秘密保持契約の有効期間は何年?SESの残存条項の決め方と取引終了後の扱い|条文例・BPのエンジニア交代時のチェック付き

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

秘密保持契約の「有効期間」とは?

秘密保持契約の有効期間とは、契約そのものが効力を持っている期間のことです。この期間中に受け取った情報が、秘密保持の対象になります。

秘密保持契約(NDA)とは、取引で知った相手の秘密を、ほかに漏らさない・目的外に使わないと約束する契約のことです。SESでは、BP(ビジネスパートナー)や客先と、基本契約の前か同時に結ぶのが一般的です。

NDAのひな形や基本の条項は、SESの秘密保持契約(NDA)ひな形|BPと結ぶ条項と注意点8つにまとめています。ここでは期間の決め方に絞って解説します。

有効期間と残存期間の違い

有効期間は「契約が生きている期間」、残存期間は「契約が終わった後も一部の約束が続く期間」です。2つを混同すると、取引終了の翌日から秘密を守らなくてよい契約になってしまいます。

残存条項とは、契約が終わった後も、特定の条項だけ効力を残すと決める条項のことです。「存続条項」と呼ぶこともあります。

項目有効期間残存期間
意味契約そのものが効力を持つ期間契約終了後も守る期間
何を守るか期間中に受け取った情報すべて秘密保持・返却・損害賠償など指定した条項
よくある書き方締結日から1年、自動更新終了後2年間、3年間など
決めないと期間がわからず更新管理ができない終了した瞬間に守る義務が消えるおそれ

SESでは、BPとの取引が数年続くことも、半年で止まることもあります。そのため有効期間は短めの自動更新、残存期間は別に数年、という組み合わせが実務に合います。

秘密保持の期間は何年にする?情報別の決め方

秘密保持の期間に、法律で決まった年数はありません。守りたい情報が「いつまで価値を持つか」で決めるのが基本です。

SES営業が扱う情報ごとに、当研究所のおすすめを整理しました。

情報の種類価値が続く期間の目安おすすめの残存期間
案件情報(案件名・単価・商流・エンド名)案件が終われば価値が下がる終了後2〜3年
取引条件(単価・マージン・支払いサイト)取引先との関係が続く間終了後3年
エンジニアの個人情報(スキルシート・氏名)本人の権利なので期限なし返却・削除するまで
客先の業務・システム情報長く価値が残ることがある客先との契約に合わせる

残存期間は長いほど安全?

長すぎると、かえって守るのが難しくなります。10年前に受け取った案件メールまで管理し続けるのは、現実的ではありません。

また、期間を「無期限」にすると、相手のBPが受け入れにくく、締結までの調整が長引きがちです。守れる期間を約束するほうが、結果的に信頼につながります。

客先からの誓約書と期間がずれていないか

客先の誓約書が「終了後5年」なのに、BPとのNDAが「終了後1年」だと、2〜5年目の間に穴があきます。上流の契約より短い期間を、下流と結ばないことが大切です。

客先に出す誓約書の注意点は、SESの誓約書を客先に出すときの注意点|守秘義務の範囲と文例で解説しています。

そのまま使える有効期間・残存条項の条文例

期間の条文は、有効期間・更新・残存の3つをそろえて書きます。次の例は、SESのBPと結ぶNDAを想定したものです。

有効期間と自動更新の条文例

第○条(有効期間)

  1. 本契約の有効期間は、2026年10月1日から2027年9月30日までとする。

  2. 期間満了の1か月前までに、いずれの当事者からも書面による申し出がないときは、本契約は同一条件でさらに1年間更新され、以後も同様とする。

残存条項の条文例

第○条(残存条項)

  1. 本契約が期間満了または解除により終了した場合でも、第○条(秘密保持義務)は終了日から3年間、第○条(秘密情報の返却・廃棄)および第○条(損害賠償)は当該義務が履行されるまで、なお効力を有する。

  2. 前項にかかわらず、秘密情報のうち個人情報については、返却または廃棄が完了するまで第○条(秘密保持義務)が効力を有する。

基本契約の中にNDAを入れる場合

基本契約の中に秘密保持の条項がある場合も、残存条項を忘れずに入れます。基本契約が終わると、秘密保持の条項まで一緒に消えてしまうからです。

期間を決めるときの手順5ステップ

期間は、守る情報を洗い出してから決めます。営業がNDAを結ぶ・見直すときの流れは次のとおりです。

  1. やりとりする情報を書き出す:案件情報、人材情報、単価、客先のシステム情報などを一覧にする

  2. 上流の契約の期間を確認する:客先との基本契約・誓約書の残存期間を見て、それより短くしない

  3. 有効期間と更新の方法を決める:1年の自動更新にし、止めたいときの申し出期限(1か月前など)を書く

  4. 残存期間を情報ごとに決める:案件・取引条件は2〜3年、個人情報は返却・削除まで、と分ける

  5. 管理表に期限を記録する:締結日・更新日・取引終了日・残存期間の終了日を、BPごとに記録する

5番目を忘れると、「残存期間がいつ終わるか」を誰も覚えていない状態になります。BPの取引先情報の管理項目は、SESのBP登録管理方法|取引先情報の管理項目15と更新の仕組みで紹介しています。

秘密保持契約に違反されたときの対応

違反に気づいたら、証拠を残してから、相手に止めてもらうのが先です。損害の話はその後にします。

SESでよくある違反は、次のようなものです。

違反に気づいたときの4ステップ

  1. 証拠を残す:転送されたメール、提案された先、日時をスクリーンショットなどで保存する

  2. 社内で共有する:上長と、必要なら顧問弁護士に報告する

  3. 書面で止めてもらう:どの条項に違反しているかを示し、使用の停止と削除を求める

  4. 損害を話し合う:実際に失った取引や費用を整理し、賠償を求めるか判断する

契約違反で損害賠償を求める権利には、民法で時効が決まっています。権利を使えると知った時から5年、使えるようになった時から10年です(民法第166条)。気づいたら早めに動きましょう。

営業秘密として法律でも守られる場合

案件・人材リストが不正競争防止法の「営業秘密」に当たれば、契約とは別に、法律で使用の停止などを求められます。営業秘密とは、秘密として管理され、事業に役立ち、世間に知られていない情報のことです(不正競争防止法第2条第6項)。

ただし「秘密として管理」していることが条件です。誰でも見られるフォルダに置いていた情報は、守られにくくなります。社内で秘密として管理する規程の作り方は、営業秘密管理規程のひな形|SESの案件・人材リストを守る管理方法で解説しています。

引き抜きがからむ場合は、SESの競業避止義務と退職エンジニア|客先への転籍を防ぐ契約の範囲もあわせて確認してください。

第三者に開示してよいのはどんなとき?

秘密情報を第三者に渡すのは、相手の書面での同意があるときだけ、と決めるのが基本です。SESでは商流が長いので、この条項が特に大切になります。

第三者とは、契約を結んだ当事者以外の人や会社のことです。SESでは、次の相手が第三者に当たります。

相手渡してよいか条文で決めておくこと
自社の役員・社員業務に必要な範囲ならよい同じ義務を守らせる
顧問弁護士・税理士よい法律上の守秘義務がある専門家に限る
さらに下のBP(再委託先)事前の書面同意が必要同じ内容のNDAを結ばせる
別の客先・別のBP原則だめ目的外の使用として禁止する

スキルシートは個人情報のルールも守る

エンジニアの氏名が入ったスキルシートは、個人情報保護法の「個人データ」に当たることがあります。個人データを第三者に渡すには、原則として本人の同意が必要です(個人情報保護法第27条)。

NDAで相手が同意していても、エンジニア本人の同意がなければ提案に使えない場合があります。同意の取り方はスキルシートの個人情報と第三者提供の同意|SES提案で守る手順と文例で解説しています。

BPのエンジニアや営業が入れ替わるときの注意点

人が入れ替わるときは、アクセス停止・資料回収・削除の確認をその日のうちに行います。人が抜けた後の情報漏れは、期間の条文より、現場の手順で防ぐものです。

BPのエンジニアが現場から抜けるとき

BPのエンジニアが退場しても、BPとのNDAは続きます。ただし、エンジニア個人が持っている情報は、放っておくと残り続けます。

  1. 客先システムのアカウントを止める:退場日に、客先の担当者へ停止を依頼する

  2. 貸与物を回収する:PC・入館証・資料を、BPの営業立ち会いで返してもらう

  3. 削除の確認書をもらう:私物の端末やメールに情報が残っていないか、BPから書面で確認をもらう

  4. 後任に引き継ぐ範囲を決める:後任のエンジニアにも同じ誓約書を出してもらう

BPの営業担当が退職するとき

BPの営業が退職すると、共有していた案件メールや人材一覧が、個人のメールに残ったままになりがちです。BPの会社としての削除を依頼しましょう。

自社の担当が替わるときの取引先への挨拶は、営業担当者変更の挨拶メール例文|SESの取引先・BP・要員向けを使えます。

BPへの依頼メール例文

件名:【ご確認のお願い】ご担当者様変更に伴う共有情報の取り扱いについて

株式会社○○ ○○様

いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。
○○様のご退職に伴い、2026年11月30日までに次の2点をご確認いただけますでしょうか。

  1. ○○様宛てにお送りした案件情報・人材情報を、貴社の後任のご担当者様へ引き継いでいただくこと

  2. ○○様個人の端末・メールに残る情報を、秘密保持契約第○条に沿って削除いただくこと

お手数をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

自社の営業が退職するときの機密保持

自社の営業が退職するときは、退職時の誓約書で、在職中に知った情報を守ると約束してもらいます。BPや客先の情報も、自社が秘密保持の義務を負っている情報だからです。

誓約書には、BP名簿・案件リスト・単価表などを具体的に書くと、何を守るかがはっきりします。あわせて、メールや共有フォルダのアクセスを退職日に止めましょう。

チョータツで取引先の情報を1か所にまとめる

NDAの期間を守るには、どの会社にどの情報を渡したかがすぐわかる状態が大切です。案件・人材の情報がメール、Excel、個人のPCに散らばっていると、取引終了時に何を返してもらうかがわかりません。

チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。3,000社以上が利用しています。

  • 案件・人材の情報を1か所で管理・共有できるので、情報が個人のPCに散らばりにくい

  • パートナーへのメール配信機能があり、誰に何を送ったかを整理しやすい

  • 他社と連携すると、他社の営業中案件・営業中人材をデータベース化できる

まずは自分で、BPごとの締結日・残存期間を管理表にまとめてください。そのうえで、日々やりとりする案件・人材の情報をチョータツに集めると、担当者が入れ替わっても情報を追いやすくなります。

秘密保持契約の期間チェックリスト

NDAを結ぶ前と、取引が終わるときに、次の10項目を確認しましょう。

  • 有効期間の開始日と終了日が書かれている

  • 自動更新の有無と、止めるときの申し出期限が書かれている

  • 残存条項があり、秘密保持の残存期間が書かれている

  • 返却・廃棄と損害賠償の条項も残存の対象になっている

  • 個人情報は、返却・削除まで守る書き方になっている

  • 客先の誓約書・基本契約より短い期間になっていない

  • 再委託先に渡すときの条件(事前の書面同意)が書かれている

  • 取引終了時に、返却・削除の確認書をもらう流れがある

  • 締結日・更新日・残存期間の終了日を管理表に記録した

  • 担当者の退職時に、アクセス停止と削除を依頼する手順がある

よくある質問

Q. 秘密保持契約の有効期間に、法律上の決まりはありますか?
ありません。契約する会社どうしで自由に決められます。守りたい情報の価値が続く期間に合わせて決めましょう。
Q. 有効期間を書かなかったらどうなりますか?
いつまで守るのかがはっきりせず、揉めたときの争いの元になります。有効期間と残存期間は、必ず数字で書きましょう。
Q. 残存期間は何年が一般的ですか?
決まった相場はありません。当研究所では、SESの案件情報・取引条件なら終了後2〜3年、個人情報は返却・削除までをおすすめしています。
Q. 秘密保持契約の期間が切れたら、情報を自由に使えますか?
残存期間が終われば契約上の義務はなくなります。ただし、個人情報保護法や不正競争防止法のルールは契約と関係なく残ります。
Q. 秘密保持契約の違反に罰則はありますか?
契約違反そのものに刑罰はありません。ただし損害賠償を求められることがあります。営業秘密を不正に持ち出した場合は、不正競争防止法で罰せられることもあります。
Q. 退職する社員に、機密保持の誓約書を出してもらうべきですか?
出してもらうのがおすすめです。BP名簿・案件リスト・単価表など、守る情報を具体的に書いておくと、後で確認しやすくなります。
Q. BPが第三者に情報を渡していたら、どうすればいいですか?
まず証拠を残し、どの条項に違反しているかを示して、使用の停止と削除を書面で求めます。損害が大きい場合は弁護士に相談しましょう。

まとめ

  • 秘密保持契約の期間は、「有効期間」と「残存期間」の2つに分けて決める

  • 法律上の年数の決まりはない。SESなら有効期間1年の自動更新+残存期間2〜3年が扱いやすい

  • 個人情報は期間で区切らず、返却・削除するまで守る書き方にする

  • 客先の誓約書より短い期間を、BPと結ばない

  • 違反されたら、証拠を残す→止めてもらう→損害を話し合うの順で動く

  • 人が入れ替わるときは、アクセス停止・資料回収・削除の確認書をそろえる

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

  • e-Gov法令検索「民法」(第166条 債権等の消滅時効、第415条 債務不履行による損害賠償)

  • e-Gov法令検索「不正競争防止法」(第2条第6項 営業秘密の定義、第15条 消滅時効)

  • e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」(第23条 安全管理措置、第25条 委託先の監督、第27条 第三者提供の制限)

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