ソフトウェア開発のステップ単価とは?相場と計算方法、人月単価との違いと判断基準
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
ステップ単価とは?
ステップ単価とは、ソフトウェアのソースコード1行(1ステップ)あたりの開発料金のことです。 「1ステップ〇円」という形で表し、作るプログラムの量に応じて費用を決める見積もり方です。
ステップとは、プログラムの行数の数え方のことです。1,000ステップをまとめて「1KS(キロステップ)」と呼びます。英語では「LOC(Lines of Code:コードの行数)」や「SLOC」と書くこともあります。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| ステップ | プログラムの1行 | 1ステップ=1行 |
| KS(キロステップ) | 1,000ステップ | 20KS=2万行 |
| ステップ単価 | 1ステップあたりの料金 | 1ステップ200円 |
| 生産性 | 1人月で作れるステップ数 | 1人月4,000ステップ |
何を1ステップと数えるかを先に決める
ステップ数は、数え方のルールで大きく変わります。見積もりの前に、客先と次の3点をそろえておきましょう。
コメント行・空行を数えるか
ツールが自動で作ったコードを数えるか
既存システムの改修で、変更した行だけを数えるか、追加・削除も数えるか
ルールがそろっていないと、同じプログラムでも行数が2倍近く違うことがあります。「1ステップ200円」という数字だけを比べても意味がありません。
ステップ単価の計算方法
ステップ単価は「人月単価 ÷ 1人月あたりの生産ステップ数」で出し、見積額は「ステップ数 × ステップ単価」で出します。 人月単価は、エンジニア1人が1か月働いたときの料金です。詳しくは人月単価とは?計算方法と工数単価との違い|SES見積もりの例つきで解説しています。
人月単価を決める:担当するエンジニアの提案単価を使います。
生産性を決める:自社の過去の案件から「1人月で何ステップ作ったか」を出します。
ステップ単価を出す:人月単価を生産性で割ります。
規模を見積もる:画面・帳票・機能の数から、全体のステップ数を見積もります。
見積額を出す:ステップ数にステップ単価を掛け、管理費やリスク分を足します。
計算例:2万ステップの受託を見積もる場合
次の数字は、計算の流れを示すための仮の数字です。実際には自社の実績に置きかえてください。
| 項目 | 数字 | 計算 |
|---|---|---|
| 人月単価 | 80万円 | 提案単価 |
| 生産性 | 1人月4,000ステップ | 自社実績 |
| ステップ単価 | 200円 | 80万円 ÷ 4,000 |
| 見積額(製造分) | 400万円 | 20,000 × 200円 |
400万円は、人月に直すと5人月分(400万円 ÷ 80万円)です。ここに、プロジェクト管理や手戻りのための予備を足して、最終の見積額にします。
生産性は「どの工程まで含むか」で変わる
1人月4,000ステップという生産性が、プログラムを書く工程だけの数字か、設計からテストまでの数字かで、ステップ単価は大きく変わります。設計やテストの時間を含めれば、1人月で作れるステップ数は少なくなり、ステップ単価は上がります。
見積書には「どの工程まで含むステップ単価か」を必ず書きましょう。書き方はSESの見積書の書き方|テンプレートと記載項目10・注意点が参考になります。
ステップ単価の相場は?
ステップ単価に、公的に決まった相場はありません。 使う言語、工程の範囲、品質の求められ方、新規か改修かによって、同じ1ステップでも手間がまったく違うからです。
IPA(情報処理推進機構)は「ソフトウェア開発分析データ集」という資料を出していました。多くの開発プロジェクトについて、規模・工数・生産性のデータを集めた資料です。ただ、こうした資料の数字も、言語や工程の範囲などの前提がそろったプロジェクトどうしで比べるためのものです。「1ステップ〇円」という相場を決めるものではありません。
そのため、ネットで見かける「1ステップ〇円」という数字を、そのまま見積もりに使うのはおすすめしません。自社の実績から逆算した数字を使いましょう。
ステップ単価が変わる4つの要因
| 要因 | 単価が上がりやすい | 単価が下がりやすい |
|---|---|---|
| 言語 | 1行で多くの処理を書ける言語 | 1行あたりの処理が少ない言語 |
| 工程の範囲 | 設計〜テストまで含む | プログラムを書くだけ |
| 新規か改修か | 既存システムの改修 | 新規開発 |
| 品質の求め | 金融・医療など高い品質 | 社内向けの小さなツール |
改修は、既存のコードを読む時間や、影響する範囲を確かめるテストが増えます。そのため、書く行数が少なくても手間は大きくなりがちです。
「システム開発の単価」「ソフト開発の費用相場」はどう考える?
システム開発やソフト開発の費用は、「規模 × 単価」で決まります。 規模をどの物差しで測るかによって、主な出し方は3つあります。
| 出し方 | 規模の物差し | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 人月単価 | 人の数と期間 | SES・準委任、要件が固まっていない開発 |
| ステップ単価 | プログラムの行数 | 同じ言語・同じ種類の開発を繰り返す受託 |
| ファンクションポイント | 機能の数と複雑さ | 言語に左右されずに規模を比べたいとき |
ファンクションポイント(FP)とは、画面・帳票・データなど「利用者から見た機能」の数と複雑さで規模を測る方法のことです。行数を使わないので、言語による差が出にくいのが特徴です。
ステップ単価と人月単価の違い
人月単価は「人が働いた時間」に払う料金で、ステップ単価は「できあがったプログラムの量」に払う料金です。 この違いが、契約の形と、誰がリスクを負うかの違いにつながります。
| 比べる点 | ステップ単価 | 人月単価 |
|---|---|---|
| 何に払うか | 作ったプログラムの量 | エンジニアが働いた時間 |
| よく使う契約 | 請負契約 | 準委任契約(SES) |
| 予定より時間がかかったら | 受注側の負担になる | 精算幅の中なら料金は同じ |
| 完成の責任 | 受注側が負う | 原則として負わない |
請負契約とは、仕事を完成させることを約束し、その結果に対して報酬を受け取る契約のことです(民法第632条)。準委任契約とは、決められた業務を行うこと自体を約束する契約のことです(民法第656条)。SESは、ふつう準委任契約で結ばれます。詳しくは準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シートをご覧ください。
SES営業にとっての一番大きな違い
一番大きな違いは、予定より時間がかかったときに、誰がお金をかぶるかです。人月単価のSESなら、稼働時間が精算幅の中に収まる限り、請求額は変わりません。ステップ単価の請負では、1人月4,000ステップの予定が3,000ステップしか進まなくても、受け取る金額は同じです。足りない分の人件費は自社の持ち出しになります。
さらに請負では、納めたものが契約の内容に合わないと、契約不適合責任を問われることがあります。契約不適合責任とは、納めたものに不具合などがあったとき、直したり代金を減らしたりする責任のことです。民法では、注文者は不具合を知ってから1年以内に通知すれば、この責任を問えるとされています(民法第637条)。
ステップ単価の弱点と、使うときの注意
ステップ単価は計算がわかりやすい反面、「行数が多いほど高い」という仕組みに弱点があります。 使う場合は、次の4点に気をつけましょう。
短く書くほど損をする:上手な人が短く書くと、同じ機能でも請求額が下がります。
改修の手間が反映されにくい:数行の修正に何日も調べることがあります。
言語が違うと比べられない:同じ機能でも、言語によって行数が変わります。
行数を増やしたくなる:無駄な行を書く動機が生まれ、品質が下がるおそれがあります。
そのため、ステップ単価は社内の見積もりの物差しとして使う会社もあります。客先には、機能ごとの一式金額で出す形です。客先がステップ単価での見積もりを求めてきたときは、数え方のルールを文書で合意してから出しましょう。
SES営業はどちらで見積もるべき?判断基準
完成に責任を持てるなら規模ベース(請負)、持てないなら人月単価(準委任)で出すのが基本です。条件は、次の3つです。
要件が決まっているか:作るものの範囲と仕様が、文書で決まっている
完成の責任を負えるか:自社で設計・品質管理・テストまで回せる体制がある
同じ種類の実績データがあるか:同じ言語・同じ種類の開発で、生産性の実績がある
3つすべてが「はい」なら、請負で見積もってよい状態です。1つでも「いいえ」なら、人月単価の準委任で出すか、要件を決める工程だけ準委任で先に受けましょう。
よくある打診パターンと、出し方の目安
| 客先からの打診 | おすすめの出し方 | 理由 |
|---|---|---|
| 今の常駐メンバーで追加開発も | 人月単価(準委任) | 要件が動きやすい |
| 画面3つだけ請負で切り出したい | ステップ単価か一式金額(請負) | 範囲が小さく決めやすい |
| SESを全部請負に切り替えたい | 要件定義は準委任、製造から請負 | 範囲を決めてから責任を負う |
| 予算内で完成させてほしい | 範囲を決めてから請負 | 予算だけでは規模を測れない |
短期間の開発を切り出されたときの単価の考え方は、SESのスポット・短期案件の単価相場|見積もりと契約の注意点も参考にしてください。複数名の体制で受ける提案書の作り方は、エンド直案件の提案書の作り方|SESの体制提案の構成と見本で紹介しています。
SESから請負への切り替えを打診されたときの手順
打診の理由を聞く:予算の固定、管理の手間を減らしたい、など客先の目的を確認します。
範囲を文書にしてもらう:作る画面・機能・納期・検収の方法を書き出してもらいます。
自社の体制を確かめる:設計・テスト・進捗管理を自社で担える人がいるか確認します。
実績から生産性を出す:同じ種類の過去案件から、1人月あたりのステップ数を出します。
2つの見積もりを並べる:人月単価の準委任と、請負の金額を並べて客先に見せます。
契約書を見直す:検収、契約不適合責任、損害賠償の上限を請負向けに直します。
回答メールの例文
件名:開発範囲の請負化についてのご回答(2026年10月6日)
株式会社〇〇 〇〇様
いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
10月1日(木)にご相談いただいた、帳票機能の請負化について回答いたします。請負でお受けするには、対象の帳票と検収の条件を確定させる必要がございます。
そこで、次の2案をご用意しました。・A案:現在の準委任契約のまま、人月単価で進める
・B案:要件定義を準委任で先に行い、11月2日(月)以降の開発を請負で進めるB案の請負部分は、要件の確定後にお見積もりいたします。
10月9日(金)までに、ご都合のよい打ち合わせ日時をお知らせいただけますと幸いです。
請負で受けるときに注意したいこと
請負なのに、客先の担当者がエンジニアへ直接、作業の指示や時間の管理をすると、偽装請負と判断されるおそれがあります。厚生労働省の基準(いわゆる37号告示)では、請負の会社が自分で作業の指示や労働時間の管理をすることが求められています。請負に切り替えたら、指示の窓口を自社のリーダーに一本化しましょう。複数名で受けるときの体制の組み方は、SESのチーム提案のやり方|複数名の体制の組み方と単価の出し方が参考になります。
チョータツで見積もりの材料を集める
自分でやるなら、過去の案件の人月単価と生産性を、Excelなどに案件ごとに記録していくのが第一歩です。 案件名・言語・工程の範囲・人月単価・作ったステップ数を並べておくと、次の見積もりでステップ単価をすぐ逆算できます。
ただ、自社の実績だけでは件数が少なく、単価の相場感をつかみにくいこともあります。そこで、チョータツを使うと次のことが楽になります。
案件・人材の情報をまとめて管理・共有できる:案件ごとの条件を、営業チームで同じ画面から確認できます。
他社の営業中案件をデータベース化できる:他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材がデータとして集まります。似た案件の単価や条件を見比べる材料になります。
パートナーにメールを配信できる:請負で人手が足りないとき、協力会社へまとめて声をかけられます。
チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。AIが入力を手伝うので、案件情報をためる手間も抑えられます。
よくある質問
- Q. ステップ単価の相場はいくらですか?
- 公的に決まった相場はありません。言語・工程の範囲・新規か改修かで大きく変わります。「人月単価 ÷ 1人月で作れるステップ数」で、自社の実績から出すのが確実です。
- Q. ステップ単価と人月単価は、どちらが一般的ですか?
- SESの見積もりでは人月単価が一般的です。ステップ単価は、同じ種類の開発を繰り返す受託で、規模の物差しとして使われることが多い見積もり方です。
- Q. ステップ数は、どうやって見積もればいいですか?
- 画面・帳票・機能の数を洗い出し、過去の似た機能が何ステップだったかを掛け合わせて見積もります。数え方のルール(コメント行・自動生成コードの扱い)も客先とそろえましょう。
- Q. SESのまま、追加開発を頼まれたときはどうしますか?
- 要件が固まっていなければ、今の準委任契約のまま人月単価で受けるのが安全です。範囲が決まっていて完成責任を負えるなら、その部分だけ請負で見積もる方法もあります。
- Q. ソフト開発の費用相場を客先に聞かれたら、どう答えますか?
- 「規模 × 単価」で決まることを説明し、規模の測り方(人月・ステップ・機能数)を示しましょう。金額の幅だけを伝えるより、前提を合わせたほうが後で揉めません。
まとめ
ステップ単価とは、プログラム1行(1ステップ)あたりの開発料金のこと
計算は「人月単価 ÷ 1人月の生産ステップ数」、見積額は「ステップ数 × ステップ単価」
公的な相場はない。言語・工程・新規か改修か・品質で変わるので、自社実績から出す
人月単価は「時間」、ステップ単価は「できた量」に払う。請負は予定超過の負担と完成責任を自社が負う
要件確定・完成責任を負える体制・実績データの3つがそろえば請負、欠ければ人月単価の準委任で出す
請負に切り替えるときは、2案を並べて提示し、指示の窓口と契約書を請負向けに直す
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「ソフトウェア開発分析データ集」
e-Gov法令検索「民法」(第632条 請負、第637条 目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限、第656条 準委任)
厚生労働省「請負を適正に行うために」(37号告示:労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)