下請法改正のポイント|2026年施行の取適法でSES営業が発注書・支払・単価交渉で変える6点

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

下請法の改正とは?いつから何が変わったか

下請法の改正とは、2026年1月1日に下請法が「取適法」へ変わったことです。名前・呼び方・対象・禁止事項がまとめて見直されました。

下請法とは、発注する会社が、立場の弱い受注側に代金の遅れや一方的な値下げをしないよう定めた法律のことです。正式な名前は「下請代金支払遅延等防止法」でした。

取適法とは、改正後の下請法の略称のことです。正式な名前は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。「中小受託取引適正化法」とも呼びます。

改正の日程

日付できごと
2025年5月16日改正法が国会で成立
2025年5月23日改正法が公布
2025年10月1日公正取引委員会が規則・運用基準を整備
2026年1月1日取適法として施行

「下請法の改正はいつから?」と聞かれたら、答えは2026年1月1日です。2026年9月時点では、すでに新しいルールで取引が動いています。

呼び方の変更

「下請」という言葉は、上下関係を感じさせるため使われなくなりました。社内の契約書やマニュアルも、新しい呼び方にそろえておくと混乱しません。

改正前(下請法)改正後(取適法)SESでの例
親事業者委託事業者BPへ仕事を出す自社
下請事業者中小受託事業者自社から仕事を受けるBP
下請代金製造委託等代金BPへ払う月額単価

改正前後の比較表|5つの改正ポイント

改正のポイントは、公正取引委員会が示す5つです。SES営業に関係が深いのは、1〜3の3つです。

改正ポイント改正前(2025年まで)改正後(2026年1月から)
1. 対象の基準資本金だけ資本金+従業員数(300人・100人)
2. 支払手段手形も条件つきで使えた手形払を禁止。満額を受け取りにくい電子記録債権なども禁止
3. 代金の決め方定めなし協議に応じない・説明しない一方的な決定を禁止
4. 対象の取引製造・修理・情報成果物・役務の4つ特定運送委託を加えた5つ
5. 取り締まり公正取引委員会・中小企業庁事業を所管する省庁も指導・助言できる(面的執行)

このほか、実務で効く変更が2つあります。

  • 発注内容の伝え方:相手の承諾がなくても、メールなど電子の方法で伝えられるようになりました。

  • 遅延利息:支払いが遅れたときに加え、不当に減額したときも年14.6%の遅延利息がかかります。

従業員基準とは

従業員基準とは、資本金に加えて、会社が常時使用する従業員の数でも対象を決める基準のことです。プログラム作成や情報処理(運用など)の委託は、300人の区分で判定します。

たとえば、資本金1,000万円で社員350人のSES企業が、社員20人のBPに開発を出す場合です。改正前は資本金の基準に当たらず、対象外でした。改正後は従業員基準で対象になりえます。

自社とBPの組み合わせ別の判定は、取適法でSESの準委任は対象?適用条件と営業の変更点7つで表にしています。

変わらなかったルール

改正前から続くルールもあります。60日以内の支払期日、年14.6%の遅延利息、取引記録の2年保存などは、そのまま残っています。

法律の全体像は、下請法をわかりやすく|取適法への改正点とSES企業の義務4つで整理しています。ここでは、改正で何が変わり、営業が何を変えるかに絞って説明します。

SES企業は「守る側」と「守られる側」の両方になる

SES企業は、1つの案件の中で発注する側と受ける側の両方になります。取適法の義務を負うのは発注する側なので、立場ごとに見るポイントが違います。

取引自社の立場改正で見るポイント
自社 → BP委託事業者(守る側)注文書・支払手段・単価協議に応じる
元請け → 自社中小受託事業者(守られる側)協議を求める・減額や手形を断る
エンドが自社で使うシステムの外注 → 自社対象外になることが多い契約書と民法で身を守る
自社 → 個人のエンジニア委託事業者取適法に加えてフリーランス法も確認

エンド企業とは、システムを実際に使う発注元の会社のことです。エンドが自社で使うシステムを外に出す取引は、自社で作る力がない場合、取適法の対象外になることが多いです。一方、元請けSIerからの再委託は対象になりえます。

SES営業が明日から変える6点

SES営業が変えることは、発注前・発注時・支払い・単価・減額・相談の6点です。各項目で「BPへ出すとき」と「エンド・元請けから受けるとき」を分けて書きます。

1. 取引先台帳に「資本金」と「従業員数」を加える

取引先台帳に、資本金と常時使用する従業員数の欄を加えます。改正で従業員数も判定に使うため、資本金だけの台帳では判断できません。

  • BPへ出すとき:BPの従業員数をメールで聞き、返事を保存します。自社の従業員数も年に1回は確認します。

  • エンド・元請けから受けるとき:相手の資本金と従業員数を調べます。自社が守られる側か分かれば、交渉の強さが変わります。

迷ったときは、公正取引委員会の取適法の適用対象の簡易診断が使えます。

2. 注文書はメールで、稼働開始の前日までに送る

改正で、発注内容は相手の承諾がなくてもメールなど電子の方法で伝えられるようになりました。注文書をすぐに出しやすくなったので、「稼働後に紙で送る」運用をやめましょう。

  • BPへ出すとき:10月1日(木)開始なら、9月30日(水)までに注文書をメールで送ります。単価・精算幅・支払期日・支払方法を必ず書きます。

  • エンド・元請けから受けるとき:注文書が届かないまま稼働が始まりそうなら、条件をメールで確認し、記録に残します。

注文書の記載事項は下請法の3条書面とは|SESの発注書・注文書の記載事項と例文で解説します。単価が決まらないまま稼働を始める場合は、SESで単価未定のまま参画するときの仮単価|取適法上の扱いを確認してください。

3. 支払手段から手形をなくし、支払サイトを60日以内にする

改正で手形払は禁止されました。支払期日までに満額の現金を受け取りにくい電子記録債権なども、使えません。

  • BPへ出すとき:銀行振込に切り替えます。支払サイトは、役務を受けた日から60日以内にします。10月分(10月31日締め)なら、12月29日(火)までの支払いが目安です。

  • エンド・元請けから受けるとき:手形やサイトの長い支払いを求められたら、改正で禁止されたことを伝えて振込を求めます。

支払サイトとは、締め日から支払日までの期間のことです。計算例は取適法の支払期日60日とSESの支払サイト|計算例と手形禁止で確認できます。

4. 単価協議は「日付・相手・理由・結論」を記録に残す

改正で新しく禁止されたのが、協議に応じず、必要な説明もせずに代金を一方的に決めることです。ここがSES営業に一番影響する改正点です。

  • BPへ出すとき:BPから単価の見直しを求められたら、話し合いに応じます。据え置く場合も、理由を説明して記録します。

  • エンド・元請けから受けるとき:人件費の上昇などを根拠に、メールで協議を申し入れます。口頭だけでは、協議を求めた証拠が残りません。

協議の記録は、次の4点を残せば十分です。

記録する項目書き方の例
日付と方法2026年10月5日(月)オンライン会議
相手株式会社〇〇 購買部 △△様
申し入れの内容と理由月額単価を5%上げたい。社会保険料と給与の上昇のため
結論と説明12月から3%上げる。残りは来期に再協議

協議の進め方は取適法で単価交渉の協議拒否は違反?一方的な代金決定のNG例と対処法で解説しています。

元請けに協議を申し入れるメールは、次のように書きます。

例文・テンプレート
件名:【ご相談】2027年1月以降の単価について(〇〇案件)

株式会社〇〇 購買部 △△様

〇〇案件(担当:□□)の2027年1月以降の単価について、
協議のお時間をいただきたくご連絡しました。
社会保険料と給与の上昇により、月額単価の5%改定をお願いしたく存じます。
根拠の資料は、打ち合わせの際にお持ちします。
10月16日(金)までに、ご都合のよい日時をお知らせください。

5. 減額をしない・受けない。したら年14.6%の利息がかかる

改正で、不当に減額した金額にも年14.6%の遅延利息がかかるようになりました。「あとで戻せばいい」では済まなくなっています。

  • BPへ出すとき:精算幅の控除など、契約で決めた計算以外で代金を減らしません。振込手数料を代金から差し引く運用もやめましょう。

  • エンド・元請けから受けるとき:理由のない値引きを言われたら、契約の条件を示して断ります。

減額を求められたときの対応は、SESの単価を下げたいと言われたら?減額交渉の対応6ステップにまとめています。

6. 相談先に「事業所管省庁」が加わったことを知っておく

改正で、事業を所管する省庁も指導・助言ができるようになりました。このしくみを面的執行と呼びます。報復措置の禁止に関する情報提供先にも、事業所管省庁が加わりました。

  • BPへ出すとき:BPが相談したことを理由に、取引を減らしたり止めたりしてはいけません。

  • エンド・元請けから受けるとき:違反を受けたら、公正取引委員会・中小企業庁などに相談できます。相談を理由にした取引停止は禁止されています。

中小企業庁と公正取引委員会の役割

取適法を取り締まるのは、公正取引委員会と中小企業庁です。改正で、事業を所管する省庁も指導・助言に加わりました。

機関主な役割
公正取引委員会調査、指導、違反企業への勧告・公表
中小企業庁調査、指導。公正取引委員会に措置を求める
事業所管省庁指導・助言(改正で追加)

中小企業庁は、取適法と同じ日に施行された受託中小企業振興法も担当しています。受託中小企業振興法は「下請中小企業振興法」を改正・改称した法律です。振興基準とは、この法律にもとづき、発注側と受注側が守るべき取引の目安を定めたもののことです。振興基準も改正され、2026年1月1日から施行されています。

公正取引委員会が2026年6月10日に公表した運用状況によると、2025年度(令和7年度)の勧告は39件、指導は8,261件でした。改正後も、取り締まりは活発に行われています。

下請法の運用基準の改正とは

運用基準とは、公正取引委員会が「どんな行為が違反になるか」を具体例で示した解釈の指針のことです。法律の条文だけでは判断しにくい点を補います。

取適法の施行にあわせ、公正取引委員会は2025年10月1日に新しい運用基準を整えました。あわせて、注文書の記載事項(明示)や記録の作成・保存の規則も整備され、2026年1月1日から施行されています。

運用基準はその後も見直しが続いています。2026年6月24日には、運用基準の改正案が意見募集にかけられました。知的財産の取引に関する指針の公表にあわせたもので、締切は2026年7月23日でした。2026年9月30日時点で、改正後の運用基準が確定したかは公正取引委員会のページで確認してください。SESでは、成果物の著作権やソースコードの扱いに関わる部分です。

運用基準は長い文書です。SES営業は、次の順で読むと効率がよいです。

  1. 役務提供委託・情報成果物作成委託の定義:自社の取引が当たるかを確認します。

  2. 禁止行為の具体例:減額・買いたたき・やり直しの例を読みます。

  3. 協議に応じない代金決定の例:改正で加わった部分です。

  4. 支払手段の考え方:手形や電子記録債権の扱いを確認します。

禁止行為の一覧は下請法の禁止事項11個|SESの減額・買いたたき・発注取消の例で整理しています。

改正への対応を社内で進める5つの手順

改正への対応は、BP取引の棚卸しから始めるのがおすすめです。自社が守る側になる取引から見直すと、違反のリスクを早く減らせます。

  1. BP取引を一覧にする:稼働中の案件を、BP・単価・支払条件ごとに並べます。

  2. 規模を記入する:BPと自社の資本金・従業員数を記入し、対象かどうかを判定します。

  3. 注文書のひな形を直す:呼び方を「委託事業者」「中小受託事業者」に変え、支払方法から手形を消します。

  4. 協議の記録ルールを決める:単価の相談を受けたら、日付・相手・理由・結論をメールで残すと決めます。

  5. 受注側の取引も点検する:エンド・元請けの支払条件に手形や長いサイトがないかを見て、あれば協議を申し入れます。

迷う取引は、すべて対象と考えて運用するのも1つの方法です。会社全体で同じルールにすると、担当者ごとの判断ミスを防げます。

チョータツで案件の条件を管理して、見直しを楽にする

ここまでの手順は、Excelの一覧でも進められます。ただ、案件が増えると、どのBPとどの条件で取引しているかを追うのが大変になります。

チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。案件ごとに単価や条件を残しておけば、取適法の見直しで「どの案件から直すか」をすぐに探せます。チームで共有できるので、担当者が休んでも条件を確認できます。

他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。改正で取引条件を見直した結果、BPを入れ替えるときも、候補を探しやすくなります。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

よくある質問

Q. 下請法の改正はいつからですか?
2026年1月1日から施行されています。改正法は2025年5月16日に成立し、5月23日に公布されました。
Q. 下請法はなくなったのですか?
なくなったのではなく、改正されて名前が変わりました。今の正式な呼び方は取適法(中小受託取引適正化法)です。
Q. 下請法改正で一番SESに影響するポイントは?
協議に応じない一方的な代金決定の禁止です。BPからの単価見直しに応じる義務が生まれ、自社も元請けに協議を求めやすくなりました。
Q. 中小企業庁は下請法改正で何をしていますか?
公正取引委員会とともに取適法を取り締まり、調査や指導を行います。あわせて、受託中小企業振興法と振興基準の改正も担当しました。
Q. 下請法の運用基準も改正されましたか?
はい。公正取引委員会が2025年10月1日に新しい運用基準を整え、2026年1月1日から施行しています。2026年6月には、知的財産の取引に関する改正案も意見募集されました。
Q. 改正前に結んだ基本契約書は作り直す必要がありますか?
手形払や長い支払サイトが書かれていれば、見直しが必要です。呼び方の変更だけなら、次の更新時にまとめて直す方法もあります。
Q. BPが300人以上の大きな会社でも取適法はかかりますか?
BPの従業員が300人を超えていても、資本金の基準に当てはまれば対象です。資本金と従業員数の両方の基準から外れれば、対象外になります。

まとめ

  • 下請法は改正され、2026年1月1日から取適法として施行された

  • 改正の柱は、従業員基準・手形払の禁止・協議応諾・特定運送委託・面的執行の5つ

  • SES営業が変えるのは、台帳・注文書・支払手段・協議の記録・減額・相談先の6点

  • BPへ出すときは守る側、エンド・元請けから受けるときは守られる側として見直す

  • 運用基準は2025年10月1日に整備され、その後も見直しが続いている

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

関連する記事