公正取引委員会の下請法(取適法)テキストはどこを読む?SES営業向けの目次と違反事例8つ
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
公正取引委員会の下請法テキストとは?いまは「取適法テキスト」
公正取引委員会の下請法テキストとは、公正取引委員会と中小企業庁が、発注する会社向けにルールを説明した公式の解説書のことです。2026年1月の改正後は、「中小受託取引適正化法テキスト」という名前で公開されています。
取適法とは、下請法を改正した法律の略称です。正式名は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。呼び名も変わり、発注する側は委託事業者、受ける側は中小受託事業者と呼びます。
「下請法 テキスト」で検索すると、改正前の古い版も出てきます。SES営業が社内で使うなら、令和7年11月版以降を選びましょう。改正前の版には、手形払いの禁止や従業員数の基準が載っていません。
| 資料名 | 何が書いてあるか | SES営業の使い道 |
|---|---|---|
| 取適法テキスト | 法律全体の解説(300ページ超) | 社内勉強会の元資料 |
| 運用基準 | 違反になる行為の具体例 | 「これは違反か」の判断 |
| よくある質問(Q&A) | 個別の疑問への回答 | 常駐・自社利用などの確認 |
| リーフレット・ガイドブック | 要点だけの短い資料 | 新人やBPへの共有 |
資料はどれも、公正取引委員会の取適法・振興法のページから無料でダウンロードできます(2026年9月確認)。
SES営業が読むべき箇所の目次(令和7年11月版)
SES営業が読むべきなのは、全体の約3割です。運送委託や原材料の支給など、SESと関係の薄い部分は飛ばしてかまいません。
ページ番号は、令和7年11月版PDFの目次に書かれた番号です(2026年9月確認)。改訂で変わることがあるため、PDFの目次で確かめてから読んでください。
| 優先 | 章・節(ページ) | 読む理由 |
|---|---|---|
| ◎ | 1(3)ア 委託事業者・中小受託事業者の定義(p.5〜) | 自社とBPが対象か判定する |
| ◎ | 1(3)エ 情報成果物作成委託(p.12〜) | 開発案件の扱いを知る |
| ◎ | 1(3)オ 役務提供委託(p.15〜) | 運用・保守案件の扱いを知る |
| ◎ | 1(4) 委託事業者の義務(p.36〜) | 注文書・支払期日・記録保存 |
| ◎ | 1(5) 委託事業者の禁止事項(p.56〜) | 減額・買いたたきなど11の禁止 |
| ○ | 1(6) 立入検査・勧告・罰則(p.116〜) | 違反したときの流れ |
| ○ | 2 第4条の明示の参考例(p.121〜) | 注文書のひな形づくり |
| ○ | 資料6 運用基準(p.171〜) | 違反事例の一覧 |
| △ | 資料19 勧告一覧(p.246〜) | 過去の勧告の傾向 |
| △ | 資料23 労務費の価格転嫁指針の概要(p.299〜) | 単価交渉の根拠 |
飛ばしてよい箇所は、製造委託・修理委託・特定運送委託の説明や、有償支給原材料の節です。SESの取引で出てくることは、まずありません。
禁止事項の節で、SESに関係が深い6つ
禁止事項の節(p.56〜)は、11項目で約60ページあります。SES営業は、まず次の6つを読みましょう。
| 禁止事項(ページ) | SESで起きやすい場面 |
|---|---|
| 支払遅延(p.60〜) | 翌々月末払い、エンドの入金待ち |
| 減額(p.72〜) | 精算幅の下回り以外の値引き |
| 買いたたき(p.85〜) | 相場より大きく低い単価の押しつけ |
| 不当な経済上の利益の提供要請(p.99〜) | 無償の追加作業、協賛金の要求 |
| 不当な給付内容の変更・やり直し(p.106〜) | 仕様変更による無償の作り直し |
| 協議に応じない一方的な代金決定(p.112〜) | BPの値上げ相談を無視する |
義務と禁止事項の全体像は、下請法をわかりやすく|取適法への改正点とSES企業の義務4つで表にしています。禁止事項をSESの場面で判定したいときは、下請法の禁止事項11個|SESの減額・買いたたき・発注取消の例が使えます。
SESの取引はテキストのどの区分に当たる?
SESの開発案件は「情報成果物作成委託」、運用・保守案件は「役務提供委託」に当たることが多いです。区分によって、対象になる会社の規模の基準が変わります。
情報成果物作成委託とは、プログラムやデザインなどの作成を、ほかの会社に頼むことです。テキストでは、プログラムを「電子計算機に対する指令」の組み合わせと説明しています。
役務提供委託とは、お客さんに提供するサービスの全部または一部を、ほかの会社に頼むことです。テキストでは、ソフトウェアの販売会社が顧客サポートを外部に頼む例が挙がっています。
| SESの案件 | 当たりやすい区分 | 注意点 |
|---|---|---|
| エンド向けの開発をBPに再委託 | 情報成果物作成委託 | 常駐でも対象になりうる |
| エンド向けの運用・保守をBPに再委託 | 役務提供委託 | 自社用の作業なら対象外 |
| 自社の社内システムの保守を外部へ | 対象外になりやすい | 「自ら用いる役務」の扱い |
| 自社の顧問弁護士・会計士との契約 | 対象外 | Q&A Q32で説明あり |
「常駐だから対象外」は通用しない
公正取引委員会のQ&A(Q29)では、客先に常駐してコーディングする契約が取り上げられています。回答は「コーディング作業はソフトウェアの作成行為そのもの」で、情報成果物作成委託に当たるというものです。
つまり、準委任で常駐する契約でも、中身が販売用ソフトウェアのコーディングなら対象になりえます。自社とBPの規模で対象かどうかを判定する方法は、取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つをご覧ください。
運用基準の違反事例のうち、SESに関係する8つの要約
運用基準には、プログラム作成などの違反事例が番号付きで載っています。そのうち、SESの取引に近いものを8つ選んで要約しました(2026年9月確認)。
運用基準とは、公正取引委員会が「どんな行為が違反になるか」を示した判断の目安のことです。テキストの資料6にも全文が入っています。
| 事例番号 | 禁止事項 | 事例の要約 |
|---|---|---|
| 1-7 | 受領拒否 | 仕様変更を理由に、当初の仕様どおり作ったプログラムを受け取らない |
| 1-8 | 受領拒否 | 発注元の仕様変更などを理由に、完成したホームページ等を受け取らない |
| 2-6 | 支払遅延 | プログラムの検査に3か月かけ、受け取りから60日を超えて払う |
| 2-8 | 支払遅延 | ユーザーからの入金が遅れたことを理由に、期日に払わない |
| 3-11 | 減額 | 業績悪化で予算が減ったとして、ゲームのデザイン等の代金を減らす |
| 3-12 | 減額 | 自社の一方的な仕様変更で納期が遅れたのに、遅れを理由に減額する |
| 3-14 | 減額 | 顧客がプログラムの一部をキャンセルしたとして、代金から差し引く |
| 3-15 | 減額 | 役務提供委託で、単価の引き下げを過去の分までさかのぼって適用する |
SES営業の現場に置きかえると
事例をSESの取引に置きかえると、次のような場面になります。どれも「自社の都合をBPに押しつける」形です。
エンドの入金が遅れたので、BPへの支払いも待ってもらう:事例2-8と同じ形です。BPへの支払期日は、エンドの入金と関係なく守ります。
エンドから単価を下げられたので、BPの単価も先月分から下げる:事例3-15と同じ形です。単価の変更は、合意した日より後の分から適用します。
エンドが一部の機能をやめたので、BPへの代金を減らす:事例3-14と同じ形です。契約で決めた代金は、BPに責任がなければ減らせません。
支払期日の数え方は、取適法の支払期日60日とSESの支払サイト|計算例と手形禁止で詳しく解説しています。勧告を受けた会社の事例は、下請法違反のSES事例|買いたたき・減額と協議記録の残し方にまとめました。
テキスト・運用基準・Q&A・条文の使い分け
調べる順番は「テキスト→運用基準→Q&A→条文」がおすすめです。やさしい資料から読むと、細かい資料の意味もわかりやすくなります。
テキストで全体をつかむ:該当する節を読み、自社の取引がどの区分か確かめます。
運用基準で具体例を見る:似た違反事例がないか、禁止事項ごとに探します。
Q&Aで個別の疑問を確かめる:常駐、自社利用、支払方法など、迷いやすい点を調べます。
条文で言葉を確かめる:社内規程や契約書に書くときは、e-Gov法令検索で最新の条文を確認します。
「下請法 ガイドライン」で検索する人も多いですが、公正取引委員会が出している判断の目安は運用基準です。ガイドラインと呼ばれる資料には、中小企業庁の業種別の「取引適正化ガイドライン」などもあります。SESの取引では、まず運用基準を見れば足ります。
条文の番号は改正で変わった
改正で、条文の番号が変わった箇所があります。たとえば、禁止事項は旧下請法の第4条から、取適法では第5条に移りました。古い資料の条文番号をそのまま契約書に書かないよう注意しましょう。
社内勉強会で使える確認テスト5問
テキストを読んだあとは、短いテストで理解を確かめると定着します。公式のテスト問題集は見当たらないため(2026年9月確認)、SES営業向けに5問作りました。
| 問題 | 答え | 根拠の箇所 |
|---|---|---|
| 1. 客先常駐のコーディングは、常駐なので対象外である | × | Q&A Q29 |
| 2. エンドの入金が遅れたら、BPへの支払いも遅らせてよい | × | 運用基準 事例2-8 |
| 3. 単価の引き下げに合意したら、先月分から適用してよい | × | 運用基準 事例3-15 |
| 4. BPから値上げの相談があっても、話し合わずに据え置いてよい | × | 禁止事項(協議に応じない代金決定) |
| 5. 取適法では、手形での支払いは禁止されている | ○ | 取適法リーフレット |
5問のうち1問でも間違えた人がいたら、該当する節を一緒に読み直しましょう。テストのあとに「エンドから値下げを言われた。BPにどう伝えるか」を2人1組で演じると、知識が行動に変わります。進め方はSES営業のロープレのやり方|場面別シナリオ6つと評価シートを参考にしてください。単価の話し合いの進め方は、取適法で単価交渉の協議拒否は違反?一方的な代金決定のNG例と対処法で解説しています。
下請けいじめの相談窓口と使い方
BPとして不当な扱いを受けたときは、取引かけこみ寺か公正取引委員会に相談できます。公正取引委員会・中小企業庁などに違反を知らせたことを理由に、取引を減らしたり打ち切ったりするのは、報復措置として禁止されています。
取引かけこみ寺とは、中小企業庁が全国に置いている、取引の悩みの相談窓口のことです。旧名は「下請かけこみ寺」です。専門の相談員が無料で応じ、必要に応じて弁護士への無料相談もできます。
| 窓口 | できること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 取引かけこみ寺(中小企業庁) | 無料相談、弁護士相談、調停(ADR) | まず話を聞いてほしい |
| 公正取引委員会の情報提供フォーム | 匿名での情報提供 | 名前を出さずに知らせたい |
| 公正取引委員会へのインターネット申告 | 違反の申告 | 調査して対応してほしい |
| 中小企業庁の違反行為情報提供フォーム | 匿名での情報提供 | 名前を出さずに知らせたい |
公正取引委員会の情報提供フォームは、申告そのものではないと明記されています。調査を求めるときは、インターネットによる申告を使います(2026年9月確認)。申告の具体的な手順は、下請法の相談窓口はどこ?SESが取引先の違反を申告する手順で解説しています。
相談前に用意するもの
相談をスムーズに進めるには、事実がわかる資料をそろえておきます。
注文書・契約書:単価、支払期日、作業内容がわかるもの
やりとりの記録:減額や支払延期を伝えられたメール、議事メモ
請求書と入金記録:いつ、いくら払われたかがわかるもの
時系列のメモ:いつ、誰から、何を言われたかを1枚にまとめたもの
減額を求められた直後の対応は、SESの単価を下げたいと言われたら?減額交渉の対応6ステップを参考にしてください。
下請法(取適法)の管轄はどこ?
取適法は、公正取引委員会と中小企業庁が中心になって運用しています。改正で、事業を所管する省庁にも指導・助言の権限が加わりました。相談はどの窓口からでも始められます。
自分で管理する方法と、チョータツで楽にする方法
違反を防ぐいちばんの近道は、BPとの条件を案件ごとに記録し、発注前に見直すことです。テキストを読んでも、条件が散らばっていると確認しきれません。
自分でやる方法
Excelやスプレッドシートで、BP取引の台帳を作ります。最低限、次の列を用意しましょう。
BPの会社名と、資本金・従業員数(確認した日も書く)
案件名と、区分(開発か、運用・保守か)
単価、精算幅、支払期日(受け取りから何日か)
単価を変えたときの合意日と、適用開始日
協議の記録(議事メモの保存場所)
月に1回、支払期日が60日を超えていないか、合意日より前にさかのぼった単価変更がないかを点検します。
チョータツで楽にする方法
チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。案件の情報をチームで1か所にまとめられるため、提案や発注の前に条件を確かめやすくなります。
パートナーへのメール配信機能もあり、他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベースにできます。入力はAIが手伝います。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
よくある質問
- Q. 下請法のテキストは、どこでダウンロードできますか?
- 公正取引委員会の「取適法・振興法」のページから、無料でダウンロードできます。2026年9月時点の最新版は「中小受託取引適正化法テキスト(令和7年11月)」です。
- Q. 下請法の運用基準とQ&Aは、何が違いますか?
- 運用基準は、違反になる行為の考え方と具体例をまとめた判断の目安です。Q&Aは、個別の疑問に1問1答で答えた資料です。まず運用基準で似た事例を探し、細かい疑問をQ&Aで確かめます。
- Q. 下請法のパンフレットはありますか?
- あります。取適法リーフレットのほか、委託事業者向け・中小受託事業者向けのポイントリーフレットと、ガイドブックが公開されています。新人研修やBPへの共有には、短いリーフレットが使いやすいです。
- Q. SESの準委任契約でも、下請法(取適法)のテキストは関係ありますか?
- 関係あります。契約の名前が準委任でも、中身がプログラムの作成なら情報成果物作成委託に当たりえます。公正取引委員会のQ&A(Q29)でも、常駐してのコーディングは対象になりうると説明されています。
- Q. 下請けいじめを公正取引委員会に相談すると、相手にばれますか?
- 公正取引委員会の情報提供フォームは、匿名で使えます。まず相談だけしたい場合は、中小企業庁の取引かけこみ寺も無料で使えます。
- Q. 下請法の条文はどこで読めますか?
- e-Gov法令検索で、改正後の最新の条文を読めます。テキストの資料1にも法律の全文が入っています。
まとめ
下請法のテキストは、2026年1月の改正で取適法テキスト(令和7年11月版)に替わった
SES営業が読むのは、適用対象・義務・禁止事項の3か所と、運用基準の違反事例で足りる
開発は情報成果物作成委託、運用・保守は役務提供委託に当たりやすい。常駐でも対象になりうる
エンドの都合をBPに押しつける支払延期・減額・さかのぼり値下げは、運用基準の違反事例に近い
困ったら取引かけこみ寺や公正取引委員会の窓口に、資料をそろえて相談する
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
公正取引委員会・中小企業庁「中小受託取引適正化法テキスト(令和7年11月)」(目次、情報成果物作成委託、役務提供委託、委託事業者の義務・禁止事項、資料一覧)
公正取引委員会「取適法・振興法」(テキスト、ガイドブック、リーフレット、Q&A、勧告一覧)
公正取引委員会「取適法の運用基準」(違反行為事例 1-7、1-8、2-6、2-8、3-11、3-12、3-14、3-15)
公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(Q29 常駐して行うコーディング、Q32 弁護士・会計士等との契約)
公正取引委員会「取適法に関する調査・手続」(情報提供フォーム、インターネットによる申告)
公正取引委員会「情報提供フォーム」(匿名での情報提供、申告ではない旨)
中小企業庁「取引かけこみ寺」(無料相談、弁護士相談、ADR)
中小企業庁「違反行為情報提供フォーム」
公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)関係」(施行日、改正のポイント)
e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)」