フリーランスの請求書の書き方|SES企業がBPに渡す個人から会社宛の記載例と8項目

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

フリーランスの請求書とは?SES企業が書き方を案内する理由

フリーランスの請求書とは、個人で働くエンジニアなどが、報酬を払ってもらうために出す書類のことです。SESでは、BP(ビジネスパートナー、取引先)として参画するフリーランスから、毎月SES企業あてに届きます。

SES企業が書き方を案内する理由は3つあります。1つめは、消費税の控除に関わる登録番号を毎回書いてもらうためです。2つめは、源泉徴収やフリーランス法など、発注側が守るルールに合った形にするためです。

3つめは、客先への請求と合わせるためです。フリーランスの稼働時間と客先への請求の時間がずれると、粗利が崩れます。形がそろっていれば、営業事務の照合も早くなります。

フリーランスと個人事業主の違い

個人事業主とは、税務署に開業届を出して、個人で事業をしている人のことです。フリーランスは働き方の呼び名で、多くのフリーランスは個人事業主です。

請求書の書き方では、呼び名より法人か個人かが大切です。個人に払う報酬は、源泉徴収やフリーランス法の対象になる場合があるからです。

フリーランスの請求書に書いてもらう8項目

フリーランスの請求書には、次の8項目を書いてもらいます。8項目がそろっていれば、SES企業は契約と照らし合わせるだけで支払いに進めます。

#書いてもらう項目書き方抜けたときの影響
1宛名と請求者自社の正式名称、本人の氏名・屋号宛名違いは再発行
2登録番号「T」+13桁消費税の控除が減る
3対象月と稼働時間何月分か、合計時間稼働報告書と照合できない
4金額と精算月額単価、控除・超過の式精算の誤りに気づけない
5消費税10%対象の合計と税額税込・税抜の混同
6源泉徴収要否と税額納税の手続きが狂う
7振込先と手数料本人名義の口座、満額請求減額の問題になる
8支払期日契約で決めた期日60日を超えるおそれ

届いた請求書の点検と差し戻しは、フリーランスの請求書チェック8項目|SESで不備を差し戻す例文付きにまとめています。

次の見出しから、書き方でとくに迷いやすい4項目(2・3・6・7)を解説します。

書き方のポイント1:登録番号は「T」+13桁を毎回書く

登録番号とは、インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)として税務署に登録した事業者に通知される番号のことです。個人事業主の場合、「T」と13桁の数字の形です。

登録番号がある請求書(適格請求書)なら、SES企業は請求書の消費税を全額、仕入税額控除に使えます。登録番号がない請求書は、経過措置の割合までしか控除できません。

取引の時期登録番号がない請求書の控除割合
2023年10月〜2026年9月80%
2026年10月〜2028年9月70%
2028年10月〜2030年9月50%
2030年10月〜2031年9月30%

割合は、令和8年度税制改正で見直された後のものです(国税庁の案内で2026年9月30日に確認)。たとえば月額60万円+消費税6万円のBPが免税事業者だとします。2026年10月分からは、控除できない消費税が18,000円(6万円×30%)になります。

同じ改正で、経過措置に上限ができました。登録していない1人からの仕入れが1年(事業年度)で税込1億円を超えた部分には使えません。2026年10月1日以後に始まる課税期間からです。一般的な単価のフリーランス1人なら、この上限に届くことはまずありません。

登録番号は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で番号を入れると、登録があるかを確認できます。初回の請求書が届いたときと、年に1回は照合しておくと安心です。

免税事業者のBPとの単価の決め方は、インボイス経過措置2026年10月の変更|控除割合の計算例とSESで解説しています。登録していないことを理由に、一方的に単価を下げるのは避けましょう。

書き方のポイント2:開発の報酬なら源泉徴収の欄は「なし」

源泉徴収とは、報酬を払う側が、払う金額から所得税を先に差し引いて国へ納める仕組みのことです。個人に払う報酬のうち、所得税法第204条第1項に書かれたものだけが対象です。

SESでよくあるプログラミング・システム開発・インフラ構築・運用保守は、この一覧に入っていません。そのため、フリーランスに開発の仕事を出すだけなら、源泉徴収は原則不要です。

業務の例個人に払うときの源泉徴収
プログラミング・テスト・運用保守原則不要
インフラ構築・ヘルプデスク原則不要
バナー・広告などのデザイン必要
研修講師・技術記事の執筆・翻訳必要

必要な場合の税率は、100万円以下の部分が10.21%です。報酬と消費税が分けて書かれていれば、税抜きの額にかけてよいです。業務名ごとの判定はエンジニアへの業務委託と源泉徴収|不要な場合と消費税の計算例にまとめています。

フリーランスが、開発の報酬なのに源泉徴収税額を差し引いて書いてくることがあります。そのまま払うと、差し引いた額を国に納める手続きが必要になります。要否を本人と確認してから、請求書を直してもらいましょう。

〇〇様
10月分の請求書をありがとうございます。
今回のシステム開発のご報酬は、所得税法上の源泉徴収の対象外のため、弊社では源泉徴収をいたしません。
お手数ですが、源泉徴収税額を「なし」とし、請求金額を660,000円に直した請求書を再送いただけますか。
お支払日(11月30日)は変わりません。

書き方のポイント3:稼働時間と精算の式を明細に書く

請求書の稼働時間は、稼働報告書と、客先に請求した時間の両方と一致させます。3つの数字がそろっていないと、あとで精算が合わなくなります。

BPには、次の4点をお願いしておきます。

  1. 請求書と一緒に稼働報告書を出す

  2. 請求書の合計時間を、稼働報告書と同じにする

  3. 精算幅の外の月は、控除・超過の計算式を明細に書く

  4. 交通費など実費は、報酬と行を分けて書く

たとえば月額60万円・精算幅140〜180時間・上下割の契約で、稼働が130時間の月を考えます。控除単価は600,000÷140=4,285円(1円未満切り捨て)です。控除額は10時間×4,285円=42,850円になります。端数の処理は、契約書の決め方に合わせます。

フリーランスが控除を入れ忘れて60万円で請求してきたら、計算の根拠を伝えて再発行をお願いします。自社で勝手に金額を書きかえて払うのは避けましょう。控除の計算はSESの精算幅を下回ったら?控除の計算方法と有給・固定の扱いでくわしく解説しています。

報告書が届かないときの催促は、SESの稼働報告書が遅れる・出ないときの対応|請求を間に合わせる手順を使います。

書き方のポイント4:振込手数料を差し引かず満額で請求してもらう

振込手数料を報酬から差し引くと、フリーランス法の「報酬の減額」に当たります。国のQ&A(問78)で、フリーランスとの合意の有無にかかわらず減額に当たると示されています。

減額の禁止(第5条)は、1か月以上の業務委託(更新で1か月以上になるものを含む)が対象です。SESの月単位の参画はほぼ当てはまります。

フリーランス法とは、2024年11月1日に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」のことです。従業員を使っていない個人などに仕事を出す会社に、条件の明示や期日どおりの支払いなどを求めています。

これまで「振込手数料は受取人負担」で運用していたSES企業は、次の点を見直しましょう。

  • 記載例や請求書に「振込手数料を差し引いた額」を書かせていないか

  • 経理が、振込額から自動で手数料を引く設定になっていないか

  • 基本契約書や発注書に「手数料は受注者負担」と書いたままになっていないか

請求額が66万円なら、振込額も66万円ちょうどにするのが基本です。例外は、BPが自分の都合で振込先を変えて手数料が増えた場合の増えた分だけです。フリーランス法で禁止される行為は、フリーランス法の禁止行為7つ|SESの減額・買いたたきOK・NG例で整理しています。

BPに渡す請求書の記載例(個人から会社宛)

個人から会社へ出す請求書は、次の形にそろえてもらうと確認しやすくなります。SES企業からBPへ、取引の始めに1回渡しておくのがおすすめです。

記載例(2026年10月分・登録番号あり・精算幅の中)

項目記載例
宛名株式会社サンプルSES 御中
請求者山田太郎(屋号:ヤマダ開発)、住所、電話、メール
登録番号T1234567890123
請求日・請求番号2026年10月31日・No.2026-10
件名〇〇システム開発支援(2026年10月分)
明細月額単価 600,000円/稼働165時間(精算幅140〜180時間)
小計・消費税600,000円・10%対象 60,000円
源泉徴収税額なし(システム開発のため)
請求金額660,000円(振込手数料は差し引かない)
振込先・期限〇〇銀行 △△支店 普通 1234567 ヤマダタロウ/2026年11月30日

社名・氏名・登録番号・口座は架空のものです。

BPに記載例を渡すときの案内文(例文)

記載例は、次のような短い案内文と一緒に送ると伝わりやすくなります。

〇〇様
来月から、請求書を下の記載例の形でお送りいただけますでしょうか。
・登録番号(T+13桁)をお持ちの場合は必ずご記入ください
・稼働報告書を添付し、合計時間を請求書とそろえてください
・振込手数料は弊社で負担しますので、満額でご請求ください
締め日は毎月末、お支払いは翌月末です。

個人名だけの請求書でも有効?

屋号がなく、個人名だけの請求書でも有効です。請求書の宛名・請求者は、本人の氏名で問題ありません。登録番号があれば、個人名でも適格請求書になります。

ハンコ(押印)も、法律で決まった必須項目ではありません。押印のない請求書でも、内容がそろっていれば受け取って問題ありません。

支払期日はフリーランス法の60日以内で決める

フリーランス法では、報酬の支払期日を給付を受領した日から60日以内の、できるだけ早い日に決めます。SESの準委任では、給付を受領した日は役務の提供を受けた日です。

月末締めで毎月まとめて払う場合は、締めた日から60日以内に払えば足ります。条件は、3条通知に月単位の締めと報酬の額を書いておくことです。2026年10月末締めなら、締め日を1日目として12月29日が60日目です。いちばん安全なのは、翌月末払いにそろえることです。

注意したいのは、請求書が届かないことを理由に、支払いを遅らせられない点です。国のQ&A(問58)では、請求書が出ないことは「フリーランスの責任で払えなかった場合」に当たりません。

そのため、請求書が遅れているBPには、締め日の数日前に催促するのが実務的です。起算日の数え方は、フリーランス法の支払期日60日|月末締めの起算日と計算例でくわしく解説しています。

フリーランスの請求書を受け取ったあとの流れ5ステップ

請求書の受け取りから支払いまでは、次の5ステップで進めます。営業と営業事務で担当を分けると、抜け漏れが減ります。

  1. 受け取り:請求書と稼働報告書を、決まったメールアドレスかフォルダで受け取る

  2. 照合:8項目を見て、契約条件・客先への請求と合わせる

  3. 差し戻し:合わない点は、理由を書いて再発行を依頼する

  4. 支払い:支払期日までに、振込手数料を差し引かずに振り込む

  5. 保存:請求書を原則7年間保存する(メールやPDFで受け取ったら、電子のまま保存する)

領収書はもらう必要がある?

振込で払うなら、フリーランスから領収書をもらわないのが一般的です。振込の記録が、支払った証拠になるからです。

現金で払うなど、社内ルールで領収書が必要なときだけ発行を頼みます。紙の領収書で受取金額が5万円以上なら、印紙が必要になることがあります(印紙税法の第17号文書)。

郵送で届く場合の封筒は?

郵送の場合、封筒の表に「請求書在中」と書いてもらうと、社内で埋もれにくくなります。宛先は、部署名と担当者名まで書いてもらいましょう。できればPDFのメール送付に切り替えてもらうと、締め日の遅れも減ります。

請求書の照合をチョータツで楽にする

自分でやるなら、BPごとの単価・精算幅・割り方・支払期日をExcelの一覧にまとめ、届いた請求書と見比べます。BPが数人のうちは、この方法で十分に回ります。

BPが増えると、「この人の精算幅は?」を契約書から探すだけで時間がかかります。チョータツなら、SES営業の案件・人材の情報をまとめて管理・共有できます。

案件ごとに単価や精算の条件を残しておけば、請求書が届いたときにすぐ見比べられます。営業と営業事務で同じ情報を見られるので、「営業しか条件を知らない」状態も防げます。チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

よくある質問

Q. フリーランスの請求書は、SES企業が作って渡してもいい?
発注側が作る支払通知書という方法があります。内容をフリーランスに確認してもらえば、請求書の代わりに使えます。形は業務委託の支払通知書テンプレート|支払明細書との違いと記載例を参考にしてください。
Q. 登録番号がない請求書は、受け取りを断るべき?
断る必要はありません。控除できる消費税が経過措置の割合に減るだけです。登録をしないことを理由に、一方的に取引をやめたり単価を下げたりするのは避けましょう。
Q. フリーランスが振込手数料を差し引いた額で請求してきたら?
満額で請求してもらうよう伝えましょう。手数料を報酬から差し引くと、合意があってもフリーランス法の減額に当たります。
Q. 請求書の金額が、契約の単価と違っていたら?
自社で金額を書きかえて払わず、違う点と正しい計算を伝えて再発行を依頼します。ただし、支払期日を過ぎないように早めに連絡しましょう。
Q. 個人事業主の請求書に、源泉徴収の欄は必要?
開発・インフラ・運用保守の報酬なら、原則として不要です。デザインや講師など対象の業務があるときだけ、源泉徴収税額を書いてもらいます。

まとめ

  • フリーランスのBPには、記載例を渡して請求書の書き方をそろえてもらう

  • 書いてもらうのは、宛名・登録番号・稼働時間・精算・消費税・源泉徴収・振込先・期日の8項目

  • 登録番号がないと、2026年10月〜2028年9月の取引は消費税の70%しか控除できない

  • 開発・インフラ・運用保守の報酬は、源泉徴収は原則不要

  • 振込手数料を報酬から差し引くと、合意があってもフリーランス法の減額に当たる

  • 支払いは役務の提供を受けた日から60日以内。請求書が遅れても支払いは遅らせられない

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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