SESの貸与品返却トラブル|入館証の紛失・未返却の対応手順と費用負担、回収チェックリスト

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

SESの貸与品トラブルとは何か

SESの貸与品トラブルとは、顧客から要員に貸し出された物の紛失・破損・未返却をめぐるトラブルのことです。営業は、顧客との窓口として報告と回収を取りまとめます。

貸与品とは、顧客が作業のために要員へ貸し出す物のことです。入館証、PC、スマートフォン、セキュリティカード、鍵などがあります。

よく起きる3つのパターン

貸与品のトラブルは、「紛失」「破損」「退場時の未返却」の3つに分かれます。パターンごとに、最初にやることが変わります。

パターンよくある例顧客が心配すること営業が最初にやること
紛失入館証を電車で落とした不正な入館・情報漏えい当日中の第一報と停止の依頼
破損貸与PCを落として画面が割れた修理費・作業の遅れ状態の写真と修理の相談
未返却退場後に入館証を返さない不正な入館・物の損失本人への連絡と回収日の確定

物より「中の情報」と「入れること」が問題になる

顧客がいちばん気にするのは、物の値段ではありません。入館証なら不正に入られること、PCなら中の情報が漏れることです。

そのため、報告が遅れるほど信用を失います。値段が安い物でも、見つけた時点ですぐ報告するのが基本です。

入館証・PCをなくした時に営業が当日やる6手順

紛失の連絡を受けたら、当日中に6つの手順を進めます。1〜4はその日のうちに終えるのが目安です。

  1. 要員から事実を聞く(すぐ)

  2. 顧客へ第一報を入れる(当日中、まず電話)

  3. 入館証・アカウントの停止を依頼する(第一報と同時)

  4. 警察へ遺失届を出すよう要員に伝える(当日中)

  5. 顧客へ書面で報告する(翌営業日まで)

  6. 再発防止策を伝え、費用の話をする(1週間以内)

手順1:要員から事実を聞く

最初に、要員からいつ・どこで・何をなくしたかを聞きます。責めるより先に、正確な情報を集めることが大切です。

聞く項目は次の6つです。

  1. なくした物(入館証・PC・スマホなど)と、その番号やシールの有無

  2. 最後に手元にあった日時と場所

  3. なくしたと気づいた日時

  4. PCやスマホなら、パスワードや暗号化の設定があるか

  5. 中に入っている情報(顧客の資料・個人情報など)

  6. すでに誰かに伝えたか(現場のリーダーなど)

手順2:顧客へ第一報を入れる

顧客への第一報は、わかっていることだけで構いません。原因や再発防止策がまとまるのを待たずに、まず電話で伝えます。

二次請け以下の場合は、上位の会社にも同じ日に伝えます。エンドへの連絡は、上位の会社を通すのが基本です。商流ごとの連絡の順番は、SESの情報漏洩の責任は誰に?損害賠償の範囲と事故報告の流れでも整理しています。

手順3:入館証・アカウントの停止を依頼する

入館証やPCのアカウントは、顧客側でしか止められないことが多いです。第一報の中で、すぐ停止してもらうよう依頼します。

停止が早いほど、悪用される心配が小さくなります。顧客にとっても、被害を広げないためにいちばん大事な対応です。

手順4:警察へ遺失届を出す

遺失届とは、物をなくしたことを警察に届け出ることです。拾った人は、遺失物法で警察署長などへ届けることになっています(遺失物法第4条)。

遺失届を出しておけば、見つかった時に連絡を受けやすくなります。受理番号を控え、顧客への報告書に書き添えます。

手順5:顧客へ書面で報告する

電話のあとは、同じ内容をメールや報告書で送り、記録に残します。書き方の例は次のとおりです。

例文・テンプレート
件名:貸与品(入館証)紛失のご報告(株式会社△△ □□)

株式会社〇〇
××様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
本日お電話でお伝えしたとおり、弊社〇〇がお借りしていた
入館証を紛失いたしました。ご迷惑をおかけし申し訳ございません。

■紛失した物:入館証(番号:〇〇〇)
■紛失の日時・場所:2026年10月1日(木)夜、帰宅途中の電車内と思われます
■気づいた日時:2026年10月2日(金)8時30分ごろ
■対応状況:同日、入館証の利用停止をお願いいたしました
      警察へ遺失届を提出済みです(受理番号:〇〇〇)

再発防止策と今後の対応は、10月9日(金)までにご報告いたします。
再発行の費用など、お手続きについてもご指示いただけますと幸いです。

引き続きよろしくお願いいたします。

手順6:再発防止策と費用の話をする

最後に、再発防止策と費用の話をします。費用の話は、謝罪と報告が済んでからにするのが自然です。

再発防止策は、「気をつけます」ではなく行動で書きます。たとえば「入館証はストラップで社員証と一緒に持つ」「PCは持ち出し時に上長へ連絡する」などです。

貸与PCをなくした時は「情報漏えい」の確認が先

貸与PCやスマホをなくした時は、物の弁償より先に、中の情報が漏れたかどうかを確かめます。個人情報が入っていれば、顧客が個人情報保護委員会へ報告しなければならない場合があるからです(個人情報保護法第26条)。

営業の役目は、顧客が判断できるようにPCの中身と設定の情報を早くそろえて渡すことです。そろえる情報は次の4つです。

  • PCにログインのパスワードやロックがかかっていたか

  • ディスクの暗号化などの設定があったか(顧客の情報システム部門に確認)

  • 顧客の資料や個人情報が、PCの中に保存されていたか

  • なくした後に、誰かがログインした記録がないか(顧客側で確認)

PCの紛失は、最初の1時間の動きで結果が変わります。報告の順番・遠隔ロック・報告の要否は、SESで客先の貸与PCを紛失したら|最初の1時間の報告と費用負担で時系列にまとめています。この記事では、入館証の紛失と、退場時の未返却を中心に扱います。

貸与品が返されない時の回収手順

退場のあとに貸与品が返されない時は、本人への連絡 → 回収日の確定 → 顧客への報告の順で進めます。多くは、返し忘れや退場日のすれ違いが原因です。

未返却が起きやすい3つの場面

未返却は、次の3つの場面で起きやすいです。

  1. 急な退場で、最終日に現場へ行かなかった

  2. 退職代行などで、本人と直接連絡が取れない

  3. 在宅勤務で、PCが自宅に置いたままになっている

回収の5ステップ

回収は、次の5ステップで進めます。

  1. 顧客に、返してもらう物の一覧をもらう

  2. 本人に、一覧と返し方・期限を書面で伝える

  3. 返し方を決める(持参・宅配・営業が受け取りに行く)

  4. 受け取ったら、顧客に数と状態を確かめてもらう

  5. 顧客から受領の連絡をもらい、記録に残す

宅配で返す場合は、追跡できる方法を使います。PCは、送る前に顧客の担当に送り先と送り方を確認します。

→ 本人と連絡が取れない場合はSESで退職代行が来たら客先にどう対応?営業の5ステップと例文も参考にしてください。

本人へ送る連絡の例文

本人への連絡は、返す物・期限・返し方の3つをはっきり書きます。責める言い方は避けます。

例文・テンプレート
件名:貸与品のご返却のお願い

〇〇さん

お疲れさまです。株式会社△△の□□です。
〇〇様(お客様)からお借りしている次の物のご返却をお願いします。

・入館証 1枚
・ノートPC 1台(電源アダプタ含む)

2026年10月9日(金)までに、同封の着払い伝票でお送りください。
送り方がわからない場合や、手元にない物がある場合は、
この連絡に返信してください。

弁償の費用は誰が負担するか

弁償の費用は、顧客に対してはSES企業が負担し、そのうえで要員に一部を請求できるかを考えるのが基本の順番です。顧客が要員本人に直接請求する形は避けます。

顧客とSES企業の関係

顧客と契約しているのはSES企業です。そのため、貸与品の紛失で生じた損害は、まずSES企業が顧客に対して責任を負うと考えます。

契約上の約束を果たさなかった時の責任は、民法第415条に定めがあります。従業員が仕事の中で他人に損害を与えた時の会社の責任は、民法第715条です。使用者責任とは、従業員が仕事の中で他人に与えた損害を、雇っている会社も負う責任のことです。

善管注意義務とは、その立場の人として当然求められる注意を払う義務のことです。準委任契約で仕事を受けた側は、この注意を払って業務を行う義務を負います(民法第644条)。

実際の金額は、基本契約書の損害賠償の条項で決まることが多いです。上限や対象を確認してから話し合います。

→ SESの損害賠償の上限条項|準委任の責任限定の書き方と有効性

費用の目安と話し合い方

費用は、入館証なら再発行の手数料、PCなら修理代や同じ機種の買い替え代が中心です。顧客の実費を、見積や請求書で確かめてから払うのが基本です。

請求の額が大きい時や、作業の遅れまで求められた時は、その場で答えずに持ち帰ります。社内で契約書を確認してから回答します。

要員本人に請求できるのはどこまでか

要員本人への請求は、雇用関係か業務委託かで考え方が変わります。どちらの場合も、全額を当然に請求できるわけではありません。

要員の立場請求の相手注意点
自社の社員社員本人全額は難しい。給与から勝手に引けない
BPの社員BPの会社BPとの契約書の条項で決まる
フリーランス本人本人に落ち度がない減額は禁止

自社の社員の場合

自社の社員に費用を求める時は、次の3つのルールを守ります。

  1. 全額は難しい:会社が社員に求められる額は、事情によって限られます。茨石事件の最高裁判決(昭和51年7月8日)は、会社が請求できる額を損害の4分の1までとしました。割合は事案ごとに変わります。

  2. 前もって金額を決めておけない:「紛失したら一律3万円」のような約束は、賠償予定の禁止(労働基準法第16条)にあたるおそれがあります。

  3. 給与から勝手に引けない:給与は全額を払うのが原則です(労働基準法第24条の賃金全額払いの原則)。差し引くには、法令か労使の書面の協定などが必要です。

求償とは、代わりに払った人が、本来責任のある人に払った分を求めることです。会社が顧客に弁償したあとで社員に求めるのが、これにあたります。

なお、懲戒として給与を減らす場合も上限があります。1回の額は平均賃金の1日分の半額まで、総額は1回の給与の総額の10分の1までです(労働基準法第91条)。

BPの社員の場合

BPの社員がなくした場合は、BPの会社と話し合います。BPの社員本人に、こちらから直接請求するのは避けます。

BPとの基本契約書に、損害賠償や貸与品の扱いの条項があるかを確かめます。条項がない場合は、民法のルールで話し合うことになります。

フリーランスの場合

フリーランスの要員の場合は、本人と話し合います。ただし、報酬から勝手に差し引くのは避けます。

フリーランス法は、従業員を使う発注者などに、落ち度のないフリーランスの報酬を減らすことを禁止しています。対象は1か月以上の業務委託です(第5条第1項第2号、施行令第1条)。落ち度があった場合でも、減らす額と理由を書面で合意してから進めます。

退場時の貸与品回収チェックリスト

未返却を防ぐいちばんの方法は、退場日が決まった時点で回収の段取りを決めておくことです。次のチェックリストを、退場が決まった日から使ってください。

退場日が決まったら(2週間前まで)

  • 顧客から貸与品の一覧(品名・数・番号)をもらった

  • 一覧を本人に送り、手元にあるか確認した

  • 最終日の返却の場所・時間・受け取る人を顧客と決めた

  • 在宅勤務なら、宅配で返すか持参するかを決めた

  • PCのデータの消し方・残し方を顧客に確認した

最終日の前日まで

  • 本人に、返す物と持ち物(伝票など)を再度伝えた

  • 入館証が返った後の、最終日の退館方法を顧客と決めた

  • 自社の物(自社PCなど)と顧客の物を分けた

最終日・退場後

  • 顧客に返却物の数と状態を確かめてもらった

  • 顧客から「受け取りました」の連絡をメールでもらった

  • 返せなかった物があれば、期限と方法を決めて記録した

  • アカウントや入館の権限を止めたか、顧客に確認した

急な退場の時の追加項目

  • 退場が決まった当日に、顧客へ貸与品の一覧を依頼した

  • 本人と連絡が取れない時の、連絡先(家族・代理人など)を確認した

  • 着払いの伝票と送り先を、本人へ当日中に送った

参画のときに貸与品の一覧と返却ルールを伝えておくと、退場時の回収がぐっと楽になります。参画前の準備はSESの参画初日までに営業がやる準備|入場チェックリストと案内文を参考にしてください。

→ 急な退場の全体の流れはSESの契約途中の退場|営業がやる対応5ステップと連絡例文で解説しています。

トラブルを防ぐために契約で決めておくこと

貸与品のトラブルは、契約前に扱いを決めておくと、起きた時にもめにくくなります。顧客との契約と、社員・BPとの取り決めの両方を見直します。

顧客との契約で確認すること

顧客との基本契約書や個別契約書では、次の3つを確認します。

  1. 貸与品の返却の時期と方法(退場日・契約終了時)

  2. 紛失・破損の時の報告先と期限

  3. 損害賠償の上限と、対象になる損害の範囲

→ SESの基本契約書とは|テンプレートと個別契約の優先・印紙7号

社員・BPとの取り決め

社員には、就業規則や社内ルールで貸与品の扱いと報告の期限を決めておきます。金額をあらかじめ決める書き方は避けます。

客先から誓約書を求められることもあります。内容を確認し、会社として約束できない範囲がないかを見てから出します。

退場後の次の一手をチョータツで楽にする

貸与品のトラブルは、多くの場合退場とセットで起きます。回収や報告に追われる間も、空いた枠を埋める提案は止めないのが営業の仕事です。

自分でやる方法

自分でやる場合は、Excelやスプレッドシートで要員・現場・退場日・貸与品の一覧を管理します。退場の予定を早めに見つけ、回収と次の提案を同時に進めます。

ただし、ファイルが担当者ごとに分かれると、誰がどの現場にいるかがすぐにはわかりません。急な退場の時ほど、確認に時間がかかります。

チョータツでもっと楽にするなら

チョータツは、SES営業の案件・人材の情報を管理・共有できるツールです。社内で情報をそろえておけば、退場の連絡が来た時もチームで状況をすぐ確認できます。

また、他社と連携すると、相手の営業中案件・営業中人材がデータベースになります。退場で空いた枠に代わりの要員を提案する時にも、候補をすぐ探せます。チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

よくある質問

Q. SESで入館証を紛失したら、まず何をすればいいですか?
その日のうちに顧客へ電話で第一報を入れ、入館証の停止を依頼します。同時に、要員に警察へ遺失届を出してもらいます。報告は、わかっていることだけで構いません。
Q. 貸与品の弁償代を、社員の給与から天引きできますか?
勝手に天引きはできません。労働基準法第24条で、給与は全額を払うのが原則です。差し引くには、法令か労使の書面の協定などが必要です。
Q. 紛失した貸与品の弁償は、社員に全額請求できますか?
全額は難しいのが一般的です。茨石事件の最高裁判決では、その事件の事情のもとで、会社が請求できる額を損害の4分の1までとしました。金額は事情によって変わるので、専門家に相談して決めます。
Q. 退場した要員が貸与PCを返してくれない時は?
返す物・期限・返し方を書面で本人に伝え、着払いの伝票を送ります。連絡が取れない時は、緊急連絡先や代理人を通して回収します。状況は顧客へこまめに報告します。

まとめ

  • 貸与品のトラブルは、紛失・破損・未返却の3つ。顧客が気にするのは物より「入れること」と「中の情報」

  • 紛失は、当日中に顧客へ第一報、入館証やアカウントの停止を依頼、遺失届を出す

  • PCの紛失は、弁償より先に情報漏えいの確認。個人情報が入っていれば国への報告が必要な場合がある

  • 顧客への弁償は、まず契約の相手であるSES企業が対応する

  • 社員への請求は全額が難しく、給与から勝手に差し引けない。金額を前もって決める約束も避ける

  • BPなら会社同士で、フリーランスなら報酬から勝手に差し引かずに話し合う

  • 退場日が決まった時点で、チェックリストで回収の段取りを決める

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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