SESで退職代行の連絡が来たら客先にどう対応する?営業の5ステップと第一報の例文

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

退職代行とは?SES営業が知っておく3つの種類

退職代行とは、本人の代わりに会社へ「辞めます」という意思を伝えるサービスのことです。運営する組織によって、できることが違います。

連絡してきた業者がどの種類かで、営業が話し合える範囲が変わります。最初の電話やメールで、運営者の名前を必ず確認します。

種類できること営業が気をつけること
民間企業退職の意思を伝えるだけ退職日・有給・引継ぎの交渉はできない。本人の希望を伝えてもらう形になる
労働組合意思の伝達+会社との交渉団体交渉として話し合える。回答は書面で残す
弁護士意思の伝達+交渉+法的な主張未払い賃金などの請求がくることもある。社内の責任者と共有する

民間企業が交渉まで行うと、非弁行為になるおそれがあります。非弁行為とは、弁護士でない人がお金をもらって法律の交渉などを仕事として行うことです。弁護士法72条で禁止されています。

そのため民間の業者には、「交渉」ではなく「本人への伝言」をお願いする形で話を進めます。こちらから求めることは、メールで箇条書きにして送ります。

ステップ1:連絡内容を確認し、社内で共有する

最初にやるのは、誰が・いつ辞めるのか・いつから来ないのかを正確に聞き取ることです。聞き漏れがあると、客先に正しい報告ができません。

退職代行からの連絡で、確認する項目は次の6つです。

  1. 退職代行の運営者(民間企業・労働組合・弁護士のどれか)と担当者の連絡先

  2. 本人の氏名と、本人が依頼したことを示すもの(委任状など)

  3. 希望する退職日と、最後に出勤する日(多くは「本日から出社しない」)

  4. 有給休暇を使うかどうか

  5. 本人と会社が直接連絡を取ってよいか

  6. 貸与品と私物の返し方の希望

聞き取った内容は、上長・人事・総務へすぐ共有します。自社社員なら人事、BPのエンジニアならBP企業との窓口担当が中心です。

退職代行への返信メールの例文

件名:〇〇(氏名)の退職のご連絡について(株式会社××)

〇〇退職代行サービス ご担当者様

株式会社××の■■です。本日いただいたご連絡を拝受しました。
手続きのため、〇〇様ご本人へ次の点をお伝えいただけますでしょうか。

  1. 退職日と最終出勤日のご希望

  2. 有給休暇の使用のご希望

  3. 貸与品(入館証・PC・社員証)の返送:10月9日(金)までに、同封の着払い伝票で弊社宛てにお送りください

  4. 作業の状況について、別紙の質問5点へのご回答(10月7日(水)まで)

退職に関する書類は、ご本人の住所へ郵送いたします。

依頼は「お伝えいただけますか」の形にします。民間の業者に交渉を求める書き方は避けます。

BPのエンジニアの場合は、退職代行はふつうBP企業へ連絡します。BPとは、ビジネスパートナーのことで、案件に人を出してくれる協力会社を指します。自社に連絡が来たら、まずBP企業に事実を確認します。

ステップ2:客先に当日中に第一報を入れる

客先への第一報は、連絡を受けた当日中に入れます。本人は翌日から現場に来ない可能性が高いからです。

SESは多くの場合、準委任契約で結ばれています。準委任契約とは、仕事の完成ではなく、決めた作業を行うこと自体を約束する契約です。契約の相手はSES企業なので、報告と手当ては営業の責任です。

第一報で伝えるのは、次の4点だけで十分です。

  1. 本人が退職の意向を示し、出社できなくなったこと

  2. 本人がいつから現場に来ないか

  3. 貸与品と引継ぎの対応をこちらで進めていること

  4. 代わりの要員をいつまでに提案するか

「退職代行を使った」ことまで伝えるかは、社内で決めます。本人の個人的な事情は細かく話しません。「一身上の都合」と伝えれば足ります。

客先から本人へ直接連絡しないよう、あわせてお願いします。本人との窓口を自社にまとめておくと、話の食い違いを防げます。

客先への第一報の例文(メール)

電話で先に伝え、同じ内容をメールで送ります。日付は例です。

件名:【ご報告】〇〇様(貴社△△プロジェクト)の稼働について

株式会社〇〇
△△部 □□様

いつもお世話になっております。株式会社××の営業、■■です。
先ほどお電話でお伝えした件を、改めてご報告いたします。

貴社△△プロジェクトに参画している弊社の〇〇が、
一身上の都合により退職の意向を示しました。
本日2026年10月5日(月)以降、現場への出社ができない見込みです。
急なご連絡となり、多大なご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません。

現在、弊社にて次の対応を進めております。
1.入館証・PCなど貸与品の回収(10月9日(金)までに返却予定)
2.作業状況と引継ぎ資料の確認(10月7日(水)までにご共有予定)
3.代わりの要員のご提案(10月9日(金)までに候補をご提示予定)

恐れ入りますが、〇〇への直接のご連絡はお控えいただけますと幸いです。
ご不明な点は、私■■までご連絡ください。

取り急ぎ、ご報告とお詫びを申し上げます。
引き続きよろしくお願いいたします。

期限は、社内で守れる日付を書きます。守れない約束をすると、客先の信頼をさらに失います。

ステップ3:貸与品を回収する

貸与品は、退職代行を通して郵送で返してもらうのが基本です。貸与品とは、仕事のために会社や客先から貸しているもの(入館証・PC・スマホなど)のことです。

客先から借りているものは、なくなると客先のセキュリティの問題になります。入館証やカードキーは、客先にすぐ止めてもらうよう依頼します。

回収の手順は次のとおりです。

  1. 客先と自社の貸与品を一覧にする(品名・台数・管理番号)

  2. 一覧をメールで退職代行に送り、返却期限と送り先を伝える

  3. 送料は会社負担にして、追跡できる方法(宅配便など)を指定する

  4. 届いたら中身を確認し、客先へ返す

  5. 返ってこない物があれば、期限を決めて再度お願いする

貸与品の例持ち主返らないときの対応
入館証・セキュリティカード客先客先に無効化してもらい、紛失の届け出を行う
客先支給のPC客先客先の情報システム部門に報告し、遠隔ロックを相談する
自社のPC・スマホ自社自社でアカウント停止と遠隔ロックを行う
社員証・健康保険証自社人事手続きとあわせて返却を求める

貸与品が返らないときは、SESの貸与品返却トラブル|入館証の紛失・未返却時の対応と費用負担の手順で進めます。客先のPCが行方不明なら、SESで客先の貸与PCを紛失したら|最初の1時間の報告と費用負担に沿って報告します。

ステップ4:引継ぎ資料を確保する

引継ぎは本人に強制できないので、「手元の資料を集める」ことを優先します。本人に頼むのは、足りない部分の書面での回答だけにします。

本人の出社は期待できません。まず客先と自社に残っている情報から、作業の状況を組み立てます。

  • 客先のチケット管理ツールやタスク一覧

  • 共有フォルダにある設計書・手順書

  • 直近の作業報告書(日報・週報・稼働報告書)

  • 客先の現場リーダーが把握している担当範囲

足りない情報は、質問を5つ程度にしぼり、退職代行を通して書面で回答をお願いします。「最後に触っていた作業」「途中のまま残っている作業」「パスワードなどの保管場所」が優先です。

引継ぎに時間がかかる場合、客先から「引継ぎ期間の費用はどうするのか」と聞かれることがあります。考え方はSESの要員交代の引継ぎ費用は誰が負担?条項例と交渉トーク付きを参考にしてください。

ステップ5:代わりの要員を提案する

代わりの要員(後任)の提案が、客先の信頼を取り戻すいちばんの方法です。代替要員とは、退場した人の代わりに現場へ入る人のことです。

第一報で約束した日までに、候補を1〜3名出します。スキルが少し足りなくても、「いつから入れるか」がはっきりした候補は喜ばれます。

  1. 案件の条件(スキル・単価・開始日・場所)をもう一度整理する

  2. 自社の待機中の要員と、来月に空く要員を確認する

  3. BP企業に案件を一斉に案内する

  4. フリーランスに直接声をかける

  5. 候補のスキルシートを客先に送り、面談の日程を決める

短い期間だけ、自社の別の要員が一部を手伝う案もあります。ただし、今の現場の契約や客先の了承が必要です。

BPのエンジニアやフリーランスの場合は何が違う?

BPのエンジニアの場合、契約の相手はBP企業なので、対応の窓口もBP企業です。自社は、BP企業から事実と今後の対応を受け取り、客先へ伝えます。

状況退職代行の連絡先営業がやること
自社社員(プロパー)自社5ステップをすべて自社で行う
BP企業の社員BP企業BP企業に事実確認、貸与品回収と後任の提案を依頼する
個人のフリーランス(直接契約)自社業務委託の終了として扱い、契約書の解約条項を確認する

プロパーとは、SES企業が直接雇っている自社の社員のことです。

BP企業との基本契約に「要員が辞めたときは後任を出す」という条項があるか確認します。条項があれば、BP企業に後任の提案を正式に求められます。

個人のフリーランスとの契約は雇用ではないため、民法の「委任」のルールが中心になります。準委任はいつでも解除できますが、相手に不利な時期の解除は損害賠償の対象になりえます(民法651条)。

退職代行を使われたら損害賠償は請求できる?

自社社員に損害賠償を請求できるケースは、ほとんどありません。退職そのものは法律で認められた権利だからです。

期間の定めのない雇用なら、辞めると伝えてから2週間で雇用が終わります(民法627条1項)。退職代行を使ったかどうかは関係ありません。

契約社員など期間の定めのある雇用では、原則は期間の途中で辞められません。ただし「やむを得ない事由」があれば辞められます(民法628条)。1年を超える契約なら、1年が過ぎた後はいつでも辞められます(労働基準法137条)。

また、労働基準法16条は、あらかじめ「辞めたら違約金〇円」と決めることを禁止しています。入社時の誓約書にそう書いてあっても、その取り決めは使えません。

やってはいけない対応は次のとおりです。

  • 「損害賠償を請求する」と言って引き止める

  • 本人の自宅に押しかける、家族に連絡する

  • 最後の給与を払わない、勝手に差し引く(労働基準法24条で全額払いが原則)

  • 退職届が出ていないことを理由に、退職を認めない

客先から損害賠償を求められた場合は、客先と自社の契約書で判断します。考え方はSESの途中退職で損害賠償は請求できる?判断基準と上限を解説にまとめています。

退職代行を使われにくくするために、ふだんからできること

退職代行を使う人の多くは「直接言い出しにくい」と感じています。営業がふだんから話しやすい関係を作ると、急な連絡は減らせます。

  • 月1回は本人と面談し、現場の不満や体調を聞く

  • 退職や契約終了の相談窓口(上長・人事)をはっきり伝えておく

  • 作業報告書を毎週もらい、引継ぎに使える形でためておく

  • 客先の貸与品を一覧にして、入場時から管理しておく

退場の全体の流れは、SESの契約途中の退場|営業がやる対応5ステップと連絡例文で整理しています。体調不良で急に来られなくなるケースもあります。客先への伝え方はSESで体調不良のエンジニアが退場・休職するとき|客先連絡の例文付きも参考になります。

自分で後任を探す方法と、チョータツで楽にする方法

後任探しは、自社の待機要員・BP企業・フリーランスの順に当たるのが早道です。まずは自分でできる方法から紹介します。

自分でやる方法

  1. 自社の人材一覧(Excelなど)から、スキルが合う人を探す

  2. 付き合いのあるBP企業に、案件の案内メールを一斉に送る

  3. 届いた人材メールを読み、条件が合う人を拾い出す

この方法は費用がかかりません。ただ、人材メールを読む量が多いと、候補を出すまでに数日かかります。

チョータツで楽にする方法

チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。3,000社以上が利用していて、無料で始められます。

  • 他社と連携すると、相手の営業中人材がデータベースになり、条件で探せます

  • 自社の案件を、メール配信機能でパートナーへまとめて送れます

  • 案件・人材の情報を社内で共有でき、担当者が不在でも動けます

フリーランスに直接声をかけるなら xhours

xhoursは、企業がITフリーランスに直接スカウトを送れるサービスです。数千名のフリーランスのデータベースから探せます。BP企業から候補が出ないときの、もう1つの手段になります。

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よくある質問

Q. 退職代行から「本日から出社しません」と言われました。客先に出てもらうよう頼めますか?
頼むことはできますが、強制はできません。本人は有給休暇や欠勤で出社しない形をとることが多いです。出社しない前提で、客先への第一報と後任の手配を進めます。
Q. 退職代行の業者と、退職日や引継ぎについて交渉してもいいですか?
業者の種類によります。民間企業は意思を伝えるだけで、交渉はできません。交渉が必要なら、労働組合や弁護士が運営する代行か、本人の代理人弁護士と話します。
Q. 客先から本人に直接連絡してもらってもいいですか?
避けてください。本人は会社と直接話したくない状態です。連絡は営業が窓口になり、客先には営業から状況を伝えます。
Q. 退職代行を使ったエンジニアに損害賠償を請求できますか?
自社社員に対しては、ほとんどの場合できません。退職は法律で認められていて、違約金を決めておくことも禁止されています。請求をちらつかせる引き止めはやめましょう。
Q. BPのエンジニアが退職代行を使った場合、うちは何をすればいいですか?
BP企業に事実確認と後任の提案を求め、客先には自社から第一報を入れます。貸与品の回収も、BP企業を通して進めます。
Q. 客先へは「退職代行を使った」と伝えるべきですか?
必ずしも伝える必要はありません。「一身上の都合で退職の意向を示し、出社できなくなった」と伝えれば足ります。社内で伝え方をそろえておきます。

まとめ

  • 退職代行から連絡が来たら、運営者の種類と退職日、出社の有無をまず確認する

  • 客先には当日中に第一報を入れ、貸与品・引継ぎ・後任の期限を約束する

  • 貸与品は一覧にして郵送で回収し、客先の入館証はすぐ止めてもらう

  • 引継ぎは本人に強制できないので、手元の資料を集めて足りない部分だけ書面で聞く

  • 自社社員への損害賠償はほぼ認められない。引き止めより後任探しに時間を使う

  • ふだんからチョータツでBPの人材をデータベースにしておくと、すぐ動ける

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

  • e-Gov法令検索「民法」(第627条 期間の定めのない雇用の解約、第628条、第651条 委任の解除)

  • e-Gov法令検索「労働基準法」(第16条 賠償予定の禁止、第24条 賃金の支払、第137条)

  • e-Gov法令検索「弁護士法」(第72条 非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)