先の違反を申告する手順で解説しています。
下請法(取適法)の条文の調べ方
条文は、デジタル庁が運営するe-Gov法令検索で無料で読めます。取適法で検索すると、2026年1月1日に施行された改正後の条文が表示されます。
改正で条文の番号が変わったので、古い解説を読むときは注意が必要です。
| 内容 | 下請法の条文 | 取適法の条文 |
|---|---|---|
| 支払期日 | 第2条の2 | 第3条 |
| 発注内容の明示(書面の交付) | 第3条 | 第4条 |
| 禁止行為(遵守事項) | 第4条 | 第5条 |
| 遅延利息 | 第4条の2 | 第6条 |
| 取引記録の作成・保存 | 第5条 | 第7条 |
制度の解説は、公正取引委員会の取適法のページがわかりやすいです。公正取引委員会・中小企業庁の「中小受託取引適正化法テキスト」も役立ちます。営業が読むべき箇所は公正取引委員会の下請法テキスト|SES営業が読む10か所と違反事例8で案内しています。
取適法への対応を自社で進める手順
取適法への対応は、BPの一覧づくりから始めて、注文書と支払条件を直す順に進めます。
BPの一覧を作る:直近6か月に発注したBPと個人のエンジニアを書き出します。
規模を確認する:資本金と従業員数をメールで聞き、返事を保存します。
対象の取引に印をつける:規模の基準で、対象になる取引を決めます。
注文書と支払条件を直す:支払期日を60日以内にし、手形をやめ、振込手数料は自社負担にします。
営業にルールを伝える:「注文書は稼働前」「単価相談は必ず協議して記録」を社内で共有します。
判定に迷う取引が多い場合は、すべてのBP取引を対象と考えて運用するのも1つの方法です。担当者ごとの判断ミスを防げます。
2の手順でBPに規模を聞くときは、次のメールが使えます。
件名:【ご確認】取適法への対応に伴う御社情報のご確認 株式会社〇〇 □□様 いつもお世話になっております。株式会社△△の××です。 取適法(2026年1月施行)に沿って発注するため、 次の2点を10月16日(金)までにご返信いただけますか。 1. 資本金の額(2026年10月1日時点) 2. 常時使用する従業員の数(おおよそで構いません) いただいた情報は、発注条件の確認のためだけに使います。
チョータツで案件の条件確認と共有を楽にする
取適法への対応で手間がかかるのは、案件ごとの条件を正しく把握し続けることです。単価・精算幅・支払期日がメールやExcelに散らばると、注文書と実際の運用がずれやすくなります。
| 場面 | 自分でやる場合 | チョータツを使う場合 |
|---|---|---|
| 案件の条件を確認する | メールやExcelを探す | 案件情報を1か所で管理し、提案前に確認 |
| チームで共有する | 担当者ごとにファイルがばらばら | 案件・人材の情報をチームで共有 |
| 情報を入力する | 1件ずつ手で転記 | AIが入力を手伝う |
| BPに情報を届ける | BCCでメールを一斉送信 | メール配信機能でパートナーに配信 |
チョータツは、3,000社以上が使うSES営業向けの案件・人材の管理・共有ツールです。他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベースにできます。無料で始められます。
ただし、取適法の判定や注文書の作成そのものは、自社で行う必要があります。チョータツは、その前提になる案件の情報をそろえておくために使いましょう。
よくある質問
- Q. 下請法の読み方は?
- 「したうけほう」と読みます。2026年1月からの取適法は「とりてきほう」と読みます。
- Q. 下請法と取適法は別の法律ですか?
- 同じ法律です。下請法を改正し、名前を変えたものが取適法です。2026年1月1日から、取適法のルールが使われています。
- Q. SESの準委任契約にも下請法(取適法)は適用されますか?
- 適用されることがあります。契約の名前ではなく、仕事の中身と会社の規模で判断します。BPに開発や運用を任せる取引は、規模の条件を満たせば対象です。
- Q. 下請法(取適法)の義務は何がありますか?
- 発注内容の明示、60日以内の支払期日の設定、遅延利息の支払い、取引記録の作成・保存の4つです。
- Q. 代金からの相殺は下請法違反ですか?
- 契約にない金額を差し引くと、減額として違反になるおそれがあります。振込手数料を代金から差し引くことは、2026年1月からは相手と合意していても減額として扱われます(運用基準)。
- Q. でんさいで支払ってもよいですか?
- 支払期日までに満額を現金にしにくい電子記録債権での支払いは、取適法で禁止されています。銀行振込などの現金で払うのが安全です。
- Q. 下請法(取適法)の管轄はどこですか?
- 公正取引委員会と中小企業庁です。改正で、業界を所管する省庁も指導・助言ができるようになりました。
まとめ
下請法は2026年1月1日に改正され、取適法(中小受託取引適正化法)に名前が変わった
対象は取引の中身と規模で決まる。資本金に加えて従業員数の基準ができた
発注側の義務は、明示・60日以内の支払期日・遅延利息・記録保存の4つ
禁止行為は11。協議に応じない一方的な代金決定と、手形払いが新たに禁止された
SES企業は発注側にも受注側にもなる。まずはBPへの発注を点検する
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)」(第2条 定義、第3条 支払期日、第4条 明示、第5条 遵守事項、第6条 遅延利息、第7条 書類の保存、第14条 罰則)
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」(成立日・公布日・施行日、改正のポイント)
公正取引委員会「取適法の概要」(委託事業者の義務・禁止行為)
公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(振込手数料の扱い)
e-Gov法令検索「取適法第六条第一項及び第二項の率を定める規則」(遅延利息 年14.6%)、「取適法第七条の書類等の作成及び保存に関する規則」(保存期間2年)
e-Gov法令検索「取適法第二条第八項第一号の情報成果物及び役務を定める政令」(プログラム・情報処理は資本金3億円/従業員300人の区分)
公正取引委員会「取適法 よくある質問(Q&A)」(対象取引・義務の考え方)
公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト(令和7年11月)」
政府広報オンライン「2026年1月から下請法が「取適法」に!委託取引のルールが大きく変わります」