SESで客先の貸与PCを紛失したら|最初の1時間でやる報告の順番と連絡例文、情報漏洩の確認、費用負担と本人への請求

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

貸与PCを紛失したら、最初の1時間で何をする?

最初の1時間でやることは、「情報を守る手配」と「客先への第一報」の2つです。PCそのものを探すのは、その後で構いません。

貸与PCとは、客先が業務のためにエンジニアに貸し出すパソコンのことです。中には客先のソースコードや設計書、顧客の個人情報が入っていることがあります。PCをなくすと、情報が第三者に見られるおそれが一番の問題になります。

最初の1時間の動きを時系列にすると、次のとおりです。

時間のめやすやること誰が
0〜10分本人から事実を聞き取る営業
10〜20分社内の責任者に報告し、客先への連絡を決める営業
20〜60分客先に電話で第一報。遠隔ロック・アカウント停止を依頼営業
60分以降警察に遺失届(盗難なら被害届)を出す本人
当日中客先に経緯をメールで報告営業

入館証の紛失や貸与品の未返却は、SESの貸与品返却トラブル|入館証の紛失・未返却時の対応と費用負担で解説しています。この記事は貸与PCの紛失に絞って、最初の1時間の動き方をくわしく扱います。

報告の順番は「本人→自社→客先→警察」

報告は、本人→自社→客先→警察の順で行います。客先への報告を先にしたくなりますが、自社が事実を押さえずに連絡すると、あとで話が変わって信頼を失うからです。

1. 本人から聞き取る(0〜10分)

本人から電話で、次の6点を聞きます。責める言葉は使わず、事実だけを集めます。

  1. いつ気づいたか、最後にPCを確認したのはいつ・どこか

  2. どこでなくした可能性があるか(電車・飲食店・自宅など)

  3. 盗まれた可能性はあるか(かばんごと、車上荒らしなど)

  4. PCの電源・ロックの状態(シャットダウンしたか、スリープか)

  5. PCの中にあった情報(ソースコード、顧客名簿、パスワードのメモなど)

  6. 一緒になくしたもの(入館証、スマホ、USBメモリ)

本人への最初の声かけの例

連絡ありがとうございます。まずは落ち着いて大丈夫です。今すぐ客先に連絡してPCを使えないようにしてもらうので、最後にPCを見た時間と場所だけ先に教えてください。

2. 自社の責任者に報告する(10〜20分)

営業は、上長や情報セキュリティの担当者に報告し、客先への連絡を誰がするかを決めます。商流の途中にいる場合は、上位の会社の営業にも同時に連絡します。

自社の立場第一報を入れる相手
客先と直接契約客先の担当者と情報システム部門
上位SESを通して参画上位SESの営業(客先への連絡の段取りを相談)
BPの要員を自社経由で出している上位(または客先)と、同じ時間にBPの営業

3. 客先に電話で第一報を入れる(20〜60分)

客先への第一報は、知ってから1時間以内に、電話で入れます。メールだけでは、読まれるまでに時間がかかることがあります。

客先への電話の例

株式会社〇〇の××です。お借りしている貸与PCを、弊社の△△が紛失した可能性がありますので、ご連絡しました。本日18時頃、帰宅途中の電車の中で最後に確認しています。
恐れ入りますが、PCの遠隔ロックと、△△のアカウントの停止をお願いできますでしょうか。詳しい経緯は、本日中にメールでご報告いたします。

電話のあと、当日中に経緯をメールで送ります。わからないことは「確認中」と書き、推測で埋めません。

当日中に送る報告メールの例

件名:【ご報告】貸与PC紛失の件(株式会社〇〇)

△△様
先ほどお電話でご報告した件、経緯をお送りいたします。
・紛失した物:貸与PC 1台(管理番号 ◯◯)、入館証 1枚
・最後に確認した日時・場所:9月30日 18時頃、〇〇線の車内
・気づいた日時:9月30日 19時10分
・PCの状態:シャットダウン済み(本人申告)
・保存されていた情報:確認中(本人の記憶では設計書のみ)
・対応:本日20時に〇〇警察署へ遺失届を提出予定
今後の対応と再発防止策は、10月2日(木)までにご報告いたします。

4. 警察に届け出る(60分以降)

本人に、最寄りの警察署か交番で遺失届を出してもらいます。盗まれた可能性があれば被害届です。届け出たら、受理番号を控えて営業に知らせてもらいます。客先への報告に使います。

遠隔ロックと情報漏洩の確認

PCの中の情報を守るには、遠隔ロック(離れた場所からPCを使えなくする機能)とアカウントの停止が効きます。これらは客先の情報システム部門にしかできないことが多いため、第一報で必ず依頼します。

客先に確かめたいのは、次の4点です。

確認することなぜ必要か
ディスクが暗号化されているか暗号化されていれば、中の情報を読まれにくい
遠隔ロック・データ消去ができたか見つかる前に情報を守れる
アカウント・VPNを止めたかPCから社内システムに入られるのを防ぐ
個人データが入っていたか個人情報保護委員会への報告が必要か決まる

個人データが入っていたときの報告

PCに個人データ(顧客名簿など)が入っていた場合は、報告の要否を確認します。次のどれかにあたれば、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が必要です(個人情報保護法第26条、同法施行規則第7条)。

報告が必要な場合例
要配慮個人情報が含まれる病歴や健康診断の結果
財産的な被害のおそれがあるクレジットカード番号
不正な目的で行われたおそれがあるPCの盗難
本人の数が1,000人を超える顧客名簿のファイル

ただし、高度な暗号化などの措置をしていたデータは、報告の対象から除かれます(施行規則第7条第1号)。PCの暗号化の有無を客先に早く確かめるのは、このためです。

個人情報保護委員会の案内では、速報は知った日から3〜5日以内が目安です。確報は30日以内、不正な目的のおそれがあれば60日以内です。

客先から個人データの扱いを任されている場合は、客先に通知すれば自社の報告は不要です(法第26条第1項ただし書)。そのため、客先への第一報は、そのまま「通知」の役目も持ちます。情報漏洩全般の責任の分担は、SESの情報漏洩の責任は誰に?損害賠償の範囲と事故報告の流れで解説しています。

弁償の費用は誰が負担する?

客先への弁償は、まず客先と契約しているSES企業が負います。客先が本人に直接請求する形は避け、SES企業が窓口になります。

根拠の1つは、契約の約束を守れなかったときの責任(民法第415条)です。もう1つは、従業員が仕事の中で他人に与えた損害を会社も負う使用者責任(民法第715条)です。金額は、多くの場合基本契約書の損害賠償の条項で決まります。

費用の項目中身話し合いのポイント
PCの本体同じ機種の購入代、または残りの価値購入からの年数を確かめる
設定の作業新しいPCの設定、アカウントの再発行客先の実費か、見積もりで確かめる
調査・対応費用情報漏洩の調査、本人への通知情報が漏れたかどうかで大きく変わる

請求の額が大きいときは、その場で答えず、持ち帰って契約書を確認してから回答します。上限条項の考え方は、SESの損害賠償の上限条項|準委任の責任限定の書き方と有効性を参考にしてください。

本人に費用を請求できる?始末書は必要?

本人への請求は、雇用している社員か、BPの社員か、フリーランスかで考え方が変わります。どの場合も、全額を当然に請求できるわけではありません。

自社の社員の場合

自社の社員に費用を求めるときは、次の3つのルールを守ります。

  1. 全額は難しい:会社が社員に求められる額は、事情によって限られます。茨石事件の最高裁判決(昭和51年7月8日)は、その事件の事情のもとで、請求を損害の4分の1までとしました。

  2. 前もって金額を決めておけない:「紛失したら一律3万円」のような約束はできません。労働基準法第16条の賠償予定の禁止にあたるおそれがあります。

  3. 給与から勝手に引けない:給与は全額を払うのが原則です(労働基準法第24条)。差し引くには、法令か労使の書面の協定などが必要です。

BPの社員・フリーランスの場合

本人の立場話し合う相手注意点
BPの社員BPの会社BPとの基本契約書の条項で決める。本人に直接請求しない
フリーランス本人報酬から勝手に差し引かない。額と理由を書面で合意する

1か月以上の業務委託では、フリーランスに落ち度がないのに報酬を減らせません(フリーランス法第5条第1項第2号)。

始末書と報告書は分けて考える

紛失のあと、本人に事実を書いた報告書を書いてもらうのはよくある対応です。経緯書・顛末書と呼ぶ会社もあります。

一方、始末書を反省やおわびの文書として出させることを、就業規則で懲戒の1つとして定めている会社もあります。懲戒として扱うなら、就業規則の定めにもとづいて行います。客先に出すのは事実の報告書で十分なことが多く、本人の反省文を客先に出す必要はありません。

客先に出す誓約書の書き方は、SESの誓約書を客先に出すときの注意点|守秘義務の範囲と文例で確認できます。

再発防止:客先と決める持ち出しルール5点

再発防止策は、「本人に気をつけさせる」だけでなく、会社としてのルールで示します。客先には、次の5点を書面で提出すると、取引を続けてもらいやすくなります。

  1. 持ち帰りの原則禁止:在宅勤務の日以外は、貸与PCを客先に置いて帰る

  2. 移動中のルール:在宅勤務で持ち帰るときは、寄り道をせず、かばんを網棚に置かない

  3. ロックの徹底:席を離れるときは画面をロックし、移動中はシャットダウンする

  4. 紛失時の連絡先:本人が夜間・休日でも連絡できる営業の携帯番号を決めておく

  5. 入場時の説明:参画初日に、営業から持ち出しルールを説明し、確認のサインをもらう

参画初日の説明は、入場前のチェックリストに入れておくと漏れません。自社の要員が客先の秘密を守る義務の考え方は、秘密保持義務とは?SESエンジニアの違反リスクと営業が防ぐ手順にまとめています。

再発防止策を報告するメールの例

△△様
先日の貸与PC紛失の件、ご迷惑をおかけし申し訳ございません。弊社として、次の再発防止策を実施いたします。

  1. 在宅勤務日以外の貸与PCの持ち帰りを禁止します

  2. 移動中はPCをシャットダウンし、手元から離さないことを全要員に周知しました

  3. 夜間・休日の紛失時の連絡先を、営業××の携帯(090-XXXX-XXXX)に統一しました

  4. 今後の参画初日に、持ち出しルールの説明と確認のサインを行います

交代を求められたときに備える:チョータツで候補を探す

紛失そのものが本人の重大な過失でなくても、客先から要員の交代を求められることがあります。交代になったとき、すぐ候補を出せるかが、取引を続けられるかの分かれ目です。

自分でやる場合は、次の順で進めます。

  1. 本人の担当業務と必要なスキルを書き出す

  2. 自社の待機・更新予定の人材から探す

  3. BPに一斉メールで募集し、届いた人材メールを表にまとめる

もっと楽にするなら、チョータツを使う方法があります。チョータツとは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有するツールのことです。3,000社以上が利用し、無料で始められます。

やること自分でやる場合チョータツを使う場合
代わりの人材を探す届いたメールを1通ずつ読む連携した会社の営業中人材をデータベースで探せる
BPに募集するメールソフトで一斉送信メール配信機能で送れる
自社の人材を確認する担当者ごとのExcel1か所で管理・共有し、AIが入力を手伝う

本人が続けられる場合も、本人に次の案件の選択肢があることを伝えられると、落ち込みすぎずに現場へ戻りやすくなります。

よくある質問

Q. 客先の貸与PCを紛失したら、まず誰に報告しますか?
本人から聞き取ったら、自社の責任者に報告し、知ってから1時間以内に客先へ電話で第一報を入れます。そのあと本人が警察に遺失届(盗難なら被害届)を出します。
Q. 貸与PCの紛失は、個人情報保護委員会への報告が必要ですか?
個人データが入っていて、決められた4つの場合のどれかにあたれば必要です。要配慮個人情報、財産的被害のおそれ、不正目的のおそれ、1,000人超の4つです。高度な暗号化をしたデータは対象から除かれます。
Q. 貸与PCの弁償費用は、エンジニア本人が払うのですか?
客先へは、まずSES企業が払います。社員本人への請求は全額が難しく、給与からの天引きや「紛失したら一律◯万円」の約束はできません。
Q. PCを紛失した社員に始末書を書かせてもよいですか?
懲戒として求めるなら、就業規則の定めにもとづいて行います。客先への報告には、事実を書いた報告書で十分なことが多いです。
Q. BPの要員がPCを紛失したら、誰に請求しますか?
BPの会社と話し合います。BPとの基本契約書の損害賠償の条項を確認し、BPの社員本人に直接請求するのは避けます。

まとめ

  • 貸与PCの紛失は情報の問題。最初の1時間で遠隔ロックとアカウント停止を客先に頼む

  • 報告の順番は本人→自社→客先→警察。客先へは知ってから1時間以内に電話で第一報

  • 個人データが入っていれば、報告の要否を確認する。暗号化の有無を早く確かめる

  • 客先への弁償はまずSES企業が負う。社員への請求は全額が難しく、天引き・賠償予定はできない

  • 客先に出すのは事実の報告書。懲戒の始末書は就業規則にもとづいて扱う

  • 再発防止は持ち出しルール5点を書面で出し、交代に備えて候補も探しておく

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)