SESの営業支援費とは?払う側・受け取る側の契約書の条項例8つと、職業紹介と見なされないための注意点5つ

公開日:2026年9月29日更新日:2026年9月29日

SESの営業支援費とは?

営業支援費とは、SESの取引で案件や人材を紹介した会社に対して、紹介を受けた会社が払う手数料のことです。業界では「支援費」「紹介料」「コンサル費」など、会社によって呼び方が違います。法律で決まった言葉ではないので、契約書では意味をはっきり書く必要があります。

たとえば、A社がB社に「この案件、御社のエンジニアに合いそうです」と紹介したとします。B社のエンジニアがその案件で働き始めたら、B社がA社に毎月お礼を払う。この「お礼」が営業支援費です。

商流(しょうりゅう)とは、SESの仕事が発注元から何社かを通ってエンジニアまで流れる経路のことです。営業支援費は、紹介した会社が商流に入らない代わりに受け取ることが多いお金です。商流に入ると単価から毎月マージンを取りますが、支援費の形なら商流を浅く保てます。

営業支援費の2つの払い方

払い方中身向いている場面
継続型エンジニアが稼働している間、毎月払う長く続きそうな案件
一括型契約が決まったときに1回だけ払う短期の案件、関係が浅い相手

継続型は、紹介した会社にとって収入が続きます。一方、払う側は「いつまで払うのか」を決めておかないと、ずっと払い続けることになります。

→ マージンの考え方はSESのマージン率の平均と相場で詳しく解説しています。

営業支援費が発生する3つの場面

営業支援費は、主に「商流から抜ける」「案件を紹介する」「人材を紹介する」の3つの場面で発生します。どの場面かで、払う側と受け取る側が変わります。

場面払う側受け取る側
商流から抜ける商流が1段浅くなった会社抜けた会社
案件を紹介する案件を受けたSES企業案件を紹介した会社
人材を紹介する人材を案件に入れた会社人材の情報を渡した会社

1. 商流から抜ける
間に入っていた会社が商流から外れ、その代わりに支援費を受け取る形です。「支援費対応」と呼ばれることもあります。関係する会社全員が合意していることが前提です。

2. 案件を紹介する
自社では人を出せない案件を、別のSES企業に紹介する形です。紹介した会社は契約の当事者にならず、紹介のお礼だけを受け取ります。

3. 人材を紹介する
BPの営業中人材を、自社が持つ案件に紹介してもらう形です。ただし、エンジニアを自社の社員として雇う話になると、話が大きく変わります。雇用のあっせんは職業紹介にあたるためです(くわしくは後の「注意点5つ」で説明します)。

営業支援費の相場と計算方法

営業支援費には、公的な統計や決まった相場はありません。率も定額も、会社や相手との関係によって大きく違います。大切なのは、相場より自社の粗利の中で払える額かを計算することです。

計算の例

月額単価70万円の案件で、支援費を単価の10%、支払い期間を最大6か月とした場合の例です。10%は計算を見せるための仮の数字で、相場ではありません。

項目金額
月額単価70万円
支援費(単価の10%)7万円/月
6か月の合計42万円

計算式は「月額単価 × 支援費率 × 支払い月数」です。率ではなく「月3万円」のように定額にする方法もあります。定額なら、精算で単価が上下しても支援費は変わらないので、計算がかんたんです。

払う側が確認したいこと

支援費を払うと、そのぶん自社の粗利が減ります。70万円の案件で自社の粗利が月10万円なら、支援費7万円を払うと残りは3万円です。エンジニアへの給与や社会保険料を引いたあとの粗利で考えましょう。

→ 粗利の計算はSESの粗利率の平均と利益率の計算式も参考にしてください。

払う側・受け取る側のメリットとリスク

営業支援費は、うまく使えば双方に得ですが、条件があいまいだと必ず揉めます。立場ごとのメリットとリスクを表にまとめました。

立場メリットリスク
払う側自社だけでは出会えない案件・人材が手に入る支払いが長引き、粗利が減る
受け取る側自社で人を出さなくても収入になる口約束だと払ってもらえない

支援費が高すぎると、しわ寄せがエンジニアの単価や給与に向かうこともあります。長く続く取引にするには、無理のない額にとどめましょう。

払う側は「いつ終わるか」、受け取る側は「確実に払ってもらえるか」が一番の心配ごとです。この2つを契約書で先に決めておけば、ほとんどの揉めごとは防げます。

契約書に入れる条項例8つ

営業支援費の契約書には、少なくとも「目的・対象・金額・期間・支払い・終了・秘密保持・禁止事項」の8つの条項を入れます。基本契約書に追加するか、別に覚書(取り決めを書き残す短い書面)を作る方法が一般的です。

基本契約書とは、取引先と何度も取引するときの共通ルールをまとめた契約書のことです。→ SES基本契約書のテンプレートと条項チェック15

次の条項例は、考え方を示すための参考です。そのまま使わず、必ず専門家の確認を受けてください。

1. 目的(何の対価か)

第1条(目的)甲は、乙による案件情報の提供(以下「本紹介」)の対価として、営業支援費を乙に支払う。

「何のお礼か」を最初に書きます。人の雇用のあっせんではなく、案件情報の提供の対価であることを明確にします。

2. 対象(どの案件・どの人材か)

第2条(対象)本覚書の対象は、別紙に記載する取引に限る。別紙には、案件名、エンド名(開示できる範囲)、稼働開始日、要員名(イニシャル)を記載する。

対象をしぼらないと「あの案件も紹介したはず」と言われます。1件ごとに別紙で特定しましょう。

3. 金額の決め方

第3条(金額)営業支援費は、月額〇万円(税別)とする。精算による単価の増減は、営業支援費の額に影響しない。

率か定額かを決めます。率にするなら「精算前の単価か、精算後の単価か」まで書きます。

4. 支払い期間と上限

第4条(期間)営業支援費の支払いは、稼働開始月から最長〇か月、または合計〇万円に達するまでとする。

上限(月数か合計額)がないと、払い続けることになります。払う側にとって一番大事な条項です。

5. 支払い方法

第5条(支払い)乙は毎月末日締めで請求書を発行し、甲は翌月末日までに乙の指定口座に振り込む。振込手数料は甲の負担とする。

締め日・支払日・振込手数料の負担を決めます。自社のエンドからの入金日より前に払う設定にすると、資金繰りが苦しくなります。

6. 終了する条件

第6条(終了)対象要員の稼働が終了した場合、または甲と顧客との契約が終了した場合、当該月分をもって支払いを終了する。

途中退場や契約終了のときの扱いです。「稼働した日数で日割りにするか」も決めておきましょう。

7. 秘密保持

第7条(秘密保持)甲及び乙は、本紹介に関して知り得た案件・要員・単価の情報を、第三者に開示してはならない。

単価や支援費の額が外に漏れると、商流の他社との関係が悪くなります。

8. 禁止事項(直接取引・引き抜き)

第8条(禁止事項)甲は、本覚書の有効期間中及び終了後〇か月間、乙の同意なく、本紹介に係る顧客と直接取引してはならない。

紹介を受けた会社が、紹介元を飛ばして直接取引するのを防ぐ条項です。→ SESの商流飛ばしは違法?リスクと防ぎ方

営業支援費を結ぶ前の注意点5つ

営業支援費は、会社どうしの取引の紹介であれば、それ自体が禁止されているものではありません。ただし、形によっては法律の問題になります。結ぶ前に、次の5つを必ず確認しましょう。

注意点1:人の雇用をあっせんしない(職業紹介にしない)

職業紹介とは、求人と求職の申込みを受けて、雇用関係の成立をあっせんすることです(職業安定法第4条)。手数料を取って職業紹介をするには、厚生労働大臣の許可が要ります(職業安定法第30条)。

たとえば「BPの社員を自社の正社員として雇いたいので、紹介してくれたら支援費を払う」という形です。これは案件の紹介ではなく、雇用のあっせんにあたります。

許可なく手数料を取る職業紹介は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(職業安定法第64条第1号)。拘禁刑は、2025年6月に懲役・禁錮をまとめてできた刑罰です(罰則は2026年9月時点)。

営業支援費は、会社と会社の準委任契約(SES契約)が決まったことへの対価にとどめましょう。人の採用がからむ場合は、許可を持つ人材紹介会社を通すか、専門家に相談します。

→ 引き抜きの紹介料についてはSESの引き抜きに紹介料は取れる?で解説しています。

注意点2:エンジニアの報酬から抜かない(中間搾取にしない)

労働基準法第6条は、法律で許された場合を除き、業として他人の就業に介入して利益を得ることを禁じています。これを中間搾取の禁止といいます。違反すると、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(労働基準法第118条)。

支援費を「エンジニア本人の給与や報酬から天引きする」形は避けましょう。支援費は会社の粗利から、会社どうしで払うものです。エンジニアとの契約書や給与明細には出てこない形にします。

注意点3:商流飛ばしと区別する

支援費対応は、関係する全社が合意して商流から抜ける取引です。一方、合意なしに間の会社を外すのは「商流飛ばし」で、契約違反や損害賠償の原因になります。

商流から抜ける場合は、抜ける会社・残る会社・発注元の全員の合意を、メールや覚書で残しましょう。

注意点4:支援費を払っても指示の権利は生まれない

支援費を受け取る会社は、エンジニアの仕事に口を出す立場ではありません。紹介した会社が現場のエンジニアに作業の指示を出すと、偽装請負や二重派遣を疑われる原因になります。

偽装請負とは、契約書は準委任や請負なのに、実態は発注側がエンジニアに直接指示している状態のことです。→ 偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選 / SESの二重派遣は違法?罰則と避ける契約の組み方

注意点5:お金の流れを書面と請求書で残す

支援費は、請求書を出してもらい、会社の口座どうしで振り込みます。現金の手渡しや、担当者個人の口座への振り込みはやめましょう。経理上も説明がつかず、担当者どうしの不正のもとになります。

支援費は会社の売上・経費になるので、消費税やインボイス(適格請求書)の扱いは、経理担当や税理士に確認してください。

営業支援費を合意するまでの6ステップ

営業支援費は、「紹介を受ける前」に条件を決めておくのが一番揉めない進め方です。決まってから条件を話すと、立場の強い側の言い値になりがちです。

  1. 紹介を受ける前に、支援費の有無を確認する:支援費を求められたら、その場で率・期間の目安を聞きます。

  2. 自社の粗利で払えるか計算する:月額単価 × 支援費率 × 月数で合計を出し、給与や社会保険料を引いた粗利と比べます。

  3. 対象と条件をメールで合意する:案件名、要員(イニシャル)、金額、期間、上限をメールで送り、返信で合意を取ります。

  4. 覚書または個別契約書を作る:8つの条項を入れた書面を作り、双方の社内で確認します。

  5. 法務・専門家の確認を受ける:人の雇用がからまないか、指示の流れに問題がないかを確認します。

  6. 支払いの管理表を作る:対象案件、開始月、終了予定月、支払い済みの額を毎月記録します。

特にステップ6の管理表は忘れがちです。支払いの終了月が来ても止め忘れ、払いすぎるケースがあります。

案件・人材の情報をチョータツで整理する

支援費で揉めないためには、「どの案件・人材を、いつ、どの会社から紹介されたか」をすぐ出せる状態にしておくことが大切です。

自分でやる方法

まずは、Excelやスプレッドシートで紹介の記録表を作りましょう。列は「紹介元の会社」「案件名」「要員」「紹介を受けた日」「支援費の条件」「支払い終了予定月」の6つで足ります。メールで届いた紹介は、受け取った日にその表へ転記します。

ただし、紹介のメールが1日に何十通も届くと、転記が追いつかなくなります。担当者ごとに別のファイルで管理していると、チームで同じ案件を二重に扱うこともあります。

チョータツでもっと楽にする

チョータツとは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。3,000社以上が利用しており、無料で始められます。

  • 案件・人材の情報を1か所で管理・共有できる:担当者ごとのファイルがなくなり、チームで同じ情報を見られます。

  • AIが入力を手伝う:案件・人材の情報を登録する手間を減らせます。

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・人材をデータベース化できる:BPの情報がたまり、紹介前に条件を比べやすくなります。

  • パートナーへのメール配信機能がある:自社の案件・人材を、取引先にまとめて届けられます。

支援費の契約書そのものは自社で作る必要があります。そのうえで、紹介の元になる案件・人材の情報をチョータツにまとめておくと、「言った・言わない」を減らせます。

よくある質問

Q. SESの営業支援費は違法ですか?
会社どうしの案件紹介の対価であれば、それ自体は禁止されていません。ただし、人の雇用をあっせんして手数料を取ると、職業紹介の許可が要ります。エンジニアの報酬から抜く形も避けましょう。
Q. 営業支援費の相場はいくらですか?
公的な相場や統計はなく、会社ごとに違います。「月額単価 × 支援費率 × 月数」で合計を出し、自社の粗利から払える額かを確かめて決めましょう。
Q. 営業支援費の契約書のひな形はありますか?
公的なひな形はありません。本記事の条項例8つを土台にしましょう。目的・対象・金額・期間・支払い・終了・秘密保持・禁止事項を入れ、専門家の確認を受けて仕上げます。
Q. 支援費は基本契約書に書くべきですか、覚書にすべきですか?
相手と何度も支援費のやり取りがあるなら、基本契約書に共通ルールを書きます。案件ごとの金額や期間は、覚書や個別契約書で1件ずつ決めると管理しやすくなります。
Q. 途中でエンジニアが退場したら、支援費はどうなりますか?
契約書の「終了する条件」の書き方で決まります。書いていないと揉めるので、「稼働終了の月で支払いを終える」「日割りにする」などを先に決めておきましょう。→ SESの契約途中の退場|営業がやるべき対応5ステップ
Q. 支援費を受け取る会社は、現場に指示を出してもいいですか?
いいえ。支援費は紹介の対価で、指示の権利ではありません。紹介元が現場に指示を出すと、偽装請負や二重派遣を疑われる原因になります。

まとめ

  • 営業支援費とは、案件や人材を紹介した会社に払う紹介の手数料のこと

  • 払い方は継続型と一括型。公的な相場はないので、率・期間・上限を契約書で決める

  • 契約書には、目的・対象・金額・期間・支払い・終了・秘密保持・禁止事項の8つを入れる

  • 人の雇用のあっせんにしない、エンジニアの報酬から抜かない、の2つが最重要

  • 紹介の記録は、案件・人材の情報とあわせてチョータツにまとめると追いやすい

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツ(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月29日|更新日:2026年9月29日

参考資料(2026年9月28日確認)

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