労働契約法の解雇ルール|SESで案件終了を理由に解雇できるか、整理解雇の4要件

公開日:2026年9月30日更新日:2026年9月30日

労働契約法の解雇ルールとは

労働契約法の解雇ルールとは、「会社が一方的に社員をやめさせるには、きちんとした理由が必要」という決まりのことです。中心になるのは第16条です。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。(労働契約法第16条)

労働契約法とは、会社と社員の雇用契約(労働契約)の基本ルールを決めた法律のことです。第16条の考え方は、裁判で積み重ねられてきたもので、解雇権濫用法理と呼ばれます。

第16条のポイントは、次の2つを両方満たす必要があることです。

チェック意味SESでの例
客観的に合理的な理由誰が見ても納得できる理由がある会社が本当に経営難である
社会通念上の相当性解雇という重い手段が行き過ぎでない別の案件を探す努力を十分にした

労働契約法の全体像は「労働契約法とは?SES企業が社員との契約で守る5つのルール」で解説しています。

SESで案件終了を理由に解雇できるか

答えは、「案件が終わった」だけでは、解雇の理由として足りないことが多いです。理由は、SES企業のビジネスの形にあります。

SES企業は、客先との契約が終わることを前提に事業をしています。契約の終了は、会社にとってよくあることです。そのため、「案件が終わったから解雇」は、会社が負うべき営業のリスクを社員に押しつける形になりやすいのです。

雇用形態で変わる判断

エンジニアの雇用形態によって、見るべきルールが変わります。

雇用形態主なルール案件終了での扱い
正社員(期間の定めなし)労働契約法第16条解雇は原則難しい
契約社員(期間中)労働契約法第17条期間中の解雇はさらに難しい
契約社員(期間満了)雇止めのルール(第19条)更新の期待があると制限される

有期労働契約とは、「2026年10月1日から2027年3月31日まで」のように期間を決めた雇用契約のことです。第17条では、期間中の解雇は「やむを得ない事由」がある場合に限られます。正社員の解雇よりも、さらに厳しく判断されます。有期と無期の違いは「派遣の無期雇用とは?有期との違いと3年ルールをSES向けに解説」も参考になります。

契約社員の期間満了で契約を終える場合は「有期労働契約の雇止めルール|SESの案件終了と派遣法の注意点」をご覧ください。

整理解雇の4要件をSES企業に当てはめる

案件終了や経営悪化を理由にした解雇は、整理解雇として扱われます。整理解雇とは、社員の側に問題がなく、会社の経営上の理由で行う解雇のことです。

整理解雇は、裁判例で次の4つの要件(要素)から判断されてきました。4つすべてが必要とする考え方と、4つを総合して判断する考え方があります。どちらでも、この4つが判断の軸です。

要件一般的な意味SES企業での確認ポイント
①人員削減の必要性経営上、人を減らす必要がある待機1人で会社が傾くほどか
②解雇回避の努力配置転換などで解雇を避けた次の案件を探す営業をしたか
③人選の合理性対象者の選び方が公平「待機中だから」だけで選んでいないか
④手続の妥当性本人に十分説明し、協議した経営状況や提案の経過を説明したか

①人員削減の必要性:待機1人では認められにくい

1人のエンジニアの待機で、会社全体が経営危機になることはまれです。会社全体の売上や資金繰りで見て、本当に人を減らす必要があるかが問われます。

②解雇回避の努力:SES企業では営業活動が中心

SES企業にとっての解雇回避の努力は、次の案件への提案です。何社に提案し、何回面談したかという記録が、会社の努力を示す材料になります。社内業務への配置や、役員報酬の見直しなども努力に含まれます。

③人選の合理性:「たまたま待機中」は理由にならない

案件が終わった時期は、本人の力ではなく客先の都合で決まることが多いです。「今、待機しているから」だけで対象者を選ぶと、公平な基準とはいえません。

④手続の妥当性:説明と協議を記録に残す

本人に、会社の経営状況と、これまでの提案の経過を説明します。いきなり解雇を伝えるのではなく、話し合いの場を何度か持つことが大切です。

解雇するときに必要な手続き

それでも解雇を選ぶ場合は、労働基準法の手続きを守る必要があります。手続きを守っても、第16条の理由がなければ解雇は無効になる点に注意してください。

解雇予告と解雇予告手当

解雇予告とは、解雇する日の30日前までに、本人に解雇を伝えることです(労働基準法第20条)。30日前に伝えない場合は、足りない日数分の平均賃金を解雇予告手当として払います。

平均賃金とは、原則として直前3か月の賃金の合計を、その期間の日数で割った1日あたりの金額です。

例金額
直前3か月の賃金合計(月給36万円×3か月)108万円
3か月の日数(8月・9月・10月)92日
平均賃金(108万円÷92日)約11,739円
即日解雇した場合の予告手当(30日分)約352,174円

そのほかの注意点

  1. 就業規則を確認する:解雇の理由(解雇事由)は就業規則に書く決まりです(労働基準法第89条)。

  2. 解雇できない期間を確認する:仕事中のけがの療養中と、その後30日間などは解雇できません(労働基準法第19条)。

  3. 理由を書面で出せるようにする:本人から求められたら、解雇理由の証明書を遅れずに渡します(労働基準法第22条)。

解雇の前にやるべき待機中の対応

解雇を考える前に、待機中の給与を正しく払い、次の案件を早く決めることが先です。おすすめの順番は次のとおりです。

  1. 休業手当を確認する:会社都合の自宅待機では、平均賃金の60%以上の休業手当が必要です(労働基準法第26条)。

  2. 社内の仕事に配置する:社内システムの改修や勉強会の準備など、出社して行う仕事を用意します。

  3. スキルシートを更新する:直近の案件の内容を、その日のうちに書き足します。

  4. 提案先を広げる:自社の取引先だけでなく、パートナーの営業中案件にも提案します。

  5. 提案の記録を残す:日付・提案先・結果を一覧にします。解雇回避の努力の記録にもなります。

  6. 本人と週1回話す:希望する案件の条件を確認し、単価や勤務地の幅を相談します。

先ほどの月給36万円の例で、休業手当の最低額は1日あたり約7,043円(約11,739円×60%)です。待機中のお金の扱いは「SESの待機期間の給与と対応|休業手当の計算例と早く案件に入る7手順」で詳しく解説しています。

待機中のエンジニアと話すときの言い方(例)

週1回の面談では、会社の方針と次の動きを具体的に伝えます。「いつまでに何社に出すか」を言葉にすると、本人の不安が減ります。

例文・テンプレート
今の案件は〇月〇日で終了になりました。〇〇さんの評価が理由ではありません。
待機中も給与(または休業手当)は会社の規定どおりに払います。
今週はA社・B社・C社の3件に提案します。面談が決まったら当日中に連絡します。
単価や勤務地で、広げてもよい条件があれば教えてください。

「解雇」や「辞めてもらうかも」という言葉は、方針が決まっていない段階では使いません。退職を迫っていると受け取られるおそれがあるためです。

提案記録の書き方の例

日付提案先案件の内容結果
2026年10月1日(木)A社(取引先)Java開発・品川面談 → 見送り
2026年10月5日(月)B社(パートナー)AWS構築・リモート面談調整中
2026年10月7日(水)C社(パートナー)PMO補佐・新宿書類で見送り

次の案件を早く見つける方法

待機を短くするコツは、契約終了の前から動くことと、提案できる案件の数を増やすことの2つです。

契約終了の2か月前から動く

更新しないと決まった時点で、次の案件探しを始めます。更新の時期と確かめ方は「SESの契約更新はいつ決まる?通知時期と更新しない時の4手順」にまとめています。年度末に待機が重なる会社は「SESの3月末の契約終了対策|年度末に待機を出さない営業の7手順」も参考になります。

自分で提案先を増やす方法

  • 取引のあるパートナーに、待機中のエンジニアの情報をメールで送る

  • パートナーから届く案件メールを毎日確認し、条件が合うものに提案する

  • 過去に面談で見送られた客先に、別の案件がないか聞く

ただし、案件メールは1日に何十通も届くことがあります。手作業で探すと、良い案件を見落としがちです。

チョータツで営業中案件をまとめて探す

チョータツを使うと、他社と連携して、連携先の営業中案件をデータベース化できます。メールを1通ずつ開かなくても、提案できる案件を探しやすくなります。

チョータツで楽になることは、次の3つです。

  1. 自社の人材情報を管理・共有し、待機中のエンジニアをすぐ提案できる

  2. パートナーへのメール配信機能で、待機中の人材情報をまとめて届けられる

  3. AIが入力を手伝うので、案件・人材の登録の手間が減る

チョータツは3,000社以上が利用しており、無料で始められます。待機を減らすことは、会社の売上と社員の安心の両方を守ることにつながります。稼働率の考え方は「SESの稼働率の平均と上げ方|待機を減らす営業の打ち手5つ」で確認できます。

よくある質問

Q. 労働契約法で解雇が認められる要件は何ですか?
客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められることです(第16条)。経営上の理由による解雇は、整理解雇の4要件で判断されるのが一般的です。
Q. 待機が3か月続いたら解雇できますか?
待機の長さだけを理由にした解雇は、認められにくいと考えましょう。提案の記録や経営状況などから総合的に判断されます。必ず専門家に相談してください。
Q. 30日前に予告すれば、案件終了で解雇してもよいですか?
いいえ。30日前の予告は労働基準法の手続きです。予告をしても、労働契約法第16条の理由がなければ解雇は無効になります。
Q. 契約社員なら、案件終了に合わせて契約期間の途中で解雇できますか?
期間の途中の解雇は、「やむを得ない事由」がある場合に限られます(労働契約法第17条)。正社員の解雇よりも厳しく判断されます。
Q. 解雇ではなく、退職をすすめるのは問題ありませんか?
退職をすすめること(退職勧奨)は、本人が自由に決められる範囲なら解雇とは別の扱いです。ただし、何度も強く迫ったり、断ると不利益があると伝えたりすると、違法と判断されるおそれがあります。
Q. 待機中に給与を払わなくてもよいですか?
会社の都合で休ませる場合は、平均賃金の60%以上の休業手当が必要です(労働基準法第26条)。出社して社内の仕事をする場合は、通常どおり給与を払います。

まとめ

  • 案件終了だけを理由にした正社員の解雇は、労働契約法第16条により原則として難しい

  • 案件終了による解雇は整理解雇として、人員削減の必要性・解雇回避の努力・人選・手続の4つで判断される

  • SES企業の解雇回避の努力は、次の案件への提案。日付・提案先・結果を記録する

  • 解雇する場合も、30日前の予告か解雇予告手当が必要。ただし手続きだけでは有効にならない

  • 待機中は休業手当を確認し、契約終了の2か月前から提案先を広げて動く

本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の法的助言ではありません。具体的な判断は弁護士・社会保険労務士などの専門家にご相談ください。

運営:チョータツSES研究所(株式会社DrivenX)|編集方針|公開日:2026年9月30日|更新日:2026年9月30日

参考資料(2026年9月30日確認)

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