請求書の電子化|SES企業の切替5ステップと電帳法の保存、取引先・BPへの案内文例
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
請求書の電子化とは?
請求書の電子化とは、請求書を紙で作って郵送する代わりに、データで作って送り、データで保存することです。ペーパーレス化とも呼ばれます。
SESの請求書は、要員ごと・月ごとに発生します。顧客が20社、BPが30社あれば、毎月50通前後の請求書が出入りします。印刷・押印・封入・郵送をやめるだけで、月末月初の作業が大きく減ります。
SES企業の請求書の電子化は「送る側」と「受け取る側」の2つ
SES企業は、請求書を送る立場と受け取る立場の両方にいます。電子化するときは、この2つを分けて考えます。
| 立場 | 相手 | やること |
|---|---|---|
| 送る | 顧客(上位の会社) | 自社の請求書をPDFやシステムで送る |
| 受け取る | BP・フリーランス | BPからの請求書をメールで受け取る |
| 両方 | 共通 | 送った控えと受け取った請求書をデータで保存する |
受け取る側の電子化は、BPに「紙ではなくPDFで送ってください」と頼むことです。送る側の電子化は、顧客に「今月から紙の郵送をやめます」と伝えることです。案内文も、相手によって書き分けます。
請求書の電子化は法律で義務?電子帳簿保存法との関係
請求書を電子で発行すること自体は、法律の義務ではありません。紙の請求書を郵送し続けることもできます。義務になっているのは、データでやり取りした請求書を、データのまま保存することです。
電子帳簿保存法とは、税金の計算に使う帳簿や書類を、データで保存するときのルールを決めた法律のことです。電子取引とは、請求書・注文書・契約書などにあたる情報を、データでやり取りすることです。国税庁は、メールに添付されたPDFで受け取る場合も電子取引に含めています。
紙に印刷して保存するだけでは足りない
メールで受け取ったPDFの請求書は、データのまま保存しなければなりません。印刷した紙で保存する措置は、令和3年度の税制改正(2022年1月1日施行)で廃止されました。2023年12月31日までの猶予(宥恕措置)も終わり、2024年1月からは要件どおりの保存が必要です。
国税庁の一問一答【電子取引関係】(令和8年7月版)は、PDF付きのメールをメールソフト上で見られるだけでは十分とはいえないと説明しています。受信トレイに置いたままにせず、決まった場所に保存し直しましょう。
送った請求書の控えも保存の対象
保存が必要なのは、受け取った請求書だけではありません。自社がPDFで送った請求書の控えも、電子取引のデータとして保存します。国税庁の一問一答にも、自社が発行した請求書データの保存についての問いがあります。
インボイス制度でも、適格請求書をデータで渡した場合は、渡したデータの写しを保存することが求められています。国税庁のインボイスQ&Aでは、電子帳簿保存法に準じた方法で保存するよう説明されています。
電子インボイスとは、適格請求書(インボイス)をPDFなどのデータで渡すもののことです。
保存期間は法人なら原則7年
法人の場合、請求書は7年間保存します。青色申告で欠損金(赤字)が出た事業年度は10年間です。期間は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から数えます。
請求書を電子化する方法3つの比較
請求書の電子化の方法は3つです。①PDFをメールで送る、②請求書発行サービスを使う、③取引先のシステムで受け渡しするです。取引先が数十社までのSESなら、まず①から始めて、件数が増えたら②を検討する順番がおすすめです。
| 方法 | 向いている会社 | 費用 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| PDFをメール送付 | 請求書が月50通前後まで | ほぼかからない | 保存と送り間違いの確認は手作業 |
| 請求書発行サービス | 月の件数が多い・担当が複数 | 月額の利用料 | 顧客側の受け取り方法も確認する |
| 取引先のシステム | 大手の顧客・元請け | 顧客側が用意 | 顧客ごとに操作と締め日が違う |
請求書発行サービスでできる「自動化」
請求書の自動化とは、請求書の作成・送付・保存・入金の消し込みの一部を、ツールに任せることです。請求書発行サービスの多くは、作った請求書をそのまま送り、控えを保存するところまでをまとめて行えます。
SESで自動化しやすいのは、毎月同じ顧客・同じ単価で続く準委任の請求書です。一方で、精算幅から外れた月の控除・超過の金額は、稼働時間が確定するまで決まりません。精算の計算と確認は人が行い、送付と保存を自動化すると考えると失敗しません。
ツールでどこまで任せられるかは、請求書の自動化|SES企業の月末請求をラクにする4ステップとソフト比較でくわしく比べています。電子化のためにサービスを選ぶときは、次の4点を確認しましょう。
電子帳簿保存法に対応しているか:JIIMA(日本文書情報マネジメント協会)の認証製品は、国税庁サイトの「JIIMA認証情報リスト」で確認できる
インボイスの記載事項を満たせるか:登録番号・税率ごとの金額と消費税額が入るか
精算の明細を書けるか:要員別の稼働時間・控除・超過を明細に入れられるか
受け取った請求書も保存できるか:BPからのPDFも同じ場所で管理できるか
デジタルインボイス(Peppol)とは
デジタルインボイスとは、請求書のデータを、システム同士が自動で読み取れる決まった形式でやり取りするしくみのことです。Peppol(ペポル)とは、デジタルインボイスをやり取りするための国際的な標準仕様とネットワークのことです。日本ではデジタル庁が管理し、日本向けの仕様を「JP PINT」と呼んでいます。
PDFは人が目で読むためのデータですが、デジタルインボイスはシステムがそのまま取り込めます。顧客から「Peppolで送ってほしい」と言われたら、対応した請求書発行サービスを使うのが近道です。
請求書を電子化する手順5ステップ
SES企業が請求書を紙から電子に切り替える手順は、次の5ステップです。顧客とBPを一度に切り替えず、社内の保存ルールを先に決めるのがポイントです。
取引先を一覧にする:顧客とBPを分け、今の送付方法(郵送・メール・システム)と担当者のメールアドレスを書き出す
社内の保存ルールを決める:事務処理規程を作り、保存フォルダとファイル名のルールを決める(次の章で解説)
切替の開始月を決める:「2026年11月分の請求書から」のように、請求の対象月で決める
案内文を送る:開始月の1〜2か月前に、顧客向けとBP向けで分けて送る
切替後1〜2か月は確認する:届いたか・送れたかを、取引先ごとに確認表でチェックする
取引先一覧の作り方
取引先一覧は、次のような表にします。電子化に応じられない取引先も、ここで見えるようにしておきます。
| 取引先 | 区分 | 今の方法 | 切替後 |
|---|---|---|---|
| 株式会社〇〇 | 顧客 | 郵送 | PDFメール |
| 株式会社△△ | 顧客 | 顧客のシステム | 変更なし |
| 株式会社□□ | BP | 郵送 | PDFメール |
| 個人事業主Aさん | BP | メール | 変更なし(保存だけ見直し) |
顧客のシステムで請求書を出している取引先は、顧客側のルールに合わせます。自社で変えられるのは、郵送とメールの取引先です。
開始月は「請求の対象月」で決める
開始日を「11月1日から」と日付で決めると、10月分の請求書が紙なのか電子なのか迷います。「2026年11月分の請求書(12月初めに送付)から」のように、請求の対象月で伝えると混乱しません。
請求書の電子保存のしかた:3つの要件を最小限で満たす
電子取引の請求書は、「改ざん防止」「見られる状態」「検索できる状態」の3つの要件を満たして保存します。専用のシステムがなくても、社内ルールとファイル名の工夫で対応できます。
| 要件 | 求められること | 最小限の対応 |
|---|---|---|
| 改ざん防止 | 勝手に書き換え・削除できない | 事務処理規程を作って守る |
| 見られる状態 | 画面や紙ですぐ出せる | ふだんのパソコンとプリンタでよい |
| 検索できる状態 | 日付・金額・取引先で探せる | ファイル名のルール、または索引簿 |
改ざん防止は事務処理規程がいちばん手軽
改ざん防止の方法は、次の中から1つを選びます。タイムスタンプを付ける、訂正・削除の履歴が残るシステムを使う、事務処理規程を作る、などです。
事務処理規程とは、データを勝手に直したり消したりしないための社内ルールを文書にしたものです。国税庁のサイトに法人向けのひな形(Word形式)があり、会社名や責任者を入れればそのまま使えます。タイムスタンプとは、その時刻にデータが存在し、その後書き換えられていないことを証明する電子的な印のことです。
ファイル名は「日付_取引先_金額」にする
検索の要件は、取引年月日・取引金額・取引先の3つで探せることです。国税庁の一問一答では、「20210131_㈱霞商店_110000」のようなファイル名の例が示されています。SESの請求書なら、対象月と要員名も入れると探しやすくなります。
電子取引/
2026年/
送付_顧客/
20261130_株式会社〇〇_880000_請求書_11月分.pdf
受領_BP/
20261130_株式会社□□_715000_請求書_11月分_山田.pdfファイル名の代わりに、連番とExcelの索引簿で管理する方法もあります。索引簿とは、ファイルの連番ごとに日付・金額・取引先を書いた一覧表のことで、国税庁のサイトに作成例があります。
検索のための設定がいらない会社
2期前の事業年度(基準期間)の売上高が5,000万円以下の会社は、検索の要件が不要になります。条件は、税務調査でデータのダウンロードに応じられるようにしておくことです(2026年9月時点の制度)。ただし、この場合も改ざん防止の要件は残ります。事務処理規程だけは必ず作りましょう。
注文書・注文請書の保存は、SESの注文書・請書の電子化|電子帳簿保存法の対応と電子契約であわせて解説しています。
顧客向けの案内文の例文
顧客への案内文は、「いつの請求分から」「どう送るか」「原本の郵送はどうなるか」の3点をはっきり書きます。お願いではなく「変更のお知らせ」として送り、不都合があれば連絡をもらう形にすると、返事を待たずに進められます。
例文1:顧客向け(PDFメール送付への切替)
件名:【ご案内】請求書の電子送付への切り替えについて(2026年11月分より) 株式会社〇〇 経理ご担当者様 いつもお世話になっております。 株式会社△△の□□です。 弊社では業務の効率化と環境への配慮のため、 請求書の送付方法を、郵送からPDFのメール送付へ切り替えます。 ■切り替えの時期 2026年11月分のご請求(12月1日ごろ送付)から ■送付の方法 ・PDFファイルをメールに添付してお送りします ・送信元:seikyu@example.co.jp ・件名:【請求書】株式会社△△_2026年11月分 ■紙の請求書について 11月分以降、紙の請求書の郵送は行いません。 記載内容・お支払い期日・振込先に変更はございません。 郵送での受け取りが必要な場合や、 請求書の送付先アドレスの指定がございましたら、 2026年11月16日(月)までにご返信ください。 お手数をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。
顧客に案内するときの注意点
顧客の経理担当にも届くようにする:営業窓口だけに送ると、経理に伝わらないことがある
送信元アドレスを固定する:担当者個人のアドレスから送ると、迷惑メールに入ったり、退職で途切れたりする
顧客のシステム指定を優先する:「当社のシステムで出してください」と言われたら、それに従う
紙を希望されたら無理に変えない:紙を送ったら、自社の控えは紙かデータで保存する
請求書を送るときのメール本文は、請求書の送付状の書き方|SESの送付メール例文と場面別文例に文例をまとめています。
BP向けの案内文の例文
BPへの案内文は、「PDFで送ってほしい」「送り先はここ」「ファイル名はこうしてほしい」の3点を伝えます。BPにファイル名のルールを頼んでおくと、受け取った後に名前を付け直す手間が減ります。
例文2:BP向け(請求書のPDF送付のお願い)
件名:【お願い】請求書のPDF送付へのご協力について(2026年11月分より) パートナー各位 いつも大変お世話になっております。 株式会社△△の□□です。 弊社では、電子帳簿保存法への対応と支払い業務の効率化のため、 貴社からの請求書を、PDFのメール送付で受け取る形に切り替えます。 ■切り替えの時期 2026年11月分のご請求から ■送付先 seikyu@example.co.jp(経理・請求専用アドレス) ※営業担当者へのCCもお願いいたします ■ファイル名のお願い 「日付_貴社名_請求金額_請求書_対象月_要員名」 例:20261130_株式会社□□_715000_請求書_11月分_山田.pdf ■その他 ・紙の請求書の郵送は不要です ・支払い期日・お支払い方法に変更はございません ・稼働報告書は、これまでどおり請求書と一緒にお送りください PDFでの送付が難しい場合は、 2026年11月16日(月)までに□□までご連絡ください。 今後ともよろしくお願いいたします。
例文3:フリーランスのBP向け(短い版)
件名:11月分から請求書をPDFでお送りください 〇〇様 お世話になっております。株式会社△△の□□です。 11月分の請求書から、紙の郵送ではなく PDFを seikyu@example.co.jp へお送りください。 ファイル名は「日付_お名前_金額_請求書_11月分」でお願いします。 インボイスの登録番号をお持ちの場合は、これまでどおりご記載ください。 ご不明な点があれば、お気軽にご連絡ください。
フリーランスに渡す請求書の記載例は、フリーランスの請求書の書き方|SES企業がBPに渡す記載例と注意点で解説しています。
切替後の確認表と、やってはいけないこと
切替後の1〜2か月は、取引先ごとに「送れたか」「届いたか」「保存したか」を確認表でチェックします。電子化の失敗は、ほとんどが送り漏れと保存漏れです。
| 確認項目 | 顧客(送る) | BP(受け取る) |
|---|---|---|
| 送付・受領 | 送信済みメールを確認 | 締め日から5営業日で未着を催促 |
| 金額 | 稼働報告書と照合 | 稼働報告書と照合 |
| 保存 | 控えをルールの名前で保存 | 受け取ったPDFを保存 |
| 翌月 | 入金を確認 | 支払日を登録 |
やってはいけないこと
メールの受信トレイに置いたままにする:検索できる状態とはいえない
担当者のパソコンにだけ保存する:退職や故障でデータがなくなる
訂正した請求書を同じ名前で上書きする:訂正前のデータが残らない。「_訂正1」を付けて別に保存する(訂正の連絡例文は請求書の金額間違いに後から気づいたら|SESの訂正と再発行の例文)
PDFを印刷して、データを消す:紙だけの保存は認められない
請求書の金額や記載そのものの確認は、SESの請求書の書き方とテンプレート|精算の記載例と送付前チェック10にチェック項目があります。毎月の流れ全体は、SESの毎月の営業事務業務|注文書・請求・支払いの月次フローで整理しています。
チョータツで請求の元になる案件情報をそろえる
請求書を電子化しても、請求額の元になる案件の条件(単価・精算幅・要員)がバラバラだと、確認に時間がかかります。チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールで、条件を1か所にまとめる助けになります。
チョータツでできることは、次のとおりです。
案件・人材の情報を管理し、チームで共有できる:担当者しか条件を知らない状態を減らせる
パートナーへのメール配信ができる:案件・人材の案内をまとめて送れる
他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる
AIが入力を手伝う
無料で始められる:3,000社以上が利用している
なお、チョータツは請求書を発行・保存するツールではありません。請求書の作成と保存は請求書発行サービスなどで行い、案件の条件はチョータツでそろえる使い分けがおすすめです。
よくある質問
- Q. 請求書を電子化するとき、取引先の同意は必要ですか?
- 案内文で事前に知らせ、不都合があれば連絡をもらう形が一般的です。顧客のシステムや紙での受け取りを指定されたら、その指定に合わせましょう。
- Q. PDFの請求書にハンコは必要ですか?
- 請求書に押印がなくても、請求書としての効力は変わりません。くわしくは請求書にハンコは必要?押印なしの差し戻し対応もSES向けにをご覧ください。
- Q. 紙で受け取った請求書も、データで保存しないといけませんか?
- 紙で受け取った請求書は、紙のまま保存できます。スキャンしてデータで保存する方法もありますが、別の要件(スキャナ保存)があります。
- Q. 電子請求書にすると、入金は早くなりますか?
- 郵送の日数がなくなるので、顧客の受け取りは早くなります。ただし、支払日は契約の支払いサイトで決まるので、請求書を電子化するだけでは早まりません。
- Q. 請求書の電子化について学べる資料はありますか?
- まずは国税庁の電子帳簿保存法の特設サイトを確認しましょう。一問一答や、電子取引データの保存要件のチェックシート、事務処理規程のひな形が載っています。
- Q. 売上が少ない会社でも対応は必要ですか?
- 必要です。2期前の売上高が5,000万円以下なら検索の設定は不要ですが、データでの保存と改ざん防止の要件は残ります。
まとめ
請求書の電子化は義務ではないが、データでやり取りした請求書はデータのまま保存する
送った控えも受け取った請求書も、法人は原則7年保存する
保存は、事務処理規程・ファイル名のルール・決まったフォルダの3つで対応できる
切替は、取引先一覧→保存ルール→開始月→案内文→確認の5ステップ
案内文は顧客向けとBP向けで分け、開始月の1〜2か月前に送る
切替後1〜2か月は、取引先ごとに送付・受領・保存を確認表でチェックする
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・税理士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法)」(第2条 定義、第7条 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存)
e-Gov法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」(第4条)
国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月版)
国税庁「参考資料(各種規程等のサンプル)」(事務処理規程・索引簿の作成例)
国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(電磁的記録による適格請求書の提供と保存)
デジタル庁「デジタルインボイス」(Peppol・JP PINT)