AI受託開発とは?市場規模と担い手の種類|SES営業がAI案件(データ整備・PoC・生成AI導入)を取る6ステップ
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
AI受託開発とは?SESとの違い
AI受託開発とは、依頼を受けて、AIを使ったシステムやモデルを作って納める仕事のことです。 画像から不良品を見つける仕組みや、社内文書に答えるチャットボットなどが代表例です。
SESとの一番の違いは、何に対してお金が払われるかです。受託開発は「作ったもの」、SESは「エンジニアが働いた時間」に対して支払われるのが基本です。
| 比べる点 | AI受託開発 | SES(準委任) |
|---|---|---|
| お金が払われる対象 | 完成したシステム・モデル | エンジニアの作業時間 |
| 主な契約 | 請負(段階によっては準委任) | 準委任 |
| 完成の責任 | 受けた会社が負う | 原則として負わない |
| 作業の指示 | 受けた会社が自社の人に出す | SES企業が自社の人に出す |
準委任とは、作業をすること自体を引き受ける契約です。請負とは、仕事を完成させることを引き受ける契約です。違いを詳しく知りたい方は「準委任契約と請負契約の違い|業務委託契約書を見分ける判定シート」をご覧ください。
AI受託開発を手がける会社も、すべてを自社の社員だけで作るわけではありません。データの準備や周辺のシステム作りで、外部のエンジニアを使うことがよくあります。ここにSES企業が入る余地があります。
AI受託開発の市場規模はどれくらい?
国内のAI市場は、5年で約3倍に広がる見込みです。 IT調査会社のIDC Japanは、2025年5月1日に国内AIシステム市場の予測を発表しました。
| 年 | 国内AIシステム市場(IDC Japan) | ポイント |
|---|---|---|
| 2024年(実績) | 1兆3,412億円 | 前年より56.5%増 |
| 2029年(予測) | 4兆1,873億円 | 2024年の3.1倍 |
| 2024〜2029年 | 年平均25.6%で成長 | 生成AIとAIエージェントが後押し |
AIエージェントとは、人の代わりに複数の作業を順番にこなすAIのことです。IDC Japanは、2024年をAIシステムがAIエージェントへ大きく進化した年と位置づけています。
使う側の企業も増えている
発注側の企業も、AIを使う方針をはっきり持ち始めています。 総務省の「令和8年版 情報通信白書」で、生成AIを活用する方針の日本企業は68.9%でした。「積極的に活用」と「領域を限定して活用」の合計で、前の年度の49.7%から大きく増えています。
生成AIとは、文章・画像・プログラムなどを新しく作り出すAIのことです。ChatGPTのような対話型のサービスが代表例です。
ただし、企業の大きさで差があります。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2026」によると、AIの導入率は従業員1,001人以上の企業で8割近くです。101人以下の企業では16.6%でした。
人が足りないのが一番の課題
AI案件が増えても、それを動かす人が足りていません。 同じIPAの調査では、DXを進める人材が「やや不足」「大幅に不足」と答えた企業が85.5%でした。AI関連の人材も、複数の職種で過半数の企業が「不足している」と答えています。
SES営業にとっては、人を出せる会社に声がかかりやすい市場だといえます。AIが開発の仕事に与える影響は「SESへの生成AIの影響|人月モデルと単価の変化、営業の備え5つ」でまとめています。
AI受託開発を手がける会社の種類
AI受託開発の担い手は、AI専業の会社だけではありません。 SES営業が営業先を考えるときは、次の4種類に分けると整理しやすくなります。
| 種類 | 特徴 | SES営業との関わり方 |
|---|---|---|
| AI専業の上場企業 | 研究力があり、大企業の案件を持つ | 周辺開発やデータ整備で人を求めることがある |
| 大手SIer | 大規模システムにAIを組み込む | 既存の商流の中でAI案件が回ってくる |
| AI受託開発のベンチャー | PoCや生成AI導入を小さく速く請ける | 人数が少なく、外部の力を借りやすい |
| ITコンサル | AIの活用計画を作り、開発を外に出す | 計画のあとの実装で人が必要になる |
AI専業の上場企業の売上規模や順位は、「AI開発企業ランキング|日本の主要企業とSES営業の商流の入り方」で解説しています。この記事は、AI受託開発の案件にSES企業がどう入るかに絞っています。大手SIerのAI案件に入るには、協力会社として登録されている必要があります。流れは「SIerの協力会社登録の条件と流れ|審査で見られる7項目」で解説しています。
SES企業が入り込めるAI案件は3種類
SES企業が取りやすいのは、データ整備・PoC支援・生成AI導入の3種類です。 AIの中身を一から作る研究の仕事は、専門の会社に集まりがちです。一方で、その周りの作業は人手が足りません。
| 案件の種類 | 主な作業 | 求められるスキルの例 |
|---|---|---|
| データ整備 | データの収集・加工・アノテーション・基盤作り | SQL、Python、クラウドのデータ基盤 |
| PoC支援 | 試作品づくり、検証環境の構築、結果のまとめ | Python、機械学習の基礎、画面の試作 |
| 生成AI導入 | 社内チャットボット、RAG、既存システムへの組み込み | API連携、Web開発、クラウド |
データ整備
データ整備とは、AIに学ばせたり読ませたりするデータを、使える形に整える仕事のことです。 AIの精度は、データの質で大きく変わります。
アノテーションとは、画像や文章に「これは不良品」などの正解ラベルを付ける作業です。データ基盤を作れるエンジニアは、AI案件の入口として提案しやすい人材です。
PoC支援
PoC(概念実証)とは、本格的に作る前に、小さく試して効果を確かめる段階のことです。 期間が短く、少人数で動くことが多いです。
PoCは「作ってみないと結果がわからない」仕事なので、契約の決め方に注意が要ります。詳しくは「PoC案件とは?意味と契約形態|SES営業が受ける前の確認12点」で解説しています。
生成AI導入
生成AI導入とは、生成AIを会社の業務やシステムに組み込む仕事のことです。 総務省の白書でも、活用方針を持つ企業が大きく増えています。
RAGとは、生成AIに社内の文書を検索させてから答えさせる仕組みのことです。AIの専門家でなくても、Web開発やAPI連携の経験があるエンジニアが活躍しやすい分野です。
SES営業がAI案件を取る6ステップ
AI案件は、今の取引先の「困りごと」から入るのが近道です。 次の6ステップで進めます。
自社のエンジニアを棚卸しする:Python、SQL、クラウド、API連携の経験を洗い出します。AIの実務経験がなくても、データや連携の経験は強みになります。
スキルシートにAI周辺の経験を書く:「データ基盤の構築」「外部APIとの連携」など、AI案件で通じる言葉にします。
既存の取引先にAIの予定を聞く:定例の連絡で「AIを使う計画はありますか」と一言聞きます。計画段階から声をかけてもらえる関係を作ります。
AI受託開発の会社をリスト化する:4種類の会社を、エリアや得意分野で分けて一覧にします。
小さな支援から提案する:データ整備やPoCの1〜2名から始めます。いきなり大人数を出すより、決まりやすくなります。
実績を次の提案に使う:終わった案件の内容を、営業資料とスキルシートに反映します。1件の実績が、次のAI案件の決め手になります。
エンドに直接PoCを提案するときの資料は「エンド直案件の提案書の作り方|SESの体制提案の構成と見本」が使えます。
取引先に送る確認メールの例文
ステップ3で使える文面です。日付は2026年の暦に合わせています。
件名:AI活用のご予定について(株式会社〇〇 △△)
いつもお世話になっております。株式会社〇〇の△△です。
最近、生成AIの導入やデータ整備のご相談を多くいただいております。
貴社で、今後AIを使う計画やPoCのご予定はございますか。
弊社には、データ基盤の構築やAPI連携の経験があるエンジニアが在籍しています。
10月5日(月)〜10月9日(金)のどこかで、15分ほどお話を伺えますと幸いです。
AI案件の要員提案メールに書く1行の例
AIの実務経験が浅い人を出すときは、「AI周辺で何ができるか」を1行で書きます。
| 経験 | 案件メールに書く1行の例 |
|---|---|
| SQL・データ基盤 | 「BigQueryで販売データの集計基盤を構築(1年)。PoC用のデータ準備に対応可」 |
| Python | 「Pythonでデータ加工の自動化(半年)。機械学習ライブラリの利用経験あり」 |
| Web・API連携 | 「社内システムと外部APIの連携開発(2年)。生成AIのAPI組み込みに対応可」 |
| クラウド | 「AWSで検証環境を構築(1年)。PoCの環境づくりから参画可」 |
「AI経験あり」とだけ書くと、面談で深く聞かれて食い違いが出ます。やったことを具体的に書くのが安全です。
AI案件で気をつける契約のポイント
AI案件では、準委任か請負かを最初に決め、働き方を契約とそろえることが一番大切です。 AIは作ってみるまで精度がわからないため、「完成」の意味で揉めやすいからです。
| 確認すること | なぜ大切か |
|---|---|
| 契約は準委任か請負か | 完成の責任を負うかどうかが変わる |
| 成果物は何か(報告書・コード・モデル) | 「何を渡せば終わりか」を決める |
| 作業の指示は誰が出すか | 客先が直接指示すると偽装請負の疑いが出る |
| データの扱いと秘密保持 | 客先の大事なデータを預かることが多い |
偽装請負とは、契約は請負や準委任なのに、実際は客先が作業者へ直接指示を出している状態のことです。PoCは客先と一緒に動く場面が多いので、特に気をつけます。判断の目安は「偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策」で確認できます。
成果物を約束する準委任もあります。報告書などの成果に対して報酬を払う「成果完成型」と呼ばれる形です。
AIの開発や提供で気をつける点は、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」にもまとまっています。AIを使う前提で準委任の人材を出すときの提案書の書き方は「AI駆動SESとは?従来型との違いと営業が提案で押さえる4点」で解説しています。客先から質問されたときに備えて、目を通しておくと安心です。
AI案件の情報と人材を早くそろえる方法
AI案件は動きが速いので、案件と人材の情報を1か所にまとめることが大切です。 まずは自分でできる方法から始めましょう。
自分でやる方法
案件メールのうち、AI・データ・PoC・生成AIを含むものに印を付けて、1つの表にまとめる
自社エンジニアのスキルを「Python」「SQL」「クラウド」「API連携」の4列で一覧にする
週に1回、案件の表と人材の表を見比べて、提案できる組み合わせを探す
この方法はすぐ始められます。ただ、案件が増えると表の更新が追いつかなくなりがちです。
もっと楽にするなら:チョータツ
チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。 3,000社以上が利用していて、無料で始められます。
案件・人材の情報を管理・共有できるので、AI案件と候補者を1か所で見比べられます
他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できます
パートナーへのメール配信機能で、AI案件の募集をまとめて届けられます
AIが入力を手伝うので、情報をためる手間を減らせます
自社にAI経験者が少ない会社ほど、他社の営業中人材まで候補を広げられる点が役に立ちます。
AI案件に入る前のチェックリスト
提案を始める前に、次の9項目を確認しましょう。
自社にPython・SQL・クラウド・API連携の経験者が何人いるか把握している
スキルシートに、AI周辺で使える経験を具体的に書いている
既存の取引先ごとに、AIの計画があるかを聞いている
AI受託開発の会社を、4種類に分けてリストにしている
最初はデータ整備やPoCの小さな支援から提案する方針を決めている
大手SIerの協力会社登録の有無と、登録の条件を確認している
契約が準委任か請負かを、案件ごとに確認する流れがある
客先が作業者へ直接指示しない体制を説明できる
客先データの扱いと秘密保持の取り決めを確認している
よくある質問
- Q. AIの実務経験がないエンジニアでも、AI案件に入れますか?
- データ整備や生成AIの組み込みなら、入れる可能性があります。SQLやAPI連携など、周辺の経験が求められる作業が多いからです。
- Q. AI受託開発の市場規模はどれくらいですか?
- IDC Japanによると、国内AIシステム市場は2024年に1兆3,412億円でした。2029年には4兆1,873億円に広がると予測されています。
- Q. PoC案件は準委任と請負のどちらで受けるべきですか?
- 結果がわからない段階なので、準委任で受けることが多いです。どちらにしても、成果物と指示の出し方を契約前に決めておきましょう。
- Q. AI案件の単価は高いですか?
- 案件ごとの差が大きく、決まった相場は公的データでは確認できません。まずは職種ごとの相場を押さえ、スキルの希少さで上乗せを考えます。
まとめ
AI受託開発とは、依頼を受けてAIのシステムやモデルを作って納める仕事
国内AIシステム市場は、2024年の1兆3,412億円から2029年に4兆1,873億円へ伸びる予測
担い手はAI専業・大手SIer・AIベンチャー・ITコンサルの4種類。企業の売上順位はAI開発企業ランキングの記事で確認する
SES企業が取りやすいのは、データ整備・PoC支援・生成AI導入の3種類
既存の取引先の困りごとを聞き、小さな支援から入るのが近道
契約は準委任か請負かを先に決め、指示の出し方を契約とそろえる
案件と人材の情報は1か所にまとめ、他社の営業中人材まで候補を広げる
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
IDC Japan「国内AIシステム市場予測を発表」(2025年5月1日)
IPA(情報処理推進機構)「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイントを公開」(2026年7月16日)
総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」