派遣のスキルシートはどこまで出せる?事前面接のルールとSESとの違い、匿名化チェック
公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日
派遣のスキルシートとは?SESのスキルシートと何が違う?
派遣のスキルシートとは、派遣先が「頼みたい仕事をこなせる人か」を確認するための、技術と経験だけをまとめた資料のことです。SESのスキルシートと中身は似ていますが、誰かがわかる情報を載せない点が大きく違います。
スキルシートとは、エンジニアの経験した案件、使える言語やツール、担当した工程などを一覧にした資料のことです。SESでは客先への提案や面談の前に送るのが一般的です。基本の項目はSESスキルシートのフォーマットと書き方|15項目の記入例付きで紹介しています。
労働者派遣とは、派遣元の会社が雇っている人を、派遣先の会社の指示のもとで働かせる契約のことです。派遣では、派遣先が働く人を選んではいけないというルールがあります。そのため、スキルシートの作り方と使い方が準委任とは変わります。
| 比べる点 | 派遣のスキルシート | SES(準委任)のスキルシート |
|---|---|---|
| 目的 | 仕事に必要なスキルがあるかの確認 | 提案・面談のための人物紹介 |
| 誰かわかる情報 | 載せない(匿名が基本) | イニシャル程度で載せることが多い |
| 複数名を出して選ばせる | しない | 行われることが多い |
| 送ったあとの面接 | できない(紹介予定派遣を除く) | 面談が行われることが多い |
派遣で禁止される「特定目的行為」とは?
特定目的行為とは、派遣先が、派遣される人を契約の前に自分で選ぼうとする行為のことです。事前面接、履歴書を送らせること、年齢で絞ることが代表例です。
法律では、労働者派遣法第26条第6項が定めています。「派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない」という努力義務の書き方です。
ただし、厚生労働省の「派遣先が講ずべき措置に関する指針」では、はっきり「行わないこと」とされています。指針が挙げる例は次のとおりです。
派遣の前に、働く予定の人と面接すること
派遣先に、その人の履歴書を送らせること
若年者に限るなど、条件で人を絞ること
派遣元の側にも「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」があり、派遣先の特定目的行為に協力してはならないとされています。「客先に頼まれたから」は言い訳になりません。
整理すると、法律の条文は努力義務、「禁止」と言える根拠は派遣先指針です。客先に説明するときも、「派遣法の指針で行わないこととされています」と伝えると正確です。
労働者派遣法の全体像は、労働者派遣法とは?SES営業が知るべきルール8つと労基法で確認できます。
例外は「紹介予定派遣」だけ
紹介予定派遣とは、派遣期間のあとに派遣先で直接雇われることを前提にした派遣のことです。労働者派遣法第26条第6項は、紹介予定派遣を対象から外しています。
そのため紹介予定派遣では、事前の面接や履歴書の送付ができます。詳しくは紹介予定派遣とは?通常派遣との違いと紹介料の相場をSES向けにを確認してください。
本人が自分の判断で行う職場見学はOK
指針には、働く人が自分の判断で職場を見学したり、履歴書を渡したりすることは、特定目的行為に当たらないとも書かれています。
ただし同じ指針で、派遣元や派遣先が本人にそれを求めないこととされています。営業が「見学に行ってきて」と頼んだ時点で、本人の判断とはいえなくなります。
派遣のスキルシートに載せてよい情報・伏せる情報
派遣のスキルシートに載せてよいのは、仕事をこなせるかを判断するための技術・経験の情報です。誰かを特定したり、年齢や性別で選んだりできる情報は伏せます。
根拠は、派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針です。派遣元が派遣先に渡せる個人情報は、2種類に限られます。労働者派遣法第35条で通知が決められている事項と、業務遂行能力に関する情報です(本人の同意がある場合などを除く)。
| 項目 | 派遣で載せるか | 理由・書き方 |
|---|---|---|
| 経験した業務・工程 | 載せる | 業務遂行能力そのもの |
| 使える言語・ツール・経験年数 | 載せる | 「Java 5年」のように技術ごとに書く |
| 資格 | 載せる | 仕事に関係する資格だけ |
| 氏名 | 伏せる | 「Aさん」など記号にする |
| 年齢・生年月日 | 伏せる | 年齢で選ぶ行為につながる |
| 性別 | 伏せる | 契約に性別を書くことも指針で禁止 |
| 顔写真 | 載せない | 人物を選ぶ材料になる |
| 住所・最寄り駅 | 原則伏せる | 通勤可否は派遣元が確認する |
| 学歴・出身校 | 原則伏せる | 仕事に必要な場合だけ検討する |
注意したいのは「匿名なら何でもOK」ではない点です。 匿名でも、複数名のシートを並べて派遣先に1人を選ばせると、実質的に人を選ぶ行為になるおそれがあります。人選は派遣元が行い、派遣先には「この人を派遣します」と1名分を伝えるのが安全です。
なお、派遣が始まるときには、派遣元は派遣先に氏名などを通知する義務があります(労働者派遣法第35条)。氏名を伏せるのは、契約前に人を選ばせないためだと考えるとわかりやすいです。
第三者提供の同意の取り方は、スキルシートの個人情報と第三者提供の同意|SES提案で守る手順と文例で詳しく解説しています。
派遣とSES(準委任)で扱いはどう違う?
派遣と準委任のいちばんの違いは、スキルシートと面談で客先が人を選べるかどうかです。派遣では選べず、準委任では派遣法の特定目的行為の規定が直接はかかりません。
準委任とは、決まった仕事を行うこと自体を引き受ける契約のことです。SESの多くはこの形で、エンジニアへの指示は受注したSES企業が出します。
| 比べる点 | 派遣 | SES(準委任) |
|---|---|---|
| 現場で指示を出す人 | 派遣先 | 受注したSES企業 |
| 事前面接・履歴書 | しない(法は努力義務、派遣先指針で禁止。紹介予定派遣を除く) | 派遣法の規定は直接かからない |
| 人選をする会社 | 派遣元 | 受注したSES企業 |
| 違反したときの問題 | 努力義務・指針に反し、指導の対象になりうる | 実態が派遣なら偽装請負 |
ここで気をつけたいのが、準委任でも「人を配置する決定」は受注側が行うものだという点です。厚生労働省の37号告示(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)の定めです。受注側が「労働者の配置等の決定及び変更」を自ら行うことを求めています。
客先が面談で合否を決め、現場でも直接指示を出していれば、準委任でも実態は派遣と判断されるおそれがあります。判断の基準は偽装請負の判断基準|SES営業が避けたいNG行為10選と予防策にまとめています。
営業が迷う場面7つと判断
迷ったら、「その行為で、客先が人を選んでいないか」を基準に考えます。よくある場面を7つ、派遣契約の前提で整理しました。
| 場面 | 判断 | 営業の対応 |
|---|---|---|
| 1. 客先が「一度顔合わせを」と言う | 事前面接に当たるおそれ | 匿名シートでのスキル確認に切り替える |
| 2. 客先が履歴書を求める | 派遣先指針で禁止 | 業務に関係する経験だけのシートを出す |
| 3. 「20代でお願いします」と言われる | 若年者に限る行為 | 必要なスキル・経験の条件に言い換えてもらう |
| 4. 3名分のシートから選びたいと言われる | 選ばせる行為になるおそれ | 派遣元で1名に絞ってから伝える |
| 5. 本人が職場を見たいと言う | 本人の判断ならOK | 営業から見学を頼まない |
| 6. 準委任から派遣へ切り替える | 以後は派遣のルール | シートを派遣用に作り直す |
| 7. 紹介予定派遣で提案する | 面接・履歴書OK | 通常の派遣と書類を分けて管理する |
場面1・2:顔合わせや履歴書を求められたとき
客先に悪気がないことも多いので、ルールを短く説明し、代わりの方法を示すのがコツです。「弊社で業務に合う人を選び、スキル情報をお送りします」と伝えれば、話が進みやすくなります。
場面3:年齢や性別で条件を出されたとき
「若手」「女性」などの条件は、そのまま受けてはいけません。「Javaの実務3年以上」「夜間対応ができる」のように、仕事の条件に言い換えてもらいます。 準委任の案件で同じ条件を出されたときの考え方は、SES案件の年齢制限・性別指定は違法?営業の確認点と返し方で整理しています。
場面4:複数名から選びたいと言われたとき
準委任に慣れた客先ほど、複数名のシートを並べて選びたがります。派遣では、人選は派遣元の仕事です。候補が複数いる場合も、社内で1名に絞ってから伝えましょう。
場面6:準委任から派遣へ切り替えるとき
同じエンジニアでも、契約が派遣になった時点で派遣のルールがかかります。準委任用のシートをそのまま転送しないよう、社内で担当者を決めておくと安心です。
派遣用スキルシートを作る手順5ステップ
派遣用のシートは、SES用のシートから「人を選べる情報」を抜くと早く作れます。次の5ステップで進めます。
契約形態を確認する:案件票や客先の依頼で、派遣か準委任か紹介予定派遣かを確かめる
元のシートを複製する:SES用の原本は残し、派遣用のファイルを別に作る
伏せる項目を消す:氏名・年齢・生年月日・性別・顔写真・住所・学歴を消す
業務に関係する経験だけ残す:案件の業務に関係する工程・技術・資格を中心にする
1名分だけを送る:派遣元で人選を終えてから、1名分を客先へ送る
送る前の匿名化チェックリスト
氏名を「Aさん」などの記号にした
年齢・生年月日・性別を消した
顔写真を消した
住所・最寄り駅を消した
学歴・出身校を消した(業務に必要な場合を除く)
ファイル名やプロパティ(作成者名)に氏名が残っていない
メール本文や件名に氏名を書いていない
複数名のシートをまとめて送っていない
見落としやすいのが、ファイル名とファイルの作成者情報です。シート本体を匿名にしても、「yamada_skill.xlsx」のような名前で送ると意味がありません。匿名化した雛形はスキルシートのテンプレート無料|Excel版と記入見本・匿名化版を使うと手間が省けます。氏名入りのシートを誤って送ったときは、スキルシートを誤送信したら|削除依頼の例文と個人情報の報告要否の手順で対応します。
客先に説明するメール例文
顔合わせや履歴書を求められたときは、ルールの説明と、代わりにできることをセットで伝えます。そのまま使える例文です。
件名:【ご相談】11月2日(月)開始予定の派遣要員について 株式会社〇〇 〇〇様 いつもお世話になっております。株式会社△△の□□です。 先日ご依頼いただいた、11月2日(月)開始予定の 派遣要員の件でご連絡いたしました。 事前の顔合わせと履歴書のご提出についてご相談いただきましたが、 労働者派遣では、派遣先様が派遣前に面接をしたり、 履歴書を受け取ったりしないことが、国の指針で定められております。 そのかわり、弊社でご依頼の業務に合う者を選び、 業務経験と技術のみをまとめたスキル情報をお送りいたします。 必要なスキルや経験の条件がございましたら、 あらかじめお知らせいただけますと、人選に反映いたします。 どうぞよろしくお願いいたします。
年齢などの条件を出されたときは、「必要なスキルや経験の条件」の一文を強めに書きます。仕事の条件に言い換えてもらう流れにすると、角が立ちにくくなります。
チョータツで派遣用・SES用のシートを管理する
ここまでの作業は、Excelとフォルダでも自分で行えます。ただ、人材ごとに「SES用」と「派遣用」のシートが増えると、どれを誰に送ったかがわからなくなりがちです。
チョータツは、SES営業のための案件・人材の管理・共有ツールです。人材の情報を1か所で管理でき、パートナーへのメール配信機能もあります。案件ごとに契約形態を管理し、提案前に条件を確認しておくと、準委任用のシートを派遣の客先へ送るようなミスを減らせます。
BPから届く人材メールが多い場合は、チョータツメールAIも便利です。届いたメールをAIが処理し、案件メールと人材メールに切り分けます。転送設定で取り込めて、案件・人材以外のメールはデータに残りません。
提案できる人材が足りないときは、DrivenXのxhoursで、ITフリーランスに直接スカウトを送る方法もあります。
よくある質問
- Q. 派遣でスキルシートを出すこと自体は違法ですか?
- 違法ではありません。派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針は、派遣先に渡せる情報として「業務遂行能力に関する情報」を挙げています。ただし氏名や年齢など、人を選べる情報は伏せましょう。
- Q. 派遣の事前面接の禁止に罰則はありますか?
- 労働者派遣法第26条第6項は努力義務の書き方で、この条文に直接の罰則はありません。ただし派遣先指針では「行わないこと」とされ、行政の指導や助言の対象になりえます。取引先からの信頼も失うので、守るのが前提です。
- Q. 「職場見学」なら派遣前に会ってもいいですか?
- 本人が自分の判断で見学するのは、指針上は特定目的行為に当たりません。ただし派遣先や派遣元が見学を求めることはできません。「見学」という名前でも、実際に合否を判断するなら事前面接と同じです。
- Q. SES(準委任)なら面談で人を選んでも問題ないですか?
- 派遣法の特定目的行為の規定は、準委任には直接かかりません。ただし37号告示では、人の配置の決定は受注側が行うものとされています。客先が現場で指示を出していれば偽装請負の問題になるので、契約の実態とあわせて確認しましょう。
- Q. 紹介予定派遣ではスキルシートに氏名を書いてもいいですか?
- 紹介予定派遣は特定目的行為の禁止の対象外なので、事前の面接や履歴書の送付ができます。ただし個人情報を渡すことになるので、本人の同意を取ってから送りましょう。
- Q. 派遣が始まったら、派遣先に氏名は伝わりますか?
- 伝わります。労働者派遣法第35条で、派遣元は派遣先に派遣労働者の氏名などを通知することになっています。氏名を伏せるのは、契約前に人を選ばせないためです。
まとめ
派遣でも、スキルや経験など業務遂行能力の情報は派遣先に伝えてよい
事前面接・履歴書の送付・若年者に限るなどの特定目的行為は、法律では努力義務、派遣先指針で禁止。派遣元の協力も指針で禁止
派遣のシートは氏名・年齢・性別・顔写真・住所を伏せ、1名分だけ送る
例外は紹介予定派遣。本人が自分の判断で行う職場見学も特定目的行為に当たらない
準委任には派遣のルールは直接かからないが、実態が派遣なら偽装請負になる
提案の前に契約形態を確認し、派遣用シートを別に作る習慣をつける
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。
運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日
参考資料(2026年9月30日確認)
e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(第2条第4号、第26条第6項、第35条)
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厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(第2の3 派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止、第2の4)
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