SESに有料職業紹介の許可は必要?転籍・フリーランス紹介で紹介料を取る前の確認5点【Q&A】
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
有料職業紹介とは?SES取引との違い
有料職業紹介とは、手数料や報酬を受け取って、求人する会社と仕事を探す人の間の「雇用」が決まるよう仲立ちすることです。ポイントは「雇用関係の成立」を仲立ちするかどうかです。
職業紹介とは、求人と求職の申し込みを受け、雇用関係が成り立つよう仲立ちすることです(職業安定法第4条第1項)。お金を受け取らないものが「無料の職業紹介」、それ以外が「有料の職業紹介」です。法律では「いかなる名義でも」と書かれています。つまり、「紹介料」「コンサル料」「協力金」など名前を変えても、中身で判断されます。
有料の職業紹介を事業として行うには、厚生労働大臣の許可が必要です(職業安定法第30条第1項)。
SES取引との違いを表にまとめます。
| 取引の形 | 何を約束するか | エンジニアを雇うのは誰か | 職業紹介の許可 |
|---|---|---|---|
| SES(準委任契約) | 業務を行うこと | SES企業のまま | 不要 |
| 労働者派遣 | 派遣先の指揮命令で働くこと | 派遣元のまま | 不要(派遣の許可が必要) |
| 職業紹介 | 採用が決まるよう仲立ちすること | 紹介先が新しく雇う | 必要 |
| 紹介予定派遣 | 派遣のあと直接雇用に切り替えること | 派遣元→派遣先 | 派遣と職業紹介の両方が必要 |
SESでは、エンジニアはずっと自社の社員(またはBPの要員)のままです。雇い主が変わる話が出たときに、はじめて職業紹介の問題が出てくると覚えておきましょう。
派遣の許可やPマークなど、SES事業で要る許可の全体像は、SESに派遣免許やPマークは必要?事業に要る許可・認証一覧にまとめています。
SES営業が無許可で職業紹介に当たりやすい7つの場面
SES営業が職業紹介に当たりやすいのは、「エンジニアの雇い主が変わる」ときにお金を受け取る場面です。よくある7つの場面を、リスクの高さで分けました。
| 場面 | よくある状況 | 職業紹介に当たるか | 目安 |
|---|---|---|---|
| ① 客先への転籍で紹介料 | 客先が自社エンジニアを正社員で採用したいと言い、紹介料を払うと提案される | 当たるおそれが高い | 高 |
| ② BP要員を客先の社員に | BPの要員を客先に直接雇用させ、自社が手数料を取る | 当たるおそれが高い | 高 |
| ③ 登録者を他社の正社員に | 自社の登録者や応募者を、他社の正社員求人に紹介して報酬を取る | 当たる | 高 |
| ④ フリーランスを他社の社員に | フリーランスを、客先の正社員・契約社員として紹介して手数料を取る | 当たる | 高 |
| ⑤ 転籍させて違約金 | 引き抜き禁止条項の違約金として受け取る | 条項と実態しだい | 中 |
| ⑥ フリーランスを業務委託でつなぐ | フリーランスを準委任で客先につなぎ、手数料を取る | 原則は当たらない(実態が雇用なら注意) | 中 |
| ⑦ 自社で採用するスカウト | 自社の社員にするためにエンジニアへ声をかける | 当たらない(自社の募集) | 低 |
ここから、とくに相談の多い場面を順に見ていきます。
① 客先への転籍で紹介料を受け取る
転籍とは、今の会社を辞めて、別の会社に雇われ直すことです。SESでは「常駐先の客先が、エンジニアを正社員として迎えたい」という形でよく起きます。
このとき客先から「紹介料として年収の◯%を払います」と言われることがあります。自社社員の採用が決まるよう仲立ちし、その見返りにお金を受け取るので、職業紹介に当たるおそれが高いです。
安全に進めるなら、次のどちらかを選びます。
契約書で、引き抜き禁止に違反したときの違約金として金額を決めておく
転籍の仲立ちを続ける予定があるなら、有料職業紹介の許可を取る
違約金でも、実態が「採用の成功報酬」と変わらなければ職業紹介とみられるおそれがあります。金額や受け取り方は弁護士に確認してから決めましょう。
違約金の決め方や条項の例は、SESの引き抜きに紹介料は取れる?相場と契約条項の書き方・例文付きで詳しく解説しています。
② BPの要員を客先の社員として紹介する
BPの要員は、もともと自社の社員ではありません。他社の社員を客先の採用につなぎ、手数料を受け取るのは、典型的な職業紹介です。
「BPの要員が客先に転職したがっている」と相談されたら、自社は仲立ちに入らないのが基本です。BPと客先で直接話してもらいましょう。
④と⑥ フリーランスを紹介して手数料を取る
フリーランスの紹介は、「雇用」か「業務委託」かで答えが変わります。
客先の正社員・契約社員として紹介する → 雇用の仲立ちなので職業紹介
客先と業務委託(準委任)契約を結ぶ形でつなぐ → 雇用ではないので、原則は職業紹介に当たらない
ただし、契約書が業務委託でも、働き方の実態が雇用に近いと話が変わります。たとえば、客先が勤務時間を細かく決める、仕事の進め方を逐一指示する、ほかの仕事を受けられない、などです。労働者性とは、契約の名前ではなく、働き方の実態から「実は雇われている人」と判断されることです。
労働者性の判断ポイントは、業務委託の労働者性の判断基準|偽装フリーランスを防ぐ8項目を確認してください。
⑦ 自社で採用するためのスカウトは職業紹介ではない
自社の社員にするためにエンジニアへ声をかけるのは、自社の募集です。職業紹介には当たりません。
一方で、他社に紹介するために人を探して声をかける「スカウト行為」を事業として行うと、職業紹介事業に含まれます。根拠は、厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第1です。自社採用か、他社へ回すためかを分けて考えましょう。
「1回だけなら大丈夫」は通用する?事業に当たるかの考え方
1回だけでも、くり返すつもりがあれば「事業」とみられます。許可が必要なのは職業紹介を「事業として」行う場合ですが、その範囲は思ったより広いです。
厚生労働省の業務運営要領では、次のように説明されています。
事業とは、同じ種類の行為をくり返し続ける目的で行うこと
1回限りの行為でも、くり返す意思があれば事業性がある
たまたま受け身で起きたことが続いただけなら、事業性は認められない
職業紹介をすると宣伝・広告している場合は、原則として事業性がある
SES営業の現場に当てはめると、次のような状態は危険です。
営業資料やサイトに「転籍のご相談も承ります」「人材紹介も可能です」と書いている
転籍の紹介料の金額表を、社内で決めて使い回している
「転籍OKのエンジニアを紹介します」と客先にメールで案内している
「今回だけ」と思っていても、社内ルールや資料があると、くり返す意思があると判断されやすくなります。迷ったら、受け取る前に専門家に確認しましょう。
紹介料を取る前の確認5点(チェックリスト)
紹介料や手数料を受け取る前に、次の5点を順番に確認すれば、無許可の職業紹介をかなり防げます。客先から相談を受けたら、その場で返事をせずにこの順に確かめてください。
雇用か、業務委託か
エンジニアは、相手先に「雇われる」のか、「業務委託で仕事を受ける」のか。雇われるなら職業紹介の問題になります。誰から、何の名目でお金をもらうか
客先・BP・本人の誰から受け取るか。名目が「紹介料」「成功報酬」など、採用が決まったことへの見返りになっていないか。くり返す予定があるか
今後も同じような取引をするか。資料やサイトで宣伝していないか。自社に有料職業紹介の許可があるか
許可があるなら、手数料は法令の上限か届け出た手数料表の範囲だけ。許可がないなら、紹介料は受け取らない前提で考えます。契約書に何と書くか
基本契約の引き抜き禁止条項、違約金、承諾の手続きがどう書かれているか。新しく書くなら弁護士に確認します。
社内で使える確認メモ(例文)
客先から転籍の相談が来たときに、営業から上長へ回すメモの例です。
件名:【要確認】客先A社からの転籍相談(エンジニア:Bさん)
2026年10月1日(木)、A社のC部長から、Bさんを正社員で採用したいと相談がありました。
・形:A社での直接雇用(正社員)
・A社の提案:年収の一定割合を「紹介料」として支払いたい
・基本契約:引き抜き禁止条項あり(第◯条)、違約金の定めあり
・当社の有料職業紹介の許可:なし
紹介料の名目では受け取らず、契約書の違約金の定めで対応する方向で、弁護士に確認したいです。
A社へは、10月5日(月)までに回答すると伝えています。
このメモのように「雇用か」「名目」「許可の有無」「契約書の条項」を最初に書いておくと、判断が早くなります。
客先への返事の例文
社内で方針が決まるまでの間、客先には次のように返すと、関係を保ったまま時間をもらえます。
C部長
Bさんについて、高く評価いただきありがとうございます。
当社は職業紹介事業の許可を持っていないため、「紹介料」という形でお受けすることはできません。
基本契約の第◯条(引き抜きの取り扱い)に沿った進め方を、社内で確認しております。
10月5日(月)までに改めてご連絡いたします。あわせて、Bさんの後任となる方のご提案も準備いたします。
後任の提案を同時に出すと、客先との準委任の取引を続けやすくなります。
有料職業紹介の許可を取るなら:要件と流れ
転籍や人材紹介をこれからも続けるなら、許可を取るのが確実です。主な要件は次のとおりです(厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領」第3 許可基準)。
| 要件 | 内容 | SES企業が確認すること |
|---|---|---|
| 財産の基準 | 基準資産額が500万円×事業所数以上 | 直近の決算書の純資産 |
| 現金・預金 | 150万円+60万円×(事業所数−1)以上 | 会社名義の預金残高 |
| 職業紹介責任者 | 講習を修了し、成年後3年以上の職業経験がある人を置く | 担当者を誰にするか |
| 個人情報の管理 | 個人情報を適正に管理する規程と体制がある | 求職者情報の管理ルール |
| 事業所 | プライバシーを守って面談できる構造などがある | 面談スペースの有無 |
基準資産額とは、資産の合計から負債の合計を引いた金額のことです(繰延資産と営業権は除きます)。
許可の有効期間は、最初が3年、更新後は5年です(職業安定法第32条の6)。手数料は、次のどちらかでしか受け取れません(職業安定法第32条の3)。法令で決めた上限の範囲(上限制手数料)か、事前に届け出た手数料表(届出制手数料)です。
許可を取るまでのおおまかな流れは次のとおりです。
業務運営要領と許可・更新等マニュアルを読み、要件を満たすか確認する
職業紹介責任者講習を受講する
個人情報適正管理規程・手数料表・事業計画書などを準備する
会社の所在地を管轄する都道府県労働局に申請する
許可が出てから、職業紹介を始める
申請手数料や審査期間は、申請時点の厚生労働省・労働局の案内で確認してください。派遣の許可要件と比べたい場合は、労働者派遣事業の許可要件|資産2,000万円など基準と申請の流れが参考になります。
取引先が許可を持っているか確かめる方法
取引先の許可は、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で調べられます。このサイトでは、労働者派遣事業と職業紹介事業の許可・届出がある事業所を検索できます。
確認の手順です。
人材サービス総合サイトを開く
「職業紹介事業」の検索を選ぶ
会社名や所在地を入れて検索し、許可番号と有効期間を確認する
「転籍の紹介料はうちが受け取ります」と言うBPや紹介会社があれば、取引の前にこの方法で確認しておくと安心です。派遣の許可番号の調べ方は、労働者派遣の許可番号を検索する方法|取引前の確認手順3つで解説しています。
紹介料に頼らずSES取引で売上を守る方法
許可がないSES企業は、「人を紹介して手数料を取る」より「準委任で人を出し続ける」形で売上を守るのが基本です。転籍でエンジニアが抜けると、毎月の売上がなくなります。紹介料は1回きりですが、準委任の取引は続く限り売上になります。
まず、自分でできることです。
案件ごとに契約形態(準委任・派遣)と、引き抜き禁止条項の有無を管理する
転籍の相談が来たら、本人の意向を先に確認する
抜けるエンジニアの代わりを、BPやフリーランスから早めに探す
チョータツで案件と人材の情報をまとめる
チョータツは、SES営業の案件・人材の管理・共有ツールです。3,000社以上が使っていて、無料で始められます。
案件・人材の情報を管理・共有できる。案件ごとの条件を残しておけば、提案前に契約形態を確認できる
他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる
パートナーへのメール配信機能があり、代わりの要員を探す連絡をまとめて送れる
転籍の相談は、急に来ることが多いです。代わりの人材をすぐ提案できれば、客先との取引を準委任のまま続けやすくなります。
xhoursでフリーランスに直接声をかける
自社の案件に入ってもらうフリーランスを探すなら、DrivenXのxhours(エックスアワーズ)が使えます。企業がITフリーランスに直接スカウトでき、数千名のフリーランスのデータベースから探せます。
自社が業務委託の相手として契約するなら、他社への紹介ではないため、職業紹介とは別の話になります。ただし、フリーランスとの契約では働き方の実態に気をつけてください。
よくある質問
- Q. SES企業に有料職業紹介の許可は必要ですか?
- 準委任でエンジニアを客先に出すだけなら不要です。客先やBPへの転籍・採用を仲立ちして紹介料を受け取るなら、許可が必要になるおそれがあります。
- Q. SESで引き抜かれたとき、紹介料をもらってもいいですか?
- 許可がないまま「紹介料」として受け取るのは避けましょう。契約書の引き抜き禁止条項に基づく違約金として決め、弁護士に確認するのが安全です。
- Q. フリーランスを紹介して手数料を取るのに許可は要りますか?
- 業務委託(準委任)でつなぐだけなら、雇用ではないため原則は不要です。正社員や契約社員として紹介する場合や、働き方の実態が雇用に近い場合は、職業紹介に当たるおそれがあります。
- Q. 紹介料を「コンサル料」や「協力金」にすれば問題ありませんか?
- 問題は残ります。職業安定法は「いかなる名義でも」と定めていて、名前ではなく中身で判断されます。
- Q. 無料で紹介すれば許可はいりませんか?
- 無料でも、職業紹介を事業として行うなら、原則として厚生労働大臣の許可が必要です(職業安定法第33条)。お金を受け取らないからといって、自由にできるわけではありません。
- Q. 無許可で職業紹介をするとどうなりますか?
- 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(職業安定法第64条)。取引先からの信用も失うため、受け取る前に確認しましょう。
- Q. 派遣の許可があれば、職業紹介もできますか?
- できません。労働者派遣と職業紹介は別の許可です。紹介予定派遣を行うには、両方の許可が必要です。→ 紹介予定派遣とは?通常派遣との違いと紹介料の相場をSES向けに
まとめ
準委任でエンジニアを出すふつうのSES取引は、有料職業紹介の許可が要らない
許可が要るのは、雇用が決まるよう仲立ちしてお金を受け取るとき。転籍の紹介料、BP要員や登録者の採用仲介が当たりやすい
フリーランスを業務委託でつなぐ手数料は原則当たらないが、働き方の実態が雇用に近いと注意
名前を変えても中身で判断される。1回でも、くり返す意思があれば事業とみられる
受け取る前に「雇用か」「名目」「くり返すか」「許可」「契約書」の5点を確認する
転籍で抜けても準委任で取引を続けられるよう、次の人材をすぐ探せる状態をつくる
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「職業安定法」(第4条 定義、第30条 有料職業紹介事業の許可、第32条の3 手数料、第32条の6 許可の有効期間、第33条 無料職業紹介事業、第64条 罰則)
厚生労働省「職業紹介事業業務運営要領・様式・各種報告書」(第1 職業紹介事業の概要、第3 許可基準、第6 手数料)
厚生労働省「職業紹介事業の許可・更新等マニュアル」
厚生労働省「人材サービス総合サイト」(職業紹介事業・労働者派遣事業の許可・届出事業所の検索)