派遣の労使協定方式とは?派遣先均等・均衡方式との違いと単価への効き方をSES向けに解説
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
労使協定方式とは?同一労働同一賃金の2つの方式の一つ
労使協定方式とは、派遣元が労働者の過半数代表などと書面で協定を結び、その協定で派遣社員の待遇を決める方式のことです。労働者派遣法第30条の4に定められています。
背景にあるのが同一労働同一賃金です。同一労働同一賃金とは、同じ仕事なら雇用の形にかかわらず、不合理な待遇差をなくすという考え方のことです。派遣社員については、2020年4月1日施行の改正労働者派遣法で、派遣元に次の2つのどちらかを選ぶ義務ができました。
| 方式 | 比べる相手 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 派遣先均等・均衡方式 | 派遣先で同じ仕事をする社員 | 労働者派遣法 第30条の3 |
| 労使協定方式 | 国が示す同じ職種の一般の労働者の平均賃金 | 労働者派遣法 第30条の4 |
派遣元とは派遣社員を雇って送り出す会社、派遣先とは派遣社員を受け入れて指示を出す会社のことです。くわしくは派遣元・派遣先とは?違いと責任の分担をSES営業向けに一覧で解説で整理しています。
協定に書く主な項目
労使協定には、法律で決められた項目を書きます。主な項目は次のとおりです。
協定の対象になる派遣社員の範囲
賃金の決め方(一般賃金と同じ額以上にすること)
仕事の成果や能力が上がったら賃金を改善すること
公正に評価して賃金を決めること
賃金以外の待遇(派遣元の社員と不合理な差をつけない)
教育訓練の実施
協定の有効期間
協定を結ぶ相手は、社員の過半数でつくる労働組合か、社員の過半数代表者です。過半数代表者とは、社員の投票や挙手などで選ばれた社員の代表のことです。会社が指名した人では認められません。
派遣先均等・均衡方式との違い|比較表
2つの方式の一番の違いは、賃金を「派遣先の社員」と比べるか、「国の統計の平均」と比べるかです。SES会社の営業にとっては、派遣先から受け取る情報の量と、賃金が変わるタイミングが大きく違います。
| 比べる点 | 派遣先均等・均衡方式 | 労使協定方式 |
|---|---|---|
| 賃金の基準 | 派遣先の同じ仕事の社員 | 局長通知の一般賃金以上 |
| 派遣先からもらう情報 | 比べる社員の待遇の情報一式 | 教育訓練と福利厚生施設の情報だけ |
| 派遣先が変わったとき | 賃金が変わることがある | 同じ職種・地域なら大きく変わらない |
| 見直しのタイミング | 派遣先ごと・契約ごと | 毎年の局長通知が出たとき |
派遣先均等・均衡方式では、派遣先は比べる社員の給与や手当などの情報を派遣元に出します(労働者派遣法第26条第7項)。この情報がないと派遣契約を結べません(同条第9項)。社員の給与を外に出すことをいやがる派遣先も少なくありません。
労使協定方式でも、ゼロにはなりません。派遣先が行う教育訓練と、食堂・休憩室・更衣室などの福利厚生施設は、派遣社員にも使わせる必要があります(第40条第2項・第3項)。
労使協定方式を選ぶ派遣元が多い理由
多くの派遣元が労使協定方式を選ぶ理由は、賃金が派遣先ごとに変わらず、事務の手間が小さいからです。技術者派遣のように同じ人が数か月ごとに現場を移る働き方では、特にこの差が大きくなります。
一方で、協定の手続きをまちがえると、協定は効力を持ちません。その場合は派遣先均等・均衡方式で待遇を決めることになります。過半数代表者の選び方と、一般賃金以上になっているかの確認が要になります。
一般賃金の決まり方|局長通知の計算式と計算例
一般賃金とは、同じ職種・同じくらいの経験・同じ地域で働く一般の労働者の平均的な賃金のことです。厚生労働省が毎年、職業安定局長の通知(局長通知)で示します。
いま使うのは、令和8年度分の通知(職発0825第1号、令和7年8月25日)です。2026年4月1日から2027年3月31日までの協定に使います。
2026年8月28日には、令和9年度分の通知(職発0828第5号)が出ました。2027年4月1日から2028年3月31日までの協定に使います。基本給・賞与・手当の部分は、どちらも次の式で計算します。
一般賃金(基本給・賞与等)= 職種別の基準値 × 能力・経験調整指数 × 地域指数
| 要素 | 意味 | 令和8年度 | 令和9年度 |
|---|---|---|---|
| 職種別の基準値 | 国の統計から出した職種ごとの時給 | 別添1・別添2 | 別添1・別添2 |
| 能力・経験調整指数(3年/10年) | 勤続0年を100とした経験年数の倍率 | 124.8/142.7 | 130.0/139.8 |
| 地域指数(東京都/大阪府) | 全国計を100とした働く場所の倍率 | 111.4/107.4 | 110.3/106.7 |
| 通勤手当(実費で払わない場合) | 時給に足す額 | 79円 | 67円 |
IT職種の数字(時給・全国・別添1)
通知の別添1には、SES会社がよく使う職種が載っています。数字は基準値に経験年数の倍率をかけた額です。
令和8年度(2026年4月〜2027年3月の協定)
| 職種(コード) | 0年 | 3年 | 10年 |
|---|---|---|---|
| システムコンサルタント・設計者(1101) | 2,167円 | 2,704円 | 3,092円 |
| ソフトウェア作成者(1104) | 1,670円 | 2,084円 | 2,383円 |
| その他の情報処理・通信技術者(1109) | 1,759円 | 2,195円 | 2,510円 |
令和9年度(2027年4月〜2028年3月の協定)
| 職種(コード) | 0年 | 3年 | 10年 |
|---|---|---|---|
| システムコンサルタント・設計者(1101) | 2,357円 | 3,064円 | 3,295円 |
| ソフトウェア作成者(1104) | 1,706円 | 2,218円 | 2,385円 |
| その他の情報処理・通信技術者(1109) | 1,736円 | 2,257円 | 2,427円 |
職種や経験年数によっては、令和9年度のほうが下がる欄もあります。自社の人の職種と年数で、1人ずつ確かめることが大切です。
計算例:東京都で働く経験3年のプログラマー
東京都の派遣先で、ソフトウェア作成者として経験3年の人を派遣する場合で計算します。通勤手当は実費で払わず、退職金は中小企業退職金共済などで基本給・賞与等の5%を足す方法とします。
| 計算の段階 | 令和8年度(2026年4月〜) | 令和9年度(2027年4月〜) |
|---|---|---|
| 基本給・賞与等(切り上げ) | 2,084円×1.114→2,322円 | 2,218円×1.103→2,447円 |
| 通勤手当 | 79円 | 67円 |
| 退職金(5%・切り上げ) | 117円 | 123円 |
| 合計(時給の下限) | 2,518円 | 2,637円 |
月160時間働くとすると、令和8年度は約40.3万円、令和9年度は約42.2万円です。1人あたり月約1.9万円、下限が上がります。
この金額は派遣社員に払う賃金の下限です。派遣料金は、ここに社会保険料・有給休暇の費用・諸経費・利益を上乗せした額になります。通勤手当と退職金は、実費支給や退職金制度で比べる方法も選べます。
労使協定方式が派遣料金・単価にどう効くか
労使協定方式を選ぶと、職種・経験年数・勤務地が決まれば、賃金の下限が表から決まります。営業はこの下限から派遣料金の最低ラインを逆算できます。
| 決まる順番 | 決めるもの | 営業が見る数字 |
|---|---|---|
| 1 | 賃金の下限 | 一般賃金(局長通知) |
| 2 | 会社の費用 | 社会保険料・有給・諸経費 |
| 3 | 派遣料金の下限 | 1+2+利益 |
| 4 | 提示する料金 | 3と市場の相場を比べる |
派遣料金の内訳の考え方は、派遣単価(派遣料金)の相場とは|内訳とマージン率の計算方法でくわしく解説しています。準委任の単価の作り方はSESの提案単価の決め方|仕入れ単価から逆算する計算式と5つの要素が参考になります。
経営の目線で注意したい点は3つあります。
毎年4月に下限が動く:局長通知の数字が上がると、翌年度の賃金の下限も上がります。料金を据え置くと粗利が減ります。
勤務地で下限が変わる:同じ人でも、地域指数の高い東京都の現場に出すと下限が上がります。
経験年数で下限が上がる:協定では経験年数の考え方を決めておきます。長く働く人ほど下限が上がるため、料金改定の説明が必要です。
派遣先にも、派遣料金について配慮する義務があります(労働者派遣法第26条第11項)。2026年10月1日施行の改正の案内資料も、この点にふれています。派遣元からの料金の交渉に派遣先が一切応じない場合などは「法の趣旨を踏まえた対応とはいえない」とされています。料金改定の交渉では、局長通知の改定を根拠として示せます。
毎年の局長通知の確認手順
局長通知は、例年8月下旬に翌年度分が出ます。令和8年度分は2025年8月25日付、令和9年度分は2026年8月28日付でした。次の手順で毎年確認すると、単価表の更新もれを防げます。
8〜9月:厚生労働省の「派遣労働者の同一労働同一賃金について」のページを開き、翌年度分の通知が出たか確認する
通知が出たら:別添1(職種別の基準値)と別添3(地域指数)から、自社が使う職種と地域の数字を書き出す
比べる:今の協定の賃金表と、新しい一般賃金を並べ、下回る人がいないか確認する
協定を結び直す:過半数代表者を選び、4月1日からの協定を結ぶ。社員に周知する
料金を見直す:下限が上がった人は、派遣料金の改定案を作り、派遣先に1〜3か月前から相談する
報告する:協定は毎年の事業報告書に添付して、都道府県労働局に出す
2026年10月1日からは、労働者派遣法施行規則・同一労働同一賃金ガイドライン・派遣元指針・派遣先指針の改正も施行されます。雇い入れ時・派遣時に「待遇の違いの内容や理由の説明を求められること」を示す義務などが加わります。協定の見直しと同じ時期に、説明の資料もそろえておくと安心です。
2026年10月から2027年3月までのスケジュール例
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2026年10月 | 令和9年度の表で、派遣中の全員の下限を計算し直す |
| 2026年11〜12月 | 下限が上がる人の派遣料金の改定案を作り、派遣先に相談を始める |
| 2027年1〜2月 | 過半数代表者を選び、4月からの協定を結ぶ |
| 2027年3月 | 新しい料金で派遣契約を更新し、社員に協定を周知する |
SES営業の現場での使い方
SES営業が労使協定方式という言葉を使うのは、主に派遣契約の案件を受けるときです。準委任契約との違いはSES会社は派遣許可を取るべき?判断の目安6つと手順で確認してください。
使う場面1:派遣先から待遇方式を聞かれたとき
派遣契約を結ぶ前に、派遣先から「どちらの方式ですか」と聞かれることがあります。例文は次のとおりです。
弊社は労使協定方式を採用しております。協定の有効期間は2026年4月1日から2027年3月31日までです。貴社からは、教育訓練と福利厚生施設(食堂・休憩室・更衣室など)の情報のみご提供をお願いいたします。
使う場面2:料金の改定を相談するとき
局長通知が改定され、賃金の下限が上がったときは、根拠を添えて相談します。
2026年8月28日に、厚生労働省から令和9年度分の局長通知が出ました。〇〇の職種・経験年数の一般賃金は、時給2,518円から2,637円に改定されます。弊社は労使協定方式のため、2027年4月以降はこの額以上の賃金が必要です。つきましては、2027年4月以降の派遣料金について、12月中にご相談の機会をいただけますでしょうか。
注意点
準委任の案件に持ち込まない:準委任契約で客先から派遣先のように指示を受けると、偽装請負になるおそれがあります。
派遣の許可がないと派遣契約は結べない:技術者派遣には労働者派遣事業の許可が必要です。技術者派遣とは?SES・準委任との違いとIT業界での使われ方もあわせて確認してください。
無期雇用で出すかも決める:3年ルールとの関係は派遣の無期雇用とは?有期との違いと3年ルールをSES向けに解説で解説しています。
案件ごとの契約形態と単価をチョータツで管理する方法
派遣と準委任が混ざる会社では、案件ごとに契約形態・勤務地・単価をそろえて記録しておくことが大切です。自分でやるなら、スプレッドシートに次の列をつくると整理できます。
案件名と派遣先(顧客)
契約形態(派遣/準委任)
勤務地の都道府県(地域指数を見るため)
職種と経験年数(一般賃金の表を見るため)
派遣料金または単価、次の見直し月
人数や案件が増えると、表の更新が追いつかなくなります。チョータツなら、案件・人材の情報をチームで管理・共有できます。AIが入力を手伝うため、条件を書き写す手間も減らせます。
さらに、他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます。派遣や準委任の案件がどれくらいの料金で動いているかを見ながら、料金の見直しを考えられます。チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。
よくある質問
- Q. 派遣先均等・均衡方式と労使協定方式の違いは何ですか?
- 賃金を比べる相手が違います。均等・均衡方式は派遣先の社員と比べます。労使協定方式は、国が示す同じ職種の一般の労働者の平均賃金と比べます。
- Q. 同一労働同一賃金で、派遣元と派遣先はそれぞれ何をしますか?
- 派遣元は2つの方式のどちらかで待遇を決めます。派遣先は待遇の情報を派遣元に出し、教育訓練や福利厚生施設を使わせ、派遣料金に配慮します。
- Q. 労使協定方式でも派遣先の社員と比べる待遇はありますか?
- あります。派遣先が行う教育訓練と、食堂・休憩室・更衣室などの福利厚生施設は、派遣先の社員と同じように使わせる必要があります。
- Q. 準委任契約のSESにも労使協定方式は関係しますか?
- 直接は関係しません。同一労働同一賃金の派遣のルールは、派遣契約で働く派遣社員に向けたものです。準委任の社員の待遇は、パートタイム・有期雇用労働法など別のルールで考えます。
- Q. 一般賃金の数字はいつ変わりますか?
- 毎年度変わります。例年8月下旬に翌年度分の局長通知が出て、4月1日からの協定に使います。令和9年度分は2026年8月28日に出ており、2027年4月からの協定に使います。
- Q. 協定を結び直さずに古い賃金のままだとどうなりますか?
- 一般賃金を下回ると協定の要件を満たさなくなります。その場合は派遣先均等・均衡方式が適用され、派遣先の情報が必要になります。
まとめ
労使協定方式とは、派遣元が社員の代表と協定を結び、一般賃金以上を払う方式のこと
派遣先均等・均衡方式は、派遣先の社員と比べる方式。派遣先ごとに情報が必要になる
一般賃金は「職種別の基準値×能力・経験調整指数×地域指数」で決まる。ソフトウェア作成者・経験3年・東京都の下限(通勤手当・退職金込み)は、令和8年度2,518円、令和9年度2,637円
賃金の下限から、派遣料金の下限を逆算できる。毎年の局長通知で見直す
2026年10月1日から、待遇の説明に関する改正も施行される
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」
e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(第26条第7項・第9項・第11項、第30条の3、第30条の4、第40条第2項・第3項)